5 / 31
ナンバー9のアギアさん
しおりを挟む
★前回のあらすじ。
アーリアお姉さんを仲間に誘った僕は、何故か恋人にさせられようとしていた。
お姉さんは美人ではあるが、色々と問題がある為軽く断るのだけど、仕事にはのってくれなそうだ。
僕はデッドロックを生贄にしてお姉さんを仕事に誘うことに成功し、町の南にある森に進みだす。
逆側の出口近くで馬車が倒れているのを発見してそこで魔物が出るのを待っている。
★
クー・ライズ・ライト (僕)
ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
アリーア・クロフォード・ストラバス(ギルドで寝ている人)
★
「ギュッギョ、ギャギャッギャ!」
影から出現した魔物こそ絶望のアギアと呼ばれる奴なのだろう。
僕はお姉さんが攻撃を防いでいる間に退避し、リュックから白いボードを取り出し撮影する。
「映し鏡よ、彼の姿を写したまえ」
僕は慌てず何時も通りにボードを確認し、相手の姿を見定める。
資料に書かれた通り、フードを被ったような頭をしていた。
その真っ黒のフードの中には、白い二つの光が輝いている。
全体を見れば人型のようではあるが、一目で人ではないと分かるぐらいな姿をしていた。
少しだけ胸が膨らんで見えるし、雌なのだろうか?
見えている腕は、青暗いような皮膚がボコボコと波打っている。
例えれば爬虫類の背骨の形というのだろうか?
まあそんな形だと思う。
魔物の両腕の先は剣となっており、それがアイツの武器なのだろう。
闇に潜む能力もそのままである。
出来る限り色々調べたい所だけれど、まずは。
「アーリアさん、キューブを使ってください!」
僕はアーリアさんに意外と軽い木製のキューブを放り投げと、相手の攻撃を防御しながら、背後を振り向かずに片手でキューブを受け取ってくれた。
「じゃあお姉さんが使わせてもらうわね」
「ギャララララ!」
しかしほんの一瞬のその隙を、アギアが狙って攻撃を放った。
「おっと!」
アーリアさんはキューブを掴んだ手を相手の剣に合わせ、攻撃をガッチリと防御している。
しかしキューブは相手の攻撃で半分も斬り裂かれてしまった。
相手の力はナンバーが上がって随分強化されている気がする。
「チッ、思ったより速いわね。中々当たらないわ」
ファラさんも攻撃を当てるのに苦戦している。
どうも速度にしても増えている気がする。
僕の目には相手の動きが少しずつ見えずらくなっている。
速さは一定値で止まっているようにみえるけど、景色と同化が進んでいると言った風だろう。
アギアが影の中に入り飛び出しまたは入り、二人を攪乱しながら攻撃をしている。
闇に入る能力を持つ魔物にとって、夜の時間が本番なのだ。
アーリアさんはアギアの攻撃を受け止めるが。
「クッ、動きが面倒だわね!」
ファラさんはやはり苦戦をしいられている。
「ギャギャギャギャギャギャギャギャギャ」
僕はこの戦いに入ることは出来ないが、二人を手助けすることはできる。
背中にしょったリュックから道具を取り出し、道の中央へランタンを灯す。
既に日が落ちたこの森に、大きく光が広がっている。
というか先にやっとけと言われそうだが、帰りたかったから仕方ないのだ。
僕の所為じゃなくて来なかった敵が悪いだけなのである。
「お二人共、これで見えますよね」
「もうちょっと早くやりなさいよ!」
ファラさんは怒ってるけど僕の所為ではないんです。
「お姉さんは怒ってないわよ。クーちゃんは大体こんなものだもの」
アーリアさんには僕の評価を考えて欲しい。
「だから僕の所為じゃないんです。あんなタイミングで来た敵に言ってください」
とりあえず僕は否定してみるのだけど。
「だからって何よ、サッサと他の事を進めなさい!」
「あ、はい」
敵と必死に戦っているファラさんに怒られてしまった。
僕は素直に言うことを聞き、測量士の魔法の準備をする。
相手の扱う力であれば、測量士が測れないことはない。
「……結界の内なる炎よ……じゃなくて、え~っとえ~っと?」
相手の力は何だろうか?
明度……じゃなくて、暗さ……でもないし?
深度、でもなさそうかな?
だったら彩度かなぁ?
「……結界の内なる彩度よ。数値となって強さを示せ。ナンバーズ・フィールド!」
測量士の魔法が発動し、魔物の色彩の数値が現れた。
だけど。
「二?!」
ボンと上から落ちて来たのは二という数字だ。
この二という数字では、僕の強化には繋がらない。
……そう言えば、黒に近いほど数値が低いんだった気がする。
だがもう一つの効果は、相手の姿を影から引きずり出した。
アギアの色彩が影の中に現れ、泳ぐように相手の姿が見て取れる。
「このぐらい見えていれば、私は攻撃を外さないわよ!」
ファラさんは影の中を泳ぐアギアに、持っている剣を振り下ろす。
強烈なダメージを与えてはいるようだけど、まだまだ相手は元気に動き続けている。
まあ流石にドラゴンのような硬さは持っていないようだ。
しかしアギアは形勢が不利とみると、二人から離れて僕の方へ向かって来ていた。
最初に僕を攻撃したし、子供というよりは一番弱そうな人物を狙うのかもしれない。
いや、そんなことを冷静に考えている場合じゃない。
影の中から跳び出て、僕に剣を振り上げている。
「ぎゃあああああああ!?」
「てええい!」
僕は悲鳴をあげて狼狽えるのだけど、アーリアさんが落ちていたキューブを拾い、アギアの背中へ投げ当てた。
相手がギャッと怯んでいる間に、僕はガサガサと四肢を使って二人の下へ逃げて行く。
というかもうそろそろ能力値は分かったのだけど、簡単には逃がしてはくれなさそうだ。
「逃げないというのなら、私達が退治するしかないんじゃない? ほら、掛かって来なさいよ」
普通にヤル気のファラさんは、指をクイクイして挑発している。
「お姉さんはどちらでもいいのだけど、頑張って倒しても賞金とか出ないのよね」
僕達はギルドから来たけど依頼を受けていないのだ。
倒したとしても、懸けられた賞金はもらえないのである。
「え~っと、どうしよう。僕がやれそうな事はなさそうなんですよね。二人の応援でもしてあげましょうか?」
「ウザいからやめて!」
「クーちゃんは馬車の上にでも座ってたらいいわよ」
「じゃあそうしときます」
役に立たない僕は、言われた通りに馬車の上に登り、二人の戦いを見物する。
隠れる力がなくなった魔物では、ファラさんとアーリアさんの相手にはなっていない。
二つの剣はアーリアさんに受け止められ、ファラさんにより剣の攻撃が当てられる。
「ギャウ!」
ダメージを受け続けた魔物は、少し怯んでいる。
逃げ足が速いと書かれていたし、もうそろそろ逃げ出すかもしれない。
「止めを刺してやるわ!」
ファラさんが迫って行くが、相手の動きの方が速い。
魔物は攻撃の手を止めて、二人から距離をとった。
ファラさんも一人だけで突っ込むようなマネはせず、少しの間睨み合いが続く。
「……ウギギギギ!」
変な鳴き声をするアギアは、二つの剣を空に向けて妙な踊りを舞い始めた。
大地を何度も踏みしめて、その場でグルグルと回っている。
何かを狙っているのだろうか?
そういえば、MPの値に数字が入っていた。
何かしらの攻撃をするのかも知れない。
属性さえ分かれば対処もできるのだが、資料に書かれた情報はない。
「ウィーアー・グリーアー!」
アギアのよく分からない言葉は呪文なのだろうか。
ボゥと一瞬風が吹く。
しかしそれは僕の髪をなびかせる程度のもので、それだけで効果は無くなったように見える。
だが、それで終わるはずがない。
武器に変化はないし、これはたぶん身体強化だ。
力か、速度か、たぶん二者択一。
僕は相手が動く前に、一つの魔法を選択した。
「……結界の内なる速度よ。数値となって強さを示せ。ナンバーズ・フィールド!」
その瞬間、二という数字が消え去り、五十という数字が上から降って来た。
賭けには勝てたらしいけど、魔法を使っている間に二人の隙間を抜け、僕に向かって来ている。
既に効果は消失しているのだが、加速した動きは勢いを失わない。
「クー!」
「クーちゃん!」
心配する声が聞こえて来る。
二人の為にも、ここで倒される訳にはいかないのだ。
だから僕は四十五という数値を速度へ、五秒間を時間としてプラスする。
アギアから二つの剣が振り下ろされるも、僕の速度は相手を凌駕しているのだ。
攻撃をヒラリと躱し、横からドーンと突き飛ばす。
「てえええい!」
アギアは馬車の上から転がり落ち、受け身も取れずに地面に落ちた。
しかしそれでも立ち上がると、二つの剣の構えを解く。
「クルルルルルルル!」
最後はよく分からない声を発して、森の中へ消えて行った。
兎に角、これで情報は集まった。
忘れない内に軽く資料を作るとしよう。
名前 :絶望のアギア・ナンバー9
レベル:28
HP :300以上?
MP :40
力 :100
速 :115
大 :165
危険度:6
技 :鋭い斬撃。
暗闇と同化し、影に入り込む。
備考 :フードを被った様な人型で雌の魔物。
腕は青暗くボコボコしていて、両手の先が剣となっている。
魔法で気配発見出来ず。
木々を駆け上ったりと逃げ足が速い。
主に旅人が襲われ、弱い人間を積極的に狙う。
被害多数。
ウィーアー・グリーアーと叫ぶと、速度数値が五十アップ。
出現地帯はローザリアの南の森の街道。
性格は臆病で、自分の優位な時間に出現する。
番いとなって繁殖すると厄介なので、早めに討伐を。
手早く資料を書き終えた僕は、もうここから帰ろうと思ったのだけど、辺りは随分暗くなっている。
「ふぃ、終わったぁ。今日は南にある町に向かってみましょうか。今から森の道を抜けるのは大変そうだし」
「まっ、そうね。じゃあそうしましょうか」
ファラさんは同意してくれたけど。
「そうだわ。クーちゃんはお姉さんと一緒の部屋に泊まりましょう」
アーリアさんはそんなことを言って来る。
しかしそんな言葉を聞いても、僕の心は動かない。
「僕は一人でいいので、お二人でどうぞ。お姉さんはファラさんと遊んでいてください」
「私に変な物を押し付けるんじゃないわよ! ナンバーズ相手したからボーナス確定だし、自分のお金で一部屋取るわ! あんたも一人で寝てなさい!」
ファラさんはアーリアさんにビシっと指を突きつけていた。
アーリアお姉さんを仲間に誘った僕は、何故か恋人にさせられようとしていた。
お姉さんは美人ではあるが、色々と問題がある為軽く断るのだけど、仕事にはのってくれなそうだ。
僕はデッドロックを生贄にしてお姉さんを仕事に誘うことに成功し、町の南にある森に進みだす。
逆側の出口近くで馬車が倒れているのを発見してそこで魔物が出るのを待っている。
★
クー・ライズ・ライト (僕)
ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
アリーア・クロフォード・ストラバス(ギルドで寝ている人)
★
「ギュッギョ、ギャギャッギャ!」
影から出現した魔物こそ絶望のアギアと呼ばれる奴なのだろう。
僕はお姉さんが攻撃を防いでいる間に退避し、リュックから白いボードを取り出し撮影する。
「映し鏡よ、彼の姿を写したまえ」
僕は慌てず何時も通りにボードを確認し、相手の姿を見定める。
資料に書かれた通り、フードを被ったような頭をしていた。
その真っ黒のフードの中には、白い二つの光が輝いている。
全体を見れば人型のようではあるが、一目で人ではないと分かるぐらいな姿をしていた。
少しだけ胸が膨らんで見えるし、雌なのだろうか?
見えている腕は、青暗いような皮膚がボコボコと波打っている。
例えれば爬虫類の背骨の形というのだろうか?
まあそんな形だと思う。
魔物の両腕の先は剣となっており、それがアイツの武器なのだろう。
闇に潜む能力もそのままである。
出来る限り色々調べたい所だけれど、まずは。
「アーリアさん、キューブを使ってください!」
僕はアーリアさんに意外と軽い木製のキューブを放り投げと、相手の攻撃を防御しながら、背後を振り向かずに片手でキューブを受け取ってくれた。
「じゃあお姉さんが使わせてもらうわね」
「ギャララララ!」
しかしほんの一瞬のその隙を、アギアが狙って攻撃を放った。
「おっと!」
アーリアさんはキューブを掴んだ手を相手の剣に合わせ、攻撃をガッチリと防御している。
しかしキューブは相手の攻撃で半分も斬り裂かれてしまった。
相手の力はナンバーが上がって随分強化されている気がする。
「チッ、思ったより速いわね。中々当たらないわ」
ファラさんも攻撃を当てるのに苦戦している。
どうも速度にしても増えている気がする。
僕の目には相手の動きが少しずつ見えずらくなっている。
速さは一定値で止まっているようにみえるけど、景色と同化が進んでいると言った風だろう。
アギアが影の中に入り飛び出しまたは入り、二人を攪乱しながら攻撃をしている。
闇に入る能力を持つ魔物にとって、夜の時間が本番なのだ。
アーリアさんはアギアの攻撃を受け止めるが。
「クッ、動きが面倒だわね!」
ファラさんはやはり苦戦をしいられている。
「ギャギャギャギャギャギャギャギャギャ」
僕はこの戦いに入ることは出来ないが、二人を手助けすることはできる。
背中にしょったリュックから道具を取り出し、道の中央へランタンを灯す。
既に日が落ちたこの森に、大きく光が広がっている。
というか先にやっとけと言われそうだが、帰りたかったから仕方ないのだ。
僕の所為じゃなくて来なかった敵が悪いだけなのである。
「お二人共、これで見えますよね」
「もうちょっと早くやりなさいよ!」
ファラさんは怒ってるけど僕の所為ではないんです。
「お姉さんは怒ってないわよ。クーちゃんは大体こんなものだもの」
アーリアさんには僕の評価を考えて欲しい。
「だから僕の所為じゃないんです。あんなタイミングで来た敵に言ってください」
とりあえず僕は否定してみるのだけど。
「だからって何よ、サッサと他の事を進めなさい!」
「あ、はい」
敵と必死に戦っているファラさんに怒られてしまった。
僕は素直に言うことを聞き、測量士の魔法の準備をする。
相手の扱う力であれば、測量士が測れないことはない。
「……結界の内なる炎よ……じゃなくて、え~っとえ~っと?」
相手の力は何だろうか?
明度……じゃなくて、暗さ……でもないし?
深度、でもなさそうかな?
だったら彩度かなぁ?
「……結界の内なる彩度よ。数値となって強さを示せ。ナンバーズ・フィールド!」
測量士の魔法が発動し、魔物の色彩の数値が現れた。
だけど。
「二?!」
ボンと上から落ちて来たのは二という数字だ。
この二という数字では、僕の強化には繋がらない。
……そう言えば、黒に近いほど数値が低いんだった気がする。
だがもう一つの効果は、相手の姿を影から引きずり出した。
アギアの色彩が影の中に現れ、泳ぐように相手の姿が見て取れる。
「このぐらい見えていれば、私は攻撃を外さないわよ!」
ファラさんは影の中を泳ぐアギアに、持っている剣を振り下ろす。
強烈なダメージを与えてはいるようだけど、まだまだ相手は元気に動き続けている。
まあ流石にドラゴンのような硬さは持っていないようだ。
しかしアギアは形勢が不利とみると、二人から離れて僕の方へ向かって来ていた。
最初に僕を攻撃したし、子供というよりは一番弱そうな人物を狙うのかもしれない。
いや、そんなことを冷静に考えている場合じゃない。
影の中から跳び出て、僕に剣を振り上げている。
「ぎゃあああああああ!?」
「てええい!」
僕は悲鳴をあげて狼狽えるのだけど、アーリアさんが落ちていたキューブを拾い、アギアの背中へ投げ当てた。
相手がギャッと怯んでいる間に、僕はガサガサと四肢を使って二人の下へ逃げて行く。
というかもうそろそろ能力値は分かったのだけど、簡単には逃がしてはくれなさそうだ。
「逃げないというのなら、私達が退治するしかないんじゃない? ほら、掛かって来なさいよ」
普通にヤル気のファラさんは、指をクイクイして挑発している。
「お姉さんはどちらでもいいのだけど、頑張って倒しても賞金とか出ないのよね」
僕達はギルドから来たけど依頼を受けていないのだ。
倒したとしても、懸けられた賞金はもらえないのである。
「え~っと、どうしよう。僕がやれそうな事はなさそうなんですよね。二人の応援でもしてあげましょうか?」
「ウザいからやめて!」
「クーちゃんは馬車の上にでも座ってたらいいわよ」
「じゃあそうしときます」
役に立たない僕は、言われた通りに馬車の上に登り、二人の戦いを見物する。
隠れる力がなくなった魔物では、ファラさんとアーリアさんの相手にはなっていない。
二つの剣はアーリアさんに受け止められ、ファラさんにより剣の攻撃が当てられる。
「ギャウ!」
ダメージを受け続けた魔物は、少し怯んでいる。
逃げ足が速いと書かれていたし、もうそろそろ逃げ出すかもしれない。
「止めを刺してやるわ!」
ファラさんが迫って行くが、相手の動きの方が速い。
魔物は攻撃の手を止めて、二人から距離をとった。
ファラさんも一人だけで突っ込むようなマネはせず、少しの間睨み合いが続く。
「……ウギギギギ!」
変な鳴き声をするアギアは、二つの剣を空に向けて妙な踊りを舞い始めた。
大地を何度も踏みしめて、その場でグルグルと回っている。
何かを狙っているのだろうか?
そういえば、MPの値に数字が入っていた。
何かしらの攻撃をするのかも知れない。
属性さえ分かれば対処もできるのだが、資料に書かれた情報はない。
「ウィーアー・グリーアー!」
アギアのよく分からない言葉は呪文なのだろうか。
ボゥと一瞬風が吹く。
しかしそれは僕の髪をなびかせる程度のもので、それだけで効果は無くなったように見える。
だが、それで終わるはずがない。
武器に変化はないし、これはたぶん身体強化だ。
力か、速度か、たぶん二者択一。
僕は相手が動く前に、一つの魔法を選択した。
「……結界の内なる速度よ。数値となって強さを示せ。ナンバーズ・フィールド!」
その瞬間、二という数字が消え去り、五十という数字が上から降って来た。
賭けには勝てたらしいけど、魔法を使っている間に二人の隙間を抜け、僕に向かって来ている。
既に効果は消失しているのだが、加速した動きは勢いを失わない。
「クー!」
「クーちゃん!」
心配する声が聞こえて来る。
二人の為にも、ここで倒される訳にはいかないのだ。
だから僕は四十五という数値を速度へ、五秒間を時間としてプラスする。
アギアから二つの剣が振り下ろされるも、僕の速度は相手を凌駕しているのだ。
攻撃をヒラリと躱し、横からドーンと突き飛ばす。
「てえええい!」
アギアは馬車の上から転がり落ち、受け身も取れずに地面に落ちた。
しかしそれでも立ち上がると、二つの剣の構えを解く。
「クルルルルルルル!」
最後はよく分からない声を発して、森の中へ消えて行った。
兎に角、これで情報は集まった。
忘れない内に軽く資料を作るとしよう。
名前 :絶望のアギア・ナンバー9
レベル:28
HP :300以上?
MP :40
力 :100
速 :115
大 :165
危険度:6
技 :鋭い斬撃。
暗闇と同化し、影に入り込む。
備考 :フードを被った様な人型で雌の魔物。
腕は青暗くボコボコしていて、両手の先が剣となっている。
魔法で気配発見出来ず。
木々を駆け上ったりと逃げ足が速い。
主に旅人が襲われ、弱い人間を積極的に狙う。
被害多数。
ウィーアー・グリーアーと叫ぶと、速度数値が五十アップ。
出現地帯はローザリアの南の森の街道。
性格は臆病で、自分の優位な時間に出現する。
番いとなって繁殖すると厄介なので、早めに討伐を。
手早く資料を書き終えた僕は、もうここから帰ろうと思ったのだけど、辺りは随分暗くなっている。
「ふぃ、終わったぁ。今日は南にある町に向かってみましょうか。今から森の道を抜けるのは大変そうだし」
「まっ、そうね。じゃあそうしましょうか」
ファラさんは同意してくれたけど。
「そうだわ。クーちゃんはお姉さんと一緒の部屋に泊まりましょう」
アーリアさんはそんなことを言って来る。
しかしそんな言葉を聞いても、僕の心は動かない。
「僕は一人でいいので、お二人でどうぞ。お姉さんはファラさんと遊んでいてください」
「私に変な物を押し付けるんじゃないわよ! ナンバーズ相手したからボーナス確定だし、自分のお金で一部屋取るわ! あんたも一人で寝てなさい!」
ファラさんはアーリアさんにビシっと指を突きつけていた。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる