翠の桜

れぐまき

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八分咲き

5.5

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やってしまった…


ふるふると怒りで肩を震わせる妻を見て顔がひきつる

怒り出した彼女は私の手には負えない
その事実は今まで従兄弟としてともにいた時期に立証済みだ

こうなった彼女をなだめられるのは彼女の敬愛する姉君か幼いころから世話をしていた乳母だけ

どちらもこの場にいない今、彼女の怒りが解けるまでひたすらに心を抉られるような辛辣な言葉の攻撃に耐えるしかないのだ


「業平殿」


現実から目をそむけ、遠い目をする私に声がかかる
きっと強い目が私を射抜いた

ん?なんだか様子が…

いつもの、ただ怒っているという訳でもなさそうな、ただならぬ雰囲気にすっと背筋が伸びた


彼女は薄く唇を開き、また閉じるという行為を何度か繰り返した後
意を決したように言葉を紡いだ



「私は、貴方のことをお慕いしております
従兄弟としてではなく、一人の殿方として」



紡がれた言葉の意味が瞬時には理解できなかった
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