翠の桜

れぐまき

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開花

6.5

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草木も寝静まる時間


私の隣で小さな寝息を立てて眠るのは、幼い時から恋焦がれてきた年上の従姉妹
子供の頃にした結婚の約束だけを頼りに今まで彼女の事を一途に思い続け、先日何とか彼女の父や兄を説き伏せて手に入れた愛しい姫君
彼女も昔の私との約束を思い出し、やっと実を結ぶかに見えた初恋は、彼女の“心の準備が…”という一言でお預けとなった

まぁ、それは良い
十年近く我慢していたのだから今更少しくらい増えたところで特に問題はない

本当の問題は彼女が今、こんなにも無防備に眠っているという事
私は男と思われていないのだろうか?
いや、来た時には顔を真っ赤にしていたしそんな事はないと思うが…
・・・だいたい、あんなに一緒に眠るのを渋っていたくせに、こんなに簡単に寝るのはどういうことなんだ

思考を巡らせ、思わず溜息をつく

「・・・んっ」

「?」

うめき声をあげた彼女に視線をやると眉をひそめている
そのまま眺めているとゆっくりと彼女の瞼が持ち上がっていった

「・・・」
「・・・」

とろんとした瞳と目が合い、しばし見つめ合う

「・・・なり、ひらどの?」
「・・・はい」

返事を返すと彼女はふにゃりと微笑んだ

「ふふ、なりひらどの・・・」
「!?」

名前を呼ばれ、抱きつかれて心臓が跳ねる
何度か息を吸って吐いてを繰り返してそっと彼女の顔を窺った

「・・・寝てる」

すやすやと笑みを浮かべて眠る姫にから笑いが漏れる

「まったく…貴女という人は・・・」

どこまで私の心を乱せば気が済むのでしょうね・・・
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