翠の桜

れぐまき

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発芽

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いつもと変わらないある日の昼下がり、お父様とお兄様が二人で私のところにやってきた
どうやら私の縁談の話らしい

まぁ、私もいい年だし当たり前と言えば当たり前。寧ろ遅いくらい
今までも何度かあったので内容についてはあまり驚かない

だが一つ困りごとがある
お兄様が薦めてくる相手はどうやらお父様の納得のいく相手ではないらしいのだ
お兄様が薦めているのはお兄様の友人であり、以前から彼の取り成しで季節の挨拶に少し恋情染みたものが仄めかされた文を送ってくださっている兵衛佐
確かに今はそれ程身分の高い方ではないけれど、血筋のいい方なので出世は約束されているといっていい
私としては特に不満は無いがお父様は違うようだ

私は一応、宮家の血を引いている上、どうやら世間では美人で琴や琵琶の名手と言われているそうだ
お父様はその評判を知っている為、それを生かしてもっと身分の高い相手に嫁いで欲しいのだろう
現に今上帝からもそれとなく声が掛かっているらしいと女房が何処かから聞きつけてきた

もっとも、お姉さまが女御として入内しているから私が入内するのは倫理的にどうかと思うのでそれは私もごめんなのだけど・・・

一方、お兄様は何のつもりか知らないが友人に嫁ぐようにひたすら薦めてくる
何か彼に仮でもあるのだろうか?

兎に角、お父様の手前お兄様の言うようにするわけにもいかず、かと言って断るわけにもいかず
私はただどちらともつかない答えを繰り返すだけなのである

まぁ、私の結婚なんて最終的にはお父様の一存で決められるのだから私の意志など関係ない
どうせなら満足いくまで二人で話し合ってから私のところに来て欲しいものだ

そうすればこんな退屈な時間を過ごさずにすむのに・・・


そんな事を考えながら目の前で口論を繰り広げる父と兄から扇で顔を隠し、欠伸を噛み殺した
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