3 / 43
発芽
2
しおりを挟む
いつもと変わらないある日の昼下がり、お父様とお兄様が二人で私のところにやってきた
どうやら私の縁談の話らしい
まぁ、私もいい年だし当たり前と言えば当たり前。寧ろ遅いくらい
今までも何度かあったので内容についてはあまり驚かない
だが一つ困りごとがある
お兄様が薦めてくる相手はどうやらお父様の納得のいく相手ではないらしいのだ
お兄様が薦めているのはお兄様の友人であり、以前から彼の取り成しで季節の挨拶に少し恋情染みたものが仄めかされた文を送ってくださっている兵衛佐
確かに今はそれ程身分の高い方ではないけれど、血筋のいい方なので出世は約束されているといっていい
私としては特に不満は無いがお父様は違うようだ
私は一応、宮家の血を引いている上、どうやら世間では美人で琴や琵琶の名手と言われているそうだ
お父様はその評判を知っている為、それを生かしてもっと身分の高い相手に嫁いで欲しいのだろう
現に今上帝からもそれとなく声が掛かっているらしいと女房が何処かから聞きつけてきた
もっとも、お姉さまが女御として入内しているから私が入内するのは倫理的にどうかと思うのでそれは私もごめんなのだけど・・・
一方、お兄様は何のつもりか知らないが友人に嫁ぐようにひたすら薦めてくる
何か彼に仮でもあるのだろうか?
兎に角、お父様の手前お兄様の言うようにするわけにもいかず、かと言って断るわけにもいかず
私はただどちらともつかない答えを繰り返すだけなのである
まぁ、私の結婚なんて最終的にはお父様の一存で決められるのだから私の意志など関係ない
どうせなら満足いくまで二人で話し合ってから私のところに来て欲しいものだ
そうすればこんな退屈な時間を過ごさずにすむのに・・・
そんな事を考えながら目の前で口論を繰り広げる父と兄から扇で顔を隠し、欠伸を噛み殺した
どうやら私の縁談の話らしい
まぁ、私もいい年だし当たり前と言えば当たり前。寧ろ遅いくらい
今までも何度かあったので内容についてはあまり驚かない
だが一つ困りごとがある
お兄様が薦めてくる相手はどうやらお父様の納得のいく相手ではないらしいのだ
お兄様が薦めているのはお兄様の友人であり、以前から彼の取り成しで季節の挨拶に少し恋情染みたものが仄めかされた文を送ってくださっている兵衛佐
確かに今はそれ程身分の高い方ではないけれど、血筋のいい方なので出世は約束されているといっていい
私としては特に不満は無いがお父様は違うようだ
私は一応、宮家の血を引いている上、どうやら世間では美人で琴や琵琶の名手と言われているそうだ
お父様はその評判を知っている為、それを生かしてもっと身分の高い相手に嫁いで欲しいのだろう
現に今上帝からもそれとなく声が掛かっているらしいと女房が何処かから聞きつけてきた
もっとも、お姉さまが女御として入内しているから私が入内するのは倫理的にどうかと思うのでそれは私もごめんなのだけど・・・
一方、お兄様は何のつもりか知らないが友人に嫁ぐようにひたすら薦めてくる
何か彼に仮でもあるのだろうか?
兎に角、お父様の手前お兄様の言うようにするわけにもいかず、かと言って断るわけにもいかず
私はただどちらともつかない答えを繰り返すだけなのである
まぁ、私の結婚なんて最終的にはお父様の一存で決められるのだから私の意志など関係ない
どうせなら満足いくまで二人で話し合ってから私のところに来て欲しいものだ
そうすればこんな退屈な時間を過ごさずにすむのに・・・
そんな事を考えながら目の前で口論を繰り広げる父と兄から扇で顔を隠し、欠伸を噛み殺した
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

婚約者に選んでしまってごめんなさい。おかげさまで百年の恋も冷めましたので、お別れしましょう。
ふまさ
恋愛
「いや、それはいいのです。貴族の結婚に、愛など必要ないですから。問題は、僕が、エリカに対してなんの魅力も感じられないことなんです」
はじめて語られる婚約者の本音に、エリカの中にあるなにかが、音をたてて崩れていく。
「……僕は、エリカとの将来のために、正直に、自分の気持ちを晒しただけです……僕だって、エリカのことを愛したい。その気持ちはあるんです。でも、エリカは僕に甘えてばかりで……女性としての魅力が、なにもなくて」
──ああ。そんな風に思われていたのか。
エリカは胸中で、そっと呟いた。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる