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前編
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『リーナ、君はぼくとけっこんするんだ。いいな?』
『クロウと?うん、わかったー!』
そんな言葉を交わしたのは、十年以上前だったはず。
下級貴族の産まれである私と、この国の未来の国王であるクロウ。
まだ主従関係どころか男女の違いすらも意識することなく、ただの遊び相手として共に遊びまわっていたころに交わした、ままごとの延長のような約束だった。
『リーナ…僕は君を愛している
…しかし僕は国を、民達を一番に考えなければならないんだ…』
だからすまない、と遠まわしに結婚を断られたのはあの約束から数年後のこと。
今思えば彼はこの頃、まだ十歳そこそこで己の立場を理解し、大人になろうとしていたのだろう。
対する私の思考はまだまだ子供で、彼の言葉の意味がいまいち理解できなかった。
なんであやまるの?
何か悲しいことがあるの……?
私は困惑しながらも、涙を耐えながら“すまない”と“愛してる”を繰り返す彼の頭や肩をなでて慰めた。
『クロウ、大丈夫だよ?結婚できなくても、私…』
あのとき、私は彼を慰めようと何と言っただろうか?
もう何を言ったのかは覚えていないが、幼いながらに彼の涙を止めようと必死で言葉を探した記憶はある。
それからさらに数年が経ち、私も彼も成人を迎えた。
二人ともそろそろ婚約や、結婚をしてもおかしくない年齢。
しかし彼は恋というものに興味がないかのように振る舞い、次期国王として仕事に没頭している。結婚どころか恋人の影も形も見えない。
まぁ…下級貴族かつ一介のメイドである私が知らないだけで、どこぞの有力貴族のご令嬢や他国のお姫様なんかとの婚約話は上がっているのかもしれないけれど…
私、アンジェリーナは下級貴族の産まれではあるが、母が王妃様に昔から…それこそ少女時代から付いている侍女であった事、そして歳が近かったこともあって、幼い頃は大人の目を盗んではクロウと二人で遊んでいた。
仲の良かった幼馴染。
気兼ねなく話すどころか相手の近況を詳しく知ることすら出来ない距離感に寂しさを感じた時期もある。
だが私も大人になり、身分差も理解した。
今はこれが正しい距離感だということもわかっている。
結婚なんて以ての外だ。
そもそも、クロウに抱いていた気持ちは友情であって恋や愛ではなかったし、今もそんな想いは持ち合わせていない。
だって今、私には……
「リーナ」
親しい相手にしか許していない愛称を優しい声で呼ばれ、笑顔で答える。
「フレッド!」
「ごめん、待たせた?」
「ううん、大丈夫。私こそごめんね?忙しかった?」
「いや、大丈夫だよ。それにいくら忙しくても愛しの君とのランチタイムは邪魔させないさ」
パチリとウインクつきでそう言われ、頬が熱くなるのを感じた。
初めて出来た恋人の甘い言葉と態度に、私はまだ慣れていない。
「…からかわないで頂戴」
ぷぅっと頬を膨らませて見せれば、私が惹かれた眩しい笑顔が帰ってくる。
「ははっ!ごめんごめん、君がかわいいからついね。それに本当のことだし」
「もうっ…!…ふざけてないで、早くランチにしましょ?今日はローストチキンとサーモンのサンドイッチにしたの」
「本当に?嬉しいな。どっちも好物なんだ」
バスケットを差し出すせばにこにこと嬉しそうに受け取ってくれた。
二人並んでベンチに腰かけ、サンドイッチを頬張る。
そのまま他愛ない会話をしながら昼休憩が終わる時間まで過ごすのがここ最近の日課だ。
「あと、他にもね……いや、もうそろそろ時間か」
時計を確認したフレッドが話を区切る。
私も頷いて水筒を片付けた。
「君との時間はあっという間だな…
今日、仕事後はあいてる?もう少し話したいな」
「あ、えっと、ごめんなさい…今日はお友達と約束があるの…」
せっかく誘ってくれたのに申し訳なくて眉を下げる。
しかし彼はそれなら仕方ないねと笑ってくれた。
「残念だけどまたにするよ。明日の昼にも会えるしね」
「ごめんね、お詫びに明日のランチはフレッドの好きなものを作ってくるわ。リクエストある?」
「ほんと?なら、デザートにこの間作ってくれたタルトが食べたいな」
「タルトね、わかったわ。ランチのリクエストはいいの?」
「うん。リーナの作ってくれるものはなんでも美味しいし、今日はなにかなって考えてると午前の仕事がはかどるからね」
そう言ってもらえると作り概がある。明日は少し凝ったものにしようか…
明日のランチに思考を傾けていると、フレッドが立ち上がる。
「さて、そろそろ行こうかな」
「そうね。午後からも頑張ってね」
「うん、ありがとう。リーナも頑張って」
そう言って微笑むと、彼はさっと左右を見回してから身を屈めた。
次いで頬に触れた温もりに、カァッと頬が熱を持つ。
「……!」
「……ふふ、かわいい。今日はこれくらいにしとくよ。また明日ね」
手を振りながら去っていく彼を見送り、私は赤らんだ頬に手を当てて俯いた。
恥ずかしい…
でも嬉しい…
色々な気持ちがせめぎあい、胸の奥がくすぐったい。
「……!いけない、私も急がなくちゃ…」
午後からの仕事に遅れてしまう。
緩む頬を軽く叩いて引き締め、バスケットを抱えてその場を後にした。
だから私は気がつかなかったんだ。
中庭に面した城の一室の窓から、この場所がよく見えることも。
そこが、クロウが一人になりたい時の休憩室として使われていることも。
その窓から、毎日クロウが私たちの様子を見ていることも……
………
「アンジェリーナ、貴女何したの?」
ある日、いつも通り業務をこなしていると慌てたようにやってきた同僚にこんな言葉をかけられた。
「…え、私?何もしてないと思うけど…何かあったの?」
本当だ。
仕事を始めた頃は花瓶を割ったり、お使いの届け先を間違えたりといろいろやらかした自覚はあるが、最近は目立った失敗はしていない。
首を傾げて見せれば同僚はどこか興奮した様子で詰め寄ってきた。
「クラウン殿下が貴女を呼んでるらしいわ!」
「え、殿下が…?」
クラウン殿下。
この国の第一王子かつ王太子。
そして何を隠そう。クロウの愛称をもつ、私の幼馴染である。
だが、ここ数年は会話どころかまともに姿を見ることもなかった。
そんな相手に呼ばれていると言われても思い当たる事などない。
戸惑っている私に彼女は続ける。
「用件がわからなくてもとりあえず行かなくちゃ!侍従の方が呼びに来られているの。ここは私が変わるから行ってらっしゃい!」
そういう同僚にせっつかれ、私は自分を呼びに来たらしい侍従の待つ方にむかった。
『クロウと?うん、わかったー!』
そんな言葉を交わしたのは、十年以上前だったはず。
下級貴族の産まれである私と、この国の未来の国王であるクロウ。
まだ主従関係どころか男女の違いすらも意識することなく、ただの遊び相手として共に遊びまわっていたころに交わした、ままごとの延長のような約束だった。
『リーナ…僕は君を愛している
…しかし僕は国を、民達を一番に考えなければならないんだ…』
だからすまない、と遠まわしに結婚を断られたのはあの約束から数年後のこと。
今思えば彼はこの頃、まだ十歳そこそこで己の立場を理解し、大人になろうとしていたのだろう。
対する私の思考はまだまだ子供で、彼の言葉の意味がいまいち理解できなかった。
なんであやまるの?
何か悲しいことがあるの……?
私は困惑しながらも、涙を耐えながら“すまない”と“愛してる”を繰り返す彼の頭や肩をなでて慰めた。
『クロウ、大丈夫だよ?結婚できなくても、私…』
あのとき、私は彼を慰めようと何と言っただろうか?
もう何を言ったのかは覚えていないが、幼いながらに彼の涙を止めようと必死で言葉を探した記憶はある。
それからさらに数年が経ち、私も彼も成人を迎えた。
二人ともそろそろ婚約や、結婚をしてもおかしくない年齢。
しかし彼は恋というものに興味がないかのように振る舞い、次期国王として仕事に没頭している。結婚どころか恋人の影も形も見えない。
まぁ…下級貴族かつ一介のメイドである私が知らないだけで、どこぞの有力貴族のご令嬢や他国のお姫様なんかとの婚約話は上がっているのかもしれないけれど…
私、アンジェリーナは下級貴族の産まれではあるが、母が王妃様に昔から…それこそ少女時代から付いている侍女であった事、そして歳が近かったこともあって、幼い頃は大人の目を盗んではクロウと二人で遊んでいた。
仲の良かった幼馴染。
気兼ねなく話すどころか相手の近況を詳しく知ることすら出来ない距離感に寂しさを感じた時期もある。
だが私も大人になり、身分差も理解した。
今はこれが正しい距離感だということもわかっている。
結婚なんて以ての外だ。
そもそも、クロウに抱いていた気持ちは友情であって恋や愛ではなかったし、今もそんな想いは持ち合わせていない。
だって今、私には……
「リーナ」
親しい相手にしか許していない愛称を優しい声で呼ばれ、笑顔で答える。
「フレッド!」
「ごめん、待たせた?」
「ううん、大丈夫。私こそごめんね?忙しかった?」
「いや、大丈夫だよ。それにいくら忙しくても愛しの君とのランチタイムは邪魔させないさ」
パチリとウインクつきでそう言われ、頬が熱くなるのを感じた。
初めて出来た恋人の甘い言葉と態度に、私はまだ慣れていない。
「…からかわないで頂戴」
ぷぅっと頬を膨らませて見せれば、私が惹かれた眩しい笑顔が帰ってくる。
「ははっ!ごめんごめん、君がかわいいからついね。それに本当のことだし」
「もうっ…!…ふざけてないで、早くランチにしましょ?今日はローストチキンとサーモンのサンドイッチにしたの」
「本当に?嬉しいな。どっちも好物なんだ」
バスケットを差し出すせばにこにこと嬉しそうに受け取ってくれた。
二人並んでベンチに腰かけ、サンドイッチを頬張る。
そのまま他愛ない会話をしながら昼休憩が終わる時間まで過ごすのがここ最近の日課だ。
「あと、他にもね……いや、もうそろそろ時間か」
時計を確認したフレッドが話を区切る。
私も頷いて水筒を片付けた。
「君との時間はあっという間だな…
今日、仕事後はあいてる?もう少し話したいな」
「あ、えっと、ごめんなさい…今日はお友達と約束があるの…」
せっかく誘ってくれたのに申し訳なくて眉を下げる。
しかし彼はそれなら仕方ないねと笑ってくれた。
「残念だけどまたにするよ。明日の昼にも会えるしね」
「ごめんね、お詫びに明日のランチはフレッドの好きなものを作ってくるわ。リクエストある?」
「ほんと?なら、デザートにこの間作ってくれたタルトが食べたいな」
「タルトね、わかったわ。ランチのリクエストはいいの?」
「うん。リーナの作ってくれるものはなんでも美味しいし、今日はなにかなって考えてると午前の仕事がはかどるからね」
そう言ってもらえると作り概がある。明日は少し凝ったものにしようか…
明日のランチに思考を傾けていると、フレッドが立ち上がる。
「さて、そろそろ行こうかな」
「そうね。午後からも頑張ってね」
「うん、ありがとう。リーナも頑張って」
そう言って微笑むと、彼はさっと左右を見回してから身を屈めた。
次いで頬に触れた温もりに、カァッと頬が熱を持つ。
「……!」
「……ふふ、かわいい。今日はこれくらいにしとくよ。また明日ね」
手を振りながら去っていく彼を見送り、私は赤らんだ頬に手を当てて俯いた。
恥ずかしい…
でも嬉しい…
色々な気持ちがせめぎあい、胸の奥がくすぐったい。
「……!いけない、私も急がなくちゃ…」
午後からの仕事に遅れてしまう。
緩む頬を軽く叩いて引き締め、バスケットを抱えてその場を後にした。
だから私は気がつかなかったんだ。
中庭に面した城の一室の窓から、この場所がよく見えることも。
そこが、クロウが一人になりたい時の休憩室として使われていることも。
その窓から、毎日クロウが私たちの様子を見ていることも……
………
「アンジェリーナ、貴女何したの?」
ある日、いつも通り業務をこなしていると慌てたようにやってきた同僚にこんな言葉をかけられた。
「…え、私?何もしてないと思うけど…何かあったの?」
本当だ。
仕事を始めた頃は花瓶を割ったり、お使いの届け先を間違えたりといろいろやらかした自覚はあるが、最近は目立った失敗はしていない。
首を傾げて見せれば同僚はどこか興奮した様子で詰め寄ってきた。
「クラウン殿下が貴女を呼んでるらしいわ!」
「え、殿下が…?」
クラウン殿下。
この国の第一王子かつ王太子。
そして何を隠そう。クロウの愛称をもつ、私の幼馴染である。
だが、ここ数年は会話どころかまともに姿を見ることもなかった。
そんな相手に呼ばれていると言われても思い当たる事などない。
戸惑っている私に彼女は続ける。
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