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恋愛編

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「着いたぞ。ここだ」
「・・・!」

殿下に手を引かれ、やってきたのは様々な花が飾られた温室のような場所だった
しかも、普通の花ではない
ここにある花は全て・・・

「氷・・・?」

信じられない思いで呟くと、殿下がいたずらっぽい笑みを浮かべて頷く

「正解。ここにある花は全て、この国が誇る魔術師たちの水魔法を駆使して作られているんだ
大きな花をモチーフにしたものは氷塊を削り出して、あっちにある小さな花をモチーフにしたものは、空気中の水分を凍らせた時にできる結晶をそのまま使っている」
「そうなのですか…」

説明をしてくださる殿下に導かれるまま、氷の薔薇が飾られている花壇に近づき、そっと身をかがめて花を観察する
一つ一つ丁寧に作られたことが一目でわかる繊細な優美さ
触れれば壊れてしまいそうな儚さが、美しさに拍車を掛けている

「・・・こんなに繊細なものを作ることが出来る方が、世の中にはいらっしゃるのですね」

今の私の魔法では、恐らくこんなに繊細なものを作ることは出来ないだろう

「あぁ
作るのも維持するのも並大抵の魔力コントロールでは出来ないだろう
こんなに沢山の氷花を集めている場所は、世界中探してもここだけだろうな」

殿下の言葉にこくりと頷く
それはそうだろう
こんなに繊細なものを作ったり管理したり出来る人物がそんなに簡単に居てはたまったものではない

どれ程の鍛練をつめば、こんなに繊細な魔法が使えるようになるのかしら…

そんなことを考えながらじっと見つめていると、殿下がおもむろに近づいてきて手を伸ばし、花を一輪摘み取った

「…ん」
「え…?」

差し出された氷の花と殿下の顔を見比べて目を瞬く

「…ほら」

促すようにずいっと手元に出された花を、反射的に受けとる

「気に入ったんだろう?持って帰るといい
お前なら一輪くらいなら維持もできるだろう」
「え…?いえ、貴重なものをいただく訳には…」
「一輪くらい問題ない」
「ですが・・・」

躊躇っていると殿下は少し考えたあと、ふいっと目をそらして小さな声でぽつりと呟いた

「レオナルドが…」
「…?」
「…レオナルドが、お前に薔薇を送っていただろう」
「え…」

一瞬なんの事かと考えるが、すぐに答えは見つかった
アンバー王国の薔薇園でのことだ

「俺はお前にそんなことしてやったことがないと思ってな…
せっかく婚約したんだ。セシルを喜ばせるのは、あいつではなく俺でありたい」
「!」
「だから、これは手始めだ
受け取ってくれ」

彼は言うだけ言うとくるりと方向をかえ、お茶の準備がされているテーブルセットの方に向かっていってしまった
私は今までの殿下からは想像も出来ない言葉に衝撃を受け、その後ろ姿をぽかんと見つめていた


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