悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

恋愛編

93

長期休み中
予定のない昼下がり
何時もならば魔法の研究や読書に時間を費やすところだが、今日はぼんやりと庭を眺めて過ごしている

なんだか何もやる気が起きないのよね…

理由はわかっている
この間のレオナルド様の発言と、その後に見た夢のせいだ

夢を見て思い出したのだが、幼い頃の私は優しく、優秀な殿下のことが大好きだった
二人きりのお茶会に呼ばれれば年相応に嬉しくてはしゃぎもきたし、綺麗な笑顔で微笑まれれば頬が熱を持った
時折開かれる皇后様主催のガーデンパーティーで、殿下が他のご令嬢に囲まれているのを見れば、もやもやした感情に教われることもあったのだ

当時の私は気がついていなかったが、あれはおそらく私の初恋だったのだろう

なんで忘れてたのかしら…
あんなに恋慕っていたのに…

何か恋心や記憶を封印するようなきっかけがあっただろうか？
ぼんやりと自分の感情を遡る

例の殿下に注意された日？
……いや、違う
当時の私は確かに少し寂しく思っていたけれど、注意してくださったことに、さすが皇太子殿下という感情の方が強かったように思う

ならば、しばらくお会いしていないうちに風化してしまったのだろうか？
……いや、それで風化する思いなら殿下が学校に入学して頻繁に会わなくなった時点ですでにそうなっていたはずだ

ならいつ…？

じっと考えて、はっとした

もしかして、ゲームの記憶が戻った時ではないだろうか？

「……あぁ、そうだわ…」

自分ではゲームの記憶を取り戻しただけだと思っていたが、そうではなかったのだ

きっと無意識のうちに防衛本能が働いて殿下への感情を封印したのだろう
だからこそゲーム本編の期間中、私は殿下の事を特別に思うことも、ヒロインに嫉妬することもなく、ただただ正しい行動だけをとることができたのだ

それがゲーム期間を終え、殿下とまた密に関わるようになってきたことで、封印していた気持ちが再び戻ってきたのではないだろうか

「あり得るわね…」

自分の考えに自分で納得し、深く頷く
そうならばレオナルド様の発言も当たっているということになる
彼の言うとおり、私は気持ちを自覚しないままローズマリー様に嫉妬していたのだ
と、言うことは……

「……私は、今も殿下のことをお慕いしている……………？」

口に出して首をかしげた
いまいちしっくり来ない気がする
だが、それ以外の仮説も見つからない

「最近わからないことだらけね……」

ため息をついてぐっと延びをする

考えてもわからない時はわからない
その手の事は大体、考えるのを止めたときに答えが見つかったりするものだ

私はとりあえず思考することを放棄した