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恋愛編

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アンバー王国の王族たちとの顔合わせを兼ねた晩餐を終え、部屋に戻ってきた私はヒラヒラしたドレスを脱いで普段通りの格好にもどるとぐったりとソファーに座り込んだ
疲れのせいで痛む頭に手を当て目を閉じる
なぜ私がこれほどに疲れているかというと、晩餐の時のこの国の王子たちの言動のせいだ

疲れたわ…
ものすごく…

目頭を押さえて揉みほぐしながら先ほどの彼らとの会話を思い出した


『セシリア嬢は本当にお美しい。先程入室してこられた際、つい見とれてしまいました
(一目惚れ、とはこのことを言うのですかね?)』
『美しいだけではなく学校成績も優秀だとか
最年少で各学年の課題をすべてクリアされたと聞いております
(貴女の事が気になりすぎて、調べずにはいられなかったのです)』
『僕や兄上にもそんな素晴らしい婚約者が欲しいものです
(貴女自身が婚約者になってくださればこれ以上の喜びはないのですが)』  


…ちなみに()の中は他の人たちには聞こえないよう、耳元でそっとささやかれた言葉だ
他にも、全て挙げているとキリがないくらいにはいろいろ際どい事を言われた

そして、言葉だけではない
顔を覗き込んできたり、向かいの殿下に見えないように机の下で腰に触れようとしたり、手を握ろうとしてきたりなど…行動も何度かあった
まぁ、全てさりげなく避けはしたが・・・
ついでに言うと、ローズマリー様は殿下と話しているとき以外はずっと私を睨んでおられた

「はぁ・・・」

思わず大きなため息が漏れる

他国の皇太子の婚約者に向かってあの言動・・・
この国の王族の方々は何を考えていらっしゃるのかしら?

これに比べれば今までのレオナルド様の方がまだまっしである

彼の胡散臭さの裏にはいつも興味と好奇心、からかいが見え隠れしていた
友人の婚約者はどの程度の人物なのか、友人との仲はどうなのか
わざと挑発するような発言をすれば友人はどんな反応をするのか…
国家間のバランスを崩すことは絶対にない程度の絶妙な加減で、一つ一つ確認しているようだった

そこには王族として他国の要人を見定めようとする強かさと、友人を思い楽しむ純粋さが透けていて、警戒はしてもどこか憎めない愛嬌のようなものがあった
だが他の王子達と姫君にはそのどちらも存在しない
あれではまるで…

……そう、国のことなどなにも考えていないようだわ…

王族の大半がそんな感じで、この国は将来大丈夫なのだろうか?
他国の事ながら心配になる

再びため息をつくと見かねたのかマーサが心配そうに声を掛けてきた

「お疲れのようですね・・・
何かリラックス出来るようなお飲み物でもお持ちしましょうか?」
「・・・そうね、お願いするわ」

少々お待ちくださいと部屋を退室したマーサを見送り、またため息

この国でこの人たちと今日から過ごすのか…
先が思いやられる…
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