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恋愛編

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「こちらも、もしお嫌でなければ召し上がっていただけると嬉しいです」

そう言ってそっと視線を上げて殿下の反応を伺う
何かしらリアクションがあることを期待していたのだが、予想に反して彼はノーリアクションのまま包みを見つめていた

…?どうしたのかしら
私、何かした…?

包みを凝視したまま動かなくなってしまった殿下に首をかしげる
しばらく様子を見ていると、殿下が呟くように言葉を発した

「セシルが、作ったのか…?」
「はい、そうです」
「手作り…か…」
「はい」

返答すると、そうかと呟いてまた黙ってしまった

本当にどうしたのかしら?
手作りに引っ掛かっておられるようだけど、手作りだと何かあるの…?
…あ、もしかしたら…

「あぁ…申し訳ございません
やはり殿下に素人が作ったものをお渡しするなんて不躾でしたね」
「…?」
「殿下は、あまり他人が作ったものはお好みではないのですよね?
アリスさんの作ってこられたサンドイッチも、拒否しておられましたもの…」
「…は?」

プロや身内以外が作ったものを食べたくないという人は、一定数存在する
かく言う私も余程親しい相手でない限り、手作りのものは食べたくない人間だ

美味しいか美味しくないかと言う問題ではなく、他人が素手で触ったものを食べると言う行為が、どうも生理的に受け付けないのだ
ちなみに、料理人は何故かセーフ
千引は自分でもよくわからないが、そう言うものなのだから仕方がない

「申し訳ございませんでした
これを持ってきた事は忘れていただけると幸いです」

謝罪し、包みを引っ込めようと手を伸ばす
しかし、私の手が包みに届く前に殿下がそれを制した

_____________________________________________


「ま、待て!
何か勘違いしていないか?」

慌ててセシリアが伸ばした手を止めるように手首を掴む
彼女はその行動に驚いたように目を開いて俺を見つめた

「あ…悪い」

その顔を見て少し冷静になり、思わず掴んでしまった手を解放して言葉を続ける

「誤解してるようだが、俺は手作りが嫌な訳じゃない」

そう言うとセシリアが首をかしげる

「そうなのですか?
アリスさんのお弁当の時はあまり喜んではおられなかったようですのでてっきり…
食べることも拒否しておられましたし…」
「…あの令嬢の言動を考えてみろ
手作りに特に抵抗はないが、さすがにあれが作ったものを食べようとは思えないだろう」

当時を思いだして苦々しい表情で答えると、彼女は納得したようにそうですかと呟いた

誤解が解けたことに安堵した俺はセシリアから視線をずらし、思いきって自分の思いを口にする

「…例え、俺が手作りに抵抗がある人間だったとしても、セシルが作った物なら食べたいと思うし、嬉しいと思うさ」
「…え?」

目を丸くしきょとんとした顔で小さく疑問の声をあげるセシリア
顔に熱が集まるのを感じた俺は、それを無視して誤魔化すように次の言葉を発した

「これ、開けてもいいか?」
「あ、はい、どうぞ…?」

了承を得て包装をとく
箱を開けると四角くカットされ、綺麗に並べられたチョコレートとかわいらしい見た目のクッキーが入っていた

「美味そうだな。せっかくだ
今食べても構わないか?」
「…はい」
「では一緒に食べようか」

そう言って後ろに控えていた給仕係に目配せをすると、すぐに彼女の手作りの菓子が先程の茶菓子と一緒にテーブルに並べられた

「さぁ、お茶にしよう」

少し強引に茶をすすめる
セシリアはキョトンとしたような表情をしていたが、勧められるままティーカップを手に取った
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