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恋愛編
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カフェを出て寮までの道を歩きながらそっとセシリア様を盗みる
幼少期を本物の兄弟よりも遥かに親しく育った、大切な年上の幼馴染み
当時から人形のように整った容姿を持ち、優秀だった彼女は常に周囲の人間の視線を集めており、仲良くなろう、利用しようと近づいてくる者たちも多かった
だが、当時から大人びていた彼女は、そのよこしまな思考をよんだのか自分以外と打ち解けることはほぼなく、俺は自分だけが彼女にとって特別なのだと優越感に浸っていた
彼女が本物の表情を見せるのは俺だけで、彼女はけして俺以外のものにはならないのだと
ゆくゆくは自分が彼女と結婚するのだと、信じて疑っていなかった
しかし、それは彼女が皇太子の婚約者候補に選出されたことで終わりを迎える
知った時の絶望と無力感…
あれに勝るものはなかなかないだろうな…
自重するように笑みを浮かべ、当時を思い出す
彼女の父親である公爵に呼び出され、もう二人きりりにならないようにと注意を受けた
名目上は候補となっているが、事実上の内定だと聞かされた
本当は逆らいたかった
彼女は自分と結婚するのだと駄々をこねたかった
だが、身分的に勝ち目がないこともわかっていた
だから自分は決めたのだ
彼女への思いは決して打ち明けず、悟らせず、ただ彼女が健やかでいられるように
いずれ皇后となり、国母となる彼女の側に騎士としていることを選んだ
「ここまででいいわ
今日は楽しかった、ありがとう」
柔らかな笑顔で発された言葉
「こちらこそ、お誘いいただきありがとうございました」
礼をしてそう告げるとセシリア様はまたね、と言って女子寮へ向かっていった
この恋心が報われる日は来ない
だが、自分は彼女に笑顔を向けてもらえる
彼女の笑顔を守ることができる
それだけで十分だ
愛しい後ろ姿が女子寮の門の中に消えたのを見届け、自分も寮に戻るため歩を進めた
幼少期を本物の兄弟よりも遥かに親しく育った、大切な年上の幼馴染み
当時から人形のように整った容姿を持ち、優秀だった彼女は常に周囲の人間の視線を集めており、仲良くなろう、利用しようと近づいてくる者たちも多かった
だが、当時から大人びていた彼女は、そのよこしまな思考をよんだのか自分以外と打ち解けることはほぼなく、俺は自分だけが彼女にとって特別なのだと優越感に浸っていた
彼女が本物の表情を見せるのは俺だけで、彼女はけして俺以外のものにはならないのだと
ゆくゆくは自分が彼女と結婚するのだと、信じて疑っていなかった
しかし、それは彼女が皇太子の婚約者候補に選出されたことで終わりを迎える
知った時の絶望と無力感…
あれに勝るものはなかなかないだろうな…
自重するように笑みを浮かべ、当時を思い出す
彼女の父親である公爵に呼び出され、もう二人きりりにならないようにと注意を受けた
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本当は逆らいたかった
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だから自分は決めたのだ
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「ここまででいいわ
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柔らかな笑顔で発された言葉
「こちらこそ、お誘いいただきありがとうございました」
礼をしてそう告げるとセシリア様はまたね、と言って女子寮へ向かっていった
この恋心が報われる日は来ない
だが、自分は彼女に笑顔を向けてもらえる
彼女の笑顔を守ることができる
それだけで十分だ
愛しい後ろ姿が女子寮の門の中に消えたのを見届け、自分も寮に戻るため歩を進めた
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