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本編

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「さて、今日は何にしようかしら?」

寮の自室に戻って体を清め、一人言をいいながら戸棚を開ける
そこに並ぶのは何種類もの茶葉

気分に合わせたお茶を飲みながらその日の出来事を振り返るのが私の日課なのだ

ちなみに貴族しかいないこの学校で、全員が使用人を連れてくるととんでもない数になるという理由から学校に使用人をつれてくることは基本的に禁止されている
そのため最低限の身の回りの事は全て自分でこなす
入浴も着替えも、お茶を入れるのも全て自分
掃除と洗濯だけは学校の下働きたちが済ませてくれて、食事は自炊か食堂だ
私は基本的に自炊している
料理を趣味とする貴族女性は少なくないが、お茶受けのお菓子や軽食が主で自炊ができる人はめずらしい
思えば、記憶はなくても体が前世の生活を覚えていたのかもしれない

ぼんやりとそんなことを考えながらお茶を準備し、テーブルにつく
香りを楽しんでから一口含むと、爽やかな風味が口いっぱいに広がった
目を閉じ、ほぅ…と息を吐き出す

今日はなかなか疲れる1日だったわ…

昼間に出会ったヒロインである少女を思い浮かべ、またため息

ゲームの出会いイベントとは少し違った気もするが、彼女はあの場に現れて殿下と接触した
と、言うことは、彼女はアルベルトルートに入ったのだろう
これで彼女に関わらないという道は閉ざされた
タイムリミットであるエンディングは殿下が卒業する一年半後

せめてそれまでに、ある程度の常識と言葉遣い、後は最低限度の礼儀作法だけでも叩き込まなくては…

エンディングで私との婚約を破棄した殿下は、本来ならお妃教育が行われる婚約期間をすっ飛ばし、すぐに彼女と結婚してしまう
つまり、殿下が卒業するまでにある程度の教育が出来ていないと、彼女はあのまま皇太子妃になってしまうのだ

そんなことになればラピス皇国の未来は真っ暗だわ・・・
ゲームの殿下は何を考えておられたのかしら?

あんな皇太子妃では他国との外交に出せないどころか、自国の茶会や夜会に出席させることすら難しい
もし出席すれば家臣であるはずの貴族達に侮られ、王家の威厳が失墜してしまう
そうすれば国が乱れる元となる

恋は盲目というけれど…立場上そういう訳にもいかないでしょうに・・・

リスト公爵家という、ラピス国の有力貴族として国が乱れるのは避けたい
そのためにも

「何としてでも彼女を淑女に育てなくては・・・」

決意を込めて口にする

あれを矯正できるの?無理じゃない?と嘆くもう一人の自分を無視し、やって出来ないことなんてないと自分に言い聞かせながら紅茶を飲み干した
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