11 / 125
本編
10(回想)
しおりを挟む
レオナルドから話を聞いた後
やるせない思いに襲われ、練習場に行く気になれなかったアルベルトは、気分がすぐれないと伝えて彼と別れて落ち着くために人気のない裏庭を歩いていた
しかし、その間も先程の話題について考えることをやめられない
セシリアが優秀なのはあの湖を凍らせた時から知っていたはずだ
そのはずなのに、もやもやした感情が次々と沸いてきて収まらない
俺が2年かけてもクリア出来なかったことを、たった数ヶ月でクリアしてしまったのか…
ぐっと唇を噛み締める
これが自分と近しい者でなければ、レオナルドと同じくすごい奴がいるものだと思うだけてすんだだろう
それどころか、自分の国の出身だと知れば、そんな優秀な人物が自国から出たことを誇りに思ったかもしれない
セシリアだからこれほどまでに感情が乱れてしまうのだ
自分を慕ってくれている、かわいい年下の少女
大事な幼馴染みで、婚約者候補のセシリアだからこそ
負けたくなかった
敗けを認めたくなかったのだ
敗北感、嫉妬心、虚無感、情けなさ…
様々な負の感情が渦巻き、アルベルトを襲う
そんな感情に飲み込まれそうになり抗おうと強く目をつぶった瞬間
「アル様?」
聞きなれた、しかし今一番聞きたくなかった声が自分の名を呼んだ
声の方をゆっくりと振り返る
そこには予想していた通り、年下の幼馴染みが立っていた
「セシル…」
名前を口にすると嬉しそうに微笑んで近寄ってくる
「やっとお会いできましたわ」
「あぁ…」
「同じ学校でも学年が違うとなかなかお会いできないものなのですね」
「まぁ、な…」
「頻繁に会えるようになると思っておりましたのに…少し寂しいです」
「…そうか」
無邪気に話しかけてくるセシリアに、アルベルトはそっけない言葉しか返せない
いつもと様子が違うのを不思議に思ったのか、セシリアが顔を覗き込んできた
「アル様?どうかされました?」
「…いや、なんでもない」
「ですが、いつもとご様子が…
それに顔色も悪いような気がします…」
「…大したことはない
日差しにあてられただけだ」
そう誤魔化すと心配そうに眉を寄せる
「今日は暑いですものね…倒れてしまっては大変ですわ
…少し失礼致します」
そう言うと、セシリアはおもむろにアルベルトの手をとった
何事かと思い手を引こうとするが、引き留めるようにきゅっと力を込められる
そして彼女は驚く彼を安心させるように微笑むと、そっと目を閉じた
次の瞬間アルベルトの体を冷気がめぐる
「!」
驚いて目を見開くアルベルト
「…どうでしょう?
少しは涼しくなりました?」
「…」
「アル様?まだご気分、優れませんか…?」
セシリアが心配して話しかけてくるがアルベルトは返事を返せなかった
今、なにを…?
もしかして、魔力を流したのか?
…いや、そんなはずない
魔力を他人に流すのは上級の応用だぞ…?
学生が出来ることじゃない…
「…何を、したんだ?」
何とかそれだけ口にすると、彼女は首をかしげて当然のように答えを口にした
「アル様の血流にのせて、ほんの少しだけ冷たい魔力を流させていただきました」
「本当は血液の温度を少しだけ下げるのが一番効くとは思うのですけれど、私はまだそれは取得していないのです
未熟者で申し訳ありません…」
その言葉はアルベルトのプライドは粉々に打ち砕かれた
やるせない思いに襲われ、練習場に行く気になれなかったアルベルトは、気分がすぐれないと伝えて彼と別れて落ち着くために人気のない裏庭を歩いていた
しかし、その間も先程の話題について考えることをやめられない
セシリアが優秀なのはあの湖を凍らせた時から知っていたはずだ
そのはずなのに、もやもやした感情が次々と沸いてきて収まらない
俺が2年かけてもクリア出来なかったことを、たった数ヶ月でクリアしてしまったのか…
ぐっと唇を噛み締める
これが自分と近しい者でなければ、レオナルドと同じくすごい奴がいるものだと思うだけてすんだだろう
それどころか、自分の国の出身だと知れば、そんな優秀な人物が自国から出たことを誇りに思ったかもしれない
セシリアだからこれほどまでに感情が乱れてしまうのだ
自分を慕ってくれている、かわいい年下の少女
大事な幼馴染みで、婚約者候補のセシリアだからこそ
負けたくなかった
敗けを認めたくなかったのだ
敗北感、嫉妬心、虚無感、情けなさ…
様々な負の感情が渦巻き、アルベルトを襲う
そんな感情に飲み込まれそうになり抗おうと強く目をつぶった瞬間
「アル様?」
聞きなれた、しかし今一番聞きたくなかった声が自分の名を呼んだ
声の方をゆっくりと振り返る
そこには予想していた通り、年下の幼馴染みが立っていた
「セシル…」
名前を口にすると嬉しそうに微笑んで近寄ってくる
「やっとお会いできましたわ」
「あぁ…」
「同じ学校でも学年が違うとなかなかお会いできないものなのですね」
「まぁ、な…」
「頻繁に会えるようになると思っておりましたのに…少し寂しいです」
「…そうか」
無邪気に話しかけてくるセシリアに、アルベルトはそっけない言葉しか返せない
いつもと様子が違うのを不思議に思ったのか、セシリアが顔を覗き込んできた
「アル様?どうかされました?」
「…いや、なんでもない」
「ですが、いつもとご様子が…
それに顔色も悪いような気がします…」
「…大したことはない
日差しにあてられただけだ」
そう誤魔化すと心配そうに眉を寄せる
「今日は暑いですものね…倒れてしまっては大変ですわ
…少し失礼致します」
そう言うと、セシリアはおもむろにアルベルトの手をとった
何事かと思い手を引こうとするが、引き留めるようにきゅっと力を込められる
そして彼女は驚く彼を安心させるように微笑むと、そっと目を閉じた
次の瞬間アルベルトの体を冷気がめぐる
「!」
驚いて目を見開くアルベルト
「…どうでしょう?
少しは涼しくなりました?」
「…」
「アル様?まだご気分、優れませんか…?」
セシリアが心配して話しかけてくるがアルベルトは返事を返せなかった
今、なにを…?
もしかして、魔力を流したのか?
…いや、そんなはずない
魔力を他人に流すのは上級の応用だぞ…?
学生が出来ることじゃない…
「…何を、したんだ?」
何とかそれだけ口にすると、彼女は首をかしげて当然のように答えを口にした
「アル様の血流にのせて、ほんの少しだけ冷たい魔力を流させていただきました」
「本当は血液の温度を少しだけ下げるのが一番効くとは思うのですけれど、私はまだそれは取得していないのです
未熟者で申し訳ありません…」
その言葉はアルベルトのプライドは粉々に打ち砕かれた
12
お気に入りに追加
560
あなたにおすすめの小説
それでも、私は幸せです~二番目にすらなれない妖精姫の結婚~
柵空いとま
恋愛
家族のために、婚約者である第二王子のために。政治的な理由で選ばれただけだと、ちゃんとわかっている。
大好きな人達に恥をかかせないために、侯爵令嬢シエラは幼い頃からひたすら努力した。六年間も苦手な妃教育、周りからの心無い言葉に耐えた結果、いよいよ来月、婚約者と結婚する……はずだった。そんな彼女を待ち受けたのは他の女性と仲睦まじく歩いている婚約者の姿と一方的な婚約解消。それだけではなく、シエラの新しい嫁ぎ先が既に決まったという事実も告げられた。その相手は、悪名高い隣国の英雄であるが――。
これは、どんなに頑張っても大好きな人の一番目どころか二番目にすらなれなかった少女が自分の「幸せ」の形を見つめ直す物語。
※他のサイトにも投稿しています
転生悪役令嬢は婚約破棄で逆ハーに?!
アイリス
恋愛
公爵令嬢ブリジットは、ある日突然王太子に婚約破棄を言い渡された。
その瞬間、ここが前世でプレイした乙女ゲームの世界で、自分が火あぶりになる運命の悪役令嬢だと気付く。
絶対火あぶりは回避します!
そのためには地味に田舎に引きこもって……って、どうして攻略対象が次々に求婚しに来るの?!
【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。
yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~)
パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。
この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。
しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。
もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。
「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。
「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」
そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。
竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。
後半、シリアス風味のハピエン。
3章からルート分岐します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。
https://waifulabs.com/
派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。
木山楽斗
恋愛
私は、恋愛シミュレーションゲーム『Magical stories』の悪役令嬢アルフィアに生まれ変わった。
彼女は、派手好きで高慢な公爵令嬢である。その性格故に、ゲームの主人公を虐めて、最終的には罪を暴かれ罰を受けるのが、彼女という人間だ。
当然のことながら、私はそんな悲惨な末路を迎えたくはない。
私は、ゲームの中でアルフィアが取った行動を取らなければ、そういう末路を迎えないのではないかと考えた。
だが、それを実行するには一つ問題がある。それは、私が『Magical stories』の一つのルートしかプレイしていないということだ。
そのため、アルフィアがどういう行動を取って、罰を受けることになるのか、完全に理解している訳ではなかった。プレイしていたルートはわかるが、それ以外はよくわからない。それが、私の今の状態だったのだ。
だが、ただ一つわかっていることはあった。それは、アルフィアの性格だ。
彼女は、派手好きで高慢な公爵令嬢である。それならば、彼女のような性格にならなければいいのではないだろうか。
そう考えた私は、地味に謙虚に生きていくことにした。そうすることで、悲惨な末路が避けられると思ったからだ。
悪役令嬢は王子の溺愛を終わらせない~ヒロイン遭遇で婚約破棄されたくないので、彼と国外に脱出します~
可児 うさこ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。第二王子の婚約者として溺愛されて暮らしていたが、ヒロインが登場。第二王子はヒロインと幼なじみで、シナリオでは真っ先に攻略されてしまう。婚約破棄されて幸せを手放したくない私は、彼に言った。「ハネムーン(国外脱出)したいです」。私の願いなら何でも叶えてくれる彼は、すぐに手際を整えてくれた。幸せなハネムーンを楽しんでいると、ヒロインの影が追ってきて……※ハッピーエンドです※
もしもし、王子様が困ってますけど?〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
【完結】婚約破棄をして処刑エンドを回避したい悪役令嬢と婚約破棄を阻止したい王子の葛藤
彩伊
恋愛
乙女ゲームの世界へ転生したら、悪役令嬢になってしまいました。
処刑エンドを回避するべく、王子との婚約の全力破棄を狙っていきます!!!
”ちょっぴりおバカな悪役令嬢”と”素直になれない腹黒王子”の物語
※再掲 全10話
白丸は悪役令嬢視点
黒丸は王子視点です。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる