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本編
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考えが纏まったところでそろそろ休もうかとベッドの側へ移動する
ナイトウェアの上に着ていたガウンを脱いだところで、扉をノックする音が響いた
就寝の準備を手伝いに来たメイドかと思って入室を促すと、入ってきたのは天色の髪と瞳を持つ整った顔をした青年
「失礼するよ」
「殿下…?」
一瞬呆けた後、慌ててガウンを羽織直し頭を下げて礼の姿勢をとる
「お見苦しいところを」
「いや、気にしなくていい。それより体調は?」
問われて、更に深く頭を下げた
「問題ありませんわ
それよりも、申し訳ございません。あのような場で…助けていただきありがとうございました」
「いや、構わない。むしろお前も人の子だったのだとかえって安心したよ」
「…どういう意味でしょう?」
「そのままだ」
そういうとアルベルトは当たり前のように椅子に腰を下ろす
視線でセシリアにも座るように促すアルベルトに、セシリアは眉を寄せた
「殿下…婚約者と言えどもこんな時間に未婚女性の部屋に長居するのは如何なものかと…」
「何を今さら
昔は一緒に寝た仲だろう」
「いつの話をしているのですか…」
「まぁ、気にするな。お前の体調が優れないようだから看病がしたいと母上に頼んできた
嬉々として許可してくださったぞ」
そう言われぐっと押し黙る
皇后の許可をとってきているのであれば追い返す理由はない
むしろ返してしまえば皇后の好意を無下にすることになってしまう
根回しのいいことだ…
「…左様でございますか」
それだけ答えるとセシリアは諦めたように息を吐き出し、アルベルトの向かいの席に腰を下ろした
アルベルトはそれを見て満足そうにうなずくとメイドを呼び、晩酌の準備を命じた
「おまえも飲むだろ?」
「・・・いただきます」
軽くグラスを掲げてから中身を煽る
アルコール独特のほろ苦さを感じながら、アルベルトは向かいの席で同じくワインに舌鼓を打つ女性を改めて見つめた
癖一つない藍色の長い髪と同じ色の瞳
涼やかな目元は意思の強さを物語っている
スラリと高い鼻にメイクをしていないにもかかわらず紅く色づく艶やかな唇
目尻の小さな黒子は何とも言い難い色気を醸し出す
そして、ゆったりとしたナイトウェアの上からでもわかるメリハリのある身体
この国の女性の憧れを全て詰め込んだような容姿をもつこの女は、恐ろしいことに見た目だけではないのだ
幼い頃から皇太子妃最有力候補であった彼女は、マナーやダンスは勿論、外国語や領地経営法、さらには魔法や兵法までもを熱心に学び、今では非の打ち所のない才女として国内では知らぬものは居ない
改めてみても、どこまでも完璧だな・・・
そんなことを考えながら彼女と出会った頃に思考をとばした
ナイトウェアの上に着ていたガウンを脱いだところで、扉をノックする音が響いた
就寝の準備を手伝いに来たメイドかと思って入室を促すと、入ってきたのは天色の髪と瞳を持つ整った顔をした青年
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「殿下…?」
一瞬呆けた後、慌ててガウンを羽織直し頭を下げて礼の姿勢をとる
「お見苦しいところを」
「いや、気にしなくていい。それより体調は?」
問われて、更に深く頭を下げた
「問題ありませんわ
それよりも、申し訳ございません。あのような場で…助けていただきありがとうございました」
「いや、構わない。むしろお前も人の子だったのだとかえって安心したよ」
「…どういう意味でしょう?」
「そのままだ」
そういうとアルベルトは当たり前のように椅子に腰を下ろす
視線でセシリアにも座るように促すアルベルトに、セシリアは眉を寄せた
「殿下…婚約者と言えどもこんな時間に未婚女性の部屋に長居するのは如何なものかと…」
「何を今さら
昔は一緒に寝た仲だろう」
「いつの話をしているのですか…」
「まぁ、気にするな。お前の体調が優れないようだから看病がしたいと母上に頼んできた
嬉々として許可してくださったぞ」
そう言われぐっと押し黙る
皇后の許可をとってきているのであれば追い返す理由はない
むしろ返してしまえば皇后の好意を無下にすることになってしまう
根回しのいいことだ…
「…左様でございますか」
それだけ答えるとセシリアは諦めたように息を吐き出し、アルベルトの向かいの席に腰を下ろした
アルベルトはそれを見て満足そうにうなずくとメイドを呼び、晩酌の準備を命じた
「おまえも飲むだろ?」
「・・・いただきます」
軽くグラスを掲げてから中身を煽る
アルコール独特のほろ苦さを感じながら、アルベルトは向かいの席で同じくワインに舌鼓を打つ女性を改めて見つめた
癖一つない藍色の長い髪と同じ色の瞳
涼やかな目元は意思の強さを物語っている
スラリと高い鼻にメイクをしていないにもかかわらず紅く色づく艶やかな唇
目尻の小さな黒子は何とも言い難い色気を醸し出す
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幼い頃から皇太子妃最有力候補であった彼女は、マナーやダンスは勿論、外国語や領地経営法、さらには魔法や兵法までもを熱心に学び、今では非の打ち所のない才女として国内では知らぬものは居ない
改めてみても、どこまでも完璧だな・・・
そんなことを考えながら彼女と出会った頃に思考をとばした
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