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いち。
しょぼーんですよ。
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突然の完全なる失恋で、サッカーの練習なんかやる気でないに決まってる。
はい、コーチに怒られましたー。
怒られたって、やる気でないんだもん、しょうがないじゃん。
ちょろっと、ゆうと先パイの視線を感じるけども。
ふられた次の日くらい、しょぼーんとさせてよ。
おれだって、こんな日あるんだ。
他の1年の士気が下がっちゃったのは謝るけども。
次期エースがこんなんでごめんね。
そうした夜のミーティング。
突如コーチからいわれたんだ。
「お前たちなぁ、いいか? サッカーがやりたくても、家庭環境が原因でサッカーができなかった人もいるんだ。お前たちはやりたくてやってるんだから、もっと真剣に励め。その先輩はな、母親が死んで、父親は不倫相手の元へ行って、1人寮に入れられてるんだぞ。金にも不自由して、特進科なのにバイトまでしているんだ」
コーチは『誰』とは言わなかったけど、同じ寮にいる1年はみんなわかったよね。
あまね先パイのことだ。
特進科で、バイトしている先パイいないもの。
えー、あまね先パイって、けっこう苦労してたんだ。知らなかった。
勉強に余裕があるからバイトしてるのかと思った。だって、あの人うわさでは学年1位とか2位とかだよね。
一ノ瀬先パイが、おれとあまね先パイが似てる、っていってたの、そーいうとこか。
たしかに、似てるわ。
おれも同じ。
親死んじゃったし。
お金は困ってないけど。
あと、けっこう愛情深く育てられたけど。
だから、おれとあまね先パイは違う。
ただ、なんか『抱えているもの』があるとこだけ、似てる。
周りと違う、ソガイカンてやつ。
それだけ。
それだけなんだ。
翌日の練習最終日は、1年のやる気がみなぎって、レギュラー陣とのゲームもいい勝負になった。これ、来年は先パイたちレギュラー落ちしちゃうかもね。
そんながんばったおれたち1年は、今までにないくらいのハイテンションでマイクロバスに乗り込んだ。おれも、ちょっとゆうと先パイのこと忘れてみんなと和気あいあいしていた。
……大野が「海見たい」なんていわなければ。
テンション爆上がりの1年に、副コーチも「しょうがねぇなあ」とかいって、寄り道する始末。
おれの気持ちはまっ逆さまに落ちた。
海辺そばの駐車場に停めて、大野をはじめみんなゾロゾロと降りて行った。運転手さんは一服してくるというので、バスはおれだけになった。
一度大野が、
「伊織、行かないのか~?」
と聞いてきたけど、
「エースは疲れたから寝とく~」
といって断った。
一番奥の座席に寝っ転がって、おれは目をとじた。
「伊織、」
と声がするので目をあけると、ゆうと先パイだった。2年3年の乗ったマイクロバスも、ここに来たらしい。
「あ……先パイ~おつかれさまです♡」
うとうとしながらも、先パイにあいさつする。
「疲れてるのか? 海行かないの?」
「行かなーい。先パイは行ってきたら~」
ふった相手によく声かけられるね、先パイ。
それってやさしいのかな。
「……伊織ってどこ出身?」
「……S県の、クラブチームですよ~」
「それは知ってる。サッカーのことじゃなくてだよ」
天井を眺めていたおれは、そばの座席に座った先パイの方に目を向ける。
「生まれはどこなんだ?」
もう一度、聞いてきた。
でも、おれは答えない。
だって、恋人じゃないじゃん。
「教えませ~ん」
と意地悪くいってやった。
恋人だったら教えるよ、っていったら、先パイどうするかな。なんて思ったり。
未練がましい、おれ。
あっち行ってよ。
今のおれは、先パイの声聞きたくないんだ。
はい、コーチに怒られましたー。
怒られたって、やる気でないんだもん、しょうがないじゃん。
ちょろっと、ゆうと先パイの視線を感じるけども。
ふられた次の日くらい、しょぼーんとさせてよ。
おれだって、こんな日あるんだ。
他の1年の士気が下がっちゃったのは謝るけども。
次期エースがこんなんでごめんね。
そうした夜のミーティング。
突如コーチからいわれたんだ。
「お前たちなぁ、いいか? サッカーがやりたくても、家庭環境が原因でサッカーができなかった人もいるんだ。お前たちはやりたくてやってるんだから、もっと真剣に励め。その先輩はな、母親が死んで、父親は不倫相手の元へ行って、1人寮に入れられてるんだぞ。金にも不自由して、特進科なのにバイトまでしているんだ」
コーチは『誰』とは言わなかったけど、同じ寮にいる1年はみんなわかったよね。
あまね先パイのことだ。
特進科で、バイトしている先パイいないもの。
えー、あまね先パイって、けっこう苦労してたんだ。知らなかった。
勉強に余裕があるからバイトしてるのかと思った。だって、あの人うわさでは学年1位とか2位とかだよね。
一ノ瀬先パイが、おれとあまね先パイが似てる、っていってたの、そーいうとこか。
たしかに、似てるわ。
おれも同じ。
親死んじゃったし。
お金は困ってないけど。
あと、けっこう愛情深く育てられたけど。
だから、おれとあまね先パイは違う。
ただ、なんか『抱えているもの』があるとこだけ、似てる。
周りと違う、ソガイカンてやつ。
それだけ。
それだけなんだ。
翌日の練習最終日は、1年のやる気がみなぎって、レギュラー陣とのゲームもいい勝負になった。これ、来年は先パイたちレギュラー落ちしちゃうかもね。
そんながんばったおれたち1年は、今までにないくらいのハイテンションでマイクロバスに乗り込んだ。おれも、ちょっとゆうと先パイのこと忘れてみんなと和気あいあいしていた。
……大野が「海見たい」なんていわなければ。
テンション爆上がりの1年に、副コーチも「しょうがねぇなあ」とかいって、寄り道する始末。
おれの気持ちはまっ逆さまに落ちた。
海辺そばの駐車場に停めて、大野をはじめみんなゾロゾロと降りて行った。運転手さんは一服してくるというので、バスはおれだけになった。
一度大野が、
「伊織、行かないのか~?」
と聞いてきたけど、
「エースは疲れたから寝とく~」
といって断った。
一番奥の座席に寝っ転がって、おれは目をとじた。
「伊織、」
と声がするので目をあけると、ゆうと先パイだった。2年3年の乗ったマイクロバスも、ここに来たらしい。
「あ……先パイ~おつかれさまです♡」
うとうとしながらも、先パイにあいさつする。
「疲れてるのか? 海行かないの?」
「行かなーい。先パイは行ってきたら~」
ふった相手によく声かけられるね、先パイ。
それってやさしいのかな。
「……伊織ってどこ出身?」
「……S県の、クラブチームですよ~」
「それは知ってる。サッカーのことじゃなくてだよ」
天井を眺めていたおれは、そばの座席に座った先パイの方に目を向ける。
「生まれはどこなんだ?」
もう一度、聞いてきた。
でも、おれは答えない。
だって、恋人じゃないじゃん。
「教えませ~ん」
と意地悪くいってやった。
恋人だったら教えるよ、っていったら、先パイどうするかな。なんて思ったり。
未練がましい、おれ。
あっち行ってよ。
今のおれは、先パイの声聞きたくないんだ。
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