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9・最終章 依頼人◯天野伊織

※水曜日の部室

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サッカー部の休養日は水曜日だけだ。


部室棟の一角に、かつて強豪チームだった咲月学園のサッカー部の部室が大きく構えている。

運動場に近く、部活が休みの今日は人通りが少なく好都合だった。


部室のベンチにかけてしばらく待つと、ガチャリとドアが開く音がした。



緊張?


していない。




むしろ、恐ろしいくらいに冷静な自分がいた。





「……あまね?」



彼は驚いていた。




「堂本コーチ、お疲れ様です」


俺は穏やかに、挨拶をする。



「……あー、玲央から聞いたんだな?」


はぁ、と斜め上を見ながら苛立ちのあるため息をついた。

「そうですよ。俺もヤりたい、って森内くんにお願いして、代わってもらったんです」

「……へぇ?」

「俺とじゃダメですか」

コーチはゆっくりと歩みより、俺の目の前までやってきた。

いやらしいくらいに下品な笑みを浮かべて。

「願ったりだよ」

「よかった」

俺は軽く微笑んだ。

天野くんに、小悪魔だと言われたあの笑顔。

役立つ時がきた。

「お前、やっぱ男としたことあるんだ?」

「そうですよ、噂通りです」


そんな噂、3年生の間ではなかった。

あったのは、俺がわざと校内テストを間違えてる、っていう噂。
喜多嶋先輩が同室だった時に、俺の全国模試の結果を見たから広まった噂だ。
特待生を維持するために、俺は全国模試で実力を出した。
校内テストで1位を取らなかったのは、秋吉くんをはじめ上位組と争いたくなかったからだ。疎まれたくなかった。
そして、目立ちたくなかった。

数学を間違えるのは本当に俺の凡ミスだが、他の教科は少し間違えるようにしていた。
5位くらいを目指しているが、それでも、間違える数を予想し間違え、2~3位になることが多かった。
校長だけが、その事実を知っていたのに。

火のないところに、ということわざ通りだ。




それを堂本コーチは、3年をたぶらかしたビッチ、という噂を3年から聞いたと言った。

聞いたのではなく、『呪いのメェー様』のスレッドで見たのだ。実行犯として。


「ってことは、準備してきたんだ?」

「ナカは、キレイにしてきましたよ。あまり拡げてはないですけど。コーチのおっきいってホントですか?」

「玲央は最初泣いたな」

ニヤニヤと笑うコーチの顔が気持ち悪い。

でもそれを表には出さない。

「……俺、乱暴にされるのが好きで。無理やり挿れて欲しい」

「ははっ。マゾなのか?」

「そうみたいです。この前殴られながらセックスしたんですけど、ちっちゃくて。俺、コーチに殴られながら、犯されたい」

コーチの下半身を見ると、ジャージが膨らんでいた。

「本当に殴っていいのか?」

「縛られるのも、絞められるのも大好きです」

恍惚とした表情で、コーチを見つめた。

首もとのネクタイを外し、コーチに渡す。

「俺が、止めてって言っても止めないでほしい。止められちゃうと興ざめしちゃう」

散々煽って、堂本コーチを破滅への道へ誘う。

「……ほんと、マゾなんだな、あまね」

ネクタイを受け取ると、中央のベンチに座る俺を押し倒し、ネクタイで手首を拘束した。


バストバンドを外してきたので骨が動いて痛む。バンザイの姿勢が苦しいが、今は耐えた。

コーチは俺のベルトを外し、制服と下着を一気に脱がした。情緒の欠片もない、乱暴さ。

それからコーチはジャージを下げて、陰茎を出した。すでに反り立つそれは、かなり大きかった。ケントさんより太さはあるかも。

「コーチの、おっきい……♡♡」

「はは、裂けて泣くかもな」

気を良くしたコーチは、持参したローションを、自身の陰茎にぬるぬると塗りつける。

「想像しただけで興奮する。俺、痛いの大好き♡」

「じゃあ、お望み通り叶えてやるよ……」

左の太ももを乱暴に掴まれ、後孔に2、3度当てたかと思ったらいきなり射し込んだ。

「あ゛ぁ゛━━━ッ!!!」

多少ほぐしていたおかげか、裂けはしなかったものの、みちみちと後孔が拡がる感覚は半端じゃなかった。ケントさんに拳を入れられた時に似ている。

「はあ゛ッ!!」

グチョンッグチョンッ

無理やりねじ込んで咥えさせられた陰茎は激しくピストンを繰り返し、演技で大袈裟に叫ぶつもりが本気で悲鳴を上げた。

「やっぁあ゛━━━ッ!!  コーチぃいい!!!  あああ゛ッ」

なんて下手くそで粗暴なピストンなんだ。

気持ちが入ってる入ってない以前に、雑すぎて全く感じない。

見ると、堂本コーチは苦悶の表情を浮かべていた。俺のナカの具合に苦戦しているようだ。肉壁が陰茎をいやらしく咥えこみ、最高級の快楽を与える。

「はぁっあまね、いいじゃん。お前のナカきもちいいわー」

「はぁっはぁっ♡俺も、気持ちいいです━━コーチぃ、首、締めてぇ♡」

「ドMが」

コーチは右手で俺の首を力強く絞めた。

「ぅ゛あ゛ッッッ」

その時、ギュンと後孔が締まり、コーチも「うっ」と喘いだ。


「おまっ締めすぎッ」

「あ゛ッ」

パチン、と顔を叩かれ、また後孔が締まった。

「はぁ゛、お前マジで淫乱だな。喜多嶋咥えこんだ話、本当だったんだな」

「はぁ゛っ♡さあ?」

それからコーチは、胸を殴った。

コツンッと軽めの拳が、折れたあばらに響く。

「ふぁあ゛ッッコーチィッッ!!  やめっ……てっ痛いッ!!」

「なんだよ。気持ちいいんだろうが」

蔑む声色で笑い、今度は強い力で何度も殴った。

「ぁ゛あ゛━━━ッッ!!」

溜まった涙がこぼれ落ち、こめかみをつたう。

その様子をニヤニヤと眺め、再度最悪なピストンを始めた。

ゴニュゴニュと突かれても、イケる気がしない。俺はほんの少し、目を閉じて乱暴にケントさんに犯される時を思い出した。

ぶわっと欲情が入り込み、トロトロと先走りを始めた。

「殴られながら、気持ちいいのか?」

「や゛っ……」

「その顔、えっろいなぁ。イキそ」

「ダ、ダメ……ッ♡」

自分で言っておいて、気持ち悪い。

おえっ。

俺はさりげなく立ちバックの姿勢を取り、ベンチに手をついた。

顔を見たくない。

またケントさんを思い浮かべようか。


いやいや、体調悪くてもケントさんはこんな下手くそにはならないでしょ。


ああ、早く終わらせたくなった。


十分に撮れたかな?


ズチョッズチョッズチョッ

卑猥な音が響き、俺の耳奥を汚す。

一度体勢を変えさせたものの、やはり顔が見たかったのか正常位に戻そうとしてきた。
汚れた床に俺を乱暴に転がし、太ももを掴んだ。

大きさだけ立派な陰茎をねじ込まれ、俺は悲鳴を上げる。

「んぁあ゛━━━ッ!!!」

ガツンッ

一撃が折れたところに当たり、思わぬ激痛が走った。


「なあ、今度寮でヤろうな。お前声うるさいから、ガムテープで口ふさぐけど」

「ふぁ゛っイ、イヤ゛ッ」

拒む俺を何度も殴り、それから俺のナカへ大量に射精した。

「ああ゛ー、気持ち良かったわ、あまねぇ。今度の週末しような?」

俺は苦しくて、声が出せなかった。

堂本コーチは、俺のシャツの裾で陰茎を拭き、なに食わぬ顔をして出ていった。






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