【完結】コドクニアラズ ~淫らな『なんでも屋』~

ナツキ

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9・最終章 依頼人◯天野伊織

2番目に好きな人

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うっとりするほど官能的なキスに満足した俺は、ようやくリストを書いた。



名前/罪名・投稿日

杉本螢/タバコ・11/4
清原柊太/?・11/4
中条昂輝/暴力・11/6
韮沢穂乃香/万引き・11/7
キクタニゼン/金銭トラブル・11/16
松本李比人/?・11/18
濱松悠成/タバコ・11/25
神崎天音/淫行・11/27
児玉理久/カンニング・12/10
内間拓海/タバコ・12/14
吉永カノン/?・12/20
森内玲央/性暴力・12/25
円山流花/パパ活・12/28
伊東えなこ/パパ活・12/28
日吉康介/暴力・1/2






「え、玲央も書かれたんだ?!」

「そう」


それで、俺は森内くんが気になっていた。

同じ寮にいても、なかなか会えない。



少し不安になった。




涼くんに連れられ食堂に行くと、まだ早い時間帯だったのでほとんどいなかった。森内くんはいなかった。

「あとで森内くんの部屋訪ねてみようかな」

「そうだな」

カウンターで小出さんに声をかける。

「小出さん2人分お願いします~」

咲月学園の男子寮は、その日のメインがカウンターから出され、残りの副菜とごはん、汁物はセルフで取ることになっている。

今夜は切り干し大根、ブロッコリーとゆで卵のマヨネーズおかか和え、豚汁だ。

「はい、お待たせ」

メインは豚肉のソテーだった。がっつりにんにく醤油の香り。

「あまね、今日のは食べられるか?」

「はい、大丈夫です~」

涼くんに半分あげよう。スポーツコースは別メニューだけど、涼くん特進科のままでサッカーやってるから足りないんだよね。

「どうせ副菜の小鉢余るから、そっち多めに取っていいからな」
俺の表情を読んだのか、小出さんは一言付け加えてくれた。

「ありがとうございます♡」

俺はいつも副菜の方を多く食べている。小出さんにはそれが嬉しいらしくて、いつもよくしてくれる。

小鉢を2つずつ取り、ごはんと豚汁は涼くんが勝手についでくれた。

うわ、俺メインいらないな……。

「涼くん、つぎすぎ。俺そんなに食べれない」

「余ったらオレが食う」

もうー。
でも涼くんとだと、残すストレスがないから助かるんだよな。

端っこに座り、涼くんから今日学校であったたわいもないは話を聞く。涼くんがおしゃべりに夢中になってる間、俺は横から豚肉とごはんを涼くんの皿に乗せた。

「ああそうだ、明日2人乗りで行く?」
5分の距離だけど、昨日こぐの辛かった。

「お願いしようかな……」
俺は素直に甘える。

今日の豚汁おいしい。今度ケントさんちで作ろうかな。

食器を片付ける時、小出さんが声をかけてくれたので、豚汁がおいしかったことを伝えた。

「お、そうか。ごま油変えたんだよ」

「ごま油入れるんですか?」

「具を一回ごま油で炒めとくんだよ」
そうなんだ~。
勉強になる。

「俺、小出さんに料理習いたいなあ」

「はは、今度教えてやるよ。なんか作りたいのあるか?」

ケントさんと食べる夕食。洋食が多いから、和食がいいかな。
でも煮物食べるケントさん、想像できない。

「……カレーですかね」

そうだ、俺はカレーを極めよう。

「カレー?  ああ、ルー使わないってことか?」

「はい、小学校の給食で食べた、レーズン入りのカレーが食べたいです」

「キーマカレーかな?  それなら、ここでも土曜の昼にメニュー入れれそうだな。今度会議で言ってみるわ」

「うれしい♡」

食堂を出ると、涼くんから
「バターチキンカレーのリベンジ?」
と聞かれた。

「そうだね」
ケントさんに小言を言われたことを涼くんも知っていた。

「オレはおいしかったよ?」

「涼くん、やさしいね」

涼くんなら、作ったもの文句言わずに全部食べてくれそうだな。

……俺、涼くんとつきあった方がいい気がしてきた。
好きとつきあうって違うのかも。

結婚も、2番目に好きな人とするのがいいって聞くし。


こういうことかなぁ。




森内くんの部屋をノックしたが、反応がなかった。
また明日来よう。

同じ2階の涼くんの部屋で続きを話そうと思ったが、身体がダルくてなんだか重かった。
日中たくさん寝たのに、身体がすでに疲れたようだ。
眠そうな俺に気づいた涼くんが、今後の計画を軽く立ててくれ、俺は部屋に戻り、ベッドに横になった。









翌日、投稿された生徒はどのクラスか、そして呪われたかどうか、手分けして調べた。

サッカー部の練習はお休みだったので、帰りも涼くんのチャリに乗せてもらうことにした。途中でドラッグストアに寄り、痛み止めを買った。涼くんはポテトチップスやらお菓子を選んでいた。


いつものコンビニを通りすぎようとした時、2人乗りしている古賀くんと天野くんに会った。
「仲直りしたんですか~?」
天野くんが声をかけてきた。

「伊織~、お前がやっぱりかくまってたんだろっ許さないからな」
俺が答えるよりも早く、涼くんが怒りの返事をした。

「ごめんね、天野くん」
代わりに俺が謝ると、チャリをこぐ古賀くんが笑うのをこらえるような仕草をした。

「ゆうと先パイ~ダメですよ、笑ったら。一ノ瀬先パイが悪いんじゃなくて、あまね先パイが小悪魔なんです~」

出た、悪魔から発せられた小悪魔発言。

でも今はすんなり受け入れられる。

小悪魔になろうと決めたから。

俺は声には出さず、軽く微笑み返した。


「ほら、あまね先パイのスマイルって、男も虜にする~っ!  ゆうと先パイにはアプローチしないでくださいね?!  先パイ、早く行こ~っ」

「あ、ああ。じゃあな」
古賀くんはcafeリコがあった方へと去っていった。

「あんだけ毎週いっしょにいたら、バレそうだよな」
涼くんがもっともなことを言った。

でも、天野くん身体を離して乗ってるから、我慢してるんだろうな。

俺は気にせず涼くんの腰をつかんでいる。
ケントさんとは手もつなげないけど。

あー、そういえば、ニュースもチェックしなきゃ。千尋店長、無事に捕まったかな?
殺人容疑では捕まらないといいけどな……。


「あまね?」

ああ、また俺は意識を飛ばしてしまった。
「天野くんと古賀くん、仲良くていいね。天野くんはミッドフィルダー?」

「そ、7番目指してる」

「古賀くんは4番?」

「そう」

「合うねぇ」

「なあ、オレのこと聞いてよ」

「えー、どうせフォワードでしょ」

「そうだけどもっ」
足が速くて、チームの得点に貢献する点取り屋。
選手のほとんどが2年だったにかかわらず、挑んだ地区予選で1回戦突破したのは、涼くんのおかげだった。

俺も久しぶりにサッカーしたくなってきた。


「長いこと同好会にも行ってないなあ。活動してるのかな」

ゲームだけ楽しむ同好会では、俺のような幽霊部員も多い。たまに試合をするために呼ばれることもあるが、ここ半年は数回しか行ってない。
涼くんは以前は週3くらい楽しんでいて、どのポジションでもうまく回せるオールラウンダーだった。
そのプレイを見た堂本コーチに、瀕死のサッカー部への勧誘を受けた。
サッカー部でも十分やっていける実力だ。俺は転科もいいと思ってるけど、大学に行きたいから特進科のままがいいらしい。

「涼くん、Bクラスで何番くらいなの」

「ころころ話変わるなあ。この前数学は90点取れたけど、他は80点くらい」

ああ、じゃあBクラスでは上位か。国立狙えるな。
「Bクラスでは3番。あまねと同じ大学行けるかな?  センター終わるとかオレたち不運の世代だよな」

「同じとこ受ける?」

「判定次第だなあ~でもせめて同じ地域に行きたい」

ケントさんと、結城さんみたいだ。俺は涼くんの背中を眺めながら、幸せをかみしめた。










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