89 / 102
9・最終章 依頼人◯天野伊織
2番目に好きな人
しおりを挟む
うっとりするほど官能的なキスに満足した俺は、ようやくリストを書いた。
名前/罪名・投稿日
杉本螢/タバコ・11/4
清原柊太/?・11/4
中条昂輝/暴力・11/6
韮沢穂乃香/万引き・11/7
キクタニゼン/金銭トラブル・11/16
松本李比人/?・11/18
濱松悠成/タバコ・11/25
神崎天音/淫行・11/27
児玉理久/カンニング・12/10
内間拓海/タバコ・12/14
吉永カノン/?・12/20
森内玲央/性暴力・12/25
円山流花/パパ活・12/28
伊東えなこ/パパ活・12/28
日吉康介/暴力・1/2
「え、玲央も書かれたんだ?!」
「そう」
それで、俺は森内くんが気になっていた。
同じ寮にいても、なかなか会えない。
少し不安になった。
涼くんに連れられ食堂に行くと、まだ早い時間帯だったのでほとんどいなかった。森内くんはいなかった。
「あとで森内くんの部屋訪ねてみようかな」
「そうだな」
カウンターで小出さんに声をかける。
「小出さん2人分お願いします~」
咲月学園の男子寮は、その日のメインがカウンターから出され、残りの副菜とごはん、汁物はセルフで取ることになっている。
今夜は切り干し大根、ブロッコリーとゆで卵のマヨネーズおかか和え、豚汁だ。
「はい、お待たせ」
メインは豚肉のソテーだった。がっつりにんにく醤油の香り。
「あまね、今日のは食べられるか?」
「はい、大丈夫です~」
涼くんに半分あげよう。スポーツコースは別メニューだけど、涼くん特進科のままでサッカーやってるから足りないんだよね。
「どうせ副菜の小鉢余るから、そっち多めに取っていいからな」
俺の表情を読んだのか、小出さんは一言付け加えてくれた。
「ありがとうございます♡」
俺はいつも副菜の方を多く食べている。小出さんにはそれが嬉しいらしくて、いつもよくしてくれる。
小鉢を2つずつ取り、ごはんと豚汁は涼くんが勝手についでくれた。
うわ、俺メインいらないな……。
「涼くん、つぎすぎ。俺そんなに食べれない」
「余ったらオレが食う」
もうー。
でも涼くんとだと、残すストレスがないから助かるんだよな。
端っこに座り、涼くんから今日学校であったたわいもないは話を聞く。涼くんがおしゃべりに夢中になってる間、俺は横から豚肉とごはんを涼くんの皿に乗せた。
「ああそうだ、明日2人乗りで行く?」
5分の距離だけど、昨日こぐの辛かった。
「お願いしようかな……」
俺は素直に甘える。
今日の豚汁おいしい。今度ケントさんちで作ろうかな。
食器を片付ける時、小出さんが声をかけてくれたので、豚汁がおいしかったことを伝えた。
「お、そうか。ごま油変えたんだよ」
「ごま油入れるんですか?」
「具を一回ごま油で炒めとくんだよ」
そうなんだ~。
勉強になる。
「俺、小出さんに料理習いたいなあ」
「はは、今度教えてやるよ。なんか作りたいのあるか?」
ケントさんと食べる夕食。洋食が多いから、和食がいいかな。
でも煮物食べるケントさん、想像できない。
「……カレーですかね」
そうだ、俺はカレーを極めよう。
「カレー? ああ、ルー使わないってことか?」
「はい、小学校の給食で食べた、レーズン入りのカレーが食べたいです」
「キーマカレーかな? それなら、ここでも土曜の昼にメニュー入れれそうだな。今度会議で言ってみるわ」
「うれしい♡」
食堂を出ると、涼くんから
「バターチキンカレーのリベンジ?」
と聞かれた。
「そうだね」
ケントさんに小言を言われたことを涼くんも知っていた。
「オレはおいしかったよ?」
「涼くん、やさしいね」
涼くんなら、作ったもの文句言わずに全部食べてくれそうだな。
……俺、涼くんとつきあった方がいい気がしてきた。
好きとつきあうって違うのかも。
結婚も、2番目に好きな人とするのがいいって聞くし。
こういうことかなぁ。
森内くんの部屋をノックしたが、反応がなかった。
また明日来よう。
同じ2階の涼くんの部屋で続きを話そうと思ったが、身体がダルくてなんだか重かった。
日中たくさん寝たのに、身体がすでに疲れたようだ。
眠そうな俺に気づいた涼くんが、今後の計画を軽く立ててくれ、俺は部屋に戻り、ベッドに横になった。
翌日、投稿された生徒はどのクラスか、そして呪われたかどうか、手分けして調べた。
サッカー部の練習はお休みだったので、帰りも涼くんのチャリに乗せてもらうことにした。途中でドラッグストアに寄り、痛み止めを買った。涼くんはポテトチップスやらお菓子を選んでいた。
いつものコンビニを通りすぎようとした時、2人乗りしている古賀くんと天野くんに会った。
「仲直りしたんですか~?」
天野くんが声をかけてきた。
「伊織~、お前がやっぱりかくまってたんだろっ許さないからな」
俺が答えるよりも早く、涼くんが怒りの返事をした。
「ごめんね、天野くん」
代わりに俺が謝ると、チャリをこぐ古賀くんが笑うのをこらえるような仕草をした。
「ゆうと先パイ~ダメですよ、笑ったら。一ノ瀬先パイが悪いんじゃなくて、あまね先パイが小悪魔なんです~」
出た、悪魔から発せられた小悪魔発言。
でも今はすんなり受け入れられる。
小悪魔になろうと決めたから。
俺は声には出さず、軽く微笑み返した。
「ほら、あまね先パイのスマイルって、男も虜にする~っ! ゆうと先パイにはアプローチしないでくださいね?! 先パイ、早く行こ~っ」
「あ、ああ。じゃあな」
古賀くんはcafeリコがあった方へと去っていった。
「あんだけ毎週いっしょにいたら、バレそうだよな」
涼くんがもっともなことを言った。
でも、天野くん身体を離して乗ってるから、我慢してるんだろうな。
俺は気にせず涼くんの腰をつかんでいる。
ケントさんとは手もつなげないけど。
あー、そういえば、ニュースもチェックしなきゃ。千尋店長、無事に捕まったかな?
殺人容疑では捕まらないといいけどな……。
「あまね?」
ああ、また俺は意識を飛ばしてしまった。
「天野くんと古賀くん、仲良くていいね。天野くんはミッドフィルダー?」
「そ、7番目指してる」
「古賀くんは4番?」
「そう」
「合うねぇ」
「なあ、オレのこと聞いてよ」
「えー、どうせフォワードでしょ」
「そうだけどもっ」
足が速くて、チームの得点に貢献する点取り屋。
選手のほとんどが2年だったにかかわらず、挑んだ地区予選で1回戦突破したのは、涼くんのおかげだった。
俺も久しぶりにサッカーしたくなってきた。
「長いこと同好会にも行ってないなあ。活動してるのかな」
ゲームだけ楽しむ同好会では、俺のような幽霊部員も多い。たまに試合をするために呼ばれることもあるが、ここ半年は数回しか行ってない。
涼くんは以前は週3くらい楽しんでいて、どのポジションでもうまく回せるオールラウンダーだった。
そのプレイを見た堂本コーチに、瀕死のサッカー部への勧誘を受けた。
サッカー部でも十分やっていける実力だ。俺は転科もいいと思ってるけど、大学に行きたいから特進科のままがいいらしい。
「涼くん、Bクラスで何番くらいなの」
「ころころ話変わるなあ。この前数学は90点取れたけど、他は80点くらい」
ああ、じゃあBクラスでは上位か。国立狙えるな。
「Bクラスでは3番。あまねと同じ大学行けるかな? センター終わるとかオレたち不運の世代だよな」
「同じとこ受ける?」
「判定次第だなあ~でもせめて同じ地域に行きたい」
ケントさんと、結城さんみたいだ。俺は涼くんの背中を眺めながら、幸せをかみしめた。
名前/罪名・投稿日
杉本螢/タバコ・11/4
清原柊太/?・11/4
中条昂輝/暴力・11/6
韮沢穂乃香/万引き・11/7
キクタニゼン/金銭トラブル・11/16
松本李比人/?・11/18
濱松悠成/タバコ・11/25
神崎天音/淫行・11/27
児玉理久/カンニング・12/10
内間拓海/タバコ・12/14
吉永カノン/?・12/20
森内玲央/性暴力・12/25
円山流花/パパ活・12/28
伊東えなこ/パパ活・12/28
日吉康介/暴力・1/2
「え、玲央も書かれたんだ?!」
「そう」
それで、俺は森内くんが気になっていた。
同じ寮にいても、なかなか会えない。
少し不安になった。
涼くんに連れられ食堂に行くと、まだ早い時間帯だったのでほとんどいなかった。森内くんはいなかった。
「あとで森内くんの部屋訪ねてみようかな」
「そうだな」
カウンターで小出さんに声をかける。
「小出さん2人分お願いします~」
咲月学園の男子寮は、その日のメインがカウンターから出され、残りの副菜とごはん、汁物はセルフで取ることになっている。
今夜は切り干し大根、ブロッコリーとゆで卵のマヨネーズおかか和え、豚汁だ。
「はい、お待たせ」
メインは豚肉のソテーだった。がっつりにんにく醤油の香り。
「あまね、今日のは食べられるか?」
「はい、大丈夫です~」
涼くんに半分あげよう。スポーツコースは別メニューだけど、涼くん特進科のままでサッカーやってるから足りないんだよね。
「どうせ副菜の小鉢余るから、そっち多めに取っていいからな」
俺の表情を読んだのか、小出さんは一言付け加えてくれた。
「ありがとうございます♡」
俺はいつも副菜の方を多く食べている。小出さんにはそれが嬉しいらしくて、いつもよくしてくれる。
小鉢を2つずつ取り、ごはんと豚汁は涼くんが勝手についでくれた。
うわ、俺メインいらないな……。
「涼くん、つぎすぎ。俺そんなに食べれない」
「余ったらオレが食う」
もうー。
でも涼くんとだと、残すストレスがないから助かるんだよな。
端っこに座り、涼くんから今日学校であったたわいもないは話を聞く。涼くんがおしゃべりに夢中になってる間、俺は横から豚肉とごはんを涼くんの皿に乗せた。
「ああそうだ、明日2人乗りで行く?」
5分の距離だけど、昨日こぐの辛かった。
「お願いしようかな……」
俺は素直に甘える。
今日の豚汁おいしい。今度ケントさんちで作ろうかな。
食器を片付ける時、小出さんが声をかけてくれたので、豚汁がおいしかったことを伝えた。
「お、そうか。ごま油変えたんだよ」
「ごま油入れるんですか?」
「具を一回ごま油で炒めとくんだよ」
そうなんだ~。
勉強になる。
「俺、小出さんに料理習いたいなあ」
「はは、今度教えてやるよ。なんか作りたいのあるか?」
ケントさんと食べる夕食。洋食が多いから、和食がいいかな。
でも煮物食べるケントさん、想像できない。
「……カレーですかね」
そうだ、俺はカレーを極めよう。
「カレー? ああ、ルー使わないってことか?」
「はい、小学校の給食で食べた、レーズン入りのカレーが食べたいです」
「キーマカレーかな? それなら、ここでも土曜の昼にメニュー入れれそうだな。今度会議で言ってみるわ」
「うれしい♡」
食堂を出ると、涼くんから
「バターチキンカレーのリベンジ?」
と聞かれた。
「そうだね」
ケントさんに小言を言われたことを涼くんも知っていた。
「オレはおいしかったよ?」
「涼くん、やさしいね」
涼くんなら、作ったもの文句言わずに全部食べてくれそうだな。
……俺、涼くんとつきあった方がいい気がしてきた。
好きとつきあうって違うのかも。
結婚も、2番目に好きな人とするのがいいって聞くし。
こういうことかなぁ。
森内くんの部屋をノックしたが、反応がなかった。
また明日来よう。
同じ2階の涼くんの部屋で続きを話そうと思ったが、身体がダルくてなんだか重かった。
日中たくさん寝たのに、身体がすでに疲れたようだ。
眠そうな俺に気づいた涼くんが、今後の計画を軽く立ててくれ、俺は部屋に戻り、ベッドに横になった。
翌日、投稿された生徒はどのクラスか、そして呪われたかどうか、手分けして調べた。
サッカー部の練習はお休みだったので、帰りも涼くんのチャリに乗せてもらうことにした。途中でドラッグストアに寄り、痛み止めを買った。涼くんはポテトチップスやらお菓子を選んでいた。
いつものコンビニを通りすぎようとした時、2人乗りしている古賀くんと天野くんに会った。
「仲直りしたんですか~?」
天野くんが声をかけてきた。
「伊織~、お前がやっぱりかくまってたんだろっ許さないからな」
俺が答えるよりも早く、涼くんが怒りの返事をした。
「ごめんね、天野くん」
代わりに俺が謝ると、チャリをこぐ古賀くんが笑うのをこらえるような仕草をした。
「ゆうと先パイ~ダメですよ、笑ったら。一ノ瀬先パイが悪いんじゃなくて、あまね先パイが小悪魔なんです~」
出た、悪魔から発せられた小悪魔発言。
でも今はすんなり受け入れられる。
小悪魔になろうと決めたから。
俺は声には出さず、軽く微笑み返した。
「ほら、あまね先パイのスマイルって、男も虜にする~っ! ゆうと先パイにはアプローチしないでくださいね?! 先パイ、早く行こ~っ」
「あ、ああ。じゃあな」
古賀くんはcafeリコがあった方へと去っていった。
「あんだけ毎週いっしょにいたら、バレそうだよな」
涼くんがもっともなことを言った。
でも、天野くん身体を離して乗ってるから、我慢してるんだろうな。
俺は気にせず涼くんの腰をつかんでいる。
ケントさんとは手もつなげないけど。
あー、そういえば、ニュースもチェックしなきゃ。千尋店長、無事に捕まったかな?
殺人容疑では捕まらないといいけどな……。
「あまね?」
ああ、また俺は意識を飛ばしてしまった。
「天野くんと古賀くん、仲良くていいね。天野くんはミッドフィルダー?」
「そ、7番目指してる」
「古賀くんは4番?」
「そう」
「合うねぇ」
「なあ、オレのこと聞いてよ」
「えー、どうせフォワードでしょ」
「そうだけどもっ」
足が速くて、チームの得点に貢献する点取り屋。
選手のほとんどが2年だったにかかわらず、挑んだ地区予選で1回戦突破したのは、涼くんのおかげだった。
俺も久しぶりにサッカーしたくなってきた。
「長いこと同好会にも行ってないなあ。活動してるのかな」
ゲームだけ楽しむ同好会では、俺のような幽霊部員も多い。たまに試合をするために呼ばれることもあるが、ここ半年は数回しか行ってない。
涼くんは以前は週3くらい楽しんでいて、どのポジションでもうまく回せるオールラウンダーだった。
そのプレイを見た堂本コーチに、瀕死のサッカー部への勧誘を受けた。
サッカー部でも十分やっていける実力だ。俺は転科もいいと思ってるけど、大学に行きたいから特進科のままがいいらしい。
「涼くん、Bクラスで何番くらいなの」
「ころころ話変わるなあ。この前数学は90点取れたけど、他は80点くらい」
ああ、じゃあBクラスでは上位か。国立狙えるな。
「Bクラスでは3番。あまねと同じ大学行けるかな? センター終わるとかオレたち不運の世代だよな」
「同じとこ受ける?」
「判定次第だなあ~でもせめて同じ地域に行きたい」
ケントさんと、結城さんみたいだ。俺は涼くんの背中を眺めながら、幸せをかみしめた。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる