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7・依頼人⑦向井絢斗
消失条件
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ケントさんに、結城さんがどのブースを使ったか聞いて欲しいと依頼する。
わかった、と返事しながらケントさんはノートを少しめくり、
「依頼人、オレって書いといて」
と言った。
牧村好恵さんについては、妹の土野恵美さんに間取り図を写真に撮って送り、No.13に座ったことあるか聞いてもらえるようにした。恵美さんから、よくお姉さんが利用することは聞いていたから。
そして今度は消失する条件について考えてみる。
『もや』が消失したのは、今のところ馬場園みなみ、牧村好恵、向井絢斗。3人とも話したことがある。でもそれだけだと、⑷と森内光太が消えないのがおかしい。
……触れる?
もしかして触れたら消えるのか?
馬場園みなみは血を抜いてる時に俺の脈を測ったり、顔に触れたりしていた。
牧村好恵は、おうちでお茶をごちそうになる際、湯飲みを取ろうとしてかすかに手が触れた。
以前ケントさんが、茶化すように「左手の甲に勇者の紋章があるのか」と言ったが、そういう類いのものかもしれない。
まだ涼くんにも伝えていない、じじいの存在。こいつが俺にカプセル飲ませたことを思い出す。手を舐められたことも。
あ~、そうか。
たぶん俺はあの時なにか託されたんだ。未曾有の災害が起こると言っていた、頭のおかしなじじい。
この話も、涼くんにそろそろ打ち明けなければならない。
話が大きくなりすぎだと、ケントさんにたしなめられたことがある。これはじじいが言うことが本当ならば、俺ごときが対応できる話ではないくらい大きなことだ。
単に『もや』を消していけば良いのだろうか。それなら、俺は結城さんに握手を求めれば終わる。そんな単純だろうか。
ケントさん、涼くんと2人で話させてくれないかなあ。
どうしよう。
とりあえず、今の考えをまとめてノートに記載し、一応結城直哉さんの調査を進めることにする。
今俺が調べられるのは、東雲病院のケースワーカーについてだ。
受付の北原さんと話した時、勤務表をすべて見ておいたので、名前はわかる。
大崎楷人 主任 外来
中川いろは 外来
渕上絵麻 入院
二見凛 入院
退院指導のケースワーカー、と言っていたので
この下2人が怪しい。
「ケントさん~、この人たちのこと、わかること教えて」
ケントさんは驚いて目を見開いたが、あぁ、と納得して知ってることを話してくれた。
「大崎は主任をしていて、主に外来の担当をしているケースワーカーだ。がっちりした体格の男性。サッカーしてるとか言ってたな。中川はあまねも会ったことのあるケースワーカーだ。秋吉君の話聞いてくれた女性な。信頼できる人だ。渕上は、入院担当のケースワーカーで、少しふくよかな背の低い女性だ。ほがらかで患者に人気がある。ちょっとおしゃべりだが。二見が……たぶん直哉が疑ってる奴だ。 入院担当で、退院先を決めるのにこいつが絡んでなにか起きたらしい」
「結城さん、なんて聞いてきたんですか?」
「東雲病院のケースワーカーで、退院に関与している人の人柄が知りたい、と言われた。怪しい動きを見たことはないか、と」
「誰とは言わなかったけど、渕上さんと二見さんなら二見さんが怪しいってことですね」
「そうだな。会えばわかるが、いかにもうさんくさい」
「会えるかな」
「どうかな……連絡先を知ってるのは外来看護師の谷口さん、受付の麗那、薬局長の人。古澤だったかな。新藤凪として会うの辛いなあ~」
「今、本物はケントさんと同じ大学病院にいるんですか?」
「いや、海外に行った。しばらく帰ってこないから、医大に問い合わせなければバレないかもしれないが」
「受付の北原さん、なにか知ってないかな? 会わずにラインのやり取りか電話で。ケントさんなら北原さん喜んで電話とるでしょ」
「そうだな、じゃあ麗那に思わせぶりなラインでもしてみるか。あまね、拗ねるなよ?」
「……拗ねないよ。むしろ俺にも涼くんにラインさせてよ」
「ラインはいいよ」
「いいんだ?」
「でも消すなよ」
「こっわー!」
この人、あとでやり取りを見る気じゃん。それは困るなあ。
あー、でも涼くんもケントさんに先に話していいって言ったし、バレていいか?
中2病って言われて俺泣くかもしれないけど……。
そう思いつつ、俺は涼くんにポチポチと打っていった。
わかった、と返事しながらケントさんはノートを少しめくり、
「依頼人、オレって書いといて」
と言った。
牧村好恵さんについては、妹の土野恵美さんに間取り図を写真に撮って送り、No.13に座ったことあるか聞いてもらえるようにした。恵美さんから、よくお姉さんが利用することは聞いていたから。
そして今度は消失する条件について考えてみる。
『もや』が消失したのは、今のところ馬場園みなみ、牧村好恵、向井絢斗。3人とも話したことがある。でもそれだけだと、⑷と森内光太が消えないのがおかしい。
……触れる?
もしかして触れたら消えるのか?
馬場園みなみは血を抜いてる時に俺の脈を測ったり、顔に触れたりしていた。
牧村好恵は、おうちでお茶をごちそうになる際、湯飲みを取ろうとしてかすかに手が触れた。
以前ケントさんが、茶化すように「左手の甲に勇者の紋章があるのか」と言ったが、そういう類いのものかもしれない。
まだ涼くんにも伝えていない、じじいの存在。こいつが俺にカプセル飲ませたことを思い出す。手を舐められたことも。
あ~、そうか。
たぶん俺はあの時なにか託されたんだ。未曾有の災害が起こると言っていた、頭のおかしなじじい。
この話も、涼くんにそろそろ打ち明けなければならない。
話が大きくなりすぎだと、ケントさんにたしなめられたことがある。これはじじいが言うことが本当ならば、俺ごときが対応できる話ではないくらい大きなことだ。
単に『もや』を消していけば良いのだろうか。それなら、俺は結城さんに握手を求めれば終わる。そんな単純だろうか。
ケントさん、涼くんと2人で話させてくれないかなあ。
どうしよう。
とりあえず、今の考えをまとめてノートに記載し、一応結城直哉さんの調査を進めることにする。
今俺が調べられるのは、東雲病院のケースワーカーについてだ。
受付の北原さんと話した時、勤務表をすべて見ておいたので、名前はわかる。
大崎楷人 主任 外来
中川いろは 外来
渕上絵麻 入院
二見凛 入院
退院指導のケースワーカー、と言っていたので
この下2人が怪しい。
「ケントさん~、この人たちのこと、わかること教えて」
ケントさんは驚いて目を見開いたが、あぁ、と納得して知ってることを話してくれた。
「大崎は主任をしていて、主に外来の担当をしているケースワーカーだ。がっちりした体格の男性。サッカーしてるとか言ってたな。中川はあまねも会ったことのあるケースワーカーだ。秋吉君の話聞いてくれた女性な。信頼できる人だ。渕上は、入院担当のケースワーカーで、少しふくよかな背の低い女性だ。ほがらかで患者に人気がある。ちょっとおしゃべりだが。二見が……たぶん直哉が疑ってる奴だ。 入院担当で、退院先を決めるのにこいつが絡んでなにか起きたらしい」
「結城さん、なんて聞いてきたんですか?」
「東雲病院のケースワーカーで、退院に関与している人の人柄が知りたい、と言われた。怪しい動きを見たことはないか、と」
「誰とは言わなかったけど、渕上さんと二見さんなら二見さんが怪しいってことですね」
「そうだな。会えばわかるが、いかにもうさんくさい」
「会えるかな」
「どうかな……連絡先を知ってるのは外来看護師の谷口さん、受付の麗那、薬局長の人。古澤だったかな。新藤凪として会うの辛いなあ~」
「今、本物はケントさんと同じ大学病院にいるんですか?」
「いや、海外に行った。しばらく帰ってこないから、医大に問い合わせなければバレないかもしれないが」
「受付の北原さん、なにか知ってないかな? 会わずにラインのやり取りか電話で。ケントさんなら北原さん喜んで電話とるでしょ」
「そうだな、じゃあ麗那に思わせぶりなラインでもしてみるか。あまね、拗ねるなよ?」
「……拗ねないよ。むしろ俺にも涼くんにラインさせてよ」
「ラインはいいよ」
「いいんだ?」
「でも消すなよ」
「こっわー!」
この人、あとでやり取りを見る気じゃん。それは困るなあ。
あー、でも涼くんもケントさんに先に話していいって言ったし、バレていいか?
中2病って言われて俺泣くかもしれないけど……。
そう思いつつ、俺は涼くんにポチポチと打っていった。
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