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7・依頼人⑦向井絢斗
ケントさんの望みは
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26日、補習3日目。
俺の身体はひどくダルく、起き上がるのが容易ではなかった。
食堂に行くと、すでに涼くんと森内くんが朝食を摂っており、俺もトレイを持ってそばに座った。
「あまねくん、おはよう……顔ごめん」
「はよー。あまね、腫れてるし痣になってるしそもそも顔色悪い」
「そう?」
調子が悪かったが、休むわけにはいかなかった。特待生が解除されれば、俺はこの学校にいられない。
心配した涼くんが、学校までチャリをこいでくれた。校門前で降り、別れを告げる。
顔の怪我はケンカに巻き込まれたと言い、難を逃れた。(被害届がどーのとか言われたが、暗くてよく見えなかったとか言って追求を避けた)
森内くんと夕方まで補習を受け、なんとか1日を終えると、森内くんが寮まで乗せてくれると言った。
途中コンビニに寄ってもらい、おにぎりとチョコを買った。これ食べて、今日は早く寝よう。
しかし、だいぶ視界が歪んで見える。よろよろと森内くんのチャリの後ろに乗ろうとすると、堂本コーチに会った。
「玲央!、あまね!」
車から降りて、声をかけてきた。
「あ、堂本コーチ、お久しぶりです」
「玲央ー! 元気だったか? お前も補習組だったんだな」
「はい。留年をなんとか阻止しないと」
「だなあ、がんばれよ。……あまねは怪我してるし具合悪そうだな」
「あーそうなんですよ。今からチャリで送ります」
「オレが車で送ってやるよ。後部座席で横になっていいぞ」
俺は背に腹はかえられぬと思い、コーチの車に乗せてもらった。
寮に着くまでのわずか数分、俺は意識が朦朧として起き上がれなくなった。コーチの、「着いたぞ」が聞こえたものの、身体が反応できなくなっていた。
「しょうがないなあ。お姫様だっこで連れてってやろうか」
小声で話すコーチのザラザラした声が、耳の奥にこびりついた。
「あまね~」
と俺を呼ぶいつもの声が聞こえる。
「コーチ送ってくれたんですか! ありがとうございます。オレ運びますよ」
涼くんだった。
「おい、あまね、オレの背中に乗って」
ペチペチと頬を叩かれ、俺はよろよろと涼くんにしがみついた。
「背中、背中」
「じゃ、コーチありがとうございました」
と俺の代わりにお礼を言ってくれ、玄関に向かった。
「さっきケント先生に会ったから、連れてきた。部屋いっしょに行くけどいいよな?」
と涼くんが声をかけてくれたが、俺はすでに返事ができない状態でまどろみの中に沈んだ。
ベッドに降ろされると、ベルトが骨に当たって痛かった。
「りょうくん……、ベルトはずして……」
「まったくもー」
と文句たれるも、涼くんは制服を緩めてくれた。
何かさっき、だいじなこと言ってたきがするけど……
そのまま、俺は深い眠りについた。
あー、また糖分摂らずに寝ちゃったと、ひどい頭痛を抱えながら起き上がる。
「あれ、ケントさん……?」
「起きたか」
そういえば涼くんが言ってたな。
「すみません、寝ちゃって。あ」
ケントさんの手にはコドアラノートが開かれていた。
「オレと8月に会ってたんだな」
「ああ……」
夏休み、ケントさんを見かけたときの様子をノートに書いた。『もや』はたぶん✕だったと。
「カメラアイすごいな」
「俺のはすごくないですよ……思い出せないこともあるし……めちゃくちゃ糖分使うみたいで、今日も頭痛い……」
「それで調子が悪いのか? 貧血じゃなくて?」
そう言ってケントさんは俺の目の下を引っ張る。
「わかんない……」
甘えたくなり、ケントさんに抱きつくと、膝に乗せてくれた。
「心配で見にきたら、殴られたって聞いて驚いた」
ケントさんは腫れた頬を優しくさする。吐息がかかる、至近距離。
見つめながら、俺はケントさんにキスをした。
またがろうとすると、制服を着ていないことに気づく。ケントさんが脱がせて寝かせてくれたのだろう。下着姿のまま、俺はもう一度ケントさんの唇に触れ、そっと甘噛みし、舌を入れた。
くちゅ。
くちゅ。
キスをしながら、ケントさんに話しかける。
「ケントさん、クリスマスプレゼント何が良かったんですか? 誕生日といっしょ? 俺でいい?」
「何でもしてくれるの?」
「する……」
舌を口の外に出し絡ませるとピチャピチャと淫らな音がなり、下半身が熱くなった。
「……じゃあ、オレにも殴らせて」
絡めていた舌を離し、ケントさんを見つめる。
「それでいいんですか?」
「殴りながら、奥まで突きたい」
「いいですよ。じゃあ明日? もう今日からお泊まりしてもいいですけど」
「あー……やっぱ、ピアス開けさせて」
「ピアス? 俺の耳? あ、ケントさんとお揃いで上に開けるの?」
ケントさんは左耳の軟骨に2つつけている。いつも長い栗色の髪で隠れているが、ハーフアップにした時気づいてドキドキしたのを思い出した。
「ここ」
と、ケントさんは俺の舌を引っ張った。
「ひ、は?」
「そう、舌ピアス開けさせて」
校則どうだったかなー?と思い、脳内で生徒手帳を検索するが舌のピアスについては明記されていなかった。
「明日、先生に聞いてみますね。校則がわかんないや」
「校則OKなら開けるのか?」
「はい、いいですよ」
「……」
ケントさんはひどく不満げな顔をする。
「なんですか~? あ、絶対開けてほしいってこと? 内緒にできるかな~? 年中マスクならいけるかな?」
「やっぱ舌ピアスはいいわ」
「え、ごめんなさい……」
「あまねの爪、剥がさせて」
「爪? これ? 剥いでみたいんですか?」
なかなか残虐なこというなあと思ったが、前に女性にはできないことをしたいと言っていたので納得する。
「裸で手足拘束してさ、お前の指の爪、1つずつペンチで引っ張る」
「うわ~拷問すね。いいですけど」
「……いいんだ?」
「?? したいんですよね?」
「したくねーわ!!」
ケントさんは怒り、俺を抱えてベッドに押し倒した。
「嫌なら嫌って言え!!」
「い、嫌じゃないですよ……」
「何なら断るんだ!!」
「ええー? 断らせたいんですか??」
意味がわからない。ケントさんは俺に何をしたいんだろう?
「何でも受け入れるな!!」
「えー……だいたいは大丈夫ですよ、俺」
「それがダメなんだよ」
「もー」
何で怒られるのかわからない。
あ、森内くんとエッチした、って涼くんからやっぱり聞いたのかな。
「涼くんに何か聞いたんですか」
「……あまねは、相手が望んだら全部応える気なのか」
やっぱり聞いてるな、これは。
俺の、浮気になるのかな。
「あれって、ケントさん的に浮気ですか」
「え?」
「……え?」
しまった。違うことだったのか?
「何でもないです」
「何したんだよっ」
Tシャツを乱暴に脱がされ、自分のつけた覚えのない噛み痕に気づくと、目を見開いて硬直した。
「お前、……他のやつとセックスしたのか?」
「……ごめんなさい」
はあー、とため息をついて、ケントさんは俺の上から降りた。
「お前に貞操観念とかないんだな」
そう言って、ケントさんは部屋を出ていった。
俺の身体はひどくダルく、起き上がるのが容易ではなかった。
食堂に行くと、すでに涼くんと森内くんが朝食を摂っており、俺もトレイを持ってそばに座った。
「あまねくん、おはよう……顔ごめん」
「はよー。あまね、腫れてるし痣になってるしそもそも顔色悪い」
「そう?」
調子が悪かったが、休むわけにはいかなかった。特待生が解除されれば、俺はこの学校にいられない。
心配した涼くんが、学校までチャリをこいでくれた。校門前で降り、別れを告げる。
顔の怪我はケンカに巻き込まれたと言い、難を逃れた。(被害届がどーのとか言われたが、暗くてよく見えなかったとか言って追求を避けた)
森内くんと夕方まで補習を受け、なんとか1日を終えると、森内くんが寮まで乗せてくれると言った。
途中コンビニに寄ってもらい、おにぎりとチョコを買った。これ食べて、今日は早く寝よう。
しかし、だいぶ視界が歪んで見える。よろよろと森内くんのチャリの後ろに乗ろうとすると、堂本コーチに会った。
「玲央!、あまね!」
車から降りて、声をかけてきた。
「あ、堂本コーチ、お久しぶりです」
「玲央ー! 元気だったか? お前も補習組だったんだな」
「はい。留年をなんとか阻止しないと」
「だなあ、がんばれよ。……あまねは怪我してるし具合悪そうだな」
「あーそうなんですよ。今からチャリで送ります」
「オレが車で送ってやるよ。後部座席で横になっていいぞ」
俺は背に腹はかえられぬと思い、コーチの車に乗せてもらった。
寮に着くまでのわずか数分、俺は意識が朦朧として起き上がれなくなった。コーチの、「着いたぞ」が聞こえたものの、身体が反応できなくなっていた。
「しょうがないなあ。お姫様だっこで連れてってやろうか」
小声で話すコーチのザラザラした声が、耳の奥にこびりついた。
「あまね~」
と俺を呼ぶいつもの声が聞こえる。
「コーチ送ってくれたんですか! ありがとうございます。オレ運びますよ」
涼くんだった。
「おい、あまね、オレの背中に乗って」
ペチペチと頬を叩かれ、俺はよろよろと涼くんにしがみついた。
「背中、背中」
「じゃ、コーチありがとうございました」
と俺の代わりにお礼を言ってくれ、玄関に向かった。
「さっきケント先生に会ったから、連れてきた。部屋いっしょに行くけどいいよな?」
と涼くんが声をかけてくれたが、俺はすでに返事ができない状態でまどろみの中に沈んだ。
ベッドに降ろされると、ベルトが骨に当たって痛かった。
「りょうくん……、ベルトはずして……」
「まったくもー」
と文句たれるも、涼くんは制服を緩めてくれた。
何かさっき、だいじなこと言ってたきがするけど……
そのまま、俺は深い眠りについた。
あー、また糖分摂らずに寝ちゃったと、ひどい頭痛を抱えながら起き上がる。
「あれ、ケントさん……?」
「起きたか」
そういえば涼くんが言ってたな。
「すみません、寝ちゃって。あ」
ケントさんの手にはコドアラノートが開かれていた。
「オレと8月に会ってたんだな」
「ああ……」
夏休み、ケントさんを見かけたときの様子をノートに書いた。『もや』はたぶん✕だったと。
「カメラアイすごいな」
「俺のはすごくないですよ……思い出せないこともあるし……めちゃくちゃ糖分使うみたいで、今日も頭痛い……」
「それで調子が悪いのか? 貧血じゃなくて?」
そう言ってケントさんは俺の目の下を引っ張る。
「わかんない……」
甘えたくなり、ケントさんに抱きつくと、膝に乗せてくれた。
「心配で見にきたら、殴られたって聞いて驚いた」
ケントさんは腫れた頬を優しくさする。吐息がかかる、至近距離。
見つめながら、俺はケントさんにキスをした。
またがろうとすると、制服を着ていないことに気づく。ケントさんが脱がせて寝かせてくれたのだろう。下着姿のまま、俺はもう一度ケントさんの唇に触れ、そっと甘噛みし、舌を入れた。
くちゅ。
くちゅ。
キスをしながら、ケントさんに話しかける。
「ケントさん、クリスマスプレゼント何が良かったんですか? 誕生日といっしょ? 俺でいい?」
「何でもしてくれるの?」
「する……」
舌を口の外に出し絡ませるとピチャピチャと淫らな音がなり、下半身が熱くなった。
「……じゃあ、オレにも殴らせて」
絡めていた舌を離し、ケントさんを見つめる。
「それでいいんですか?」
「殴りながら、奥まで突きたい」
「いいですよ。じゃあ明日? もう今日からお泊まりしてもいいですけど」
「あー……やっぱ、ピアス開けさせて」
「ピアス? 俺の耳? あ、ケントさんとお揃いで上に開けるの?」
ケントさんは左耳の軟骨に2つつけている。いつも長い栗色の髪で隠れているが、ハーフアップにした時気づいてドキドキしたのを思い出した。
「ここ」
と、ケントさんは俺の舌を引っ張った。
「ひ、は?」
「そう、舌ピアス開けさせて」
校則どうだったかなー?と思い、脳内で生徒手帳を検索するが舌のピアスについては明記されていなかった。
「明日、先生に聞いてみますね。校則がわかんないや」
「校則OKなら開けるのか?」
「はい、いいですよ」
「……」
ケントさんはひどく不満げな顔をする。
「なんですか~? あ、絶対開けてほしいってこと? 内緒にできるかな~? 年中マスクならいけるかな?」
「やっぱ舌ピアスはいいわ」
「え、ごめんなさい……」
「あまねの爪、剥がさせて」
「爪? これ? 剥いでみたいんですか?」
なかなか残虐なこというなあと思ったが、前に女性にはできないことをしたいと言っていたので納得する。
「裸で手足拘束してさ、お前の指の爪、1つずつペンチで引っ張る」
「うわ~拷問すね。いいですけど」
「……いいんだ?」
「?? したいんですよね?」
「したくねーわ!!」
ケントさんは怒り、俺を抱えてベッドに押し倒した。
「嫌なら嫌って言え!!」
「い、嫌じゃないですよ……」
「何なら断るんだ!!」
「ええー? 断らせたいんですか??」
意味がわからない。ケントさんは俺に何をしたいんだろう?
「何でも受け入れるな!!」
「えー……だいたいは大丈夫ですよ、俺」
「それがダメなんだよ」
「もー」
何で怒られるのかわからない。
あ、森内くんとエッチした、って涼くんからやっぱり聞いたのかな。
「涼くんに何か聞いたんですか」
「……あまねは、相手が望んだら全部応える気なのか」
やっぱり聞いてるな、これは。
俺の、浮気になるのかな。
「あれって、ケントさん的に浮気ですか」
「え?」
「……え?」
しまった。違うことだったのか?
「何でもないです」
「何したんだよっ」
Tシャツを乱暴に脱がされ、自分のつけた覚えのない噛み痕に気づくと、目を見開いて硬直した。
「お前、……他のやつとセックスしたのか?」
「……ごめんなさい」
はあー、とため息をついて、ケントさんは俺の上から降りた。
「お前に貞操観念とかないんだな」
そう言って、ケントさんは部屋を出ていった。
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