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6・依頼人②一ノ瀬涼
回想~捜索編
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8月17日、涼くんをまだ一ノ瀬と呼んでいたころだった。
玲央が夏の課外授業に来ない、と一ノ瀬が相談してきた。
「森内くん?」
「そう。足ケガしちゃって、プロ目指すの厳しいから勉強するって言ってたんだよなぁ」
「連絡したの?」
「それが、電源切ってるらしくてつながらない。先生に玲央のこと聞いたら、課外の申し込みキャンセルしたってさ」
「そっか」
「7月末にさ、ほら、花火大会の次の日、サッカー部がオレの歓迎会してくれたんだけど、そのときも来なくて。オレ嫌われたかなと思ったけど、その時は風邪引いたらしい」
「じゃあ終業式から会ってないんだ?」
「そ。今日から後期課外スタートだったけど隣のクラスにいなかったから、おかしいなと思ってさ。まあ気が変わったのかもしれないけど」
一ノ瀬は、森内くんの代わりに試合に出る形になったため、最近気にかけているようだった。
「連絡つかないの気になるね」
「だよなー? まあ、またかけてみるわ」
9月。
小さな気がかりが、徐々に大きく肥大し始めた。
森内くんは夏休みが明けても学校に来なかったのだ。
「集会で見かけなかったけど」
俺は一ノ瀬に声をかけた。
「連絡するけど、相変わらず電源切れてるし、ラインも既読にならない」
「先生に聞いてみる?」
「あ、じゃあオレサッカーつながりあるし、また聞いてみるわ」
一ノ瀬は職員室へと向かった。
森内玲央は、サッカー部のエースだったが、6月に左脚に大怪我を負い、リハビリ中だった。
部員の故障者が増えたことで、サッカー同好会の一ノ瀬涼がピンチヒッターとしてかり出されている。7月28日の日曜日、サッカー部の2年による歓迎会が行われたが、その時森内玲央は風邪を引きドタキャンをしたようだ。
一ノ瀬は森内くんに気を使い、電話口で「グループラインに入っていいか」と直接話をしている。声はガラガラだったが、特に一ノ瀬を恨んでいる様子もなく元気そうだったという。
「休みの連絡入ったみたい」
一ノ瀬が職員室から戻ってきた。
イヤな予感がした。
「少なくても、本人と2週間は連絡とれてないよね。家に行ってみる?」
と一ノ瀬に提案し、放課後森内家へ行ってみることにした。大好きだったサッカーができなくなり、自暴自棄になってるのではと懸念し、森内くんに会わずにはいられなくなった。
森内くんの家はcafeリコの近くにあり、以前場所を聞いたことがあったので、スムーズにたどり着いた。
だが、インターホンを鳴らしても誰も出ず、どうやら不在のようだった。
「どこか行ったのかな……あ、幼なじみ」
「幼なじみ?」
「ほら、歓迎会の時、ゆーとが玲央に電話してさ、スピーカーにしてみんなでわーわーしゃべったんだけど、その時幼なじみのミオちゃんに呼び出されたって話してたんだよね。そういや、ゆーとって玲央の中学の同級生らしいわ。ちょっと、ゆーとに連絡してみる」
一ノ瀬は古賀くんに電話をし、森内くんとミオちゃんの情報を聞いていた。
「ゆーとから今聞いたけど、玲央最近見かけなかったみたい。近所だからコンビニとかで会うんだけどな、て言ってた」
どこか違う場所にいる??
「家出かな?」
にしては、友達とは連絡しそうなものだが。
俺は、7月中旬に森内くんもいっしょにカラオケに行ったことを思い出した。
何度着信が鳴っても出ない森内くんに、不思議に思ったんだった。
やがて画面を確認することもせず、ソファーシートにおきっぱなしにした。
画面に、メッセージが表示された。
『なんで来ないの?』
見るつもりはなかったが、隣に置いてあるもんだから光るたびに見えてしまった。
『住所ここな』
『待ってる』
画面を詳細に思い出す。
相手は『兄ちゃん』だった。
「一ノ瀬、森内くんてお兄ちゃんいるっけ?」
「あ、いるわ。確か今年から大学生で、一人暮らししてるって言ってた」
「ミオちゃんに話聞いたあと、お兄ちゃんち行ってみようか」
幼なじみのミオちゃんちを訪ねると、本人がおり、花火大会の時のことを話してくれた。
「あー、あたし体調悪くしちゃって、玲央が連れて帰ってくれたの。え、光太だよ。玲央のお兄ちゃん。いっしょに花火大会に行って具合悪くなって、光太が玲央を呼び出してくれたみたいで、光太んちからタクシーで家に帰ってきたよ。あー、そういえば、最近玲央見かけてないかも……」
花火大会の日、お兄ちゃんのうちへ行き、幼なじみを連れてこっちまで帰ってきている。翌日、サッカー部の歓迎会があったが、それを欠席している。
最近自宅付近で見かけてない。
「やっぱ、お兄ちゃんちかな?」
「学校に連絡してるし、家出かもなー。明日も学校来てなかったら、お兄ちゃんち行ってみよう」
遅くなり、森内兄の住むアパートまでバスがないため、明日仕切り直すことになった。
翌日。
授業の前に普通科をのぞいたが、やはり森内くんは来ていなかった。
「あまね!!」
一ノ瀬が職員室の方から走ってやってきた。
「欠席の連絡って、お兄ちゃんからみたい」
俺と一ノ瀬は一抹の不安にかられ、思わず学校を飛び出した。
玲央が夏の課外授業に来ない、と一ノ瀬が相談してきた。
「森内くん?」
「そう。足ケガしちゃって、プロ目指すの厳しいから勉強するって言ってたんだよなぁ」
「連絡したの?」
「それが、電源切ってるらしくてつながらない。先生に玲央のこと聞いたら、課外の申し込みキャンセルしたってさ」
「そっか」
「7月末にさ、ほら、花火大会の次の日、サッカー部がオレの歓迎会してくれたんだけど、そのときも来なくて。オレ嫌われたかなと思ったけど、その時は風邪引いたらしい」
「じゃあ終業式から会ってないんだ?」
「そ。今日から後期課外スタートだったけど隣のクラスにいなかったから、おかしいなと思ってさ。まあ気が変わったのかもしれないけど」
一ノ瀬は、森内くんの代わりに試合に出る形になったため、最近気にかけているようだった。
「連絡つかないの気になるね」
「だよなー? まあ、またかけてみるわ」
9月。
小さな気がかりが、徐々に大きく肥大し始めた。
森内くんは夏休みが明けても学校に来なかったのだ。
「集会で見かけなかったけど」
俺は一ノ瀬に声をかけた。
「連絡するけど、相変わらず電源切れてるし、ラインも既読にならない」
「先生に聞いてみる?」
「あ、じゃあオレサッカーつながりあるし、また聞いてみるわ」
一ノ瀬は職員室へと向かった。
森内玲央は、サッカー部のエースだったが、6月に左脚に大怪我を負い、リハビリ中だった。
部員の故障者が増えたことで、サッカー同好会の一ノ瀬涼がピンチヒッターとしてかり出されている。7月28日の日曜日、サッカー部の2年による歓迎会が行われたが、その時森内玲央は風邪を引きドタキャンをしたようだ。
一ノ瀬は森内くんに気を使い、電話口で「グループラインに入っていいか」と直接話をしている。声はガラガラだったが、特に一ノ瀬を恨んでいる様子もなく元気そうだったという。
「休みの連絡入ったみたい」
一ノ瀬が職員室から戻ってきた。
イヤな予感がした。
「少なくても、本人と2週間は連絡とれてないよね。家に行ってみる?」
と一ノ瀬に提案し、放課後森内家へ行ってみることにした。大好きだったサッカーができなくなり、自暴自棄になってるのではと懸念し、森内くんに会わずにはいられなくなった。
森内くんの家はcafeリコの近くにあり、以前場所を聞いたことがあったので、スムーズにたどり着いた。
だが、インターホンを鳴らしても誰も出ず、どうやら不在のようだった。
「どこか行ったのかな……あ、幼なじみ」
「幼なじみ?」
「ほら、歓迎会の時、ゆーとが玲央に電話してさ、スピーカーにしてみんなでわーわーしゃべったんだけど、その時幼なじみのミオちゃんに呼び出されたって話してたんだよね。そういや、ゆーとって玲央の中学の同級生らしいわ。ちょっと、ゆーとに連絡してみる」
一ノ瀬は古賀くんに電話をし、森内くんとミオちゃんの情報を聞いていた。
「ゆーとから今聞いたけど、玲央最近見かけなかったみたい。近所だからコンビニとかで会うんだけどな、て言ってた」
どこか違う場所にいる??
「家出かな?」
にしては、友達とは連絡しそうなものだが。
俺は、7月中旬に森内くんもいっしょにカラオケに行ったことを思い出した。
何度着信が鳴っても出ない森内くんに、不思議に思ったんだった。
やがて画面を確認することもせず、ソファーシートにおきっぱなしにした。
画面に、メッセージが表示された。
『なんで来ないの?』
見るつもりはなかったが、隣に置いてあるもんだから光るたびに見えてしまった。
『住所ここな』
『待ってる』
画面を詳細に思い出す。
相手は『兄ちゃん』だった。
「一ノ瀬、森内くんてお兄ちゃんいるっけ?」
「あ、いるわ。確か今年から大学生で、一人暮らししてるって言ってた」
「ミオちゃんに話聞いたあと、お兄ちゃんち行ってみようか」
幼なじみのミオちゃんちを訪ねると、本人がおり、花火大会の時のことを話してくれた。
「あー、あたし体調悪くしちゃって、玲央が連れて帰ってくれたの。え、光太だよ。玲央のお兄ちゃん。いっしょに花火大会に行って具合悪くなって、光太が玲央を呼び出してくれたみたいで、光太んちからタクシーで家に帰ってきたよ。あー、そういえば、最近玲央見かけてないかも……」
花火大会の日、お兄ちゃんのうちへ行き、幼なじみを連れてこっちまで帰ってきている。翌日、サッカー部の歓迎会があったが、それを欠席している。
最近自宅付近で見かけてない。
「やっぱ、お兄ちゃんちかな?」
「学校に連絡してるし、家出かもなー。明日も学校来てなかったら、お兄ちゃんち行ってみよう」
遅くなり、森内兄の住むアパートまでバスがないため、明日仕切り直すことになった。
翌日。
授業の前に普通科をのぞいたが、やはり森内くんは来ていなかった。
「あまね!!」
一ノ瀬が職員室の方から走ってやってきた。
「欠席の連絡って、お兄ちゃんからみたい」
俺と一ノ瀬は一抹の不安にかられ、思わず学校を飛び出した。
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