39 / 102
6・依頼人②一ノ瀬涼
涼くんの尋問
しおりを挟む
「やっぱり、暴力なくてもあまねはエッチできるんじゃないのかなー」
と、涼くんは脱衣所で呟いた。
「あ、いや……ほんと気をつかわせちゃってごめん」
俺はトレーナーとスウェットをはくと、ネックウォーマーをつけた。
「あっ! また髪がビチョ濡れのままじゃん」
涼くんが慌てて俺の髪をタオルで拭く。
「ありがとぉ」
涼くんとなら、ほんとほのぼの付き合えるんだろうな、なんてぼんやりと考えてしまった。
涼くんが、今日いっしょに寝よ、と誘ってきたので、一旦別れてから歯ブラシと枕とスマホを持って部屋を訪ねた。
「参考までに聞きたいんだけどさ、」
とポテチを食べながら涼くんが聞いてきた。
「どういうことされたら感じちゃうの?」
「えっ、その話するの?!」
「だってさ、あまねのこと全部知りたくなっちゃった。なんかケントさんに委ねようとか勝手に思ってたけど、やっぱオレはあまねのこと一番の理解者でありたい」
「涼くん……」
「と、いうわけで話してみよ?」
「うーわ~残酷~」
「縛られた?」
「し、縛られた」
「気持ち良かった?」
「良かった……」
「叩かれた?」
「叩かれてない」
「殴られた?」
「殴られたことはあるけど、それは普通のときかな。エッチしたときじゃない」
「え、殴られたの?」
「あー、最初ね、ケントさんの名前違うって指摘したとき」
「うーわー……あまね、ほんと無鉄砲なとこあるよな」
「申し訳ない」
「あとはなんだー? あ、首絞めとか?」
「絞められた……ちょっと気持ち良かった……」
あー、もう恥ずかしくてポテチ食べながら話すことじゃないし穴があったら入りたいっ。
両手で顔を覆う。
ふと思う。
森内くんの首についてたのは、キスマークだった。
殴られた形跡、縛られた形跡、痣や痕になって身体中につけられていたが、手当てされた箇所もあった。お風呂や食事はとれていたようだった。
もしかしたら、俺があの時思ったよりも、森内くんのお兄ちゃんは森内くんを愛していたのかもしれない。
『もや』のせいで暴走し、森内くんを傷つけすぎてしまったのかもしれない。
もとは愛情による表現だったのかもしれない。
俺と同じで、森内くんがお兄さんに痛みを望んでいたかもしれない。
全部想像だ。
暴力を愛情で片付けたら、世の中の虐待が正当化されてしまう。
でも、
でも逆に、
そこに相互の愛があったのなら、ほんの少し……
ほんの少し……
「あまね?」
はっ、と我に返る。
「ごめん」
「なんか考えてた?」
「……うーんと、今度殴られてみようかと考えてた」
「━━━なんでだよっ」
驚いた涼くんは、視線を横にずらし、少し考え込んだ。
そして、入り口そばに置いた、帰省用にまとめられた段ボールの上からガムテープを取った。
「……オレがやる」
「え」
涼くんは椅子に座っていた俺の両手をガムテープでぐるぐると巻き、背もたれの後ろに固定した。
「りょ、涼くん」
「黙って」
怖くなって顔のひきつった俺に、涼くんは甘くて優しいキスをする。
おいしい、と言った唾液を、涼くんは咥内を犯しながら流し込み、あごを押さえて無理に飲ませる。
そのまま首筋をついばみ、右肩を軽く噛んだ。
「っあ゛っりょ、りょ、うくん」
正直、半立ちになったが、恐怖も残っている状態だった。
「殴るよ?」
怖くて、
目をぎゅっとつぶる。
……10秒ほどだろうか。
……20秒ほどだろうか。
俺はそっと目を開ける。
「涼くん……」
涼くんは、苦悶の表情を浮かべ、座り込んでいた。
「ごめん、やっぱオレにはできないわ」
「……うん、俺も、変なこと言ってごめん」
俺はただ、謝った。
と、涼くんは脱衣所で呟いた。
「あ、いや……ほんと気をつかわせちゃってごめん」
俺はトレーナーとスウェットをはくと、ネックウォーマーをつけた。
「あっ! また髪がビチョ濡れのままじゃん」
涼くんが慌てて俺の髪をタオルで拭く。
「ありがとぉ」
涼くんとなら、ほんとほのぼの付き合えるんだろうな、なんてぼんやりと考えてしまった。
涼くんが、今日いっしょに寝よ、と誘ってきたので、一旦別れてから歯ブラシと枕とスマホを持って部屋を訪ねた。
「参考までに聞きたいんだけどさ、」
とポテチを食べながら涼くんが聞いてきた。
「どういうことされたら感じちゃうの?」
「えっ、その話するの?!」
「だってさ、あまねのこと全部知りたくなっちゃった。なんかケントさんに委ねようとか勝手に思ってたけど、やっぱオレはあまねのこと一番の理解者でありたい」
「涼くん……」
「と、いうわけで話してみよ?」
「うーわ~残酷~」
「縛られた?」
「し、縛られた」
「気持ち良かった?」
「良かった……」
「叩かれた?」
「叩かれてない」
「殴られた?」
「殴られたことはあるけど、それは普通のときかな。エッチしたときじゃない」
「え、殴られたの?」
「あー、最初ね、ケントさんの名前違うって指摘したとき」
「うーわー……あまね、ほんと無鉄砲なとこあるよな」
「申し訳ない」
「あとはなんだー? あ、首絞めとか?」
「絞められた……ちょっと気持ち良かった……」
あー、もう恥ずかしくてポテチ食べながら話すことじゃないし穴があったら入りたいっ。
両手で顔を覆う。
ふと思う。
森内くんの首についてたのは、キスマークだった。
殴られた形跡、縛られた形跡、痣や痕になって身体中につけられていたが、手当てされた箇所もあった。お風呂や食事はとれていたようだった。
もしかしたら、俺があの時思ったよりも、森内くんのお兄ちゃんは森内くんを愛していたのかもしれない。
『もや』のせいで暴走し、森内くんを傷つけすぎてしまったのかもしれない。
もとは愛情による表現だったのかもしれない。
俺と同じで、森内くんがお兄さんに痛みを望んでいたかもしれない。
全部想像だ。
暴力を愛情で片付けたら、世の中の虐待が正当化されてしまう。
でも、
でも逆に、
そこに相互の愛があったのなら、ほんの少し……
ほんの少し……
「あまね?」
はっ、と我に返る。
「ごめん」
「なんか考えてた?」
「……うーんと、今度殴られてみようかと考えてた」
「━━━なんでだよっ」
驚いた涼くんは、視線を横にずらし、少し考え込んだ。
そして、入り口そばに置いた、帰省用にまとめられた段ボールの上からガムテープを取った。
「……オレがやる」
「え」
涼くんは椅子に座っていた俺の両手をガムテープでぐるぐると巻き、背もたれの後ろに固定した。
「りょ、涼くん」
「黙って」
怖くなって顔のひきつった俺に、涼くんは甘くて優しいキスをする。
おいしい、と言った唾液を、涼くんは咥内を犯しながら流し込み、あごを押さえて無理に飲ませる。
そのまま首筋をついばみ、右肩を軽く噛んだ。
「っあ゛っりょ、りょ、うくん」
正直、半立ちになったが、恐怖も残っている状態だった。
「殴るよ?」
怖くて、
目をぎゅっとつぶる。
……10秒ほどだろうか。
……20秒ほどだろうか。
俺はそっと目を開ける。
「涼くん……」
涼くんは、苦悶の表情を浮かべ、座り込んでいた。
「ごめん、やっぱオレにはできないわ」
「……うん、俺も、変なこと言ってごめん」
俺はただ、謝った。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。

赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる