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5・④再び

水曜日、バイト先で

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今週も水曜日に、cafeリコのバイトが入った。
先々週、先週に続き、平日は3回目だ。どうしてもシフトが埋まらなかったらしく、ピンチヒッターとしてかりだされていた。


あれから、4日たったが、ケントさんからは連絡が来ない。一縷の望みを持って、ケントさん自身からの連絡を待ったが、ラインも電話も来なかった。あの女性が言っていたことは本当だったのだと、落胆した。

神崎家、堂本コーチ、そしてケントさん、と心を深く傷つけることが重なり、なかなか浮上できずにいるが、そんな中で涼くんがいてくれたことが救いだった。涼くんのおかげで、沈みきったままではなく、空に浮かぶ月が確認できる程度の深さまで回復できていた。


それでも、現実はゆらりと揺れ、自分の位置が定められずにいた。


閉店間際、2階の客がいつもより早くいなくなったようで、店長の千尋さんが降りてきた。

「あまねくん、今週もごめんな」
と、千尋さんが言った。ベテランの亜矢子さんが1ヶ月ほど遅番ができなくなり、閉め作業のできるバイトがいなかったようだ。

「俺は大丈夫です、千尋店長の方こそ連勤なんじゃないですか?」

「そうなんだよ~、特に今まで亜矢子に任せっきりだったから、時間かかるし最悪。今日も亜矢子が帰るときに嫌味言っちゃったわ」

「あはは、亜矢子さん帰りずらかったでしょうね。あ、千尋店長、2階もうノーゲスなら、俺どっちも閉め作業やりますけど」

「あー、ほんとー?  助かる」

「じゃあ2階ちょっと片付けてくるんで、その間だけ1階お願いします」

「ありがとー、オレほんとコーヒーマシンの洗浄嫌い」

「も~、カフェの店長が何言ってるんすか」
しばし談笑したあと、俺は2階に上がり、カウンターの片付けとレジ閉めをし15分で下に降りてきた。

「早いな、ありがと。ここも今帰ったわ」

「21時45分か、俺残りやっときますよ。1人でもいつもより早く終わりそう」

「えー、助かる~じゃ、あとヨロシクな」

はい、と答えて俺はテーブルの片付けに向かった。








いつもより早く終わり、1人で従業員入り口から出ると、駐車場から誰かがこちらに歩いてきた。忘れ物かな?と思い、様子をうかがうと、「神崎くん?  だよね?」
と声をかけてきた。

「はい」

「あー、良かった。あのさ、南城町に住む黒木さんておばあちゃん知ってるよね」

「ああ、はい」
薬物転売疑惑の渦中にあった志村千鶴さんの担当の患者さんで、俺はひと月ほど前に話を聞きに行った。

「急に亡くなられてね、いっしょに通夜に来てくれないかな。お金とか服とかは気にしなくて大丈夫」

「そうなんですね……わかりました」

「車で連れていくね」
と言い、その女性は俺を車にいざなった。

駐車場の外灯を消したため、よく顔が見えなかったが、俺の名を知っているということは黒木さんと仲のよい方なのだろう。若いので、もしかしたらお孫さんかもしれない。

「あ、あの、黒木さんのお孫さん、ですか?」

「そうなの、よくわかったね」

ホッ、と胸を撫で下ろした。

駐車場にはまだ2台停まっており、そのうち奥の車に案内された。

助手席の後ろに座ると、黒木さん(というか不明だが)静かに発進した。

赤信号で停まったとき、明るいコンビニの外灯で彼女の顔が照らされ、横顔が見えた。
どこかで見た気がする。正面から見ればわかるかな、と思ったが、薄暗くてよく見えなかった。

南城町に入る頃、俺は寮に電話するのを忘れてたので、電話をかけていいか尋ねると、
「運転に集中できないから、着くまで待ってて。もうすぐだから」
と苛立った様子で言われた。

祖母が亡くなって、気が立ってるようだ。





……気が立つかな?









そうして、カフェから20分ほどで黒木さんのうちにたどり着いた。山と田んぼに囲まれたポツンとした一軒家で、車のライトを消すと真っ暗で何も見えなかった。

「神崎くん、ごめん、スマホの明かりで照らしてくれる?」

「あ、はい。……自宅でお通夜、珍しいですね」

「田舎だからね」


だからといって、こんなに真っ暗なのは疑問だ。


「ほんとにここですか?」
と、


うしろを




振り向いた、瞬間

















気を失った━━━━━━





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