【完結】コドクニアラズ ~淫らな『なんでも屋』~

ナツキ

文字の大きさ
上 下
28 / 102
5・④再び

コーチってこんな人だったのか

しおりを挟む
サッカー部のコーチ堂本智也は28才独身で、よく寮の当直に入っていた。


日曜の朝、食堂に行くと彼がサッカー部の1年とともに朝食をとっており、俺たちに気付いて大きく手を降った。

「おーい、涼、あまね。こっちに来いよ」

フレンドリーな性格で、部員でない俺にも良くしてくれる人だった。

「はよーございまーす。瑛二がいるんで、オレら向こうで食べまーす」
コーチにあいさつをすると、涼くんは瑛二をジロリと一瞥し、水を取りに行った。

「うっわ。涼怒ってる?  瑛二何したんだよッ」

「何もしてません」

「いやいやいや、涼が怒るの珍しいだろ」

「勘違いです」

「誰の」

「オレのっす」

「謝れ!!」
ゴツン、と瑛二の頭を小突いていた。

「涼がいなくちゃ今日の練習も回らないだろ」

「あー、コーチ、今日休みまーす」
遠くから涼くんが返事をする。

堂本コーチはガックシと、頭を垂れた。

俺は少し離れたところでその様子をうかがい、平和なやり取りに笑みがこぼれた。









コンコン、
「あまねー」
食堂から戻ってしばらくすると、部屋にコーチがやってきた。

「お疲れ様です」

「昨夜の瑛二のこと聞いたわ、ごめんなー」

「え?  ああ、俺はなにも……」

「それなんだけどさ、オレ、1年にあまねのこと言っちゃったんだわ。それで、瑛二お前のこと気になってるんだと思う」

「え?  え……と、何の話ですかね?」
俺は検討がつかず、コーチが何を言っているのかわからなかった。

「いやー、この前あまりにも1年がたるんでてな、あまねが苦労人で、サッカーやりたくてもできないんだぞ、って言っちゃったんだわ。ほら、家庭環境とか悪いってやつ」



俺は、血の気がひいた。


「それでお前たちは恵まれてるんだからもっと励め、って、まあ叱咤激励ってやつよ。あまねの名前は出してないけど、瑛二気付いたんだろうな」


なんてことを言うんだ。


俺が敢えて言わずにいたことを、なぜこの人がバラしてしまうんだ。

「同情して、あまねの行動を気にしてたみたいだな」


それがイヤなんだよ。

俺は、そうされたくなかったから、言わなかったんだ。

「それでさ、涼が今日練習行くの説得してくれない?  試合形式でやるのに、どうしても人数ギリギリなんだわ。あー、あまねでもいいよ?」


最悪だ。


「イヤです」


俺は、それしか言うことができなかった。羞恥と怒りと、悲しみと、感情が爆発してコーチにぶつけそうになる。

「……じゃあさ、この話も1年にしようかな。お前、1年のとき2年の喜多嶋と同室だったろ。進級してすぐに、あいつ寮離れて、今はわざわざ遠い実家から通ってるんだってな」

「……」

「あまねの身体に溺れたって話だぞ」

「!!」

「骨抜きにしたんだってなぁ。やるじゃん」

このコーチ、いい人だと思ってたけど、俺の思い違いだったようだ。


は虫類のような不気味な眼差しで、俺をなめ回すように見てくる。

俺は思わず後ずさりした。


「どんなこと、したんだ?」


コーチは徐々に距離を縮めていき、窓際まで俺を追いつめた。

「オレにもやってくれる?」

逃げ場はない。

瑛二のような体格のコーチは、腕を窓に当て、俺を完全に囲った。

髪を舐めるように撫で、

「どっちがいいか選んで。涼を説得する?  それとも喜多嶋のこと話していい?  あー、これ話したら、尾ひれついて淫乱なあまねってウワサになるかもなぁ。誰とでもヤる、男が大好き、舐めるの大好き、見られるの大好き、」

「やめてくださいッッ」

「それとも、オレとちょっと遊ぶ?」

「━━ッ」

「はい、選択肢3つなー。10秒以内に選べよ」














俺にも、『もや』が現れた気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...