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2・依頼人④小野寺瑛二
スイートルーム1
しおりを挟む二次会も終盤に差し掛かり、遠山さんから休憩を促されてバックヤードに入った。
すると、ケントさんから「どうやって帰るんだ?」とラインが来た。
一ノ瀬の彼女さんに連れて帰ってもらう予定です、と返信すると、「今夜の招待客、みんな部屋取ってもらってるから、いっしょに泊まるか?」とすぐに返ってきた。
一ノ瀬がやってきたので軽く相談してみると、
「ふふーん、さっそくか」
とニヤッと笑った。
「何が」
「なんでもない。オレもアリスちゃんち泊まりたいから、ちょうどいいじゃん。明日リコのバイトは休みだろ?」
「うん、……」
俺は期待に溢れたが、いやいや、期待をするなと、自分を戒めた。
片付けもそこそこに上がらせてくれ、遠山さんから「二次会ではごめんな」と言われた。
酔っぱらいに絡まれたのを気にしてくれたようだった。
俺は急いで着替え、ケントさんの教えてくれた部屋へと向かう。
ここは式場が海辺に建てられていて、披露宴会場やレストラン、バーなどの入った、宿泊施設だ。言われた階を押そうとすると、最上階だった。
「あれ?」
エレベーターを降りると、窓辺のソファにケントさんが座って待っててくれていた。
「思ったより早かったな」
「社員さんが早く上がらせてくれて……ね、ケントさん、ここ最上階ですけど、他のゲストもここに泊まってるんですか?」
静かなフロアで、とても他の宿泊客がいるようには思えなかった。
「差額を払って、こっちにしたんだ」
と言い、ケントさんは俺の両肩に手を添え、誘導していった。
ドアを開けると、とんでもない広さの客室だった。
「ケケケケントさん、ここって、スイートルームとかいうやつじゃ」
俺は驚いてどもってしまった。
入り口で呆然と立ち尽くす俺に、ケントさんは後ろから抱きしめ、耳元にキスをした。
「ッ━━━!!」
ケントさんは右手で俺の顎をつかみ、顔の向きを変えて唇にキスをした。
俺は、心臓が壊れそうなくらいドクドクと鳴り響く。シャツの裾からケントさんの左手がつたい、俺の心臓に手を当てた。
「すげー音」
優しくて低い声が、俺を恍惚とさせた。
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