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2・依頼人④小野寺瑛二

コンビニ2

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「なっに!!  あの人!!」

一ノ瀬は俺のこぐチャリの後ろで、プリプリと怒っていた。

「一ノ瀬~、ごめん。いつもはたぶんあんな人じゃないんだけど、ちょっと不機嫌だったね」

「えー?  じゃあ今日だけ機嫌悪かった?」

「うん、さっきだけ」

「……えー?  ……ええー?」

一ノ瀬は何かに気付いたようで、驚愕の声を上げたあと、黙り込んでしまった。

「おーい」

「……」
一ノ瀬は返事しない。

仕方なく、俺は無言でチャリをこぎ続けた。


別のコンビニに到着し、一ノ瀬は買いそびれた食料を買いに店内へと入って行った。

俺はスマホを取り出し、ケントさんの連絡先をじっと眺めた。

消してしまおうか。

コドアラのことを説明するには、俺の秘密も話さなくてはならない。それは、ケントさんからしたら『中二病の戯れ言』だと嘲笑されるだろう。
ただでさえ境遇を知られて気まずいのに。


「お待たせ」
一ノ瀬は袋を下げて戻ってきた。



「……あまねさ、ケント先生のことどう思ってるの」
コンビニの隅で壁にもたれながら、一ノ瀬と話すことにする。

「ちょっとしくじっちゃって、家族のこと知られたから気まずい」

「あまねは同情されるの嫌いだもんなあ」

「あと金ないの知られて色々おごってもらうの辛い」

「……ケント先生から得ているのは、そういう感情なわけ?  かわいそうな子~て思われてんの?」

「だと思うけど」

「いやー……違うと思うなぁ~」
一ノ瀬は甘いコーヒーをコクリと飲んで、言うか言うまいか考えているようだった。

「ケント先生は、さっきオレを牽制したんだと思う。嫉妬したんじゃない?」

「……ん?」

「たぶん、ケント先生はあまねのこと好きになってるよ」

「……え?」

「瑛二のときと同じ反応だなあ。ほんと、あまね疎いよね。そーゆー感じの雰囲気なってないの?  瑛二とか襲ってきたじゃん」

「ぁー……」

「前も言ったけど、あまね、めちゃくちゃ色っぽい。ケント先生イケメンだからまさかなーと思ったけどさ。つまりー、なんだ?  かわいそうな子じゃなくてかわいい、愛しい、って気持ちで接してるんじゃないの」

「な、難解ー……」
俺は理解ができず目をギュッとつぶった。

「俺、男だけど」

「知っとるわ。風呂場でいっつもチンコ見えとるわ」

「見んな」

「オレ、おっぱい大好き人間だけども、あまねなら抱けるかもとは思ってる」

「……そういや、チンコ立ったって言ってましたね……」
俺は拳をこめかみにあてふさぎ込んだ。

「あまねはさ、視覚能力あるから、人の気持ち読むの苦手だよなあ。オレと正反対」

「一ノ瀬の、空気読む感じとか、気遣いできるのほんと尊敬してるよ」
と褒めると、一ノ瀬はニコッと笑った。


「そんな全方位モテキャラのオレが、どうしても初見で嫌われるのはさー、陰キャ女子なわけよ。でも彼女たちは、オレの行動次第で好きにさせれるわけ。でも、本当に無理なのは、『嫉妬にかられた男』なんだなあ。例えば玲央のお兄ちゃんね」

「森内兄ちゃんねー、あれはヤバかった」

「オレ、ケント先生にも刺されそうだな~」

「その冗談笑えないから……」

一ノ瀬が以前相談してきた案件で、サッカー部の同級生が行方不明になったという話があった。結局これは森内を溺愛するあまり兄の光太が自宅に監禁していたものだった。
救出の際、体格の良い兄との乱闘になり、一ノ瀬は刺されそうになっている。
本当に、ヒヤッとした出来事だった。

「まあとにかく、ちゃんとケント先生と話してみなよ。今頃きっと、ケント先生は後悔して悶えてるかもよ~」
と、一ノ瀬は最後茶化すように言った。

「来週末は結婚式って言ってたから、次会うことがあれば再来週かな……」

「え、式場どこ?」

「あー、えーとステッラポラーレてとこ」

「知ってる!  何時から?」

「夕方としか聞いてないな」

「ちょい待ってて」

一ノ瀬はどこかに連絡し、なんか一ノ瀬と俺を入れるように頼んでいた。

「よっしゃ」

「なに?」

「バイトしよう!  新しい彼女、式場のバンケットスタッフしてるんだ」

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