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2・依頼人④小野寺瑛二
コンビニ1
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寮の近くにあるコンビニまで送ってもらい、チャリを車から下ろしていると、一ノ瀬に会った。
「あまねー! 今週も外泊してたんだろ。あ、もしかして『ケント先生』の車?」
「そう。一ノ瀬、買い物?」
「うわー!! かっけー!! これ、ランドローバーじゃん」
「ナニソレ」
俺はきょとんとしたが、一ノ瀬はそれを無視し、興奮気味にケントさんに話しかけた。
「はじめましてー、ケント先生。オレ、一ノ瀬涼て言います。あまねの同級生です。車、めっちゃカッコいいすね!!」
「ありがとう」
「わー、ディフェンダーかぁ♡♡ 実物見るの初めてかも。乗り心地良さそー♡♡」
一ノ瀬の、語尾にハートマークついてるようなはしゃぎぶりに、車が珍しくて高価なものだと今頃気付かされた。
ケントさん、ほんとに金持ちなんだ……。
「一ノ瀬くん、探偵ごっこはほどほどにな」
と、ケントさんのその一言に、冷や汗が出た。
「あ、あまねから聞きましたか? いつもはオレも手伝うんですけど、最近サッカーが忙しくて」
俺は、まだ言ってない。
どこまで事件の概要を話すべきか悩んで、結局言えなかったのだ。仲間のことも、説明した覚えはなかった。
どこで一ノ瀬のこと知ったんだろう?
「今回市外でなかなかツテがなくて、解決までに時間かかってるんですよー。ケント先生が手伝ってくれて、感謝っす!」
一ノ瀬は、仲間になったケントさんにウエルカムのアピールをしていたが、ケントさんの表情はビミョーな感じだった。先ほどまでのケントさんとは、明らかに様子が違っていた。
やがて、ケントさんは一度空に視線を移したあと、
「コドアラってどういう意味?」
と聞いてきた。
━━━あー、なるほど。
俺が霊園を散策しているときに、ノート見たんだな。
やられた。
俺、ケントさんの前でノートに記入してた。
でも、盗み見なんて……と冷ややかな視線をケントさんに送っていると、
「コドアラノートのことすか? アラズ先生、ていう名物先生がいるんですけど……ん、ちょっと待って、……あまね、ケント先生て仲間だよね?」
不穏の空気を敏感に感じ取り、察した一ノ瀬は一旦答えるのをやめた。
俺はそうとも、違うとも言いづらかった。
よくよく考えたら、谷口さんから話を聞いて欲しい、と強引に依頼したものの、コドアラの本質について伝えてないため、いやむしろケントさんは頼まれた役割を終えて、もうフェードアウトできる状態なわけで、これ以上話をせずに関係を切ることもできるわけだ。
誰も言葉を発せず10秒ほど経ったあと、
「中二病集団が、がんばってる、って感じだな」
とケントさんは、あざけるような言い方をした。
カッと恥ずかしくなって顔を赤らめた俺に対して、一ノ瀬は
「いやいやいや、実際事件解決してますよ! サッカー部員の行方不明事件とか! ニュースにはなってないですけど、人命救助したんですよ!」
と憤怒を堪えながら反論してくれた。
「何か、巻き込んじゃってさーせんしたッ!」
言葉じりを強めに言い、一ノ瀬はやや強引にその場を切り上げた。
「じゃ、寮に帰るか!」
一ノ瀬は、俺の肩に手を回して、ケントさんにくるりと背中を向け寮の方へ誘導して行った。
背後から、ケントさんのため息が聞こえた気がした。
「あまねー! 今週も外泊してたんだろ。あ、もしかして『ケント先生』の車?」
「そう。一ノ瀬、買い物?」
「うわー!! かっけー!! これ、ランドローバーじゃん」
「ナニソレ」
俺はきょとんとしたが、一ノ瀬はそれを無視し、興奮気味にケントさんに話しかけた。
「はじめましてー、ケント先生。オレ、一ノ瀬涼て言います。あまねの同級生です。車、めっちゃカッコいいすね!!」
「ありがとう」
「わー、ディフェンダーかぁ♡♡ 実物見るの初めてかも。乗り心地良さそー♡♡」
一ノ瀬の、語尾にハートマークついてるようなはしゃぎぶりに、車が珍しくて高価なものだと今頃気付かされた。
ケントさん、ほんとに金持ちなんだ……。
「一ノ瀬くん、探偵ごっこはほどほどにな」
と、ケントさんのその一言に、冷や汗が出た。
「あ、あまねから聞きましたか? いつもはオレも手伝うんですけど、最近サッカーが忙しくて」
俺は、まだ言ってない。
どこまで事件の概要を話すべきか悩んで、結局言えなかったのだ。仲間のことも、説明した覚えはなかった。
どこで一ノ瀬のこと知ったんだろう?
「今回市外でなかなかツテがなくて、解決までに時間かかってるんですよー。ケント先生が手伝ってくれて、感謝っす!」
一ノ瀬は、仲間になったケントさんにウエルカムのアピールをしていたが、ケントさんの表情はビミョーな感じだった。先ほどまでのケントさんとは、明らかに様子が違っていた。
やがて、ケントさんは一度空に視線を移したあと、
「コドアラってどういう意味?」
と聞いてきた。
━━━あー、なるほど。
俺が霊園を散策しているときに、ノート見たんだな。
やられた。
俺、ケントさんの前でノートに記入してた。
でも、盗み見なんて……と冷ややかな視線をケントさんに送っていると、
「コドアラノートのことすか? アラズ先生、ていう名物先生がいるんですけど……ん、ちょっと待って、……あまね、ケント先生て仲間だよね?」
不穏の空気を敏感に感じ取り、察した一ノ瀬は一旦答えるのをやめた。
俺はそうとも、違うとも言いづらかった。
よくよく考えたら、谷口さんから話を聞いて欲しい、と強引に依頼したものの、コドアラの本質について伝えてないため、いやむしろケントさんは頼まれた役割を終えて、もうフェードアウトできる状態なわけで、これ以上話をせずに関係を切ることもできるわけだ。
誰も言葉を発せず10秒ほど経ったあと、
「中二病集団が、がんばってる、って感じだな」
とケントさんは、あざけるような言い方をした。
カッと恥ずかしくなって顔を赤らめた俺に対して、一ノ瀬は
「いやいやいや、実際事件解決してますよ! サッカー部員の行方不明事件とか! ニュースにはなってないですけど、人命救助したんですよ!」
と憤怒を堪えながら反論してくれた。
「何か、巻き込んじゃってさーせんしたッ!」
言葉じりを強めに言い、一ノ瀬はやや強引にその場を切り上げた。
「じゃ、寮に帰るか!」
一ノ瀬は、俺の肩に手を回して、ケントさんにくるりと背中を向け寮の方へ誘導して行った。
背後から、ケントさんのため息が聞こえた気がした。
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