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16、殴られた理由は
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' 僕の彼もイケメン枠の人間ですけど殴ってくるんでプラマイゼロです '
「あ゛━━━ッ!!」
やられた。
トイレに行ってる隙に、また勝手にツイートされた。
「えへへ♡」
「っくぅ……」
毎度毎度、何回言っても懲りない子だなっ!!
そろそろ伊織くんのお迎え来ると思って油断してた。
「なんかあまね先パイいえないみたいだから、代わりにおれがいっちゃった♡僕っていうのかわいいでしょ」
「かわいい、けど……」
なんか、他のツイート見てて思ったのは、文体が固い。もう少し伊織くんみたいな喋り方の方が……
い、いやいや、なに考えてるんだっ!
「い伊織くん、そろそろロビー降りとこ? サッカーの練習始まってるんだよね?」
地区予選を前にサボらせてしまって、古賀くんに申し訳ない。堂本コーチの抜けた新生咲月学園サッカー部は、士気が上がったのか好成績が期待されている。エースの伊織くんがサボってちゃ、部員も困るだろう。
「ねー、先パイ。なんで殴られたんですか?」
「えっ?」
ツイートして全世界に発信するだけでは飽き足らず、俺にそれ聞く?
本人前にして、伊織くんとのセックスに嫉妬されてとは言えない。
「おれ、実は昨日ケント先生と話したんですよ。夕方グラウンドまで見に来てくれて」
えー。そうだったんだ。
というか、みんな俺に言わないこと多くない?!
「そのとき、あまね先パイが勃起して射精もできたことこっそり伝えたんです。ほんとうに、心からホッとした顔でしたよ。おれは挿れてないこともいいました。ケント先生に続きどうぞ♡ていったら、『バーカ』って小突いてくれたの。自分とはできないかもしれないから、明日もよろしくなみたいなこといわれたんですよ」
「……」
「それなのに、あまね先パイ殴られてるし、落ち込んでるし。ケント先生おれにはああいったけど、ほんとはめちゃくちゃ怒ってたんですか? 嫉妬深いって聞いてたし。おれのせいですか」
「あ……いや、大丈夫だよ……」
今夜もどうせ殴られるなら、伊織くんとセックスしてみたかった。嫉妬してケントさんにも抱かれるなら、一石二鳥だ。
「あまね先パイが殴られてるの見て、おれなぐさめたくてえっちしちゃったけど。でもそれで今夜どうなるのか心配です~」
少し落ち込んだような声だったので、俺は申し訳なくなり、本当のことを話すことにした。
「伊織くんごめんね。今日誘っちゃったのは、完全に俺の都合だから」
俺はスマホの画面で時間を確認してから、続きを話した。
「俺はケントさんに何も返せないから、セックスくらいしたかったのに、俺のせいでずっとできなかったんだ。だから昨日嫉妬でも抱いてくれてうれしかった。殴られても俺は平気」
「……何も返せない、って……」
伊織くんは眉をひそめて、困った顔をした。
「俺が家庭環境悪くて、そこから抜け出すためにすごく助けてくれたんだ。お礼したいけど、今の俺には何もない」
「やーっぱり負い目感じてたんですね。動画売っちゃいますか? ウソです! にらまないで~。だいたい、ケント先生は貸したつもりでしてあげたんじゃないですよ。そういうのって無償の愛なんじゃないですか~?」
無償の、愛。
「そ、そうかもしれないけど……」
そんなの、申し訳ない。
俺なんかに。
「あー、あまね先パイが自分に自信ないのはわかってますけどー。でも暴力受け入れちゃダメですよ~。おれが先パイのおなか殴ったのは気持ちいいからですからね? それと違うんでしょ」
殴られて、乱暴に犯されて、ホッとした。
痛くて辛くて、やめて欲しかったけど、求められてると思って興奮した。
どっちだろう?
俺は殴られるの好きなのかな。
「ケントさんになら、殴られてもいい……」
そう、答えた。
伊織くんは何も言わずに、再び深いため息だけをついた。
帰り際に、伊織くんはふと思いついたような声で話しかけてきた。
「おれとのえっちが理由じゃないってことないですか?」
「え?」
「えっちが理由ならおれ今日拒否されたんじゃないかな? なにか別の理由があったのかも。ケンカしてないんですよね? 話しあったほうがいいのかも。どうですか? あ、もし明日来ない方がいいなら、ラインください~登録しておいたので。おじゃましましたぁ~」
「え? あ、うん……」
早口でまくし立てながら、伊織くんは帰って行った。
伊織くんとセックスしたことが原因としか考えられないけど。
それ以外ある??
俺は何もしてないし、する間もなくケントさんはキレた。
家に帰ってきて、5分やそこらだったよ?
そうだ、帰ってきた時は怒ってなかった。
伊織くんとの動画も、見る前だった。
……他の、何かを『見た』?
俺は昨夜のリビングを回想し、おかしなところはないか確認してみた。
特に何もない。
強いていうなら、IHのコンロをつけたままケントさんを出迎えたことくらいかな。
昼間たくさん唐揚げを揚げたけど、野菜がないからブロッコリー茹でてた。タイマー鳴って慌ててキッチンに戻ったんだ。
え、それくらいで怒る?
おこら……ないよね?
俺料理初心者だもん。
……呟いてみようかな。
スマホを手に取り、文字をゆっくりと打つ。
俺の思いを乗せて、そっと投稿してみる。
どこかにいる誰かが、教えてくれるだろうか。
嫉妬深いケントさんは、俺を家族にしたことでいったん落ち着いていた。退院したばかりで心配だからと、涼くんを呼んでくれた。翌日代わりに来た伊織くんには、動画を撮ればセックスしてもいいと言ってくれた。
たぶんこれ、断らなきゃいけなかったんだよね。試されてたのかな?
ソファはキレイにしたつもりだったけど、痕跡残ってたんだろうな。ほんとにヤッたんだと、ケントさんはそれでキレたに違いない。
ケントさんに嫌われるのが怖い。
これからはもっとケントさんが喜ぶ行動しなきゃ……。
いつまでもいっしょにいてもらえるように。
俺のこと捨てないでほしい。
だから、俺はなんでも受け入れたいんだ。
「あ゛━━━ッ!!」
やられた。
トイレに行ってる隙に、また勝手にツイートされた。
「えへへ♡」
「っくぅ……」
毎度毎度、何回言っても懲りない子だなっ!!
そろそろ伊織くんのお迎え来ると思って油断してた。
「なんかあまね先パイいえないみたいだから、代わりにおれがいっちゃった♡僕っていうのかわいいでしょ」
「かわいい、けど……」
なんか、他のツイート見てて思ったのは、文体が固い。もう少し伊織くんみたいな喋り方の方が……
い、いやいや、なに考えてるんだっ!
「い伊織くん、そろそろロビー降りとこ? サッカーの練習始まってるんだよね?」
地区予選を前にサボらせてしまって、古賀くんに申し訳ない。堂本コーチの抜けた新生咲月学園サッカー部は、士気が上がったのか好成績が期待されている。エースの伊織くんがサボってちゃ、部員も困るだろう。
「ねー、先パイ。なんで殴られたんですか?」
「えっ?」
ツイートして全世界に発信するだけでは飽き足らず、俺にそれ聞く?
本人前にして、伊織くんとのセックスに嫉妬されてとは言えない。
「おれ、実は昨日ケント先生と話したんですよ。夕方グラウンドまで見に来てくれて」
えー。そうだったんだ。
というか、みんな俺に言わないこと多くない?!
「そのとき、あまね先パイが勃起して射精もできたことこっそり伝えたんです。ほんとうに、心からホッとした顔でしたよ。おれは挿れてないこともいいました。ケント先生に続きどうぞ♡ていったら、『バーカ』って小突いてくれたの。自分とはできないかもしれないから、明日もよろしくなみたいなこといわれたんですよ」
「……」
「それなのに、あまね先パイ殴られてるし、落ち込んでるし。ケント先生おれにはああいったけど、ほんとはめちゃくちゃ怒ってたんですか? 嫉妬深いって聞いてたし。おれのせいですか」
「あ……いや、大丈夫だよ……」
今夜もどうせ殴られるなら、伊織くんとセックスしてみたかった。嫉妬してケントさんにも抱かれるなら、一石二鳥だ。
「あまね先パイが殴られてるの見て、おれなぐさめたくてえっちしちゃったけど。でもそれで今夜どうなるのか心配です~」
少し落ち込んだような声だったので、俺は申し訳なくなり、本当のことを話すことにした。
「伊織くんごめんね。今日誘っちゃったのは、完全に俺の都合だから」
俺はスマホの画面で時間を確認してから、続きを話した。
「俺はケントさんに何も返せないから、セックスくらいしたかったのに、俺のせいでずっとできなかったんだ。だから昨日嫉妬でも抱いてくれてうれしかった。殴られても俺は平気」
「……何も返せない、って……」
伊織くんは眉をひそめて、困った顔をした。
「俺が家庭環境悪くて、そこから抜け出すためにすごく助けてくれたんだ。お礼したいけど、今の俺には何もない」
「やーっぱり負い目感じてたんですね。動画売っちゃいますか? ウソです! にらまないで~。だいたい、ケント先生は貸したつもりでしてあげたんじゃないですよ。そういうのって無償の愛なんじゃないですか~?」
無償の、愛。
「そ、そうかもしれないけど……」
そんなの、申し訳ない。
俺なんかに。
「あー、あまね先パイが自分に自信ないのはわかってますけどー。でも暴力受け入れちゃダメですよ~。おれが先パイのおなか殴ったのは気持ちいいからですからね? それと違うんでしょ」
殴られて、乱暴に犯されて、ホッとした。
痛くて辛くて、やめて欲しかったけど、求められてると思って興奮した。
どっちだろう?
俺は殴られるの好きなのかな。
「ケントさんになら、殴られてもいい……」
そう、答えた。
伊織くんは何も言わずに、再び深いため息だけをついた。
帰り際に、伊織くんはふと思いついたような声で話しかけてきた。
「おれとのえっちが理由じゃないってことないですか?」
「え?」
「えっちが理由ならおれ今日拒否されたんじゃないかな? なにか別の理由があったのかも。ケンカしてないんですよね? 話しあったほうがいいのかも。どうですか? あ、もし明日来ない方がいいなら、ラインください~登録しておいたので。おじゃましましたぁ~」
「え? あ、うん……」
早口でまくし立てながら、伊織くんは帰って行った。
伊織くんとセックスしたことが原因としか考えられないけど。
それ以外ある??
俺は何もしてないし、する間もなくケントさんはキレた。
家に帰ってきて、5分やそこらだったよ?
そうだ、帰ってきた時は怒ってなかった。
伊織くんとの動画も、見る前だった。
……他の、何かを『見た』?
俺は昨夜のリビングを回想し、おかしなところはないか確認してみた。
特に何もない。
強いていうなら、IHのコンロをつけたままケントさんを出迎えたことくらいかな。
昼間たくさん唐揚げを揚げたけど、野菜がないからブロッコリー茹でてた。タイマー鳴って慌ててキッチンに戻ったんだ。
え、それくらいで怒る?
おこら……ないよね?
俺料理初心者だもん。
……呟いてみようかな。
スマホを手に取り、文字をゆっくりと打つ。
俺の思いを乗せて、そっと投稿してみる。
どこかにいる誰かが、教えてくれるだろうか。
嫉妬深いケントさんは、俺を家族にしたことでいったん落ち着いていた。退院したばかりで心配だからと、涼くんを呼んでくれた。翌日代わりに来た伊織くんには、動画を撮ればセックスしてもいいと言ってくれた。
たぶんこれ、断らなきゃいけなかったんだよね。試されてたのかな?
ソファはキレイにしたつもりだったけど、痕跡残ってたんだろうな。ほんとにヤッたんだと、ケントさんはそれでキレたに違いない。
ケントさんに嫌われるのが怖い。
これからはもっとケントさんが喜ぶ行動しなきゃ……。
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だから、俺はなんでも受け入れたいんだ。
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