初恋と想い出と勘違い

瀬野凜花

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85 初デート2

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 むくれた私は、ルーに連れてこられた最近人気のおしゃれなカフェで甘いケーキを食べて、すぐに機嫌を直した。

「フィーは本当にケーキが好きだね」

「ええ! 甘いものは最高よ」

 フルーツがたくさんのっていて彩り豊かで、スポンジはふわふわで、生クリームの甘さとフルーツのすっぱさのバランスがちょうど良い。
 おいしくケーキをほおばる私を見て、ルーはしみじみと言った。

「フィーとまた会えて、こうして恋人として過ごせてるなんて、信じられないよ」

「ずっとフィーだって言えなくてごめんなさい」

 私がもっとさっさと勇気を出してルーにフィーだと明かしていれば。さらにいえば、私はルーがウォーレン公爵家にいることを知っていたのだから、一度手紙に返事が来なくてもめげずにもう一度手紙を出したりウォーレン公爵家を訪問したりと、学園入学前にも方法はあったはずなのだ。

「いいんだよ。今こうして幸せな時間を過ごせている、大切なのはそれだけだ」

 ルーは肩をすくめた。

「合宿でフィーと同じグループでよかったよ。そうでなければ、僕はまだソフィアがフィーだってことを知らなかったかもしれないからね」

 確かに。同じグループだったからこそ悲しいこともあったけれど、同じグループだったからこそ私がフィーだと明かす状況になったとも言えるわ。

「アレン様に感謝しないとね」

 突然飛び出したアレン様の名前にルーは目を丸くした。

「アレンに? どうして?」

「だって、アレン様が私たちと同じグループになることを提案したから、ルーは私たちと組んでくれたんでしょう」

「確かに、そうだったな。次に学園でアレンに会ったらお礼を言わないと」

 私はそうねと頷きながらケーキをもう一口食べた。うん、フルーツがたっぷりでおいしい。

「きっと、アレン様は私のために提案してくれたのよ。アレン様は私がルーのことを好きなことに気がついていて、応援してくれていたもの」

「え、それは初耳なんだけど」

 ルーは目を瞬かせた。

「その話はアレンから聞くとして。フィー、アレン様って呼び方、やめようよ。フィーの方が身分は上なんだし」

 じとりとした目を向けられて、私は首を傾げた。

「どうして?」

「なんか嫌だから」

 すねたようなルーの表情はめずらしい。

「それなら何と呼べばいいの? アレン?」

「それはもっと嫌」

 じゃあどうすればいいのよ。「リーガル伯爵令息」は他人行儀すぎだし。
 むむっと口を突き出すと、ルーはしゅんとした。

「ごめん。他に呼び方、ないよね。僕だってエレナ嬢って呼んだりしてるんだし」

「いいのよ。急にどうしたの?」

 ルーは目をそらした。

「その、僕だけ名前を呼ばれるっていう特別感が欲しかったというか、なんというか……」

 かわいい。

「私がルイスって敬称なしで呼ぶのも、ルーって愛称で呼ぶのも、1人だけよ。大好き」

 精いっぱいの想いを込めてそう伝えると、ルーは赤面して「僕も、大好き」とつぶやいた。
 私が照れる様子を見てルーが楽しんでいる気持ち、なんとなく分かる気がするわ。
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