初恋と想い出と勘違い

瀬野凜花

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26 あと2回 ルイスside2

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 僕たちは何度も競走した。フィーは意外と足が速かった。僕はもっと余裕で勝ちたかったし負けたくなかったのに、少しスタートで出遅れただけでもう追いつけなかった。僕たちは勝ったり負けたりを繰り返した。勝った数を数えてはいなかったが、ほぼ引き分けだったのではないだろうか。

 フィーは僕に勝つたびに声を出して笑った。その楽しそうな様子に、体を動かせばいいのではないかという考えは間違っていなかったのだと胸をなでおろした。

「今日はありがとう。こんなに走ったのは久しぶりだ。よく眠れそうだよ」

 僕は伸びをした。足に残る心地よいけだるさ。フィーの気分を切り替えてあげたくて始めた競争だったが、結局僕のほうが楽しんでしまったかもしれない。

「そろそろ帰ろうか」

 僕はフィーをうながして帰ろうとした。

「待って!」

 フィーに引き留められる。

「ありがとう。私、話をしていたら悲しくなって。ルーがあの時競争しようって言ってくれていなかったら、ルーと過ごせる貴重な時間を無駄にしてしまっていたかもしれない。本当に、ありがとう」

 楽しんでくれたんだな。提案してよかった。フィーの様子から体を動かすと気分が上がるという僕の考えは間違ってはいなかっただろうと察してはいたが、フィーの口から聞くと確信に変わった。

 なにより、フィーが僕との時間を貴重だと認識してくれていたのが嬉しかった。

「フィーも楽しかった?」

「もちろんよ! とっても楽しかった!」

 フィーは、首がもげるのではないかと思えるほど強く何度もうなずいた。

「それなら良かった」

 僕は笑って「また来週」とフィーに手を振り、馬車に乗り込んだ。

 フィーと会えるのは次が最後。もう二度と会えないかもしれない。会えたとしても、何年も先かもしれない。だからこそ、精一杯貴重な時間を楽しんで記憶に焼き付けよう。
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