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24 二人でお出かけ~4~
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「……ありがとうございます。せめて夕食はごちそうさせてください」
「お、いいな。店は俺が決めてもいいか?」
楽しげにお店の案を挙げ始めるカイルさんを見つめる。本当に、親切な人だ。恩の返し方が分からない。
「よし決めた。行くぞ」
するっと手を取られて、歩き出す。大きな骨ばった手は私の手をすっぽりと包み込んだ。触れ合ったところから熱が伝わってきてこそばゆい。
独り身だと、言っていた。誠実そうな人だから、恋人がいるなら異性と二人で出かけたり手を繋いだりはしないだろう。騎士は、誰にでもこんなことをするんだろうか。人と関わる機会が少ない私は、思わず勘違いしそうになってしまうのに。
「あれ、ティアさん?」
突然声をかけられて、びくりと肩が震える。振り向くと、パン屋のイーサンが小麦粉の袋を抱えて立っていた。
「珍しいね、男性と歩いてるなんて。依頼者さん?」
イーサンの視線が、繋がれた手に注がれている。知り合いに見られた気恥ずかしさに、咄嗟に手を振り払った。
「ううん」
首を振ると、イーサンは人の良さそうな笑顔でニコッと笑った。
「ね、そういえばこの間渡したぼくのパン、食べてくれた?」
「うん、食べた! 外はカリカリで中はしっとりふわふわで、おいしかった。もうお店に出せるんじゃない?」
イーサンは私の両手を取ってぶんぶんと振り、嬉しそうに首を縦に振った。
「そうなんだよ! 母さんにも店に出せるレベルだって言われてるんだ。ようやくパン屋としての一歩を踏み出せた気分だよ! でも、やっぱりティアさんに一番に食べてほしかったんだよね。ティアさんはぼくにとって、特別な人だから」
イーサンに見つめられて、不思議な気分になる。思わず目を泳がせて、返すべき言葉を探す。これは、友だちだから、よね? カイルさんのことがあって、私が少しそういう気分になってるだけよ。
「ティア、そろそろ行くぞ」
頭がぐるぐる回って混乱していると、後ろから声をかけられた。
「ティア……?」
イーサンが何かをつぶやいたけれど聞き取れなくて、聞き返そうとするとイーサンは手を振った。
「ごめん、邪魔しちゃったね。今度ゆっくり話そう。昔の思い出とかさ」
「そ、そうね。ありがとう。またね」
手を振り返してカイルさんの方に向き直ると、カイルさんは何やら難しい顔をしていた。眉毛は寄せられて、眉間に皺が寄っている。
「すみません、お腹空いてますよね。お待たせしました」
「いや、そうじゃない」
カイルさんは皺を寄せたままつぶやいた。
「この鈍感め……」
「え?」
「いや。なんでもない」
歩き出したカイルさんに、気がついたらまた手を繋がれていて。さっきまでよりも強く繋がれた手に、鼓動が早くなっていた。
「お、いいな。店は俺が決めてもいいか?」
楽しげにお店の案を挙げ始めるカイルさんを見つめる。本当に、親切な人だ。恩の返し方が分からない。
「よし決めた。行くぞ」
するっと手を取られて、歩き出す。大きな骨ばった手は私の手をすっぽりと包み込んだ。触れ合ったところから熱が伝わってきてこそばゆい。
独り身だと、言っていた。誠実そうな人だから、恋人がいるなら異性と二人で出かけたり手を繋いだりはしないだろう。騎士は、誰にでもこんなことをするんだろうか。人と関わる機会が少ない私は、思わず勘違いしそうになってしまうのに。
「あれ、ティアさん?」
突然声をかけられて、びくりと肩が震える。振り向くと、パン屋のイーサンが小麦粉の袋を抱えて立っていた。
「珍しいね、男性と歩いてるなんて。依頼者さん?」
イーサンの視線が、繋がれた手に注がれている。知り合いに見られた気恥ずかしさに、咄嗟に手を振り払った。
「ううん」
首を振ると、イーサンは人の良さそうな笑顔でニコッと笑った。
「ね、そういえばこの間渡したぼくのパン、食べてくれた?」
「うん、食べた! 外はカリカリで中はしっとりふわふわで、おいしかった。もうお店に出せるんじゃない?」
イーサンは私の両手を取ってぶんぶんと振り、嬉しそうに首を縦に振った。
「そうなんだよ! 母さんにも店に出せるレベルだって言われてるんだ。ようやくパン屋としての一歩を踏み出せた気分だよ! でも、やっぱりティアさんに一番に食べてほしかったんだよね。ティアさんはぼくにとって、特別な人だから」
イーサンに見つめられて、不思議な気分になる。思わず目を泳がせて、返すべき言葉を探す。これは、友だちだから、よね? カイルさんのことがあって、私が少しそういう気分になってるだけよ。
「ティア、そろそろ行くぞ」
頭がぐるぐる回って混乱していると、後ろから声をかけられた。
「ティア……?」
イーサンが何かをつぶやいたけれど聞き取れなくて、聞き返そうとするとイーサンは手を振った。
「ごめん、邪魔しちゃったね。今度ゆっくり話そう。昔の思い出とかさ」
「そ、そうね。ありがとう。またね」
手を振り返してカイルさんの方に向き直ると、カイルさんは何やら難しい顔をしていた。眉毛は寄せられて、眉間に皺が寄っている。
「すみません、お腹空いてますよね。お待たせしました」
「いや、そうじゃない」
カイルさんは皺を寄せたままつぶやいた。
「この鈍感め……」
「え?」
「いや。なんでもない」
歩き出したカイルさんに、気がついたらまた手を繋がれていて。さっきまでよりも強く繋がれた手に、鼓動が早くなっていた。
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