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96. 反撃とか返り討ちとか
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朱虎はさんざんバカにするけど、あたしにだってちゃんと考える頭はある。
騒ぎの中に突っ込んで行ったって、何もできずに捕まるのがオチだ。なのであたしは、暗がりに紛れてこそこそと近づいて行った。ラッキーなことに甲板の上には崩れた荷物やら何やらが散乱していて、身を隠す場所には困らない。
「フフン、あたしだって一度は潜入成功してるんだから。こんなの余裕だし」
サンドラから借りたワンピースが黒いのもあって、あたしは誰にも気が付かれずに騒ぎの近くに転がっているコンテナの陰に滑り込んだ。息を殺してそっと様子を窺う。
チカチカと不安定に瞬く照明が、大きくしなったロープからぶら下がって甲板の一角を照らし出していた。光が届くギリギリのところにがっくりとうなだれてへたりこんでいるのはサンドラだ。体を丸めるようにして、膝に何かを抱え込んでいる。
「……あっ」
思わず声が出そうになった。サンドラの膝にぐったりと顔をうずめて倒れているのは、慧介さんだ。投げ出された手足はピクリとも動かない。
やっぱりさっき撃たれてたんだ。
まさか、間に合わなかった?
手足がすうっと冷たくなるような気がした。胸だけがドクドクと激しく脈打っている。
「お前のそんな姿を見るのは悲しいぜ、可愛い妹よ」
あざ笑うように言ったのはレオだった。サンドラを見下ろして余裕たっぷりに構えている。なぜか周囲に何人か黒服が折り重なって倒れていた。
「もう死んでるだろう。服が汚れるぞ」
「まだ生きてる」
絞り出すような声は、サンドラのものだとは思えないくらい弱々しかった。レオが肩をすくめる。
「おやおや、それは失礼した。船が揺れさえしなければ、可愛い弟を無駄に苦しめずに済んだのにな。心が痛むよ」
カチッ、と撃鉄が上がる音にサンドラが弾かれたように顔を上げた。
「やめてっ! もう撃たないで!」
「分かった分かった。溺死がお好みなんだな」
からかうようにレオが手の中で銃を回す。
「こんなこと全部、無駄よ」
サンドラがキッとレオを睨んだ。
「私がいなくなったからって、あなたがパパ・ロッソの跡を継げるわけがない」
「パパ・ロッソは偉大だ。俺は心から尊敬している……だが、彼は老いた」
レオは肩をすくめた。
「そろそろ交代のタイミングだろう。そう思っている人間は、お前が想像するよりはるかに多い」
「取り巻きを集めているつもり? あいにくだけど、あなたにそんなカリスマはない」
レオの眉がピクリとしかめられた。
「こんな状況でよく囀るな。そうやって俺を侮った結果、お前は今どうなってる」
「その言葉はそっくりそのままあなたにお返しするわ。完全に掌握したと思っていた人間に裏切られた気分はどう?」
サンドラがあたりをさっと一瞥する仕草でピンときた。
そうか、黒服たちはサンドラに寝返ったんだ! それでレオが叩きのめしたってところだろうか。
「あなたの良くない癖ね。少しでも気に入らないことがあると感情のままに爆発して振舞う。そんなボスについていきたい人間はいない」
レオが剣呑な目つきになった。
「ついてこないなら死ぬだけだ。お前と一緒にな、サンドラ。ところで前から感じていたが、お前は口が過ぎる」
銃口が上がり、まっすぐにサンドラを向いた。
「溺死ってのは死に方のうちでも最も苦しいもののひとつらしい。可愛い妹にそんな苦しみを味合わせるわけにはいかないな、気が利かなくてすまなかった」
サンドラは銃口を見つめた。
「撃てばいいわ。その代わり、銃殺された私の死体をパパ・ロッソが見た時、あなたがどうなるのか楽しみにすることね」
「心配するな、念入りに沈めてやる。この船がお前とジェラルドのスイートホームってわけだ」
「駄目!」
サンドラの声がひび割れた。
「ジーノは……ジーノだけは助けて、お願い! 彼は関係ない、もう普通の人なの」
レオの顔が歪む。
「ハ、ハ、ハ! いい声だな、サンドラ! お前は実にいい女だよ、もっとお前の声が聞きたくなってきたぜ」
「やめてっ!」
銃口が動いた瞬間、あたしは手にしていたものを思いっきりぶん投げた。勢いよく放物線を描いて空を切った靴が、くるくる回りながら照明にヒットして叩き割った。
ハッと見上げたレオの顔が暗闇に沈む。
「よしっ、命中! ご近所の草野球大会では、いつもピッチャーやってたんだからっ!」
「誰だっ!?」
あたしはレオの声めがけて一気に駆け出した。
発砲音がして、ピュンッと近くを何かがかすめた気がしたけど、それどころじゃない。
位置関係は目に焼き付いている。あたしは黒いシルエットに駆け寄ると、ポケットの中から引っ張り出したスタンガンを突き出した。
バチッ!
「うっ……!?」
巨体がよろめいてがっくりとくず折れる。
「ざ、さまーみろっ! ……良かった、効いて」
「誰……?」
弱々しい声がする。あたしは息を切らしながら振り返った。
「サンドラ!」
「シマ!? 何で」
「助けに来たに決まってるでしょ!」
サンドラが目を凝らしてこちらを見ている。綺麗な頬には涙の痕が何本も走っていたけど、それでも腹が立つくらい美人だった。
「慧介さんは!? どこ撃たれたの」
「肩のあたり……慧介って呼ばないでって言ったでしょ」
膝をついて覗き込む。確かに、左肩にかけて服が赤黒く染まっているのが分かった。目を閉じて意識はないみたいだけど、胸はかすかに上下している。
「アケトラはどうしたの」
「助けた。ボロッボロになってたけど。スタンガンありがと、すごく役に立った。今も」
サンドラが少しだけ笑った。
「あなたって結構やるのね」
「あったりまえじゃん。それより早く脱出しよう。ボートとか、あ」
出し抜けにものすごい衝撃が側頭部で弾けた。横ざまに体が吹っ飛び、甲板を転がって何かにぶつかる。
「シマッ!!」
「このっ……ゴミクズがァァアアッ!!」
獣みたいな唸り声が鼓膜を震わせた。ぐらぐらする視界に斜めに映ったのは、逆立つ金色の髪だった。
ウソでしょ、気絶してないの?
脳はパニックでフル回転してるのに体が動かない。ふっ、と影が落ちたかと思うと、次の瞬間おなかに勢いよく固いものがめり込んで息が詰まった。
「いっ……!」
「この! この! この! 薄汚いジャップごときが! 調子に乗りやがって!」
丸めた体を二度、三度とサッカーボールみたいに蹴り飛ばされた。全身が悲鳴を上げていて、どこが痛いのかすらよく分からない意識の中で、一つの感情だけがどんどん膨らんでいく。
悔しい。
こんな奴に、こんな風にやられて、何も出来ないなんて悔しい。
悔しい、悔しい、悔しい。
「こっ……」
不意に鈍い音がして、降り注いでいた罵声が途切れた。衝撃が襲ってこなくって、あたしは顔を上げた。
暗闇に浮かぶ大きな背中が見えた。ボロボロになったシャツがまとわりついている背中は、見覚えがあるものだ。その向こうに尻餅をついているレオがいた。
「ハ!」
忌々しげに息を吐きだしたレオが立ち上がる。
「払っても払っても這い出てくるな、死にぞこないのネズミ野郎!」
「お嬢に手を出すな」
朱虎は腰を低くすると構えた。
「俺が相手だ。来やがれよ、イタ公」
駄目、やめて。
逃げて。戦わないで。
そう叫びたいのに声が出ない。
レオがふ、と息を吐き――次の瞬間、肉のぶつかる音が響いて朱虎の体が大きく揺れた。
「ぐっ……!」
朱虎よりさらに一回りは大きいくせに、レオは機敏だった。獲物に襲い掛かるライオンみたいに容赦なく襲い掛かる拳に、朱虎の顔が跳ねあがり体が揺れる。
「物覚えの悪いネズミだな、貴様は! 俺に逆らうな! 死ね! 死ね、死ね、死ねっ!」
肉がぶつかる音が弾けるたびにパッ、と赤い飛沫が散った。
頬に飛沫が降りかかり、血の臭いが鼻をついてぞっと体が震えた。
こんな風に朱虎が一方的にやられるなんて、初めて見た。踏みしめた足はぐらぐらと揺れて今にも崩れそうだ。反撃に出ないのは、それだけの余力が残ってないからだ。
このままじゃ朱虎が死んじゃう。
何かしないと。何か、何か、なにか。
重い身体を引きずり起こした。闇雲に動かした手に何か固いものが当たる。
引き寄せて掴むと、それは銃だった。レオがさっきまで持っていたものだ。
撃つ?
これで、あたしが?
その時、ひときわ鈍い音がして朱虎ががっくりと膝を折った。
獣が吠えるような声でレオが笑う。
「ハ、ハ、ハ! 死ね! 全員死ねっ!」
やるしかない。
あたしがぎゅっと銃を握りしめた時――不意にカッ、と眩しい光が上から降り注いだ。
「えっ……えっ!?」
いきなりの強い光に視界が真っ白になる。慌てて瞬くと、朱虎に歩み寄ろうとしていたレオも目を押さえていた。
光はスポットライトみたいに、あたしと朱虎とレオを丸く切り取っている。
ていうか、……上からの明かり?
その時になってやっとあたしの耳に、波と風以外の音が飛び込んできた。風を叩くモーター音だ。
「――おいコラ、朱虎てめェ! 情けねえ姿さらしてんじゃねェ、このボケがっ!!」
騒ぎの中に突っ込んで行ったって、何もできずに捕まるのがオチだ。なのであたしは、暗がりに紛れてこそこそと近づいて行った。ラッキーなことに甲板の上には崩れた荷物やら何やらが散乱していて、身を隠す場所には困らない。
「フフン、あたしだって一度は潜入成功してるんだから。こんなの余裕だし」
サンドラから借りたワンピースが黒いのもあって、あたしは誰にも気が付かれずに騒ぎの近くに転がっているコンテナの陰に滑り込んだ。息を殺してそっと様子を窺う。
チカチカと不安定に瞬く照明が、大きくしなったロープからぶら下がって甲板の一角を照らし出していた。光が届くギリギリのところにがっくりとうなだれてへたりこんでいるのはサンドラだ。体を丸めるようにして、膝に何かを抱え込んでいる。
「……あっ」
思わず声が出そうになった。サンドラの膝にぐったりと顔をうずめて倒れているのは、慧介さんだ。投げ出された手足はピクリとも動かない。
やっぱりさっき撃たれてたんだ。
まさか、間に合わなかった?
手足がすうっと冷たくなるような気がした。胸だけがドクドクと激しく脈打っている。
「お前のそんな姿を見るのは悲しいぜ、可愛い妹よ」
あざ笑うように言ったのはレオだった。サンドラを見下ろして余裕たっぷりに構えている。なぜか周囲に何人か黒服が折り重なって倒れていた。
「もう死んでるだろう。服が汚れるぞ」
「まだ生きてる」
絞り出すような声は、サンドラのものだとは思えないくらい弱々しかった。レオが肩をすくめる。
「おやおや、それは失礼した。船が揺れさえしなければ、可愛い弟を無駄に苦しめずに済んだのにな。心が痛むよ」
カチッ、と撃鉄が上がる音にサンドラが弾かれたように顔を上げた。
「やめてっ! もう撃たないで!」
「分かった分かった。溺死がお好みなんだな」
からかうようにレオが手の中で銃を回す。
「こんなこと全部、無駄よ」
サンドラがキッとレオを睨んだ。
「私がいなくなったからって、あなたがパパ・ロッソの跡を継げるわけがない」
「パパ・ロッソは偉大だ。俺は心から尊敬している……だが、彼は老いた」
レオは肩をすくめた。
「そろそろ交代のタイミングだろう。そう思っている人間は、お前が想像するよりはるかに多い」
「取り巻きを集めているつもり? あいにくだけど、あなたにそんなカリスマはない」
レオの眉がピクリとしかめられた。
「こんな状況でよく囀るな。そうやって俺を侮った結果、お前は今どうなってる」
「その言葉はそっくりそのままあなたにお返しするわ。完全に掌握したと思っていた人間に裏切られた気分はどう?」
サンドラがあたりをさっと一瞥する仕草でピンときた。
そうか、黒服たちはサンドラに寝返ったんだ! それでレオが叩きのめしたってところだろうか。
「あなたの良くない癖ね。少しでも気に入らないことがあると感情のままに爆発して振舞う。そんなボスについていきたい人間はいない」
レオが剣呑な目つきになった。
「ついてこないなら死ぬだけだ。お前と一緒にな、サンドラ。ところで前から感じていたが、お前は口が過ぎる」
銃口が上がり、まっすぐにサンドラを向いた。
「溺死ってのは死に方のうちでも最も苦しいもののひとつらしい。可愛い妹にそんな苦しみを味合わせるわけにはいかないな、気が利かなくてすまなかった」
サンドラは銃口を見つめた。
「撃てばいいわ。その代わり、銃殺された私の死体をパパ・ロッソが見た時、あなたがどうなるのか楽しみにすることね」
「心配するな、念入りに沈めてやる。この船がお前とジェラルドのスイートホームってわけだ」
「駄目!」
サンドラの声がひび割れた。
「ジーノは……ジーノだけは助けて、お願い! 彼は関係ない、もう普通の人なの」
レオの顔が歪む。
「ハ、ハ、ハ! いい声だな、サンドラ! お前は実にいい女だよ、もっとお前の声が聞きたくなってきたぜ」
「やめてっ!」
銃口が動いた瞬間、あたしは手にしていたものを思いっきりぶん投げた。勢いよく放物線を描いて空を切った靴が、くるくる回りながら照明にヒットして叩き割った。
ハッと見上げたレオの顔が暗闇に沈む。
「よしっ、命中! ご近所の草野球大会では、いつもピッチャーやってたんだからっ!」
「誰だっ!?」
あたしはレオの声めがけて一気に駆け出した。
発砲音がして、ピュンッと近くを何かがかすめた気がしたけど、それどころじゃない。
位置関係は目に焼き付いている。あたしは黒いシルエットに駆け寄ると、ポケットの中から引っ張り出したスタンガンを突き出した。
バチッ!
「うっ……!?」
巨体がよろめいてがっくりとくず折れる。
「ざ、さまーみろっ! ……良かった、効いて」
「誰……?」
弱々しい声がする。あたしは息を切らしながら振り返った。
「サンドラ!」
「シマ!? 何で」
「助けに来たに決まってるでしょ!」
サンドラが目を凝らしてこちらを見ている。綺麗な頬には涙の痕が何本も走っていたけど、それでも腹が立つくらい美人だった。
「慧介さんは!? どこ撃たれたの」
「肩のあたり……慧介って呼ばないでって言ったでしょ」
膝をついて覗き込む。確かに、左肩にかけて服が赤黒く染まっているのが分かった。目を閉じて意識はないみたいだけど、胸はかすかに上下している。
「アケトラはどうしたの」
「助けた。ボロッボロになってたけど。スタンガンありがと、すごく役に立った。今も」
サンドラが少しだけ笑った。
「あなたって結構やるのね」
「あったりまえじゃん。それより早く脱出しよう。ボートとか、あ」
出し抜けにものすごい衝撃が側頭部で弾けた。横ざまに体が吹っ飛び、甲板を転がって何かにぶつかる。
「シマッ!!」
「このっ……ゴミクズがァァアアッ!!」
獣みたいな唸り声が鼓膜を震わせた。ぐらぐらする視界に斜めに映ったのは、逆立つ金色の髪だった。
ウソでしょ、気絶してないの?
脳はパニックでフル回転してるのに体が動かない。ふっ、と影が落ちたかと思うと、次の瞬間おなかに勢いよく固いものがめり込んで息が詰まった。
「いっ……!」
「この! この! この! 薄汚いジャップごときが! 調子に乗りやがって!」
丸めた体を二度、三度とサッカーボールみたいに蹴り飛ばされた。全身が悲鳴を上げていて、どこが痛いのかすらよく分からない意識の中で、一つの感情だけがどんどん膨らんでいく。
悔しい。
こんな奴に、こんな風にやられて、何も出来ないなんて悔しい。
悔しい、悔しい、悔しい。
「こっ……」
不意に鈍い音がして、降り注いでいた罵声が途切れた。衝撃が襲ってこなくって、あたしは顔を上げた。
暗闇に浮かぶ大きな背中が見えた。ボロボロになったシャツがまとわりついている背中は、見覚えがあるものだ。その向こうに尻餅をついているレオがいた。
「ハ!」
忌々しげに息を吐きだしたレオが立ち上がる。
「払っても払っても這い出てくるな、死にぞこないのネズミ野郎!」
「お嬢に手を出すな」
朱虎は腰を低くすると構えた。
「俺が相手だ。来やがれよ、イタ公」
駄目、やめて。
逃げて。戦わないで。
そう叫びたいのに声が出ない。
レオがふ、と息を吐き――次の瞬間、肉のぶつかる音が響いて朱虎の体が大きく揺れた。
「ぐっ……!」
朱虎よりさらに一回りは大きいくせに、レオは機敏だった。獲物に襲い掛かるライオンみたいに容赦なく襲い掛かる拳に、朱虎の顔が跳ねあがり体が揺れる。
「物覚えの悪いネズミだな、貴様は! 俺に逆らうな! 死ね! 死ね、死ね、死ねっ!」
肉がぶつかる音が弾けるたびにパッ、と赤い飛沫が散った。
頬に飛沫が降りかかり、血の臭いが鼻をついてぞっと体が震えた。
こんな風に朱虎が一方的にやられるなんて、初めて見た。踏みしめた足はぐらぐらと揺れて今にも崩れそうだ。反撃に出ないのは、それだけの余力が残ってないからだ。
このままじゃ朱虎が死んじゃう。
何かしないと。何か、何か、なにか。
重い身体を引きずり起こした。闇雲に動かした手に何か固いものが当たる。
引き寄せて掴むと、それは銃だった。レオがさっきまで持っていたものだ。
撃つ?
これで、あたしが?
その時、ひときわ鈍い音がして朱虎ががっくりと膝を折った。
獣が吠えるような声でレオが笑う。
「ハ、ハ、ハ! 死ね! 全員死ねっ!」
やるしかない。
あたしがぎゅっと銃を握りしめた時――不意にカッ、と眩しい光が上から降り注いだ。
「えっ……えっ!?」
いきなりの強い光に視界が真っ白になる。慌てて瞬くと、朱虎に歩み寄ろうとしていたレオも目を押さえていた。
光はスポットライトみたいに、あたしと朱虎とレオを丸く切り取っている。
ていうか、……上からの明かり?
その時になってやっとあたしの耳に、波と風以外の音が飛び込んできた。風を叩くモーター音だ。
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