22 / 111
20. 黒幕とか甲冑とか
しおりを挟む
「な、何かな? ……背、高いね、朱虎くん」
身長差のせいで、朱虎は今黒さんを見下ろしていた。口調はいつものように丁寧だけど、威圧感がバシバシだ。
「きのうはお嬢が世話になりました」
「ああいや、僕も」
「お嬢のスマホを預かっていただいているとか。お返し頂けますか」
言葉を遮られた今黒さんは一瞬ムっとしたような顔になったけど、ポケットからスマホを取りだした。
「ええ、預かってますよ。どうぞ、志麻ちゃん」
差し出されたスマホは朱虎がさっと受け取った。慣れた手つきでタップして画面をさっと確認すると、あたしを見もせずに回してくる。
なんで教えてないパスコードを余裕で突破するんだ、コイツ。
「部長さんからメッセージ来てますよ。どうぞ」
と言われても、今は朱虎と今黒さんが壁ドンスタイルで見つめ合う(というか朱虎が一方的に睨み付けている)ただならぬ雰囲気だ。
後で確認しようと思った時、表示されたメッセージの書き出しが目に飛び込んで来た。
《昨日の拉致監禁の黒幕について、どうしても気になっているので伝えておく》
え、めっちゃ気になる。
「昨日、お嬢が駐車場で誘拐されたのはご存知ですか」
「え……ええっ!? ゆ、誘拐?」
今黒さんがぎょっとしたような声を上げる。
あたしはメッセージをタップして目を走らせた。
《監禁時に二つのことが引っかかった。まず、我々は駐車場にたまたまいたところを襲われたが、事前にあの鼻ピアスに「駐車場にいる女を狙え」という指示が出ていた点》
鼻ピアスって、ミカって名前のお兄さんだったっけ。そういえば、「あっくん」からそう指示されたって言ってた。
「全然知らなかった……でも、ここに居るってことは無事だったんだね」
「ええ」
《志麻が駐車場に一人でいたのは十五分くらいだったはずだ。その時間、そこに志麻という「お嬢様」がいることを、彼らはどのように知ったのだろう》
環の声で「お嬢様」と呼ばれるところを想像してしまって、なんだかむずむずしてくる。呼ばれてみたいような、恥ずかしいような。
「お嬢をさらった連中をうちにご招待申し上げて、丁寧に話を聞いたんですよ。一体どうして、よりによってうちのお嬢を狙ったのかってね」
「へ、へえ」
《もう一点は、攫われた際に君がスマホを持っていなかったことだ。スマホがあれば助けを呼ぶことができるところを、何故か君は運悪くスマホを手放していた》
確かに、あの時スマホを持っていたら、もっと早く朱虎が来てくれていたかもしれない。そうしたら、環をあんなに怖い目に遭わせなかったかもしれないと思うと、ズキズキと胸が痛んだ。
環にはもう一度、ちゃんと謝らないと。
そう思いながら画面をスクロールしていたあたしの指が止まった。
《君に駐車場で待っているよう指示したのも、スマホを手元から取り上げたのも同じ人物が行ったことだと君は言っていた。覚えているだろうか》
「あんた、お嬢を駐車場で待たせてたよな」
朱虎の声が一段低くなり、かろうじて保っていた丁寧な調子が掻き消えた。
「お嬢を誘拐した奴は、『駐車場にいる女』を狙うよう指示されたと言ってるんだよ。ちょうどお嬢がいるタイミングをピンポイントでな」
朱虎が手をついた壁がミシリときしんだ。
《どちらも今黒氏の指示だった》
あたしは唖然としてスマホの画面を見ていた。
「あんたが、お嬢の誘拐を仕組んだのか?」
《以上の二点から、私は今黒氏が事件に関わりが深いのではないかと推測する》
朱虎の声が環の言葉とダブって、あたしの中で雷みたいに反響した。
今黒さんがあたしをさらわせた黒幕?
あんなに優しくて、あたしのことを好きだと言ってくれたのに?
「ウソ……今黒さんが?」
「ち、違う!」
今黒さんは壁に張り付いて悲鳴みたいな声を上げた。
「僕じゃない! 何の話をしてるのかさっぱり……」
朱虎はスマホを取り出すと、今黒さんの目の前に突きつけた。画面を見た今黒さんが一瞬驚きの表情を浮かべ、慌てたようにかみ殺す。
「知り合いみたいだな」
「いや、その……まあ」
「こいつはお嬢をさらった誘拐犯の写真だ。こいつがな、あんたから指示を受けてやったと言い張ってるんだよ」
今黒さんは大きく目を見開いた。。
「な、何だって!? 僕はそんなこと指示してない! だいたい、僕が志麻ちゃんを誘拐だなんて、なんでそんなこと」
「お嬢をさらったのは東雲会のチンピラだ」
朱虎が口にした『東雲会』の単語に、今黒さんの顔色が青を通り越して白くなった。
後ろの方で「ああ!?」とか「聞いてねェぞ」と唸るおじいちゃんの声が聞こえた気がしたけど、それどころじゃない。あたしはごくりと喉を鳴らして二人を見つめた。
「そ、それが何……」
「あんた、うまいこと隠しちゃいるが東雲会からかなりつまんでるよな」
つまむって確か、借金のことだ。
今黒さんは東雲会に借金があるってこと?
「切羽詰まって借金のカタにお嬢を売ったか? それとも、東雲会から借金と引き換えにうちのお嬢をうまくかっさらえとでも言われたのか」
「ち、違う……本当に違うんだ」
今黒さんはようやく声を絞り出した。
「ぼ、僕はただ、志麻ちゃんと一緒にカジノへ行きたかっただけなんだ!」
「……ああ?」
朱虎が怪訝そうな声を上げる。
「あっ、あのビルには裏カジノがあって……僕はそこのVIPなんだ、アツシくんはカジノのマネージャーで……いつも顔を合わせてる、でも本当にそれだけの関係だ!」
「あっくん」はアツシというらしい。
「昨日はアツシくんに話を通しておいたんだけど……挨拶にだけ寄ったんだ。そしたら連れの女性はどうしたんだっていうから、いま駐車場で待ってもらってるって話して」
まくし立てているうちに今黒さんはハッとした顔になった。
「そうだ、アツシくんがしつこく『ゲームに参加しろ』って言うから一度だけ参加して……その隙に志麻ちゃんをさらいに行ったに違いない!」
今黒さんはその場にへたり込むと、がばっ! と土下座した。
「信じてくれ、本当なんだ! 僕は志麻ちゃんの誘拐には関係ない、アツシくんが勝手にやったことだ!」
朱虎は今黒さんを見下ろすと、息を吐いた。
「寝ぼけてんのか、あんた」
病室の空気が更に重くなった。今黒さんは顔も上げられずにいる。
「そこまでお膳立てしておいて勝手にやったなんて言い訳は通らねえよ。きっちりケジメはつけさせてもらう」
冷たく朱虎が言い放つ。あたしはやっと我に返った。
「待って朱虎、ケジメって……」
「そんな三下、その辺に捨てとけ!!」
おじいちゃんの怒鳴り声があたしの言葉をかき消した。
「それより東雲会だ!! あのクソどもが関わってやがったか!! 野郎どもめが越えちゃいけねえ一線越えやがったな。もう勘弁ならねェ!」
しまった、色々と面倒になるからおじいちゃんには「東雲会」が絡んでるって言ってなかったんだった!
あたしの頭のなかを「抗争」の二文字がよぎった。
冗談じゃない、止めなきゃ!
「おじいちゃん、落ち着い……て……」
慌てて振り向いたあたしはそのまま硬直した。朱虎も似たような顔で固まっている。
布団の上には床の間にあったはずの甲冑が仁王立ちしていた。
いや、よく見たら中身入りだ。
甲冑をきっちり着込んだおじいちゃんは、呆気に取られているあたしをよそにがしゃがしゃと歩き出した。
「お、おじいちゃん!? まさかその格好で外に出るつもり!?」
「たりめェよ。おう朱虎、若ェの集めろ! 東雲会に殴り込みだ!」
「分かりました」
「朱虎もサラッと返事しないで! 駄目ったらダメー!」
あたしは病室を出て行こうとする武者姿のおじいちゃんの前に立ちふさがった。
「おじいちゃん、自分の身体のことちゃんと考えてよ!」
「へっ、馬鹿にすんじゃねェよ。年取ったからってこんな鎧ごとき屁でもねェ」
「いや、年じゃなくておじいちゃん病気でしょ? なんかすごく元気に見えるんだけど」
甲冑の動きがピタリと止まった。かと思うと、急に腹を押さえてその場に膝をつく。
「うっ、いてえ! くそっ、無理しちまったか……」
「大丈夫、おじいちゃん!?」
「ふっ、ざまあねェな」
慌てて駆け寄ると、おじいちゃんは痛みにこらえるような顔で微笑んで見せた。
「俺ァくたばりぞこないだ。けどよ、お前ェを傷つけられたとあっちゃ黙ってるわけにゃいかねェんだよ、志麻」
「おじいちゃん……でも抗争はお願いだからやめて!」
「しつっけェなお前ェも。ここは涙で見送るところだろうがよ!」
「見送るわけないでしょ!? 早くそれ脱いで布団に戻ってよ!」
その時、病室のドアがまたしてもノックされた。
ドアの前で呆然と突っ立っていた今黒さんが飛び上がってあとじさる。
「オヤジ、客人をお連れしました」
ドアを開けたのは斯波さんだった。おじいちゃんの格好を見て、驚いた風もなく困ったように眉を下げる。
「斯波か、お前ェどこに行ってやがった! とっとと用意しろ、東雲会に殴り込み行くぞ!」
「その必要はありませんよ、オヤジ」
斯波さんが後ろを振り返った。
「あちらさんからいらしてます。――どうぞ、獅子神さん」
身長差のせいで、朱虎は今黒さんを見下ろしていた。口調はいつものように丁寧だけど、威圧感がバシバシだ。
「きのうはお嬢が世話になりました」
「ああいや、僕も」
「お嬢のスマホを預かっていただいているとか。お返し頂けますか」
言葉を遮られた今黒さんは一瞬ムっとしたような顔になったけど、ポケットからスマホを取りだした。
「ええ、預かってますよ。どうぞ、志麻ちゃん」
差し出されたスマホは朱虎がさっと受け取った。慣れた手つきでタップして画面をさっと確認すると、あたしを見もせずに回してくる。
なんで教えてないパスコードを余裕で突破するんだ、コイツ。
「部長さんからメッセージ来てますよ。どうぞ」
と言われても、今は朱虎と今黒さんが壁ドンスタイルで見つめ合う(というか朱虎が一方的に睨み付けている)ただならぬ雰囲気だ。
後で確認しようと思った時、表示されたメッセージの書き出しが目に飛び込んで来た。
《昨日の拉致監禁の黒幕について、どうしても気になっているので伝えておく》
え、めっちゃ気になる。
「昨日、お嬢が駐車場で誘拐されたのはご存知ですか」
「え……ええっ!? ゆ、誘拐?」
今黒さんがぎょっとしたような声を上げる。
あたしはメッセージをタップして目を走らせた。
《監禁時に二つのことが引っかかった。まず、我々は駐車場にたまたまいたところを襲われたが、事前にあの鼻ピアスに「駐車場にいる女を狙え」という指示が出ていた点》
鼻ピアスって、ミカって名前のお兄さんだったっけ。そういえば、「あっくん」からそう指示されたって言ってた。
「全然知らなかった……でも、ここに居るってことは無事だったんだね」
「ええ」
《志麻が駐車場に一人でいたのは十五分くらいだったはずだ。その時間、そこに志麻という「お嬢様」がいることを、彼らはどのように知ったのだろう》
環の声で「お嬢様」と呼ばれるところを想像してしまって、なんだかむずむずしてくる。呼ばれてみたいような、恥ずかしいような。
「お嬢をさらった連中をうちにご招待申し上げて、丁寧に話を聞いたんですよ。一体どうして、よりによってうちのお嬢を狙ったのかってね」
「へ、へえ」
《もう一点は、攫われた際に君がスマホを持っていなかったことだ。スマホがあれば助けを呼ぶことができるところを、何故か君は運悪くスマホを手放していた》
確かに、あの時スマホを持っていたら、もっと早く朱虎が来てくれていたかもしれない。そうしたら、環をあんなに怖い目に遭わせなかったかもしれないと思うと、ズキズキと胸が痛んだ。
環にはもう一度、ちゃんと謝らないと。
そう思いながら画面をスクロールしていたあたしの指が止まった。
《君に駐車場で待っているよう指示したのも、スマホを手元から取り上げたのも同じ人物が行ったことだと君は言っていた。覚えているだろうか》
「あんた、お嬢を駐車場で待たせてたよな」
朱虎の声が一段低くなり、かろうじて保っていた丁寧な調子が掻き消えた。
「お嬢を誘拐した奴は、『駐車場にいる女』を狙うよう指示されたと言ってるんだよ。ちょうどお嬢がいるタイミングをピンポイントでな」
朱虎が手をついた壁がミシリときしんだ。
《どちらも今黒氏の指示だった》
あたしは唖然としてスマホの画面を見ていた。
「あんたが、お嬢の誘拐を仕組んだのか?」
《以上の二点から、私は今黒氏が事件に関わりが深いのではないかと推測する》
朱虎の声が環の言葉とダブって、あたしの中で雷みたいに反響した。
今黒さんがあたしをさらわせた黒幕?
あんなに優しくて、あたしのことを好きだと言ってくれたのに?
「ウソ……今黒さんが?」
「ち、違う!」
今黒さんは壁に張り付いて悲鳴みたいな声を上げた。
「僕じゃない! 何の話をしてるのかさっぱり……」
朱虎はスマホを取り出すと、今黒さんの目の前に突きつけた。画面を見た今黒さんが一瞬驚きの表情を浮かべ、慌てたようにかみ殺す。
「知り合いみたいだな」
「いや、その……まあ」
「こいつはお嬢をさらった誘拐犯の写真だ。こいつがな、あんたから指示を受けてやったと言い張ってるんだよ」
今黒さんは大きく目を見開いた。。
「な、何だって!? 僕はそんなこと指示してない! だいたい、僕が志麻ちゃんを誘拐だなんて、なんでそんなこと」
「お嬢をさらったのは東雲会のチンピラだ」
朱虎が口にした『東雲会』の単語に、今黒さんの顔色が青を通り越して白くなった。
後ろの方で「ああ!?」とか「聞いてねェぞ」と唸るおじいちゃんの声が聞こえた気がしたけど、それどころじゃない。あたしはごくりと喉を鳴らして二人を見つめた。
「そ、それが何……」
「あんた、うまいこと隠しちゃいるが東雲会からかなりつまんでるよな」
つまむって確か、借金のことだ。
今黒さんは東雲会に借金があるってこと?
「切羽詰まって借金のカタにお嬢を売ったか? それとも、東雲会から借金と引き換えにうちのお嬢をうまくかっさらえとでも言われたのか」
「ち、違う……本当に違うんだ」
今黒さんはようやく声を絞り出した。
「ぼ、僕はただ、志麻ちゃんと一緒にカジノへ行きたかっただけなんだ!」
「……ああ?」
朱虎が怪訝そうな声を上げる。
「あっ、あのビルには裏カジノがあって……僕はそこのVIPなんだ、アツシくんはカジノのマネージャーで……いつも顔を合わせてる、でも本当にそれだけの関係だ!」
「あっくん」はアツシというらしい。
「昨日はアツシくんに話を通しておいたんだけど……挨拶にだけ寄ったんだ。そしたら連れの女性はどうしたんだっていうから、いま駐車場で待ってもらってるって話して」
まくし立てているうちに今黒さんはハッとした顔になった。
「そうだ、アツシくんがしつこく『ゲームに参加しろ』って言うから一度だけ参加して……その隙に志麻ちゃんをさらいに行ったに違いない!」
今黒さんはその場にへたり込むと、がばっ! と土下座した。
「信じてくれ、本当なんだ! 僕は志麻ちゃんの誘拐には関係ない、アツシくんが勝手にやったことだ!」
朱虎は今黒さんを見下ろすと、息を吐いた。
「寝ぼけてんのか、あんた」
病室の空気が更に重くなった。今黒さんは顔も上げられずにいる。
「そこまでお膳立てしておいて勝手にやったなんて言い訳は通らねえよ。きっちりケジメはつけさせてもらう」
冷たく朱虎が言い放つ。あたしはやっと我に返った。
「待って朱虎、ケジメって……」
「そんな三下、その辺に捨てとけ!!」
おじいちゃんの怒鳴り声があたしの言葉をかき消した。
「それより東雲会だ!! あのクソどもが関わってやがったか!! 野郎どもめが越えちゃいけねえ一線越えやがったな。もう勘弁ならねェ!」
しまった、色々と面倒になるからおじいちゃんには「東雲会」が絡んでるって言ってなかったんだった!
あたしの頭のなかを「抗争」の二文字がよぎった。
冗談じゃない、止めなきゃ!
「おじいちゃん、落ち着い……て……」
慌てて振り向いたあたしはそのまま硬直した。朱虎も似たような顔で固まっている。
布団の上には床の間にあったはずの甲冑が仁王立ちしていた。
いや、よく見たら中身入りだ。
甲冑をきっちり着込んだおじいちゃんは、呆気に取られているあたしをよそにがしゃがしゃと歩き出した。
「お、おじいちゃん!? まさかその格好で外に出るつもり!?」
「たりめェよ。おう朱虎、若ェの集めろ! 東雲会に殴り込みだ!」
「分かりました」
「朱虎もサラッと返事しないで! 駄目ったらダメー!」
あたしは病室を出て行こうとする武者姿のおじいちゃんの前に立ちふさがった。
「おじいちゃん、自分の身体のことちゃんと考えてよ!」
「へっ、馬鹿にすんじゃねェよ。年取ったからってこんな鎧ごとき屁でもねェ」
「いや、年じゃなくておじいちゃん病気でしょ? なんかすごく元気に見えるんだけど」
甲冑の動きがピタリと止まった。かと思うと、急に腹を押さえてその場に膝をつく。
「うっ、いてえ! くそっ、無理しちまったか……」
「大丈夫、おじいちゃん!?」
「ふっ、ざまあねェな」
慌てて駆け寄ると、おじいちゃんは痛みにこらえるような顔で微笑んで見せた。
「俺ァくたばりぞこないだ。けどよ、お前ェを傷つけられたとあっちゃ黙ってるわけにゃいかねェんだよ、志麻」
「おじいちゃん……でも抗争はお願いだからやめて!」
「しつっけェなお前ェも。ここは涙で見送るところだろうがよ!」
「見送るわけないでしょ!? 早くそれ脱いで布団に戻ってよ!」
その時、病室のドアがまたしてもノックされた。
ドアの前で呆然と突っ立っていた今黒さんが飛び上がってあとじさる。
「オヤジ、客人をお連れしました」
ドアを開けたのは斯波さんだった。おじいちゃんの格好を見て、驚いた風もなく困ったように眉を下げる。
「斯波か、お前ェどこに行ってやがった! とっとと用意しろ、東雲会に殴り込み行くぞ!」
「その必要はありませんよ、オヤジ」
斯波さんが後ろを振り返った。
「あちらさんからいらしてます。――どうぞ、獅子神さん」
0
お気に入りに追加
187
あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

虚弱なヤクザの駆け込み寺
菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。
「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」
「脅してる場合ですか?」
ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。
※なろう、カクヨムでも投稿

お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活
ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。
「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」
そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢!
そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。
「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」
しかも相手は名門貴族の旦那様。
「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。
◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用!
◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化!
◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!?
「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」
そんな中、旦那様から突然の告白――
「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」
えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!?
「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、
「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。
お互いの本当の気持ちに気づいたとき、
気づけば 最強夫婦 になっていました――!
のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる