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7. 余命宣告とかお見合いとか
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「おじいちゃん、愛人さん多すぎ。サイテー」
クーパーの助手席で、あたしはようかいねこをもちもちしながら言った。
何だかまだ色っぽい化粧の匂いがまとわりついている気がする。
「独り身が長いですからね、オヤジも」
「でもさあ、あんなに何人もと付き合う必要なくない?」
「別に誰とも本気じゃありませんよ、オヤジは。相手も承知の上です」
ハンドルをさばきながらさらりと朱虎が言った。
「オヤジが大事なのはお嬢だけです」
「その流れで大事って言われても全然嬉しくないんだけど」
オトナって感じだけど、分かりたくない。
「それに比べて斯波さんって絶対女遊びとかしなさそう、おじいちゃんと違って」
「……まあ、斯波の兄貴はしないですね」
「朱虎は何人彼女がいるの?」
がくんと車が跳ねた。
「ひゃっ!?」
「すみません」
朱虎は何気ない仕草でサングラスをかけた。
「え、何で今サングラスかけるの」
「陽が眩しくて。――女なんざいませんよ」
怪しい。
「嘘だ、絶対いるよ。三人? 五人? いっそ十人?」
「朝から晩までお嬢のお守りしてるのにそんな暇ァありません。んなことより、そろそろ学校に着きますよ」
話題を強引に断ち切って、朱虎は腕時計を見た。
「この時間なら二時限目には間に合います。確か、数学でしたね」
「うえっ」
あたしは顔をしかめた。
「間に合わなくていいよ……今日はもう帰っちゃおうかな、ねえ朱虎」
「駄目です」
「ええ~……ケチ。朱虎のイジワル」
ブーイングはあっさり黙殺された。
近づく学校を眺めながら、あたしはふとおじいちゃんのことを考えた。
そういえば結局、何が原因で倒れたのか聞きそびれたな。
「まあいいか……大したことなさそうだったし。明日聞こうっと」
〇●〇
「もって三か月だそうだ」
「……は?」
次の日。
昨日と同じくベッドの傍の椅子に座ったあたしはぽかんとした。
朱虎は外に出ていて、広い病室にはあたしとおじいちゃんだけだ。
「残された時間ってヤツだ。手の施しようがねェらしい」
おじいちゃんはベッドのなかで体を起こして、窓の外を眺めながら言った。その姿は昨日と打って変わって、いかにも弱々しい。
「何言ってんの、そんな病人みたいな……」
いや待て、ここは病院でおじいちゃんは昨日ここに運び込まれたんだっけ。
それで、もって三か月?
残された時間?
「……はあああっ!? そ、それってまさか……余命宣告!?」
「おっ、難しい言葉知ってンな」
「う、嘘でしょ!? 何でそんなことになってんの!?」
頭の中が大パニックだ。
「すまねェな、志麻。俺はもうダメだ……」
「いや昨日はあんなに元気だったじゃん! 愛人さんたちがたくさん集まって」
「ううっ、ゲホゲホゲホッ!!」
いきなりおじいちゃんが勢いよく咳き込んだ。
「お、おじいちゃん!?」
「ハア……ハア……大丈夫だ」
慌てて背をさすると、おじいちゃんはふっと微笑んだ。
「俺もざまァねぇな……だがよ、俺ァお前ェの花嫁姿を見るまではくたばらねぇ。いつもそう言ってただろ」
「そ、そうだよ!」
あたしはおじいちゃんの手をぎゅっと握りしめた。じわりと涙がこみ上げる。
「しっかりして、おじいちゃん。あたしの結婚式に出るって約束でしょ」
「ああ。だからよ、志麻」
「うん」
「お前ェ、見合いしろ」
「見合いね、わかっ……は!? 見合い!?」
完全に予想外の単語に頭が一瞬真っ白になった。
「え、見合い? 見合いって言った今?」
「おう」
「な、何で!?」
あたしが混乱しきっていると、おじいちゃんがベッドの上にあぐらをかいてあたしに向き直った。
「言ったろ、俺にはあと三か月しかねェんだって」
「う、うん、聞いた」
「で、俺ァくたばる前にお前ェの花嫁姿を見るって決めてんだよ」
「それも聞いた」
「だから見合いしろ」
「待ってそこで話が飛んでる! 何で!?」
「ああ? 俺の時間がねェならお前ェの嫁入り早めるしかねェだろうが」
おじいちゃんは眉を上げて当然のように言い放った。
あたしはくらくらしてきた頭を押さえた。
「いやおかしいでしょ! あれ!? な、なんか筋が通ってるような気がしてきた。怖っ……」
「心配すんな、式場はもう手配したぞ。ちゃんと大安吉日だ」
「嘘でしょ!?」
「俺と志野が祝言上げた神社でよ。ちと古臭ェが良いところだぞ。神主の野郎、半年先まで予約が埋まってるとかほざきやがったが、フカシこくんじゃねェ貧乏神社がっつって空けさせたぜ。カッカッカ」
「ヒドい! てか、そういう問題じゃない!」
「なんだ、お前ェ洋式がいいのか。まあ披露宴でドレスでもなんでも好きなだけ着替えろや、二回でも三回でもいいぞ」
「結婚式の話から離れろ! じゃなくて、あたしの心の問題!!」
あたしはシーツをバシバシ叩いた。
「いくら何でも急すぎでしょ!? あたしまだ十七だよ!?」
あたしの必死の訴えに、おじいちゃんは片眉を上げただけだった。
「別に早くて困るってこともねェだろ。お前ェも俺の孫なら覚悟決めろや」
「超困るんですけど!? ……っていうか、やっぱり元気に見えるんだけど、おじいちゃん」
あたしはおじいちゃんの顔を覗き込んだ。
「だいたい、どこが悪いの? あたし、ちゃんと聞いてない……」
「ぐわっ!」
いきなりおじいちゃんがシーツに突っ伏した。身体を丸めて唸り声をあげる。
「えっ? ど、どうしたの!?」
「くっ、また痛みが……畜生っ」
見る見るうちに額に脂汗が浮かぶ。シーツを掴んで苦しむ様子に、あたしは慌てた。
「た、大変! 看護婦さん呼んでくる!」
「待て、志麻」
おじいちゃんは顔を上げると、あたしの手を握りしめた。
「頼む志麻。見合いを……後生の頼みだ、でねえと俺ァ死んでも死にきれねえ」
弱々しい声と必死なまなざしに、引っ込んでいた涙がまたじわりとこみ上げる。
「一目で良い、お前ェの花嫁姿が拝みたいだけなんだ……ううっ」
「分かった、分かったから! お見合いでも何でもするからしっかりして、おじいちゃん!」
「そうか、してくれるか!」
ぱっと顔を輝かせたおじいちゃんは、あたしの手を離すといそいそと封筒を取り出した。
「ほれ、これが見合いの相手だ」
「えっ、もう手配してるの!?」
「おう。見合いは三日後だぞ」
「は!? ちょっと、早すぎ……!」
「めかし込んで行けよ、いいな」
封筒を押し付けられたあたしはじとっとおじいちゃんを見た。
「おじいちゃん……ホントのホントに病気なんだよね?」
クーパーの助手席で、あたしはようかいねこをもちもちしながら言った。
何だかまだ色っぽい化粧の匂いがまとわりついている気がする。
「独り身が長いですからね、オヤジも」
「でもさあ、あんなに何人もと付き合う必要なくない?」
「別に誰とも本気じゃありませんよ、オヤジは。相手も承知の上です」
ハンドルをさばきながらさらりと朱虎が言った。
「オヤジが大事なのはお嬢だけです」
「その流れで大事って言われても全然嬉しくないんだけど」
オトナって感じだけど、分かりたくない。
「それに比べて斯波さんって絶対女遊びとかしなさそう、おじいちゃんと違って」
「……まあ、斯波の兄貴はしないですね」
「朱虎は何人彼女がいるの?」
がくんと車が跳ねた。
「ひゃっ!?」
「すみません」
朱虎は何気ない仕草でサングラスをかけた。
「え、何で今サングラスかけるの」
「陽が眩しくて。――女なんざいませんよ」
怪しい。
「嘘だ、絶対いるよ。三人? 五人? いっそ十人?」
「朝から晩までお嬢のお守りしてるのにそんな暇ァありません。んなことより、そろそろ学校に着きますよ」
話題を強引に断ち切って、朱虎は腕時計を見た。
「この時間なら二時限目には間に合います。確か、数学でしたね」
「うえっ」
あたしは顔をしかめた。
「間に合わなくていいよ……今日はもう帰っちゃおうかな、ねえ朱虎」
「駄目です」
「ええ~……ケチ。朱虎のイジワル」
ブーイングはあっさり黙殺された。
近づく学校を眺めながら、あたしはふとおじいちゃんのことを考えた。
そういえば結局、何が原因で倒れたのか聞きそびれたな。
「まあいいか……大したことなさそうだったし。明日聞こうっと」
〇●〇
「もって三か月だそうだ」
「……は?」
次の日。
昨日と同じくベッドの傍の椅子に座ったあたしはぽかんとした。
朱虎は外に出ていて、広い病室にはあたしとおじいちゃんだけだ。
「残された時間ってヤツだ。手の施しようがねェらしい」
おじいちゃんはベッドのなかで体を起こして、窓の外を眺めながら言った。その姿は昨日と打って変わって、いかにも弱々しい。
「何言ってんの、そんな病人みたいな……」
いや待て、ここは病院でおじいちゃんは昨日ここに運び込まれたんだっけ。
それで、もって三か月?
残された時間?
「……はあああっ!? そ、それってまさか……余命宣告!?」
「おっ、難しい言葉知ってンな」
「う、嘘でしょ!? 何でそんなことになってんの!?」
頭の中が大パニックだ。
「すまねェな、志麻。俺はもうダメだ……」
「いや昨日はあんなに元気だったじゃん! 愛人さんたちがたくさん集まって」
「ううっ、ゲホゲホゲホッ!!」
いきなりおじいちゃんが勢いよく咳き込んだ。
「お、おじいちゃん!?」
「ハア……ハア……大丈夫だ」
慌てて背をさすると、おじいちゃんはふっと微笑んだ。
「俺もざまァねぇな……だがよ、俺ァお前ェの花嫁姿を見るまではくたばらねぇ。いつもそう言ってただろ」
「そ、そうだよ!」
あたしはおじいちゃんの手をぎゅっと握りしめた。じわりと涙がこみ上げる。
「しっかりして、おじいちゃん。あたしの結婚式に出るって約束でしょ」
「ああ。だからよ、志麻」
「うん」
「お前ェ、見合いしろ」
「見合いね、わかっ……は!? 見合い!?」
完全に予想外の単語に頭が一瞬真っ白になった。
「え、見合い? 見合いって言った今?」
「おう」
「な、何で!?」
あたしが混乱しきっていると、おじいちゃんがベッドの上にあぐらをかいてあたしに向き直った。
「言ったろ、俺にはあと三か月しかねェんだって」
「う、うん、聞いた」
「で、俺ァくたばる前にお前ェの花嫁姿を見るって決めてんだよ」
「それも聞いた」
「だから見合いしろ」
「待ってそこで話が飛んでる! 何で!?」
「ああ? 俺の時間がねェならお前ェの嫁入り早めるしかねェだろうが」
おじいちゃんは眉を上げて当然のように言い放った。
あたしはくらくらしてきた頭を押さえた。
「いやおかしいでしょ! あれ!? な、なんか筋が通ってるような気がしてきた。怖っ……」
「心配すんな、式場はもう手配したぞ。ちゃんと大安吉日だ」
「嘘でしょ!?」
「俺と志野が祝言上げた神社でよ。ちと古臭ェが良いところだぞ。神主の野郎、半年先まで予約が埋まってるとかほざきやがったが、フカシこくんじゃねェ貧乏神社がっつって空けさせたぜ。カッカッカ」
「ヒドい! てか、そういう問題じゃない!」
「なんだ、お前ェ洋式がいいのか。まあ披露宴でドレスでもなんでも好きなだけ着替えろや、二回でも三回でもいいぞ」
「結婚式の話から離れろ! じゃなくて、あたしの心の問題!!」
あたしはシーツをバシバシ叩いた。
「いくら何でも急すぎでしょ!? あたしまだ十七だよ!?」
あたしの必死の訴えに、おじいちゃんは片眉を上げただけだった。
「別に早くて困るってこともねェだろ。お前ェも俺の孫なら覚悟決めろや」
「超困るんですけど!? ……っていうか、やっぱり元気に見えるんだけど、おじいちゃん」
あたしはおじいちゃんの顔を覗き込んだ。
「だいたい、どこが悪いの? あたし、ちゃんと聞いてない……」
「ぐわっ!」
いきなりおじいちゃんがシーツに突っ伏した。身体を丸めて唸り声をあげる。
「えっ? ど、どうしたの!?」
「くっ、また痛みが……畜生っ」
見る見るうちに額に脂汗が浮かぶ。シーツを掴んで苦しむ様子に、あたしは慌てた。
「た、大変! 看護婦さん呼んでくる!」
「待て、志麻」
おじいちゃんは顔を上げると、あたしの手を握りしめた。
「頼む志麻。見合いを……後生の頼みだ、でねえと俺ァ死んでも死にきれねえ」
弱々しい声と必死なまなざしに、引っ込んでいた涙がまたじわりとこみ上げる。
「一目で良い、お前ェの花嫁姿が拝みたいだけなんだ……ううっ」
「分かった、分かったから! お見合いでも何でもするからしっかりして、おじいちゃん!」
「そうか、してくれるか!」
ぱっと顔を輝かせたおじいちゃんは、あたしの手を離すといそいそと封筒を取り出した。
「ほれ、これが見合いの相手だ」
「えっ、もう手配してるの!?」
「おう。見合いは三日後だぞ」
「は!? ちょっと、早すぎ……!」
「めかし込んで行けよ、いいな」
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