14 / 46
第一章 現役女子高生、異世界で超能力に目覚める
14:グローリア、大出世!? 国王は何者?
しおりを挟む
「ほんっとうにごめんなさい!」
「いいんじゃよ、ワシもすっきりしたわい」
私は村長に何度もペコペコして謝ったあと、のびているトリスタンを馬に乗せた。
「そなたは馬には乗れるか?」
「いや……できませんね」
「それならワシが馬を引こう」
楽器をさっと片づけて、馬の左側にいる村長の横につく。村長があごの下にある引き手を軽く引くと、馬は歩き出した。
おぉ、すごい。
昔は馬に乗っていたものの、今は歳をとってしまったので乗らないという。
「ワシは農民だから、あの城壁までしかいけないと思うがね」
「あぁ……まぁ、王都の中に運んだらもう大丈夫ですよね! 手当てしてくれる人、いますもんね!」
そっか、農民は王都の中にも入れないのかぁ。「都の民はみんな態度が大きくて、農民をばかにする」って思われてるのも、行ったことがないからかも。
いつか、どうにかして、きれいな王都を見せてあげたいなぁ。
歩いて五分ほどで城壁に到着した。
「通行証を出せ」
今日通ってきたばかりの私はすぐに提示し、村長は引き手を私に持たせた。
「ワシはこの辺で。上に大公爵様がお乗りになっている。落馬されたようなので、門番、よろしく頼むぞ」
「「「だ、大公爵様!」」」
城壁付近の警備をしていた騎士団が、一斉にこちらに集まってきた。
「近くの医者を呼べ!」
「王城の者に知らせろ!」
「早くしろ!」
そうだよね、貴族の中では大公爵ってトップなんでしょ? そりゃあびっくりするよね。
落馬したっていう体になってるけど、まぁいっか。
村長がこしょこしょ話をする仕草をする。
「そういえば……そなたの演奏で大公爵様のお怪我を治せるのではないのか?」
「できるとは思いますけど、今回はきっちり反省してほしいのでやりません」
「そうじゃな」
ふふっと笑いあい、トリスタンは騎士団にまかせて、私は王城に向かった。
王城の門番はほぼ顔パスで通ることができた。まぁ、昨日の今日だしね。
中にいた使用人に「トリスタンから、昨日の報酬の件で陛下と話し合いたいから来てほしいと言われた」と伝える。
「ご案内いたします」
使用人は納得した様子で、私は『王の広間』に導かれた。
ノックをし、重たそうな扉を少し開く。
「グローリア様をお連れいたしました」
「ああ、ご苦労」
昨日ぶりの国王の声が聞こえた。病気が治ったばかりのあのハイテンションぶりからは想像ができない、落ち着いた声をしていた。
「失礼します。急にお呼びになるとは想定しておらず、このような格好で参りましたことをお許しくださいませ」
本当は今日から、噴水広場で演奏する時もグレーのスーツで行こうと思っていた。
だが、今日はもともと農村に行く予定だった。スーツが汚れるのを心配して、綿のワンピースに細いベルトといういつもの格好だったのである。
「構わない。そこに座りなさい」
玉座に座る国王と数メートル離れた場所に、革の一人用の席が置かれていた。
「トリスタンが落馬して、そなたと村長が王都まで運んできてくれたそうだな。礼を言う」
「あっ、いえいえ」
本当は自分で吹っ飛ばしたなど、完全に落馬したと思いこんでいる国王の前では言えない。
「では報酬の話に入ろう。そなたたちプレノート家を、もう一度宮廷音楽家に迎え入れようと考えている」
「ホントですか!?」
「今は商人をしているそうだが、生活も保証しよう」
とんだ出世話である。一度貴族から没落して平民になり、また貴族に戻してくれる、ということなのだ。
普通、宮廷の仕事は貴族しかなれないものなので、私は『前代未聞』を成し遂げてしまったのだ。
「そなたは命の恩人。それほどのお礼をする価値はあるだろう。プレノート家の当主はそなたに任命する」
「は、はいっ!」
うわうわうわ! どうなっちゃってるの!? ただ国王にサックスを演奏しただけなんですけど!
すると突然、国王の私に向けている笑顔が、困惑の顔へと変わっていく。
「……トリスタンを送り出して十分後くらいに、農村の方で竜巻が起きていたが……、そなたは竜巻も起こせるのか?」
げげっ! 国王、勘が良すぎじゃない? そうじゃないと国王なんて務まらない……いやいや、どうしよう!
「やろうと思えば、できなくはないですけど」
「そなたがここに来たということは、トリスタンは私の伝言を伝え終わっているということだな。もしかして、トリスタンはあの口調で、そなたたちに話しかけたのではないのか?」
あの口調って、平民や農民を蔑んだ言い方? そういうことだよね。
「陛下もお分かりですか」
「ああ、あのように農民を下に見る物言い。何度か注意しているのだが、直らない。だが、そなたは能力を農民に振るまっているのだから、そのような思考はないだろう」
国王もよくないって思ってるんだ! ……それなら何で農民に圧政を?
「トリスタンに罰をお見舞してやったのだな。感謝する」
何か感謝されちゃったんですけど!? やってよかったってこと?
「ホントですけど、やってよかったんですか? 頭にきてついやっちゃって」
「いいのだよ。今はトリスタンの言うことに従っているまでだ。そうしてくれれば助かる」
意外な国王の裏を知ってしまった私。どう返したらいいか分からない。
「そなたのような人がこの国を変えるのだな」
遠い目で私を見てくる。
……えっ? 何言っちゃってるの?
「さすがに国を変えるまでは……」
ただ楽器を吹いて病気を治しただけで、貴族への復帰が決まり、国を変えるということまでの大事にまで発展。
えっと、国王って貴族に媚び売ってんだか、平民に媚びってんだか分からない……。
頭の中で整理しきれず、私は握手を求められてもそれに合わせることしかできなかった。
「いいんじゃよ、ワシもすっきりしたわい」
私は村長に何度もペコペコして謝ったあと、のびているトリスタンを馬に乗せた。
「そなたは馬には乗れるか?」
「いや……できませんね」
「それならワシが馬を引こう」
楽器をさっと片づけて、馬の左側にいる村長の横につく。村長があごの下にある引き手を軽く引くと、馬は歩き出した。
おぉ、すごい。
昔は馬に乗っていたものの、今は歳をとってしまったので乗らないという。
「ワシは農民だから、あの城壁までしかいけないと思うがね」
「あぁ……まぁ、王都の中に運んだらもう大丈夫ですよね! 手当てしてくれる人、いますもんね!」
そっか、農民は王都の中にも入れないのかぁ。「都の民はみんな態度が大きくて、農民をばかにする」って思われてるのも、行ったことがないからかも。
いつか、どうにかして、きれいな王都を見せてあげたいなぁ。
歩いて五分ほどで城壁に到着した。
「通行証を出せ」
今日通ってきたばかりの私はすぐに提示し、村長は引き手を私に持たせた。
「ワシはこの辺で。上に大公爵様がお乗りになっている。落馬されたようなので、門番、よろしく頼むぞ」
「「「だ、大公爵様!」」」
城壁付近の警備をしていた騎士団が、一斉にこちらに集まってきた。
「近くの医者を呼べ!」
「王城の者に知らせろ!」
「早くしろ!」
そうだよね、貴族の中では大公爵ってトップなんでしょ? そりゃあびっくりするよね。
落馬したっていう体になってるけど、まぁいっか。
村長がこしょこしょ話をする仕草をする。
「そういえば……そなたの演奏で大公爵様のお怪我を治せるのではないのか?」
「できるとは思いますけど、今回はきっちり反省してほしいのでやりません」
「そうじゃな」
ふふっと笑いあい、トリスタンは騎士団にまかせて、私は王城に向かった。
王城の門番はほぼ顔パスで通ることができた。まぁ、昨日の今日だしね。
中にいた使用人に「トリスタンから、昨日の報酬の件で陛下と話し合いたいから来てほしいと言われた」と伝える。
「ご案内いたします」
使用人は納得した様子で、私は『王の広間』に導かれた。
ノックをし、重たそうな扉を少し開く。
「グローリア様をお連れいたしました」
「ああ、ご苦労」
昨日ぶりの国王の声が聞こえた。病気が治ったばかりのあのハイテンションぶりからは想像ができない、落ち着いた声をしていた。
「失礼します。急にお呼びになるとは想定しておらず、このような格好で参りましたことをお許しくださいませ」
本当は今日から、噴水広場で演奏する時もグレーのスーツで行こうと思っていた。
だが、今日はもともと農村に行く予定だった。スーツが汚れるのを心配して、綿のワンピースに細いベルトといういつもの格好だったのである。
「構わない。そこに座りなさい」
玉座に座る国王と数メートル離れた場所に、革の一人用の席が置かれていた。
「トリスタンが落馬して、そなたと村長が王都まで運んできてくれたそうだな。礼を言う」
「あっ、いえいえ」
本当は自分で吹っ飛ばしたなど、完全に落馬したと思いこんでいる国王の前では言えない。
「では報酬の話に入ろう。そなたたちプレノート家を、もう一度宮廷音楽家に迎え入れようと考えている」
「ホントですか!?」
「今は商人をしているそうだが、生活も保証しよう」
とんだ出世話である。一度貴族から没落して平民になり、また貴族に戻してくれる、ということなのだ。
普通、宮廷の仕事は貴族しかなれないものなので、私は『前代未聞』を成し遂げてしまったのだ。
「そなたは命の恩人。それほどのお礼をする価値はあるだろう。プレノート家の当主はそなたに任命する」
「は、はいっ!」
うわうわうわ! どうなっちゃってるの!? ただ国王にサックスを演奏しただけなんですけど!
すると突然、国王の私に向けている笑顔が、困惑の顔へと変わっていく。
「……トリスタンを送り出して十分後くらいに、農村の方で竜巻が起きていたが……、そなたは竜巻も起こせるのか?」
げげっ! 国王、勘が良すぎじゃない? そうじゃないと国王なんて務まらない……いやいや、どうしよう!
「やろうと思えば、できなくはないですけど」
「そなたがここに来たということは、トリスタンは私の伝言を伝え終わっているということだな。もしかして、トリスタンはあの口調で、そなたたちに話しかけたのではないのか?」
あの口調って、平民や農民を蔑んだ言い方? そういうことだよね。
「陛下もお分かりですか」
「ああ、あのように農民を下に見る物言い。何度か注意しているのだが、直らない。だが、そなたは能力を農民に振るまっているのだから、そのような思考はないだろう」
国王もよくないって思ってるんだ! ……それなら何で農民に圧政を?
「トリスタンに罰をお見舞してやったのだな。感謝する」
何か感謝されちゃったんですけど!? やってよかったってこと?
「ホントですけど、やってよかったんですか? 頭にきてついやっちゃって」
「いいのだよ。今はトリスタンの言うことに従っているまでだ。そうしてくれれば助かる」
意外な国王の裏を知ってしまった私。どう返したらいいか分からない。
「そなたのような人がこの国を変えるのだな」
遠い目で私を見てくる。
……えっ? 何言っちゃってるの?
「さすがに国を変えるまでは……」
ただ楽器を吹いて病気を治しただけで、貴族への復帰が決まり、国を変えるということまでの大事にまで発展。
えっと、国王って貴族に媚び売ってんだか、平民に媚びってんだか分からない……。
頭の中で整理しきれず、私は握手を求められてもそれに合わせることしかできなかった。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
私はただ自由に空を飛びたいだけなのに!
hennmiasako
ファンタジー
異世界の田舎の孤児院でごく普通の平民の孤児の女の子として生きていたルリエラは、5歳のときに木から落ちて頭を打ち前世の記憶を見てしまった。
ルリエラの前世の彼女は日本人で、病弱でベッドから降りて自由に動き回る事すら出来ず、ただ窓の向こうの空ばかりの見ていた。そんな彼女の願いは「自由に空を飛びたい」だった。でも、魔法も超能力も無い世界ではそんな願いは叶わず、彼女は事故で転落死した。
魔法も超能力も無い世界だけど、それに似た「理術」という不思議な能力が存在する世界。専門知識が必要だけど、前世の彼女の記憶を使って、独学で「理術」を使い、空を自由に飛ぶ夢を叶えようと人知れず努力することにしたルリエラ。
ただの個人的な趣味として空を自由に飛びたいだけなのに、なぜかいろいろと問題が発生して、なかなか自由に空を飛べない主人公が空を自由に飛ぶためにいろいろがんばるお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
刻の短刀クロノダガー ~悪役にされた令嬢の人生を取り戻せ~
玄未マオ
ファンタジー
三名の婚約者候補。
彼らは前の時間軸において、一人は敵、もう一人は彼女のために命を落とした騎士。
そして、最後の一人は前の時間軸では面識すらなかったが、彼女を助けるためにやって来た魂の依り代。
過去の過ちを記憶の隅に押しやり孫の誕生を喜ぶ国王に、かつて地獄へと追いやった公爵令嬢セシルの恨みを語る青年が現れる。
それはかつてセシルを嵌めた自分たち夫婦の息子だった。
非道が明るみになり処刑された王太子妃リジェンナ。
無傷だった自分に『幻の王子』にされた息子が語りかけ、王家の秘術が発動される。
巻き戻りファンタジー。
ヒーローは、ごめん、生きている人間ですらない。
ヒロインは悪役令嬢ポジのセシルお嬢様ではなく、彼女の筆頭侍女のアンジュ。
楽しんでくれたらうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる