12 / 25
第1章 元死刑囚とトラブルメーカー
012 軍隊らしさはここにあり?
しおりを挟む
小走りで中庭に向かう。
中庭といっても、日本の学校の校庭以上の広さはあるところだ。ガヤガヤと声が聞こえてきた。
トロノイの十人が全員前に出てきており、それ以外の人たちは階級ごとに分かれて並んでいる。さすがにセラフィムとケルビムはいない。
こう見ると、意外にも男女比は同じくらいに感じる。
私とティアは、アンゲロイの列の一番後ろに並ぶ。
前に並んでいる人がサッとこちらを向き、隣の人とコソコソ話し始める。
「ねえ、もしかして後ろの黒髪って……」
「うん、あの噂の人間だよね?」
サーッと血の気が引く。もう知られているのかと。噂の『人』ではなく『人間』と言ったことからも、やはり私が死刑囚だとバレている。
……でもそりゃそうか。昨日はずっとトップニュースだったし。知らない方がおかしいか。
ふと隣のティアを見ると、鋭い目つきで前の二人を睨んでいた。
「ティア?」
「花恋を悪く仰る方は許しませんわ」
ひそめ声でボソッとつぶやくように言葉を吐くティア。静かな怒気が含まれている。
最後列でこんなことが行われているのをよそに、朝礼が始まった。
「休め!」
前に置かれた巨大なスピーカーから、号令が聞こえた。
みんながサッと左足を肩幅くらいに広げ、手を後ろに回す。これは私も小学生でやっていたことなので、真似して同じ姿勢をとる。
それと同時に、ガヤガヤとうるさかった話し声がシーンと静まり返る。
「本日の任務を告げる。ドミニオンズ・デュナメス・エクスシア諸君は、昨日と同じ場所にて巡回。時間は〇九〇〇より行う。以上」
「「「了解!」」」
昨日と特に変わりなさそうなんだね。まあ私は知らないけど。
「次、アルカイとアルカンゲロイの諸君も昨日と同様の配置で巡回。時間も先鋭組と同様、〇九〇〇より行う。以上」
「「「了解!」」」
私たちの隣の列の人たちが、数ミリの差も違わずに揃った返事をした。
次は私たちだね。
「次、アンゲロイ諸君は、引き続き訓練場にて戦闘訓練を行ってもらう。訓練内容は個人で違うから、コミュニカの指示に従うこと。時間はこちらも〇九〇〇より行う。以上」
「「「了解!」」」
よし、言えた。
戦闘訓練、まぁそうだよね。内容が個人で違うってのが気になるけど……後でティアに聞いてみよ。
「他に連絡のある者は」とトロノイが他のトロノイに聞くが、ないようだったので、このまま体操に移ることとなった。
体操は、陸軍のでも海軍のでも空軍のでもない、ドミューニョ部隊オリジナルの体操だという。
ティアによれば、陸海空軍の体操よりはハードではないらしいが……。
音楽がスピーカーから流れてきた。もちろんここは日本ではない。あのピアノ伴奏の体操ではないようだ。
朝からテンションが上がるようなダンスミュージックだったのだ。
こんなところで、また先入観が砕かれるとは。
『まずは足裏のストレッチから』
音楽はまさかの音声つきだった――とツッコむ間もなく、体操が始まった。
前の人の見よう見まねでついていく。なるほど、ストレッチがメインなんだね。これならいける。
そう思ったのもつかの間、中盤からだんだん雲行きが怪しくなってくる。体全体を使うようになってきた。何とか周りを見て食らいつくが、ワンテンポ遅れている。
ヒィヒィ言っていると、前からトロノイの誰かが腕を組んで歩いてきた。しっかり体操をしているかどうか監視しているようだ。
あの人は知っている。昨日色々教えてもらったメケイラだ。
列の前の方で歩みが止まり、その近くの人を指さした。
「もっと大きく!」
「了解!」
ひぃっ。じゃ、じゃあ私は絶対言われるじゃん!
心の中でブルブルと震えつつ、だんだんと難易度が上がっていく体操についていくしかなかった。
所々で注意を入れながら、とうとうメケイラが私のところに来てしまった。
彼女は変わらず腕を組みながら、じっと私の体操を見ている。
いつ終わるの、この体操!
もう三分は経っているだろう。メケイラは私を見たまま一歩も動かない。結局、体操が終わるまで私は彼女に監視されたままだった。
この後すぐに解散の号令がかかり、周りがぞろぞろと中庭を離れる中、私とティアはメケイラに呼び止められた。
「昨日、体操を教えるのを失念してしまった。申し訳ない」
……え?
「そうだったんですか⁉︎ 全くできてないので、てっきり前の人のように注意されるんだとビクビクしてました」
「本当に申し訳ない」
メケイラでもミスすることってあるんだ。すごくデキそうな人なのに。
「ということで、先程アンゲロイは戦闘訓練だと指示したが、月城は私と体操の練習だ。明日には皆と遜色なくできるよう、徹底的に叩き込む。時間は〇九〇〇で」
「りょ、了解!」
徹底的に……あんなキツいやつを⁉︎ か、覚悟しておこう。
メケイラはティアに視線を移す。
「セレスティアはその間、訓練場で個人練習をしてくれ。月城との件が終わり次第連絡する」
「了解ですわ」
指示を受け取り、うなずくティア。
メケイラとの用事はここで終わったので、私たちはそのまま朝食を食べに行った。
ティアに体操の件を慰められつつ、談笑しながら美味しい朝食を味わう。
トレーごと食器を返し、寮に戻ろうとしたその時、基地内にサイレンが鳴り響いた。
中庭といっても、日本の学校の校庭以上の広さはあるところだ。ガヤガヤと声が聞こえてきた。
トロノイの十人が全員前に出てきており、それ以外の人たちは階級ごとに分かれて並んでいる。さすがにセラフィムとケルビムはいない。
こう見ると、意外にも男女比は同じくらいに感じる。
私とティアは、アンゲロイの列の一番後ろに並ぶ。
前に並んでいる人がサッとこちらを向き、隣の人とコソコソ話し始める。
「ねえ、もしかして後ろの黒髪って……」
「うん、あの噂の人間だよね?」
サーッと血の気が引く。もう知られているのかと。噂の『人』ではなく『人間』と言ったことからも、やはり私が死刑囚だとバレている。
……でもそりゃそうか。昨日はずっとトップニュースだったし。知らない方がおかしいか。
ふと隣のティアを見ると、鋭い目つきで前の二人を睨んでいた。
「ティア?」
「花恋を悪く仰る方は許しませんわ」
ひそめ声でボソッとつぶやくように言葉を吐くティア。静かな怒気が含まれている。
最後列でこんなことが行われているのをよそに、朝礼が始まった。
「休め!」
前に置かれた巨大なスピーカーから、号令が聞こえた。
みんながサッと左足を肩幅くらいに広げ、手を後ろに回す。これは私も小学生でやっていたことなので、真似して同じ姿勢をとる。
それと同時に、ガヤガヤとうるさかった話し声がシーンと静まり返る。
「本日の任務を告げる。ドミニオンズ・デュナメス・エクスシア諸君は、昨日と同じ場所にて巡回。時間は〇九〇〇より行う。以上」
「「「了解!」」」
昨日と特に変わりなさそうなんだね。まあ私は知らないけど。
「次、アルカイとアルカンゲロイの諸君も昨日と同様の配置で巡回。時間も先鋭組と同様、〇九〇〇より行う。以上」
「「「了解!」」」
私たちの隣の列の人たちが、数ミリの差も違わずに揃った返事をした。
次は私たちだね。
「次、アンゲロイ諸君は、引き続き訓練場にて戦闘訓練を行ってもらう。訓練内容は個人で違うから、コミュニカの指示に従うこと。時間はこちらも〇九〇〇より行う。以上」
「「「了解!」」」
よし、言えた。
戦闘訓練、まぁそうだよね。内容が個人で違うってのが気になるけど……後でティアに聞いてみよ。
「他に連絡のある者は」とトロノイが他のトロノイに聞くが、ないようだったので、このまま体操に移ることとなった。
体操は、陸軍のでも海軍のでも空軍のでもない、ドミューニョ部隊オリジナルの体操だという。
ティアによれば、陸海空軍の体操よりはハードではないらしいが……。
音楽がスピーカーから流れてきた。もちろんここは日本ではない。あのピアノ伴奏の体操ではないようだ。
朝からテンションが上がるようなダンスミュージックだったのだ。
こんなところで、また先入観が砕かれるとは。
『まずは足裏のストレッチから』
音楽はまさかの音声つきだった――とツッコむ間もなく、体操が始まった。
前の人の見よう見まねでついていく。なるほど、ストレッチがメインなんだね。これならいける。
そう思ったのもつかの間、中盤からだんだん雲行きが怪しくなってくる。体全体を使うようになってきた。何とか周りを見て食らいつくが、ワンテンポ遅れている。
ヒィヒィ言っていると、前からトロノイの誰かが腕を組んで歩いてきた。しっかり体操をしているかどうか監視しているようだ。
あの人は知っている。昨日色々教えてもらったメケイラだ。
列の前の方で歩みが止まり、その近くの人を指さした。
「もっと大きく!」
「了解!」
ひぃっ。じゃ、じゃあ私は絶対言われるじゃん!
心の中でブルブルと震えつつ、だんだんと難易度が上がっていく体操についていくしかなかった。
所々で注意を入れながら、とうとうメケイラが私のところに来てしまった。
彼女は変わらず腕を組みながら、じっと私の体操を見ている。
いつ終わるの、この体操!
もう三分は経っているだろう。メケイラは私を見たまま一歩も動かない。結局、体操が終わるまで私は彼女に監視されたままだった。
この後すぐに解散の号令がかかり、周りがぞろぞろと中庭を離れる中、私とティアはメケイラに呼び止められた。
「昨日、体操を教えるのを失念してしまった。申し訳ない」
……え?
「そうだったんですか⁉︎ 全くできてないので、てっきり前の人のように注意されるんだとビクビクしてました」
「本当に申し訳ない」
メケイラでもミスすることってあるんだ。すごくデキそうな人なのに。
「ということで、先程アンゲロイは戦闘訓練だと指示したが、月城は私と体操の練習だ。明日には皆と遜色なくできるよう、徹底的に叩き込む。時間は〇九〇〇で」
「りょ、了解!」
徹底的に……あんなキツいやつを⁉︎ か、覚悟しておこう。
メケイラはティアに視線を移す。
「セレスティアはその間、訓練場で個人練習をしてくれ。月城との件が終わり次第連絡する」
「了解ですわ」
指示を受け取り、うなずくティア。
メケイラとの用事はここで終わったので、私たちはそのまま朝食を食べに行った。
ティアに体操の件を慰められつつ、談笑しながら美味しい朝食を味わう。
トレーごと食器を返し、寮に戻ろうとしたその時、基地内にサイレンが鳴り響いた。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる