記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ

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波乱の記念舞踏会

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わたくしは今、グレンとダンスの真っ最中です。

いろんな意味でドキドキです。 あゝ心臓が忙しい。

でも、グレンにはさとらせませんわ、なんかくやしいですもの。


「ダンスが上手くなったね、セレンディア」

「あれだけ練習したんですもの、これくらいは上手くならなきゃ犠牲になった貴方の足に失礼ですわ」

「俺としては、ずっと犠牲にして貰っても構わないけどね」

「うっ…そ、そんな甘い事言ってると、難しいステップ迄本当に付き合わせるから」

「いいよ」

「っ!?」

し…至近距離でそんな顔しないで欲しいっ。「あっ!」

つい動揺して足捌きを間違えたら、グレンがわたくしの腰を引き寄せてぐらつかない様に支えてくれました。

「あ、ありがとう…」

「どう致しまして」

み、耳元で喋らないで欲しいぃ。 か…顔赤くなってないよねっ?



―――その頃のルチアーナとカナリア―――

「セレンディア様、記憶を失くされてから可愛らしくなりましたわね」

「ルチアーナ様もそう思います? わたくしも全く同意見ですわ」

「あら…カナリア様、あちらをご覧になって」

「まぁ、フリード様がお1人で。 珍しいですわね」

「くすくすっ…視線の先はグレン様ですわね、恐いお顔です事」

「セレンディア様は今まで、お兄様のシリウス様としか踊った事など有りませんでしたもの」

「メリンダ様との事も、もしかしたらセレンディア様の気を引きたかったからなのかも知れませんわね?」

「くすっ…そうだとしたら本当におバ…こほんっ」

「あ、 ダンスが終わりましたわ…」

「っ!? ルチアーナ様っ、フリード様が……」

「大丈夫ですわ。 カイ様があちらからお2人に向かっていますもの…」



「セレンディアっ!」

グレンとのダンスが終わってルチアーナ様たちの所へ戻ろうとしたら、フリード様がわたくしに声を掛けて来ました。

「こんにちは、フリード様。 何か御用でしょうか?」

わたくしがフリード様に挨拶をすると、エスコートしてくれていたグレンが手を放し、わたくしの腰を引き寄せました。

「!! 貴様っ私の婚約者に何をっ!」

「おや?…セレンディアと王太子殿下との婚約は、彼女の御父上であるウィンガザル公爵から白紙撤回したと記憶しておりますが?」

「っ! 確かに父上から聞いたっ。 だが、私はその様な事は了承していないっ!!」

「殿下が了承していようと無かろうと、今ご自分が仰った様にこれは国王陛下の決定です。殿下に覆せるとも思えませんが?」

グレンがフリード様と対峙し、周りの子息令嬢が遠巻きに見守る中、カイが進み出て来てわたくしの背後に付きました。

「そんな事はセレンディアが私との婚約にうなずけば済む事だ!」

フリード様の言葉を聞き、ちょっとイラついたので…

「わたくしにっ! フリード様と再び婚約を結ぶ意志は、微塵も御座いませんわ!」

つい、怒気を含めて言ってしまい…

「何だとっ! 王太子である私の申し出を断ると言うのか! このっ!」

激昂したフリード様がわたくしの腕を掴みかけた時…

「セレンディア様にお手を触れませぬ様、以前にも言った筈ですが?」

グレンがわたくしの腰を引き背後に回して守り、すかさずカイがフリード様に立ち塞がった。

「貴様っ! この前私の腕を掴んだ無礼者か!! 貴様等に用は無いっ。セレンディアを渡せ!」

「お断り致します」

「私の命令が聞けないのか!!」

その時、学院長が近づいて来ました。

「失礼します、王太子殿下。 あまり騒ぎを大きくしない方が宜しいかと…周囲をご覧下さいませ」

「っ!? くそっ!! どけっ!!」

フリード様は学院長を突き飛ばし、広間から出て行った。

わたくしは、倒れた学院長を助け起こそうと駆け寄りましたが、グレンが代わりにやってくれました。

「大丈夫ですか? 学院長」

「わたくしの所為で学院長に迄ご迷惑を…申し訳ありません…」

「謝る必要はありませんよ、セレンディア様。 私達の方こそ謝罪しなければ…今迄、殿下への対応を貴女に押し付けていたのですから…」

「そんな…婚約者だったのですもの、波風立てずに収めるにはそれが一番良かったのだと、以前のわたくしも思っていた筈ですわ…」

「そう言って頂けると助かります…ですが、あの様子ですとまた何か言って来そうですな…」

「私がウィンガザル公爵へ進言しておきましょう」

「でもグレン、またお父様に迷惑を掛けてしまうわ」

「セレンディア。 君が思ってる以上にご家族は君を愛しているんだよ? 迷惑なんて思う筈ないさ」

「そうですよ、お嬢様。 旦那様方は貴女をとても大切に思っていらっしゃいます」

「それは……わかりました…わたくしが言うよりも、第三者であるグレンからの方が客観的に父へ進言できますわね…よろしくお願いします…」

「うん。…ではそろそろあちらの2人が、痺れを切らしている様だから戻ろうか」

グレンに言われて振り向けば、ルチアーナ様とカナリア様が今にも此方へ来そうな様子でした。

「ではお嬢様、私はまた周辺を視回みまわって来ます。くれぐれもグレン様から離れません様」

「わかりましたわ」




―――フリードside―――


くそっ! 何なんだあの2人はっ!!

この舞踏会のエスコートを申し入れれば公爵から断られるわ!!

ならばとダンスを申し込みに行こうとしたら、あの留学生に先を越されるわ!!

それにっ! 何だあのセレンディアの嬉しそうな顔はっ!!

私の婚約者であった時はあんな顔っ――――くそっ!!!


「お帰りなさいませ、フリード様」

「邪魔だ!!どけっ!!!」

どんっ!「きゃあああっ!」

「誰も部屋へ近付けるなっ!!!」

バターーン!

「くそっ! どいつもこいつもっ!!」

大体メリンダがあんな事を言うからいけないのだ!


『フリードさまぁ、悪役令嬢って知ってますかぁ?』

『悪役令嬢? 何だそれは?』

『大抵、王位を継ぐ人の婚約者の事を指すんですけどぉ。私みたいにフリード様とこうやって親しくしてるとぉ、嫉妬して2人の仲を邪魔してくる様になるんですぅ』

『嫉妬して邪魔するから悪役という訳か…』

『それでぇ、私の役割がぁ……(成程な…あいつが嫉妬か…面白い…)


メリンダはその後もずっと何か喋っていたが、私はその先の計画を考えていて全く聞いてはいなかった…


あの時叩かなければ上手く行っていた筈なのにっ!!

セレンディアに何かしようとしても、あの2人が邪魔だ。

私が直接動くのはまずい。

メリンダを上手く使って何か手を打つか、それとも… 


何方どちらにせよ必ずまた手に入れてやるぞ――――――

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