6 / 17
ファルシオン学院
しおりを挟む
「お嬢様、おはようございます」
「おはよう、リリィ」
「いよいよ今日からですね、お嬢様」
「ええ、支度をお願いね」
「お任せ下さいっ」
今日から私…いいえ、わたくしはファルシオン学院へ通うのですわ。
それから、この間グレンから揶揄われて気付いた事が御座います。
それは、『言葉遣いとは思考から!』
頭の中でも令嬢言葉を使っていれば、咄嗟の時にも対応できる筈です。
わたくしはやれば出来る子なのですわ。
要は慣れです。 慣れれば良いのです。 慣れなければ。 慣れる筈…
「ではお父様、行って参ります」
「セレンディア、気を付けて行くんだよ。 カイ。 頼んだぞ」
「畏まりました」
「お母様、行って来ます」
「無事に帰って来るのですよ、セレンディア。 カイ。 お願いね」
「お任せ下さい」
「お兄様、行って来ますね」
「セレン、怪我しない様に。 カイ。 必ず守れ」
「承知しました」
もう…みんな心配し過ぎですわ。
確かに学院で怪我をしてしまいましたが、王太子がお馬鹿だっただけの事ですもの。
わたくしはカイと2人で馬車に乗り込みます。
「………………………」
「どうかしたか? お嬢様」
「ちょっと感動してるの………初めての馬車………初めての外出」
「っ!?……確かに………ぶふっ!!」
ジーーーーーッ
「悪かった……くふっ!」
どうせ子供みたいですよ~~だ。 ふんっ!
あ~1回でも出掛けとけば良かった。……ですわ。
「おはよう、セレンディア」
「グレン! 待っててくれたのですか?」
「うん。 学院の中、分からないでしょ?」
「そう言えばそうね、 ありがとうグレン」
「どう致しまして」
「カイはどうしますの? 中まで入れますの?」
「はい。 旦那様が、学院長に私の編入を認めさせたと……クラスも同じ筈ですよ」
「じゃあ、セレンディアは元々俺の隣だから、反対側の席をカイへ譲って貰おうか。 そうすれば何かあった時も2人で守れる」
「そうして頂けると心強いですわ」
と、3人で話している時に背後から誰かが走って来る音が聞こえて来た。
「っ!お嬢様っ!」「「!!」」
どんっ!
「きゃあっ!」
べしゃっ!
「「「………」」」
えーと……誰かが走って来る音が聞こえて。
振り返ると水色髪の知らない令嬢がわたくしにぶつかりそうになってて。
咄嗟にカイがわたくしを庇って目の前に立ち。
そのカイに水色髪の知らない令嬢が払い除けられて悲鳴を上げて。
顔から盛大に倒れ込み。
今に至る…と。
「えっと…あなた。 大丈夫?」
がばっ!「酷いですっ!セレンディア様っ!」
「「「は?」」」
「いきなり払い除けるなんてっ!」
「いやいやいや……」っといけない令嬢言葉、令嬢言葉…
「あの…わたくしのお知り合いですかしら?」
「酷いっ!人を転ばせておいて、知らない振りするんですかっ!」
「いえ…わたくしが転ばせた訳では無いと思うのですが…?」
「っ!! またそうやってあたしを否定するんですねっ?」
「いえ、事実だと…」
「あたしっ! こんな理不尽には負けませんからっ!!」
と、言い捨てて走って行かれました。
「「「………」」」
「何だったんでしょう…?」
「さあ…?」 (なんかどっかで見た様な気もするが…?)
「理解しかねます…」
「とにかく…教室へ行こうか」
「「そうですね」」
「「セレンディア様!」」
教室に入ると、ルチアーナ様とカナリア様が駆け寄って来ました。
「ルチアーナ様、カナリア様、おはようございます」
「「おはようございます。セレンディア様」」
「セレンディア、あの一番後ろの外窓側が俺たちの席だよ」
「まぁ。 ちょうど3人用の席なのですね」
「うん。 俺と反対側の人がもう来てるみたいだから席を変わってくれる様言ってくるよ」
「お願いします」
「セレンディア様、お言葉直されましたのね」
「ええ、ルチアーナ様やカナリア様とお話しした時、わたくしだけ違ってましたでしょう? それでお母様にお願いしましたの」
「完璧ですわっ、ねぇルチアーナ様っ」
「そうですわね、良いと思いますわ。 醸し出す雰囲気は先日と同じく明るいですし、何よりお言葉遣いが変わった事で以前より優し気になりましたわ」
「ふふっ。 大変でしたのよ? まだ焦ったりすると元に戻ってしまうんですもの」
「セレンディア、 終わったよ」
「わかりました。 ではお2人共また後でお話ししましょう」
「「ええ、また後で」」
わたくし達が席に着いたら教師の方が来られて、編入生であるカイを紹介して下さいました。
そして、わたくしが例の王太子との一件で、記憶を失っている事も併せて説明して頂きました。
皆さんかなり驚かれた様子でしたが、王太子とメリンダ様の普段からの素行は皆さんご存じなので、奇異の目ではなく同情の眼差しを向けられてしまいましたわ。
けれどまぁ…これで何か失敗してしまっても、余程の事でもない限り許して頂けるでしょう。……多分…
そういえば忘れてましたが、先程の水色髪の令嬢は誰だったのかしら?
―――水色髪の令嬢side―――
やっと悪役令嬢のセレンディアがやってきたわっ!
約2ヶ月前に高熱出して起きた時、突然前世の記憶を思い出したの。
きっとここは乙女ゲームの世界なんだわ。
でも設定がちょっと狂ってるよね、国と学院の名前が違うし、なんでグレン様公爵子息なんだろう?
フリード王太子はあたしの記憶に無いし…まぁいいか。 どうせ推しはグレン様なんだから。
前世を思い出したあたしがヒロインなんだわ。
だって、2ヶ月前にグレン様との出会いイベントがあったものね。
急いでどこかに向かってるグレン様に曲がり角でぶつかるの。
『急いでたからごめんね、怪我はしてないかい?』
『このくらいなら大丈夫です、ただ…馬車まで連れて行って貰えますか?』
『あぁ、あの馬車だね』
『ありがとうございました』
『ではここで。失礼するよ』
で、また走って学院に戻って行ったんだよね。どこに向かってたんだろ?
「おはよう、リリィ」
「いよいよ今日からですね、お嬢様」
「ええ、支度をお願いね」
「お任せ下さいっ」
今日から私…いいえ、わたくしはファルシオン学院へ通うのですわ。
それから、この間グレンから揶揄われて気付いた事が御座います。
それは、『言葉遣いとは思考から!』
頭の中でも令嬢言葉を使っていれば、咄嗟の時にも対応できる筈です。
わたくしはやれば出来る子なのですわ。
要は慣れです。 慣れれば良いのです。 慣れなければ。 慣れる筈…
「ではお父様、行って参ります」
「セレンディア、気を付けて行くんだよ。 カイ。 頼んだぞ」
「畏まりました」
「お母様、行って来ます」
「無事に帰って来るのですよ、セレンディア。 カイ。 お願いね」
「お任せ下さい」
「お兄様、行って来ますね」
「セレン、怪我しない様に。 カイ。 必ず守れ」
「承知しました」
もう…みんな心配し過ぎですわ。
確かに学院で怪我をしてしまいましたが、王太子がお馬鹿だっただけの事ですもの。
わたくしはカイと2人で馬車に乗り込みます。
「………………………」
「どうかしたか? お嬢様」
「ちょっと感動してるの………初めての馬車………初めての外出」
「っ!?……確かに………ぶふっ!!」
ジーーーーーッ
「悪かった……くふっ!」
どうせ子供みたいですよ~~だ。 ふんっ!
あ~1回でも出掛けとけば良かった。……ですわ。
「おはよう、セレンディア」
「グレン! 待っててくれたのですか?」
「うん。 学院の中、分からないでしょ?」
「そう言えばそうね、 ありがとうグレン」
「どう致しまして」
「カイはどうしますの? 中まで入れますの?」
「はい。 旦那様が、学院長に私の編入を認めさせたと……クラスも同じ筈ですよ」
「じゃあ、セレンディアは元々俺の隣だから、反対側の席をカイへ譲って貰おうか。 そうすれば何かあった時も2人で守れる」
「そうして頂けると心強いですわ」
と、3人で話している時に背後から誰かが走って来る音が聞こえて来た。
「っ!お嬢様っ!」「「!!」」
どんっ!
「きゃあっ!」
べしゃっ!
「「「………」」」
えーと……誰かが走って来る音が聞こえて。
振り返ると水色髪の知らない令嬢がわたくしにぶつかりそうになってて。
咄嗟にカイがわたくしを庇って目の前に立ち。
そのカイに水色髪の知らない令嬢が払い除けられて悲鳴を上げて。
顔から盛大に倒れ込み。
今に至る…と。
「えっと…あなた。 大丈夫?」
がばっ!「酷いですっ!セレンディア様っ!」
「「「は?」」」
「いきなり払い除けるなんてっ!」
「いやいやいや……」っといけない令嬢言葉、令嬢言葉…
「あの…わたくしのお知り合いですかしら?」
「酷いっ!人を転ばせておいて、知らない振りするんですかっ!」
「いえ…わたくしが転ばせた訳では無いと思うのですが…?」
「っ!! またそうやってあたしを否定するんですねっ?」
「いえ、事実だと…」
「あたしっ! こんな理不尽には負けませんからっ!!」
と、言い捨てて走って行かれました。
「「「………」」」
「何だったんでしょう…?」
「さあ…?」 (なんかどっかで見た様な気もするが…?)
「理解しかねます…」
「とにかく…教室へ行こうか」
「「そうですね」」
「「セレンディア様!」」
教室に入ると、ルチアーナ様とカナリア様が駆け寄って来ました。
「ルチアーナ様、カナリア様、おはようございます」
「「おはようございます。セレンディア様」」
「セレンディア、あの一番後ろの外窓側が俺たちの席だよ」
「まぁ。 ちょうど3人用の席なのですね」
「うん。 俺と反対側の人がもう来てるみたいだから席を変わってくれる様言ってくるよ」
「お願いします」
「セレンディア様、お言葉直されましたのね」
「ええ、ルチアーナ様やカナリア様とお話しした時、わたくしだけ違ってましたでしょう? それでお母様にお願いしましたの」
「完璧ですわっ、ねぇルチアーナ様っ」
「そうですわね、良いと思いますわ。 醸し出す雰囲気は先日と同じく明るいですし、何よりお言葉遣いが変わった事で以前より優し気になりましたわ」
「ふふっ。 大変でしたのよ? まだ焦ったりすると元に戻ってしまうんですもの」
「セレンディア、 終わったよ」
「わかりました。 ではお2人共また後でお話ししましょう」
「「ええ、また後で」」
わたくし達が席に着いたら教師の方が来られて、編入生であるカイを紹介して下さいました。
そして、わたくしが例の王太子との一件で、記憶を失っている事も併せて説明して頂きました。
皆さんかなり驚かれた様子でしたが、王太子とメリンダ様の普段からの素行は皆さんご存じなので、奇異の目ではなく同情の眼差しを向けられてしまいましたわ。
けれどまぁ…これで何か失敗してしまっても、余程の事でもない限り許して頂けるでしょう。……多分…
そういえば忘れてましたが、先程の水色髪の令嬢は誰だったのかしら?
―――水色髪の令嬢side―――
やっと悪役令嬢のセレンディアがやってきたわっ!
約2ヶ月前に高熱出して起きた時、突然前世の記憶を思い出したの。
きっとここは乙女ゲームの世界なんだわ。
でも設定がちょっと狂ってるよね、国と学院の名前が違うし、なんでグレン様公爵子息なんだろう?
フリード王太子はあたしの記憶に無いし…まぁいいか。 どうせ推しはグレン様なんだから。
前世を思い出したあたしがヒロインなんだわ。
だって、2ヶ月前にグレン様との出会いイベントがあったものね。
急いでどこかに向かってるグレン様に曲がり角でぶつかるの。
『急いでたからごめんね、怪我はしてないかい?』
『このくらいなら大丈夫です、ただ…馬車まで連れて行って貰えますか?』
『あぁ、あの馬車だね』
『ありがとうございました』
『ではここで。失礼するよ』
で、また走って学院に戻って行ったんだよね。どこに向かってたんだろ?
291
お気に入りに追加
5,665
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います
ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」
公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。
本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか?
義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。
不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます!
この作品は小説家になろうでも掲載しています
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?
藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。
目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。
前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。
前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない!
そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。
MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。
記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。
旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。
屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。
旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。
記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ?
それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…?
小説家になろう様に掲載済みです。
記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました
しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。
自分のことも誰のことも覚えていない。
王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。
聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。
なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。
【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。
鏑木 うりこ
恋愛
クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!
茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。
ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?
(´・ω・`)普通……。
でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる