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知っていれば止めたのに…

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「ヴェル兄様っ!」

応接室から出ると、クィンが青褪あおざめて駆け寄って来た。

「大丈夫だクィン。何事もない」

「しかし、魔力がっ…」

心配するクィンを手で制し、退室しようとする隣国の王子に声を掛ける。

「ミランダル殿。日にちが決まったらジルベールに伝えて貰います。彼女の都合を聞いておいて下さい」

「分かった。 では失礼する」

この時までは、彼の対応は普通だった。だが…



数日後に再び会った時、まるで別人の様に変わってしまっていた…



          ◇



「クィン、ちょっといいか? フェリシアが来る前に話しておきたい事がある…」

俺は、先程の話をクィンに伝えた。

「それでミランダルの王子が此処に居たのですね…」

「ああ。 フェリシアをおとしいれるために仕組まれた可能性が有る」

「そうですね…フェリシアは基本、独りで行動する事は有りませんから」

「後から説明する手間を省くために、俺とお前、ジルベールの3人で、インジャスタ男爵令嬢に話を聞こうと思っているが…」

「殿下への引継ぎは終わっていますので、僕の方は何時いつでも構いません」

「僕は…3日後なら時間が取れます」

「分かった。俺もそれに合わせよう。 ジルベール…」

「ええ、僕が明日アルフォードに伝えましょう」

「…詳しい事が判るまでフェリシアには気付かれない様にしておこう」

「殿下の言う通りですね。 シアだって理由も分からずに、自分の偽者が居るかもなんて知ったら不安になるでしょうし…」

「そうですね、悪戯いたずらに不安をあおるだけですからその方がいいですね」

「では、この件は3日後に…」

(そう言えば、明日はクロード達が戻って来るんだったな…)

「ジルベール。 あの2人の謹慎が今日で…」

と、そこで扉がノックされた。

生徒会室に入って来たのはトリスタンだった。


「失礼します」

「トリスタン!? 具合はもう良いのかい?」

「はい、クィンザ殿下。 ヴェルド殿下にも御心配をお掛けしてしまいまして…」

深々と頭を下げて来るが、彼には気になっていた事があったので問い掛けてみた。

「トリスタン。…記憶はどうだ? 何か思い出したか?」

「それが……」

何とも情けない顔をしているが、彼は数日間の記憶があやふやであったのだ。 しかも、婚約者であるスザンヌ嬢に対して、敵意の様なものまで示していたと言う。
魔道具のピアスをしているので精神干渉は受けていないとは思うが…

「やはり思い出せないか…」

「申し訳ありません…」

「ピアスでも防げない様な、強力な魔法を掛けられたのかも知れんな…」

魔道具を突破出来るような魔法か…魔法学院の関係者か、もしくは他国の間者である可能性も考慮に入れなければな…
この学園の生徒はまだ魔法を使えない…王宮の魔法師団に巡回を頼むか。

「クィン。 父上に許可を貰いたい事がある。 俺の代わりに生徒会の仕事を頼めるか?」

(俺達王族だけを守ればいいって訳にもいかんからな…)

「ええ。任せて下さい」

「それと、ジルベール。 明日クロード達が戻って来る」

「そういえば…もう1週間経ちましたか」

「ああ。 今日まで苦労かけたな。フェリシアにも宜しく伝えてくれ」

「分かりました」



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