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助けなる者との遭遇
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(王家の馬車が到着したみたいね)
私は支度を済ませて窓から外を確認していた。
少ししたらノックの音がして、侍女のジェシカが私を呼びに来たわ。
「お嬢様。王子様方がお越しになられました」
「王子様方? 1人ではないの?」
「いえ…お2人と護衛の騎士様が数名です」
「そう……」
(1人でも大変なのに2人ですってぇ!?)
「シア…? 支度出来てる?」
「ええ。出来ています…お兄様、お母様はまだ…?」
「うん…さっき知らせに行って貰ったから……もうすぐ帰ると思うけど」
仕方ない。 お母様が帰るまで何とか持ち堪えるしかないわね…
「分かりましたわ。 助けて下さいね、お兄様…」
「任せて。僕が守ってあげる…」
ドレスを着ているから皺にならない様、軽く抱きしめてくれた。
「じゃあ、行こうか…」
「はい」
「ジルベール・カストリアといいます」
「フェリシア・カストリアですわ」
「「第1王子殿下、第2王子殿下、ようこそ我がカストリア家へ」」
「「…………」」
(また固まっているわ……癖なのかしら…?)
「あの……殿下?」
「お…お前………銀髪だったか?」
「あぁ…いえ…これは……」
「申し訳ありません殿下。座っても宜しいですか? 妹はまだ…」
「っ!すまん…座ってくれ…」
(王族でもちゃんと謝れるんだね…子供の時は素直だったのかしら…)
私達はソファーに腰掛けて、執事にお茶を用意してもらった。
「先日は目の前で倒れてしまい、ご迷惑をお掛けしました」
「いや、それはいい。フェリシアと言ったか…お前の髪は…」
「ヴェル兄様。いきなりそんな事を聞いては失礼ですよ」
「いや、しかしだな…」
「僕はクィンザルダン…長いのでクィンかクィンザで呼んで下さい」
「ではクィンザ殿下で宜しいですか?」
「ええ。それで構いません」
「俺はヴェルドカインだからヴェルかヴェルドでいい」
「…ではヴェルド殿下で……」
「それでいい」
少し沈黙が続いた後…
「……何故いきなり倒れたのだ?」
「フェリシア嬢…覚えてますか? 僕達が名乗った途端、急に動かなくなって叫び声を上げて倒れたのです」
「それは覚えています……あの時、恐ろしいモノを感じて…でもそれが何かと聞かれると、分からないとしか…」
「恐ろしいモノだと!?」
「僕達が何か関係しているのでしょうか…」
その時、お兄様が私の手を優しく包み込んでくれました。
また震えていた様です…
「殿下方。妹はその時の事を思い出すだけで、この通り脅えて震え出すのです…もうこれ以上は……」
「分かった。クィンも、もう聞くな」
「そうですね…」
その後は4人で他愛もない話が続き、ヴェルド殿下とクィンザ殿下は帰って行きました。
2人が帰った直後にお母様が戻って来ましたが、失礼をする事も無く殿下方が帰られたと聞き…
「フェリシアに何もなくて良かったわ」と、言ってくれました。
そして3日後……
◇
「ちょっと用事で近くまで来たから寄ってみたんだ」
「10歳の王子様が貴族街に何の用事ですか!」
と、ツッコミを入れてしまった私は悪くないと思う……
◇
来てしまったものは仕方ないので、今は2人で庭園を散歩しています。
「それで、お前は普段どんな事をしているんだ?」
「どんな…と言われましても、勉強以外ですと読書とか刺繍とか…」
聞かれた事に答えていると、頬を掻きながら無茶な事を言ってきた。
「あゝ敬語は使わなくていい…敬称も付けなくていいぞ」
「そんな訳には…」
その時、後ろから有り得ない声が聞こえて来ました。
「僕にも敬語や敬称はいらないよ」
「っ!!」
驚いて振り返ると、クィンザ殿下が立っていました。
「どうしてここにいるのですか、クィンザ殿下!」
「ヴェル兄様が僕に内緒でコッソリ外出しようとしてたので、きっとここだと思ってね。 当たってた」
「チッ…ばれてたか……」
ヴェルド殿下が頭を掻きながら、小さく舌打ちをしてボソボソと呟いた。
「はぁ……コッソリって…王子様が何をやっているんですか…」
「クゥ…ン」
「…?」
(今、何か聞こえたような…?)
「フェリシア嬢? どうかしたの?」
きょろきょろしているとクィンザ殿下が問い掛けて来た。
「いえ……何か聞こえた気がして」
「クゥゥ…ン」
「確かに……鳴き声、か…?」
「クゥ…ン」
「……奥の方からだわ」
3人で庭園の奥へ向かうと、1匹の白い仔犬が蹲っていた。
「グルルルッ」
「フェリシアっ! 無闇に近付くな!」
「フェリシア嬢っ…いくら小さくても危険です!」
「でも、怪我をしているみたい…」
私は仔犬を刺激しない様にゆっくり近付いた。
(やっぱり怪我してるわ。だから動けないのね…)
「大丈夫……手当をしたいだけ…虐めたりしないわ」
「グルル……」
「……触ってもいい?」
「グル………」
なるべく優しく、ゆっくりと撫で摩る…
「クゥン…」
「よしよし…痛かったね……抱っこしてもいいかな?」
ゆっくり両手を伸ばし、仔犬の体を持ち上げる。
「ヴェルド殿下、クィンザ殿下、この仔犬の手当てをしたいので…申し訳ありませんが今日は帰って頂いても宜しいでしょうか…?」
「そうですね…今日は帰りましょう。見送りはいいですよ」
「あ、ああ。そうだな…では、また来る」
(え!? また来るの? もう来なくていいよ…)
「……それでは失礼します…」
私は仔犬を抱きかかえて屋敷へ戻りました。
私は支度を済ませて窓から外を確認していた。
少ししたらノックの音がして、侍女のジェシカが私を呼びに来たわ。
「お嬢様。王子様方がお越しになられました」
「王子様方? 1人ではないの?」
「いえ…お2人と護衛の騎士様が数名です」
「そう……」
(1人でも大変なのに2人ですってぇ!?)
「シア…? 支度出来てる?」
「ええ。出来ています…お兄様、お母様はまだ…?」
「うん…さっき知らせに行って貰ったから……もうすぐ帰ると思うけど」
仕方ない。 お母様が帰るまで何とか持ち堪えるしかないわね…
「分かりましたわ。 助けて下さいね、お兄様…」
「任せて。僕が守ってあげる…」
ドレスを着ているから皺にならない様、軽く抱きしめてくれた。
「じゃあ、行こうか…」
「はい」
「ジルベール・カストリアといいます」
「フェリシア・カストリアですわ」
「「第1王子殿下、第2王子殿下、ようこそ我がカストリア家へ」」
「「…………」」
(また固まっているわ……癖なのかしら…?)
「あの……殿下?」
「お…お前………銀髪だったか?」
「あぁ…いえ…これは……」
「申し訳ありません殿下。座っても宜しいですか? 妹はまだ…」
「っ!すまん…座ってくれ…」
(王族でもちゃんと謝れるんだね…子供の時は素直だったのかしら…)
私達はソファーに腰掛けて、執事にお茶を用意してもらった。
「先日は目の前で倒れてしまい、ご迷惑をお掛けしました」
「いや、それはいい。フェリシアと言ったか…お前の髪は…」
「ヴェル兄様。いきなりそんな事を聞いては失礼ですよ」
「いや、しかしだな…」
「僕はクィンザルダン…長いのでクィンかクィンザで呼んで下さい」
「ではクィンザ殿下で宜しいですか?」
「ええ。それで構いません」
「俺はヴェルドカインだからヴェルかヴェルドでいい」
「…ではヴェルド殿下で……」
「それでいい」
少し沈黙が続いた後…
「……何故いきなり倒れたのだ?」
「フェリシア嬢…覚えてますか? 僕達が名乗った途端、急に動かなくなって叫び声を上げて倒れたのです」
「それは覚えています……あの時、恐ろしいモノを感じて…でもそれが何かと聞かれると、分からないとしか…」
「恐ろしいモノだと!?」
「僕達が何か関係しているのでしょうか…」
その時、お兄様が私の手を優しく包み込んでくれました。
また震えていた様です…
「殿下方。妹はその時の事を思い出すだけで、この通り脅えて震え出すのです…もうこれ以上は……」
「分かった。クィンも、もう聞くな」
「そうですね…」
その後は4人で他愛もない話が続き、ヴェルド殿下とクィンザ殿下は帰って行きました。
2人が帰った直後にお母様が戻って来ましたが、失礼をする事も無く殿下方が帰られたと聞き…
「フェリシアに何もなくて良かったわ」と、言ってくれました。
そして3日後……
◇
「ちょっと用事で近くまで来たから寄ってみたんだ」
「10歳の王子様が貴族街に何の用事ですか!」
と、ツッコミを入れてしまった私は悪くないと思う……
◇
来てしまったものは仕方ないので、今は2人で庭園を散歩しています。
「それで、お前は普段どんな事をしているんだ?」
「どんな…と言われましても、勉強以外ですと読書とか刺繍とか…」
聞かれた事に答えていると、頬を掻きながら無茶な事を言ってきた。
「あゝ敬語は使わなくていい…敬称も付けなくていいぞ」
「そんな訳には…」
その時、後ろから有り得ない声が聞こえて来ました。
「僕にも敬語や敬称はいらないよ」
「っ!!」
驚いて振り返ると、クィンザ殿下が立っていました。
「どうしてここにいるのですか、クィンザ殿下!」
「ヴェル兄様が僕に内緒でコッソリ外出しようとしてたので、きっとここだと思ってね。 当たってた」
「チッ…ばれてたか……」
ヴェルド殿下が頭を掻きながら、小さく舌打ちをしてボソボソと呟いた。
「はぁ……コッソリって…王子様が何をやっているんですか…」
「クゥ…ン」
「…?」
(今、何か聞こえたような…?)
「フェリシア嬢? どうかしたの?」
きょろきょろしているとクィンザ殿下が問い掛けて来た。
「いえ……何か聞こえた気がして」
「クゥゥ…ン」
「確かに……鳴き声、か…?」
「クゥ…ン」
「……奥の方からだわ」
3人で庭園の奥へ向かうと、1匹の白い仔犬が蹲っていた。
「グルルルッ」
「フェリシアっ! 無闇に近付くな!」
「フェリシア嬢っ…いくら小さくても危険です!」
「でも、怪我をしているみたい…」
私は仔犬を刺激しない様にゆっくり近付いた。
(やっぱり怪我してるわ。だから動けないのね…)
「大丈夫……手当をしたいだけ…虐めたりしないわ」
「グルル……」
「……触ってもいい?」
「グル………」
なるべく優しく、ゆっくりと撫で摩る…
「クゥン…」
「よしよし…痛かったね……抱っこしてもいいかな?」
ゆっくり両手を伸ばし、仔犬の体を持ち上げる。
「ヴェルド殿下、クィンザ殿下、この仔犬の手当てをしたいので…申し訳ありませんが今日は帰って頂いても宜しいでしょうか…?」
「そうですね…今日は帰りましょう。見送りはいいですよ」
「あ、ああ。そうだな…では、また来る」
(え!? また来るの? もう来なくていいよ…)
「……それでは失礼します…」
私は仔犬を抱きかかえて屋敷へ戻りました。
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