1 / 21
前世を思い出しました
しおりを挟む毎年開かれる「カイザード王立学園」の卒業パーティーで第二王子率いる生徒会役員数名が、挨拶をするため壇上に集まりました。
ん?……あの令嬢も生徒会役員でしたかしら…?
「フォスティナ・ヴァリス公爵令嬢!」
第二王子が高らかにわたくしの名を呼びました。
「私サイラス・カイザードは今この場を持ってフォスティナ・ヴァリス公爵令嬢との婚約を破棄するっ!」
「婚約を……破棄…?ですか……」
ここは前世でプレイした乙女ゲーム『~あなたに惹かれて~』の世界…
3年前、入学式当日に原因不明の高熱で1週間意識不明で寝込み目覚めると、前世の暮林 美紗の記憶を思い出した。
______
_____
____
___
「う……ん…」
見慣れない天井……ここは…?
「フォスティナお嬢様っ!!」
フォスティナ? 私は美紗よ?
「お目覚めになられたのですねっ!」
メイド服を着た少女が目に涙を浮かべて駆け寄ってきた。
起き上がろうとしたら…
「いけませんっ! お嬢様は1週間意識不明だったのですよっ!」
「1週間も……」
メイド服を着た少女はとても心配そうに見つめ、声を掛けてきた。
「お嬢様、体調は如何ですか?」
「あなたは、誰…?」
「っ!?……え?……お嬢様…私が分からないのですかっ?」
「ええ…いえ……アンナ…?」
「!! はいっ、アンナですっ、よかった…今旦那様と奥様を呼んでまいりますっ」
わたくしは……フォスティナ・ヴァリス。
ヴァリス公爵家の長女。
でも、この記憶は? わたくしじゃないもう1人の『暮林 美紗』という女性のもの?
あぁ、 そうか、 そうなのね、 これはわたくしの前世の記憶なのね……。
カイザード王立学園を見た瞬間、頭が割れんばかりの頭痛に襲われて、意識を失ったんだわ。
ここはカイザード王国、今年カイザード王立学園に入学し、乙女ゲーム『~あなたに惹かれて~』が開始されるのね。
「ふっ……ふふっ」
わたくしは、悪役令嬢フォスティナ・ヴァリスなのね。
「どうせなら10歳の時に記憶が戻って欲しかったわね……
そうしたらそもそも婚約などしなかったのに」
「ティナっ!!」
お父様が寝室へ飛び込んで来られました。
「大丈夫かいっ!? どこも痛くないかい?」
この男性はロベルト・ヴァリス……わたくしの父親です。とても心配性なのですわ。
「大丈夫です、お父様…ご心配お掛けしました」
「フォスティナ……良かったわ」
「お母様…」
この女性はシルヴィアーナ・ヴァリス……わたくしの母親ですわ。はらはらと涙を溢されています。
「ティナ、まだ顔色が良くないね?」
「お兄様…もう平気よ?心配しないで?」
この青年は兄のフェルナン・ヴァリス……わたくしの頬に手を添えて下さいます。
「さあさあ、診察しますよ? 皆さん席を外してくだされ」
「む……もう少し側に…」
「あなた、行きましょう」
「父上…」
心配性のお父様に、お母様もお兄様も呆れ顔です。 ふふっ。
「さて…お嬢様、どこまで覚えておられますか?」
「学園の門を通り抜けた辺りまで……かしら…」
「その時、何があったのでしょうか?」
「分かりません…突然酷い頭痛がして、気が付いたらここに……」
前世の記憶を思い出した事は…言わない方が良いわね………
「倒れられてから2日前まで高熱が続いていたのですよ、今もまだ頭痛はしておりますかの?」
「今は無いわ、ただ少し頭が重く感じるだけね」
「そうですか……では念のため、あと1週間はこちらの薬で様子を見ましょう。 2日程したら少しずつ運動して体力をつけて行くんじゃよ?」
「はい」
「では、旦那様方には伝えておきますからの、消化の良い物を食べてゆっくりしておきなされ」
「はい、ありがとうございます」
お医者様がアンナにいくつか指示をして部屋を出ていかれました。
「フゥ…」
これからの事考えなきゃね…
でも、美紗の記憶ではそれほどこの乙女ゲームは詳しく無いみたいなのだけど、どうしましょうか…
他の乙女ゲームや小説では、ヒロインが転生者でさえなければ嫉妬して虐めない限りある程度大丈夫だと思いますけれど…やはり強制力というものが働くのかしら……?
でも確かバッドエンドは国外追放だけだったですわよねぇ…
ならば、わたくしの身分を考えるとそこまで困る事にはなりませんかしら…?
「これはゲームなどではなく、命ある現実世界ですものねぇ?」
現実ではエンディングなど流れませんもの。
まぁ、もともとあまり気乗りしない婚約でしたし?
婚約者にも全く好意など持ってはおりませんし?
あら? わたくし何も困る事ございませんわねぇ。
サイラス様がヒロインに心惹かれるのであれば応援して差し上げましょう。
ヒロインがお花畑転生者かどうかと冤罪だけ気を付けておきましょうか。
134
第一話に家族の名前を付け足しておきました。
お気に入りに追加
4,103
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の大きな勘違い
神々廻
恋愛
この手紙を読んでらっしゃるという事は私は処刑されたと言う事でしょう。
もし......処刑されて居ないのなら、今はまだ見ないで下さいまし
封筒にそう書かれていた手紙は先日、処刑された悪女が書いたものだった。
お気に入り、感想お願いします!
婚約破棄を言い渡された側なのに、俺たち...やり直せないか...だと?やり直せません。残念でした〜
神々廻
恋愛
私は才色兼備と謳われ、完璧な令嬢....そう言われていた。
しかし、初恋の婚約者からは婚約破棄を言い渡される
そして、数年後に貴族の通う学園で"元"婚約者と再会したら.....
「俺たち....やり直せないか?」
お前から振った癖になに言ってんの?やり直せる訳無いだろ
お気に入り、感想お願いします!

婚約破棄ですか? 理由は魔法のできない義妹の方が素直で可愛いから♡だそうです。
hikari
恋愛
わたくしリンダはスミス公爵ご令息エイブラハムに婚約破棄を告げられました。何でも魔法ができるわたくしより、魔法のできない義理の妹の方が素直で可愛いみたいです。
義理の妹は義理の母の連れ子。実父は愛する妻の子だから……と義理の妹の味方をします。わたくしは侍女と共に家を追い出されてしまいました。追い出された先は漁師町でした。
そして出会ったのが漁師一家でした。漁師一家はパーシヴァルとポリー夫婦と一人息子のクリス。しかし、クリスはただの漁師ではありませんでした。
そんな中、隣国からパーシヴァル一家へ突如兵士が訪問してきました。
一方、婚約破棄を迫ってきたエイブラハムは実はねずみ講をやっていて……そして、ざまあ。
ざまあの回には★がついています。

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです
hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。
ルイーズは伯爵家。
「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」
と言われてしまう。
その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。
そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

酔って婚約破棄されましたが本望です!
神々廻
恋愛
「こ...んやく破棄する..........」
偶然、婚約者が友達と一緒にお酒を飲んでいる所に偶然居合わせると何と、私と婚約破棄するなどと言っているではありませんか!
それなら婚約破棄してやりますよ!!

婚約破棄を言い渡された側なのに、俺たち...やり直せないか...だと?やり直せません。残念でした〜
神々廻
恋愛
私は才色兼備と謳われ、完璧な令嬢....そう言われていた。
しかし、初恋の婚約者からは婚約破棄を言い渡される
そして、数年後に貴族の通う学園で"元"婚約者と再会したら.....
「俺たち....やり直せないか?」
お前から振った癖になに言ってんの?やり直せる訳無いだろ

婚約破棄をしたいそうですが、却下します
神々廻
恋愛
私は公爵令嬢で一人娘。跡取りは私だけですので婿を貰わ無ければなりません。ですので、私のお母様の親友の伯爵夫人の息子と幼い時に婚約を結びました。
ですけれど、婚約者殿は私の事がお嫌いな様でドタキャンしたり、仮病を使ったりと私の事がお嫌いなご様子。
14歳で貴族の学校に通うことになりましたが婚約者殿は私と話して下さらない。
挙句の果てには婚約破棄を望まれるし.......
私は悲しいです
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる