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俺達のスタート
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剛が俺の傍らにゆっくりと腰を下ろした。少し困ったような戸惑ったような複雑な表情で頭を掻きながチラリと俺を見る。
「弘人…、マジで言ってんのか…?」
俺は腹を決める。どうなるか分からないが、剛が離れて行くのだけは止めたかったのだ。
「俺は、お前と離れるのは嫌なんだ!」
正直な自分の想いを口にする。改めて言葉にすると物凄く恥ずかしくなる。顔がカーッと熱くなってしまう。
「俺が、お前をどうしたいか…分かって言ってんのか?」
その言葉にギクリとする。
《それ…!どうにかならないのか~!?》
心の中で歯軋りをする。
ふと、先輩達のあの光景が頭を過ぎる。突然の出来事に…すっかり頭の中から吹き飛んでいたのだ。剛との事で少なからず先輩達の気持ちも分かったような気がしていた。俺の胸のモヤモヤも軽くなっていたのだ。本来なら「無事解決!」と言いたいところだが、それよりも大きな悩みを抱える結果になってしまった。
それでも、相手が剛ならどうにかなると思ってしまうのは妙な感覚だ。俺が単純なだけかもしれない。
チラリと剛を見ると、少し考え込むような表情で黙って俺の言葉を待っているようだ。
剛を引き留めたのは俺だ。あそこで引き留めていなければ…俺は、きっと後悔していたはずだ。同じ後悔なら、逃げるより立ち向かえ!だ。こうして目の前に剛が居る。今はそれでいい。
《剛が相手なら…》
目の前の剛を眺めながら、俺は胸の中で膨らむ何かを感じていた。それは言葉にはならない不思議な感覚。
何だろう…?
それでも、剛が相手なら何とかなる。剛が相手なら何とかしたい。俺は必死に考える。
《剛が相手なら…》
それは繰り返される呪文のように頭の中を巡ってゆく。剛が相手なら…、剛が相手なら…、2人でなら…。
《うん、剛が相手なら何とかなる!》
ハッキリとは分からないが、考えても答えは出ない。分からないなら進んでみるしかない。剛を引き留めた時から、俺なりの覚悟は決めていたのだ。
「俺は、お前が相手なら…。」
そこまで口にして強烈に恥ずかしくなった。剛が驚いた顔で俺を見返す。
「弘人…、俺、もう我慢出来ないけどマジで大丈夫か?」
聞くだけでも恥ずかしくなるなるようなセリフを言われてギクギクッとなる。そして、剛に抱きしめられた時の事を思い出して余計に顔が熱くなってしまう。
《思い出しただけでも恥ずかしいのに…、また、ああなるのか…?!》
剛のかすれた声、首すじにかかる息、そこから先を想像すると頭がクラクラし始める。そして、先輩達のあの光景がありありと浮かんだ。
「お、俺が…、ご、剛と…、あ、あ、あんな事…?!」
心の声が口をついて出ている事にも気付かないほど俺の頭はパンク寸前だ。そんな俺の様子を見て剛が小さく吹き出すのが見えた。
「おい、剛~!何、笑ってんだよ~?!」
パンク寸前まで張りつめていた風船が一気に萎んでゆくように、先程までの緊迫感も一緒に吹き飛んでしまった。
「弘人~、お前、どんな想像してんだ~?」
そう言いながら笑っているのは〈いつもの剛〉だ。話す口調もそうだ。俺はなんだかホッとする。いつもの剛が目の前に居る。それだけで気持ちが落ち着く。
《これが、俺の好きな剛なんだよな~!》
そう思うと自然と笑顔になる。
《でも、どんな剛も…俺は好きだな…!》
ホッとして笑顔になる俺を見て剛も嬉しそうに笑う。普段は豪快に笑う奴だが、少し照れたように笑う剛はなかなか良い。俺は、今日〈俺の知らない剛〉を沢山見た気がする。
「俺って、剛のこと…本当には知らなかったのかもな。」
ポツリと呟く。
「はぁ~?何言ってんだ?俺は、お前にしか見せてないところが沢山ある…」
そう言って言葉を切った後、身を乗り出して俺の顔を覗き込んでくる。
「言っただろ?お前は俺の…特別だ!…って。」
剛がニヤリと笑う。俺は耳まで真っ赤になってしまった。その照れ隠しと悔し紛れに言い返す。
「俺、もう一つ見つけた!お前は、恥ずかしい事を平気で言う奴だ!」
俺もヘヘッと笑って舌を出す。
《うわわ……?!》
突然、俺は剛の腕に抱きしめられた。普段の和やかムードに戻って安心していた身体が一気に固まる。親友に抱きしめられている構図が気恥ずかしくて顔もカーッと熱くなる。固まった俺の耳元で剛がポツリポツリと話し始める。それは、囁きではなく普段の口調だ。
「ごめんな~、弘人。俺、お前に無理させてるよな~。でも、お前が俺を引き留めた時、マジですんげぇ~嬉しかった。俺、かなり覚悟はしてたけど…、お前と…離れるの…、辛すぎる…」
少しずつ言葉が詰まって途切れてゆく。その声も身体も微かに震えている。それでも、なるべく俺を緊張させまいとしてくれているのが伝わって来る。
俺は、そんな剛を愛おしく感じて…行き場に困って持て余していた両腕を剛の背中に回して力強く抱きしめてみた。剛の身体が強張るのを感じる。
触れ合う頬や身体が熱いのは俺の方なのか?剛の方なのか?分からない。胸の鼓動がトクン…トクン…時を刻んでゆく…。
剛が俺の耳元でゆっくりと囁く。
「弘人…。俺、マジで…お前が好きだ。」
切なげにかすれる声と微かに震える息が俺の耳元にかかる。それだけで身体が勝手にビクンと反応してしまう。俺は思わず剛の肩口に顔を押し当てた。
暫くそのままの体勢で抱き合っていると、剛の鼓動がドクン…ドクン…と伝わって来る。剛も緊張しているのか?なかなか動かない。俺はどうすれば良いのか分からずにジッとしていた。俺の心臓もバクバクしている。
「……剛…?」
たまりかねて名を呼んだ瞬間、俺の身体がベッドに押し倒される。
「うわっ!?」
先程と同様に、俺の身体は剛の身体の下にスッポリとおさまってしまう。苦しくないのは…剛が自分の腕で上半身を支えているからだ。剛の髪の毛が軽く触れてくる。その顔が間近にある。息づかいが聞こえる。俺は余りの恥ずかしさと緊張にギュッと目を閉じる。
《ど、どうなるんだあぁ~?!俺~~?!》
身体がガチガチに固まる。緊張で震える。顔が熱くほてる。心臓が耳の横で激しく鳴っている。
しかし、今度もまた…剛は動かない。
《一体、何してるんだ…?》
チラリと剛の様子を盗み見ようと目を開けてみる。直ぐに剛の視線とぶつかった。どうやら、ずっと俺の顔を見ていたらしい。緊張してガチガチになっている顔を見られていたのかと思うと余計に恥ずかしくなる。
「なんだよ?!見てるだけかよ!」
俺は思わず言い放つ。
《あ…、ヤベェ!!》
「俺は、こうやってるだけでもいいんだけど…?」
剛は少し照れながら嬉しそうに微笑む。
《この笑顔…なんか良いよな~!》
又しても、俺はついつい見惚れてしまう。
綺麗な形の眉、意外と長い睫毛、瞳の色は少し青みがかって見える。深い海の底のような不思議な色だ。外国人の血を引いているせいか、日本人とは少し違った神秘的な感じだ。
《すげぇ…!なんか不思議な色だ…。凄く綺麗だな…》
まじまじと眺めている剛の顔が少しずつ近付いて来る。
《……ハッ?!こ、これは…もしかして…?!》
俺の身体が強張る。思わず口唇をキュッと引き締めて身構える。ところが、剛は覚悟した俺の顔を素通りして枕元に頭を埋めた。そして、まだ固まったままの俺の首すじに口唇を寄せて…触れるか触れないかの距離でゆっくりと囁く。
「そんなに見つめられたら…キスしたくなるだろ。」
その囁きに合わせて口唇が微かに触れてくる。湿った熱い息が首すじを撫で上げる。俺の身体がゾクリと震え、剛の台詞で口から心臓が飛び出しそうになった。全身がカーッと熱くなり、変な汗がジットリ滲む。そんな俺の反応を見て、剛がフフッと小さく吹き出した。
「そんなに緊張されたら何も出来ねぇだろ~。心配すんなって!弘人が嫌がる事はしねぇから。」
いつもの口調に戻っている剛の声は笑いを堪らえている。
《クッソ~~!!》
俺は剛に振り回されているような気がしてムッとした。俺の反応を見て楽しそうにしている剛の首に手を伸ばす。グイッと引き寄せて、その口唇に自分の口唇を重ね合わせる。そうやってはみたものの、俺にはキスの経験がない。口唇を引き結んで〈エイッ!〉とばかりに押し当ててみたたけだ。
剛の身体がビクンと反応して慌てて身を引いた。かなり驚いた様子で耳まで真っ赤になっている。
《してやったり!》
反撃心からの軽い悪戯だっのだが、剛には効果テキメンだったようだ。
「へへ~ンだ!お前が俺をおちょくるから仕返しだ!」
俺はニヤリと笑い得意気に言ってやる。
「ふ~ん。それなら…、もっとおちょくれば…もっといい事があるのか?」
剛もニヤリと笑う。
《やっぱり、剛には敵わねぇ~!》
俺はムスッっとして顔を背ける。
剛の手が俺の頬にそっと触れてくる。長い指がゆっくりと頬を撫でるように滑り、顎のラインをなぞってゆく。今まで誰にもそんな風に触られた事がない。
《な、なんか…、ヤラシイよな…?》
そう思うと、今までとは違う恥ずかしさが込み上げてくる。咄嗟にその手を掴んで顔から引き離す。
「俺に触られるの…やっぱ、嫌か…?」
少し寂しげな声で訊かれて返事に詰まる。覚悟を決めたつもりでいても、いざとなると抵抗感が出てしまう。
「いや、くすぐったいだけだ!」
そう答えて、掴んでいた剛の手をピシャリと頬に押し当てた。
《うがああぁ~!完全に俺の負けなのか~?!》
剛の苦しそうな姿を目にしたばかりだ。今は、これ以上…剛を悲しませたくはない。そんな風に思ってしまう。同情心なのかもしれないが、俺は剛を失いたくないのだ。
《うがががあぁ~~!!俺って、剛に弱いのかな…?》
頭の中で自問自答を繰り返す。
剛は、頬に触れた手を動かすでもなく離すでもなくジッと添えたままだ。それだけでも、その大きな手に包み込まれているようで恥ずかしくなる。剛の手の温もりが直に伝わってくるせいだろうか…?
俺が独りでアレコレ考えている間も、剛は身動きもせず何も言わず寄り添ったままジッとしている。嫌がる事はしないと言った言葉は本心らしい。それでも、剛は俺が好きなのだから本当なら先輩達のように…。そこまで考えて激しく後悔した。
《俺が…、剛と…、あんな事が出来るのか…?!そ、それは…出来ねぇ~~!!》
これ以上考えたら脳が完全に煮えてしまいそうだ。横目でチラリと剛を見る。俺と頭を並べるようにして伏し目がちに俺の横顔を見つめている。その表情は幸せそうだ。俺の胸がキュンとなる。
《でも、これで良かったんだよな…》
「あのな…剛、お前に触られるのが嫌とかどうとかじゃなくて…。さ、さっきのは…何て言うか…、気恥ずかしいっていうか…、よく分んねぇけど…。」
たどたどしく話す俺の顔を剛が覗き込んできた。
「弘人、無理しなくていい。ここにお前がいる。それだけでいい。」
なんとも甘く優しく語りかけてくる。普段の剛からは想像すら出来ない雰囲気がある。
《剛って…、恋愛するとこんな感じになるのか?》
俺は妙に感心しながら剛の顔を眺める。普段は恋愛に関心を示さない剛が、どんな風に思っているのか?どんなタイプが好きなのか?彼女が出来たらどうなるのか?ずっと気になっていた。剛が他の誰かを好きになって恋愛したら、その相手にもこんな風にするんだろうな…。
そんな事を考えていると、剛が俺に見せた様々な表情が頭の中に浮かんでくる。
胸の奥が小さくチクリとした。
《それは、なんか寂しいかもな…》
剛に優しく包み込まれるような感覚の中で…ぼんやりと思い巡らせていた俺は、不思議な心地良さと妙な寂しさを感じていた。そして、ふと目の前の剛に焦点が合う。優しく見つめてくる眼差し、その不思議な色の瞳がゆらめいて…思わず引き込まれそうになる。俺はギュッと目を閉じた。
「お前に…、キス…したい…。」
絞り出すようにかすれる声が聞こえた。俺はビクッとして目を開ける。切なげに俺を見つめる剛の表情にドキリとする。
《うわぁ~!?マジかよ~?!どうすりゃいいんだ!?》
俺の心臓がバクバクし始める。身体がググッと強張る。先程は、反撃心と悪戯心でキス紛いの事をした俺だが…こうなると状況は違う。心臓が〈ドトドドド~!!〉まるで噴火前の地鳴りのように騒ぎ始める。
《剛にキスされる…!…キス?キ、キスされるのか~??俺~~?!》
剛は俺を見つめたまま動かない。俺の返事を待っているようだ。嫌がる事はしないと言った。断れば止めるのだろう。だが、剛の表情を見ると辛そうなのが分かる。同じ男としてそれはキツイはずだ。俺に了解を求められても困る。それならいっそ強引にやられた方が覚悟も出来るというものだ。しかし、このまま迫られ続けると俺の心臓がぶっ壊れそうだ。
ついつい、そんな事をアレコレ考えてしまう。
《俺って…、どこまで剛に甘いんだあぁ~~?!》
俺は半分パニック状態だが、身体は固まったまま動かない。向かい合う俺達は…そのまま静止画像のようになっていた。
「……弘…人…。」
剛が苦しげに俺の名を呼ぶ。
「わ、分かった!俺がやる!」
俺は咄嗟にそう答えていた。
「え…?!」
剛の表情が驚きに変わる。緊迫した空気が一気に吹き飛ぶ。
「え…?マジで…?!」
〈いつもの剛〉がそこに居た。先程までの雰囲気たっぷりの剛とは違い、少しトボケた表情の軽そうな感じになる。
《うん!やっぱり、いつもの剛の方が安心するな!》
雰囲気たっぷりの剛も悪くはないが、俺には刺激が強すぎる。剛に見つめられて迫られると身体がガチガチになって動かなくなる。アタフタするだけの自分が嫌になる。それがどうにも苦手だ。そんな事を考えながら剛の顔を眺める。剛は嬉しそうに照れ笑いしている。
「俺は、どっちでもすんげぇ~嬉しい!」
剛が俺の身体を抱え込み一気に体勢を変える。あっと言う間に俺は剛の上に覆い被さってしまう。
「うわっ!ちょ、ちょっと…何だよ?!」
慌ててベッドに腕をついて上体を起こす。今度は、俺が剛を見下ろす形になっている。
「うわっ?!」
慌てて剛の上から飛び退こうとした瞬間、腕を掴まれて引き戻される。
「逃げんなよ。」
剛の腕が背中にまわり、そのまま軽く抱きしめられてしまう。
《こ、これはこれで…、かなり恥ずかしい~~!!》
暫くの間、そのままの体勢で動けずにいる俺に剛が言う。
「なぁ、キスしてくれるんだろ?」
上になっても下になっても剛は相変わらずだ。だが、下になった方が受け身になるらしい。
《…と、いう事は…?今は俺が優位だ!》
ずっと振り回されてアタフタしていた俺の気分が少し上がる。気分が上がるとその気にもなってくる。
《やっぱり…、俺って単純かもな?》
改めて、ベッドに手を着いて上体を起こす。俺を見上げる剛の顔は少し照れくさそうに微笑んでいる。見上げるのと見下ろすのではこんなにも違うものかと妙な感心を覚えながら、俺も剛を見つめ返す。
暫しの沈黙…。
「……弘人…。」
剛が俺の名を呼ぶ。その口唇が薄っすらと開いて俺を待っているようだ。
《よし!》
俺は大きく息を吸い込み腹を決める。しかし、その考えが甘かった事を痛感する。心臓の音が激しく鳴り響いて耳鳴りがする。身体中が強張って関節がギシギシと音をたてる。かなりの緊張で全身が小刻みに震える。俺はぎこちない動きで剛に顔を近付けてゆく。
《い…、い、息が苦しい…!》
咄嗟に身体を起こして〈ブハーッ!〉と息を吐いた。
「どうした?!弘人?」
驚いて起き上がろうとする剛の身体を手で制する。
「だ、大丈夫だ!心配御無用!」
かなりの緊張で言葉までおかしくなってしまう。素の状態では到底耐えられそうにない。そんな俺を見ていた剛がクスリと笑う。
「何だよ~?笑うなよ!お前がジッと見るから緊張すんだろ~!」
俺の覚悟がへし折れそうになる。
《いやいや、俺も男だ!やる時はやるって事を剛に見せてやる!》
そう自分に言い聞かせて、大きく息を吸い込みグッと下腹に力を込める。
「剛、目ぇ瞑ってろ!」
俺は男らしく力強く言い放つ。剛が頬を赤らめてニッコリ笑うと小さく頷いて目を閉じた。そんな仕草が意外と可愛らしく見えてしまう。
《よし!仕切り直しだ!》
俺は胸に手を当てて呼吸を整えながら目を閉じる。自分の心を鎮めるように集中する。そうやっていると、50mコースのスタート地点に立っている時のような気分になる。ただ、これから向かうのは50m先のゴールではなく剛の口唇だ。そう考えると変な話だが、気分的には同じようなものだ。それぐらい俺の中では重要な事だ。
再びベッドに手を着いて剛の顔を覗き込む。目を閉じたその顔は整っていて綺麗だ。
《やっぱり…綺麗だよな…》
今日は何度となく見とれてしまったが、ますます綺麗に見えるのは何故だろう…?剛の辛そうな表情を沢山見たからだろうか…?
《なんか…変にドキドキするよな…》
今の剛の顔からは何となく艶っぽさのある魅力的な印象を受ける。俺はゆっくりと顔を寄せてゆく。また心臓がバクバクし始める。身体の動きがぎこちなくなる。
《ヤバイ~!緊張する~!》
1時間前までは、剛にキスするなんて想像もしていなかった事だ。剛にほだされて…なし崩しにここまで来てしまった。勿論、俺自身の意思も含めてだが…。親友で、しかも男同士だ。それなのに不思議と嫌悪感はない。これが他の奴等だったらどうなるだろう…?ふと、親しい仲間の顔を思い浮かべてみる。
《ウゲ…!絶対無理…!》
思い切り鳥肌が立ってしまった。
俺は剛が好きだ。それは今も変わらない。恋愛対象に見た事なんて一度も無いが、普通では想像すらしない事だろう。
それなら、俺のこの感情は一体何だ…?同情心かとも思っていたが、それだけではない「何か」がある。言葉では言い表せない熱い想い…。
《剛は…、俺にとって特別な存在なんだ…》
そんな事を思い巡らせながら剛の口元に視線を移す。少し大きめの口唇はハッキリした輪郭で口角が少し上がっている。いつも笑っているように見えるのはこのためらしい。
《ここに…キスするのか…》
そう思った途端、ドギマギしてまともに見られなくなる。今度は指先で軽く触れてみる。剛がピクンと小さく身体を震わせた。剛も緊張しているのだろうか…?その頬に顔を寄せる。指先で確認するように口唇をゆっくりとなぞってみる。
「……ハァ……」
口唇が薄く開いて小さな吐息が漏れる。熱く湿った息を指先に感じて身体がゾクリとした。何だか妙な気分になってくる。先程まで俺を散々に振り回していた剛が、今は従順に待っているのだ。
「そんなに…俺が好きなのか…?」
変な気分になった俺は、かすれた声で問いかける。
剛の瞼がゆっくりと開き、うっとりとした眼差しが向けられる。妙に色っぽく見える表情、その口唇が小さく動く。声にならない熱い吐息と口唇の柔らかな感触が指先に伝わってくる。
「す、き、だ」
身体の奥がジンと熱くなる。そのままゆっくりと指を這わせると、口唇が小さく震えて応えてくる。少し開いた隙間から覗く舌先が軽く触れてくる。
「ハァァ……、弘…人……」
その口唇から絡みつくような熱い吐息が漏れた時、俺は引き寄せられるように自分の口唇を重ねていた。
剛の舌先がそっと触れてくる。誘うように軽く口唇を舐められて…俺の舌が戸惑いながらもそれに応える。小さく触れ合う舌先…身体の奥がジーンと熱くなる。剛の腕が背中にまわり優しく包み込んでくる。俺は剛に身体を預ける。
躊躇いがちに軽く触れ合っていた舌先が、剛の舌に促されるようにぎこちなくも自然に絡み合ってゆく。
「……ん…っ……」
俺の喉元から小さな呻きが漏れる。剛の腕に力が込められ強く抱きしめられたかと思うと、グイッと身体が反転して俺の上に覆い被さってくる。そのまま深く舌を入れられて訳が分からなくなる。酸欠気味の頭がボーッとし始めた頃、ゆっくりと剛の口唇が離れる。
「はぁ……、ぁぁ……」
深い口づけに息苦しくなっていた俺の口から熱い溜め息が漏れる。頭がボーッとして身体に力が入らない。剛の口唇が頬から耳元へと滑ってゆく。
「……弘…人…。」
耳元で甘く優しく名を呼ばれ、脱力した身体が勝手にビクンと反応する。
「んぅ…っ…」
同時に変な声まで出てしまった。自分の耳を疑うような甘い声にハッと我に返って恥ずかしくなる。
「あ…?!ご、剛…?」
慌てふためきながらも平静を取り戻そうと呼びかけた俺の顔を剛が覗き込んでくる。
「弘人。」
その幸せそうな表情に最上級の微笑みが浮かぶ。
《ドッキューン!》
俺は胸を撃ち抜かれた鴨のような気分になる。目をまんまるに見開いて呆けている俺の口唇に剛が軽くキスをしてきた。一瞬だけ軽やかに触れて離れる口唇からは〈チュッ〉と可愛らしい音が鳴る。
「あっ…?」
俺の身体がピクンと反応して小さな声が出た。まるでスイッチでも押されたかのように…呆けていた頭の中が再稼働する。
《え…?今…、俺、キスされた…?》
一瞬の出来事にキョトンとしてしまう。
今までの俺にはキスの経験が無い。過去に一度だけ観たエロDVDは恥ずかしくなるぐらいに濃厚でエロかった。俺が好きなカンフー映画やお笑い番組にそういうシーンは無い。テレビで観たアクション映画の最後の方にある外国人のキスシーンもそれなりに濃厚だった。それが俺の知り得るキス情報だ。
《もしかして…?今みたいな感じで良かったのか…?》
剛の舌が触れてきた時、戸惑いながらも応えたのは「そうするもの」だと思っていたからだ。あれほど身構えて緊張したのもそのせいだ。
《ハァ~~、俺って…バカ?》
何となくやるせない気持ちになる。変に緊張しっぱなしだった身体から力が抜けてゆく。つい先程までの恥ずかしさも戸惑いもドキドキも薄れてゆく。
「重いだろ。悪いな。」
剛が俺の上から身体をズラして横たわる。今度は軽く抱きつくように身を寄せてくる。安心したような静かな息づかいと優しい温もりが伝わってくる。これで「万事解決!」だ。
《あぁ~、緊張して損した~!もう~、疲れた~!》
俺は心底安堵して脱力する。
《フゥ…、これでもう安心だな》
身体の緊張も動揺もなくなった今、改めて剛の身体を身近に感じる。腕の重み、軽く触れる髪の毛、やわらかな息づかい、身体のぬくもり…その全てがハッキリと感じ取れる。
《やっぱり、剛が傍に居ると安心する。離れるなんてあり得ねぇよな…?》
《剛…。これからも、ずっと一緒に居ような…!》
改めて、そんな事を考える。今まではあまり意識していなかった部分だけに、自分の気持ちに気付くというのは妙な恥ずかしさを伴うものだ。段々と触れ合っている部分までもが熱くなってくる。何だか胸までドキドキしてくる。それは、今までとは違うドキドキ感だ。
《何なんだ?俺、どうなってんだ?》
それが、剛に対するトキメキだと気付くのは…まだ少し先の話になるのだが…。
俺は妙なドキドキ感に耐えられなくなり、気を落ち着けようと剛に話しかける。
「な、何だか身体が熱いような…?剛は平気なのか?」
話しかけるといっても、独り言のように天井を見上げたまま呟いただけだった。
「弘人、俺…かなり我慢してんだけど…。」
その返答に、改めて剛の顔を見る。剛は複雑そうな妙な表情を浮かべて照れ笑いしている。
「…ん?何だ?」
いまいちピンと来ない俺を見て剛がニヤリと笑って言う。
「お前のキスで…、俺は既に臨戦態勢。」
「りん…せん?…って?」
「分かんねぇ~のか?」
剛がガバッと起き上がり、俺の上に覆い被さるなり首すじに口づけてくる。
「え…?お、おい、何を?!」
慌てる俺の耳元で剛が囁く。
「今、直ぐにでもお前を抱きたい。」
「……!?」
言葉を失う俺を見て、剛がニッコリと微笑む。
「弘人、ありがとな!」
ベッドから華麗に飛び降りて俺に手を差し伸べる。
「さぁ、一緒に帰ろうぜ!」
その表情はとてもキラキラして見える。
「おう!」
俺も、差し伸べられた手を力強く握り返す。
俺達は連れ立って保健室を後にした。
ー終ー
「弘人…、マジで言ってんのか…?」
俺は腹を決める。どうなるか分からないが、剛が離れて行くのだけは止めたかったのだ。
「俺は、お前と離れるのは嫌なんだ!」
正直な自分の想いを口にする。改めて言葉にすると物凄く恥ずかしくなる。顔がカーッと熱くなってしまう。
「俺が、お前をどうしたいか…分かって言ってんのか?」
その言葉にギクリとする。
《それ…!どうにかならないのか~!?》
心の中で歯軋りをする。
ふと、先輩達のあの光景が頭を過ぎる。突然の出来事に…すっかり頭の中から吹き飛んでいたのだ。剛との事で少なからず先輩達の気持ちも分かったような気がしていた。俺の胸のモヤモヤも軽くなっていたのだ。本来なら「無事解決!」と言いたいところだが、それよりも大きな悩みを抱える結果になってしまった。
それでも、相手が剛ならどうにかなると思ってしまうのは妙な感覚だ。俺が単純なだけかもしれない。
チラリと剛を見ると、少し考え込むような表情で黙って俺の言葉を待っているようだ。
剛を引き留めたのは俺だ。あそこで引き留めていなければ…俺は、きっと後悔していたはずだ。同じ後悔なら、逃げるより立ち向かえ!だ。こうして目の前に剛が居る。今はそれでいい。
《剛が相手なら…》
目の前の剛を眺めながら、俺は胸の中で膨らむ何かを感じていた。それは言葉にはならない不思議な感覚。
何だろう…?
それでも、剛が相手なら何とかなる。剛が相手なら何とかしたい。俺は必死に考える。
《剛が相手なら…》
それは繰り返される呪文のように頭の中を巡ってゆく。剛が相手なら…、剛が相手なら…、2人でなら…。
《うん、剛が相手なら何とかなる!》
ハッキリとは分からないが、考えても答えは出ない。分からないなら進んでみるしかない。剛を引き留めた時から、俺なりの覚悟は決めていたのだ。
「俺は、お前が相手なら…。」
そこまで口にして強烈に恥ずかしくなった。剛が驚いた顔で俺を見返す。
「弘人…、俺、もう我慢出来ないけどマジで大丈夫か?」
聞くだけでも恥ずかしくなるなるようなセリフを言われてギクギクッとなる。そして、剛に抱きしめられた時の事を思い出して余計に顔が熱くなってしまう。
《思い出しただけでも恥ずかしいのに…、また、ああなるのか…?!》
剛のかすれた声、首すじにかかる息、そこから先を想像すると頭がクラクラし始める。そして、先輩達のあの光景がありありと浮かんだ。
「お、俺が…、ご、剛と…、あ、あ、あんな事…?!」
心の声が口をついて出ている事にも気付かないほど俺の頭はパンク寸前だ。そんな俺の様子を見て剛が小さく吹き出すのが見えた。
「おい、剛~!何、笑ってんだよ~?!」
パンク寸前まで張りつめていた風船が一気に萎んでゆくように、先程までの緊迫感も一緒に吹き飛んでしまった。
「弘人~、お前、どんな想像してんだ~?」
そう言いながら笑っているのは〈いつもの剛〉だ。話す口調もそうだ。俺はなんだかホッとする。いつもの剛が目の前に居る。それだけで気持ちが落ち着く。
《これが、俺の好きな剛なんだよな~!》
そう思うと自然と笑顔になる。
《でも、どんな剛も…俺は好きだな…!》
ホッとして笑顔になる俺を見て剛も嬉しそうに笑う。普段は豪快に笑う奴だが、少し照れたように笑う剛はなかなか良い。俺は、今日〈俺の知らない剛〉を沢山見た気がする。
「俺って、剛のこと…本当には知らなかったのかもな。」
ポツリと呟く。
「はぁ~?何言ってんだ?俺は、お前にしか見せてないところが沢山ある…」
そう言って言葉を切った後、身を乗り出して俺の顔を覗き込んでくる。
「言っただろ?お前は俺の…特別だ!…って。」
剛がニヤリと笑う。俺は耳まで真っ赤になってしまった。その照れ隠しと悔し紛れに言い返す。
「俺、もう一つ見つけた!お前は、恥ずかしい事を平気で言う奴だ!」
俺もヘヘッと笑って舌を出す。
《うわわ……?!》
突然、俺は剛の腕に抱きしめられた。普段の和やかムードに戻って安心していた身体が一気に固まる。親友に抱きしめられている構図が気恥ずかしくて顔もカーッと熱くなる。固まった俺の耳元で剛がポツリポツリと話し始める。それは、囁きではなく普段の口調だ。
「ごめんな~、弘人。俺、お前に無理させてるよな~。でも、お前が俺を引き留めた時、マジですんげぇ~嬉しかった。俺、かなり覚悟はしてたけど…、お前と…離れるの…、辛すぎる…」
少しずつ言葉が詰まって途切れてゆく。その声も身体も微かに震えている。それでも、なるべく俺を緊張させまいとしてくれているのが伝わって来る。
俺は、そんな剛を愛おしく感じて…行き場に困って持て余していた両腕を剛の背中に回して力強く抱きしめてみた。剛の身体が強張るのを感じる。
触れ合う頬や身体が熱いのは俺の方なのか?剛の方なのか?分からない。胸の鼓動がトクン…トクン…時を刻んでゆく…。
剛が俺の耳元でゆっくりと囁く。
「弘人…。俺、マジで…お前が好きだ。」
切なげにかすれる声と微かに震える息が俺の耳元にかかる。それだけで身体が勝手にビクンと反応してしまう。俺は思わず剛の肩口に顔を押し当てた。
暫くそのままの体勢で抱き合っていると、剛の鼓動がドクン…ドクン…と伝わって来る。剛も緊張しているのか?なかなか動かない。俺はどうすれば良いのか分からずにジッとしていた。俺の心臓もバクバクしている。
「……剛…?」
たまりかねて名を呼んだ瞬間、俺の身体がベッドに押し倒される。
「うわっ!?」
先程と同様に、俺の身体は剛の身体の下にスッポリとおさまってしまう。苦しくないのは…剛が自分の腕で上半身を支えているからだ。剛の髪の毛が軽く触れてくる。その顔が間近にある。息づかいが聞こえる。俺は余りの恥ずかしさと緊張にギュッと目を閉じる。
《ど、どうなるんだあぁ~?!俺~~?!》
身体がガチガチに固まる。緊張で震える。顔が熱くほてる。心臓が耳の横で激しく鳴っている。
しかし、今度もまた…剛は動かない。
《一体、何してるんだ…?》
チラリと剛の様子を盗み見ようと目を開けてみる。直ぐに剛の視線とぶつかった。どうやら、ずっと俺の顔を見ていたらしい。緊張してガチガチになっている顔を見られていたのかと思うと余計に恥ずかしくなる。
「なんだよ?!見てるだけかよ!」
俺は思わず言い放つ。
《あ…、ヤベェ!!》
「俺は、こうやってるだけでもいいんだけど…?」
剛は少し照れながら嬉しそうに微笑む。
《この笑顔…なんか良いよな~!》
又しても、俺はついつい見惚れてしまう。
綺麗な形の眉、意外と長い睫毛、瞳の色は少し青みがかって見える。深い海の底のような不思議な色だ。外国人の血を引いているせいか、日本人とは少し違った神秘的な感じだ。
《すげぇ…!なんか不思議な色だ…。凄く綺麗だな…》
まじまじと眺めている剛の顔が少しずつ近付いて来る。
《……ハッ?!こ、これは…もしかして…?!》
俺の身体が強張る。思わず口唇をキュッと引き締めて身構える。ところが、剛は覚悟した俺の顔を素通りして枕元に頭を埋めた。そして、まだ固まったままの俺の首すじに口唇を寄せて…触れるか触れないかの距離でゆっくりと囁く。
「そんなに見つめられたら…キスしたくなるだろ。」
その囁きに合わせて口唇が微かに触れてくる。湿った熱い息が首すじを撫で上げる。俺の身体がゾクリと震え、剛の台詞で口から心臓が飛び出しそうになった。全身がカーッと熱くなり、変な汗がジットリ滲む。そんな俺の反応を見て、剛がフフッと小さく吹き出した。
「そんなに緊張されたら何も出来ねぇだろ~。心配すんなって!弘人が嫌がる事はしねぇから。」
いつもの口調に戻っている剛の声は笑いを堪らえている。
《クッソ~~!!》
俺は剛に振り回されているような気がしてムッとした。俺の反応を見て楽しそうにしている剛の首に手を伸ばす。グイッと引き寄せて、その口唇に自分の口唇を重ね合わせる。そうやってはみたものの、俺にはキスの経験がない。口唇を引き結んで〈エイッ!〉とばかりに押し当ててみたたけだ。
剛の身体がビクンと反応して慌てて身を引いた。かなり驚いた様子で耳まで真っ赤になっている。
《してやったり!》
反撃心からの軽い悪戯だっのだが、剛には効果テキメンだったようだ。
「へへ~ンだ!お前が俺をおちょくるから仕返しだ!」
俺はニヤリと笑い得意気に言ってやる。
「ふ~ん。それなら…、もっとおちょくれば…もっといい事があるのか?」
剛もニヤリと笑う。
《やっぱり、剛には敵わねぇ~!》
俺はムスッっとして顔を背ける。
剛の手が俺の頬にそっと触れてくる。長い指がゆっくりと頬を撫でるように滑り、顎のラインをなぞってゆく。今まで誰にもそんな風に触られた事がない。
《な、なんか…、ヤラシイよな…?》
そう思うと、今までとは違う恥ずかしさが込み上げてくる。咄嗟にその手を掴んで顔から引き離す。
「俺に触られるの…やっぱ、嫌か…?」
少し寂しげな声で訊かれて返事に詰まる。覚悟を決めたつもりでいても、いざとなると抵抗感が出てしまう。
「いや、くすぐったいだけだ!」
そう答えて、掴んでいた剛の手をピシャリと頬に押し当てた。
《うがああぁ~!完全に俺の負けなのか~?!》
剛の苦しそうな姿を目にしたばかりだ。今は、これ以上…剛を悲しませたくはない。そんな風に思ってしまう。同情心なのかもしれないが、俺は剛を失いたくないのだ。
《うがががあぁ~~!!俺って、剛に弱いのかな…?》
頭の中で自問自答を繰り返す。
剛は、頬に触れた手を動かすでもなく離すでもなくジッと添えたままだ。それだけでも、その大きな手に包み込まれているようで恥ずかしくなる。剛の手の温もりが直に伝わってくるせいだろうか…?
俺が独りでアレコレ考えている間も、剛は身動きもせず何も言わず寄り添ったままジッとしている。嫌がる事はしないと言った言葉は本心らしい。それでも、剛は俺が好きなのだから本当なら先輩達のように…。そこまで考えて激しく後悔した。
《俺が…、剛と…、あんな事が出来るのか…?!そ、それは…出来ねぇ~~!!》
これ以上考えたら脳が完全に煮えてしまいそうだ。横目でチラリと剛を見る。俺と頭を並べるようにして伏し目がちに俺の横顔を見つめている。その表情は幸せそうだ。俺の胸がキュンとなる。
《でも、これで良かったんだよな…》
「あのな…剛、お前に触られるのが嫌とかどうとかじゃなくて…。さ、さっきのは…何て言うか…、気恥ずかしいっていうか…、よく分んねぇけど…。」
たどたどしく話す俺の顔を剛が覗き込んできた。
「弘人、無理しなくていい。ここにお前がいる。それだけでいい。」
なんとも甘く優しく語りかけてくる。普段の剛からは想像すら出来ない雰囲気がある。
《剛って…、恋愛するとこんな感じになるのか?》
俺は妙に感心しながら剛の顔を眺める。普段は恋愛に関心を示さない剛が、どんな風に思っているのか?どんなタイプが好きなのか?彼女が出来たらどうなるのか?ずっと気になっていた。剛が他の誰かを好きになって恋愛したら、その相手にもこんな風にするんだろうな…。
そんな事を考えていると、剛が俺に見せた様々な表情が頭の中に浮かんでくる。
胸の奥が小さくチクリとした。
《それは、なんか寂しいかもな…》
剛に優しく包み込まれるような感覚の中で…ぼんやりと思い巡らせていた俺は、不思議な心地良さと妙な寂しさを感じていた。そして、ふと目の前の剛に焦点が合う。優しく見つめてくる眼差し、その不思議な色の瞳がゆらめいて…思わず引き込まれそうになる。俺はギュッと目を閉じた。
「お前に…、キス…したい…。」
絞り出すようにかすれる声が聞こえた。俺はビクッとして目を開ける。切なげに俺を見つめる剛の表情にドキリとする。
《うわぁ~!?マジかよ~?!どうすりゃいいんだ!?》
俺の心臓がバクバクし始める。身体がググッと強張る。先程は、反撃心と悪戯心でキス紛いの事をした俺だが…こうなると状況は違う。心臓が〈ドトドドド~!!〉まるで噴火前の地鳴りのように騒ぎ始める。
《剛にキスされる…!…キス?キ、キスされるのか~??俺~~?!》
剛は俺を見つめたまま動かない。俺の返事を待っているようだ。嫌がる事はしないと言った。断れば止めるのだろう。だが、剛の表情を見ると辛そうなのが分かる。同じ男としてそれはキツイはずだ。俺に了解を求められても困る。それならいっそ強引にやられた方が覚悟も出来るというものだ。しかし、このまま迫られ続けると俺の心臓がぶっ壊れそうだ。
ついつい、そんな事をアレコレ考えてしまう。
《俺って…、どこまで剛に甘いんだあぁ~~?!》
俺は半分パニック状態だが、身体は固まったまま動かない。向かい合う俺達は…そのまま静止画像のようになっていた。
「……弘…人…。」
剛が苦しげに俺の名を呼ぶ。
「わ、分かった!俺がやる!」
俺は咄嗟にそう答えていた。
「え…?!」
剛の表情が驚きに変わる。緊迫した空気が一気に吹き飛ぶ。
「え…?マジで…?!」
〈いつもの剛〉がそこに居た。先程までの雰囲気たっぷりの剛とは違い、少しトボケた表情の軽そうな感じになる。
《うん!やっぱり、いつもの剛の方が安心するな!》
雰囲気たっぷりの剛も悪くはないが、俺には刺激が強すぎる。剛に見つめられて迫られると身体がガチガチになって動かなくなる。アタフタするだけの自分が嫌になる。それがどうにも苦手だ。そんな事を考えながら剛の顔を眺める。剛は嬉しそうに照れ笑いしている。
「俺は、どっちでもすんげぇ~嬉しい!」
剛が俺の身体を抱え込み一気に体勢を変える。あっと言う間に俺は剛の上に覆い被さってしまう。
「うわっ!ちょ、ちょっと…何だよ?!」
慌ててベッドに腕をついて上体を起こす。今度は、俺が剛を見下ろす形になっている。
「うわっ?!」
慌てて剛の上から飛び退こうとした瞬間、腕を掴まれて引き戻される。
「逃げんなよ。」
剛の腕が背中にまわり、そのまま軽く抱きしめられてしまう。
《こ、これはこれで…、かなり恥ずかしい~~!!》
暫くの間、そのままの体勢で動けずにいる俺に剛が言う。
「なぁ、キスしてくれるんだろ?」
上になっても下になっても剛は相変わらずだ。だが、下になった方が受け身になるらしい。
《…と、いう事は…?今は俺が優位だ!》
ずっと振り回されてアタフタしていた俺の気分が少し上がる。気分が上がるとその気にもなってくる。
《やっぱり…、俺って単純かもな?》
改めて、ベッドに手を着いて上体を起こす。俺を見上げる剛の顔は少し照れくさそうに微笑んでいる。見上げるのと見下ろすのではこんなにも違うものかと妙な感心を覚えながら、俺も剛を見つめ返す。
暫しの沈黙…。
「……弘人…。」
剛が俺の名を呼ぶ。その口唇が薄っすらと開いて俺を待っているようだ。
《よし!》
俺は大きく息を吸い込み腹を決める。しかし、その考えが甘かった事を痛感する。心臓の音が激しく鳴り響いて耳鳴りがする。身体中が強張って関節がギシギシと音をたてる。かなりの緊張で全身が小刻みに震える。俺はぎこちない動きで剛に顔を近付けてゆく。
《い…、い、息が苦しい…!》
咄嗟に身体を起こして〈ブハーッ!〉と息を吐いた。
「どうした?!弘人?」
驚いて起き上がろうとする剛の身体を手で制する。
「だ、大丈夫だ!心配御無用!」
かなりの緊張で言葉までおかしくなってしまう。素の状態では到底耐えられそうにない。そんな俺を見ていた剛がクスリと笑う。
「何だよ~?笑うなよ!お前がジッと見るから緊張すんだろ~!」
俺の覚悟がへし折れそうになる。
《いやいや、俺も男だ!やる時はやるって事を剛に見せてやる!》
そう自分に言い聞かせて、大きく息を吸い込みグッと下腹に力を込める。
「剛、目ぇ瞑ってろ!」
俺は男らしく力強く言い放つ。剛が頬を赤らめてニッコリ笑うと小さく頷いて目を閉じた。そんな仕草が意外と可愛らしく見えてしまう。
《よし!仕切り直しだ!》
俺は胸に手を当てて呼吸を整えながら目を閉じる。自分の心を鎮めるように集中する。そうやっていると、50mコースのスタート地点に立っている時のような気分になる。ただ、これから向かうのは50m先のゴールではなく剛の口唇だ。そう考えると変な話だが、気分的には同じようなものだ。それぐらい俺の中では重要な事だ。
再びベッドに手を着いて剛の顔を覗き込む。目を閉じたその顔は整っていて綺麗だ。
《やっぱり…綺麗だよな…》
今日は何度となく見とれてしまったが、ますます綺麗に見えるのは何故だろう…?剛の辛そうな表情を沢山見たからだろうか…?
《なんか…変にドキドキするよな…》
今の剛の顔からは何となく艶っぽさのある魅力的な印象を受ける。俺はゆっくりと顔を寄せてゆく。また心臓がバクバクし始める。身体の動きがぎこちなくなる。
《ヤバイ~!緊張する~!》
1時間前までは、剛にキスするなんて想像もしていなかった事だ。剛にほだされて…なし崩しにここまで来てしまった。勿論、俺自身の意思も含めてだが…。親友で、しかも男同士だ。それなのに不思議と嫌悪感はない。これが他の奴等だったらどうなるだろう…?ふと、親しい仲間の顔を思い浮かべてみる。
《ウゲ…!絶対無理…!》
思い切り鳥肌が立ってしまった。
俺は剛が好きだ。それは今も変わらない。恋愛対象に見た事なんて一度も無いが、普通では想像すらしない事だろう。
それなら、俺のこの感情は一体何だ…?同情心かとも思っていたが、それだけではない「何か」がある。言葉では言い表せない熱い想い…。
《剛は…、俺にとって特別な存在なんだ…》
そんな事を思い巡らせながら剛の口元に視線を移す。少し大きめの口唇はハッキリした輪郭で口角が少し上がっている。いつも笑っているように見えるのはこのためらしい。
《ここに…キスするのか…》
そう思った途端、ドギマギしてまともに見られなくなる。今度は指先で軽く触れてみる。剛がピクンと小さく身体を震わせた。剛も緊張しているのだろうか…?その頬に顔を寄せる。指先で確認するように口唇をゆっくりとなぞってみる。
「……ハァ……」
口唇が薄く開いて小さな吐息が漏れる。熱く湿った息を指先に感じて身体がゾクリとした。何だか妙な気分になってくる。先程まで俺を散々に振り回していた剛が、今は従順に待っているのだ。
「そんなに…俺が好きなのか…?」
変な気分になった俺は、かすれた声で問いかける。
剛の瞼がゆっくりと開き、うっとりとした眼差しが向けられる。妙に色っぽく見える表情、その口唇が小さく動く。声にならない熱い吐息と口唇の柔らかな感触が指先に伝わってくる。
「す、き、だ」
身体の奥がジンと熱くなる。そのままゆっくりと指を這わせると、口唇が小さく震えて応えてくる。少し開いた隙間から覗く舌先が軽く触れてくる。
「ハァァ……、弘…人……」
その口唇から絡みつくような熱い吐息が漏れた時、俺は引き寄せられるように自分の口唇を重ねていた。
剛の舌先がそっと触れてくる。誘うように軽く口唇を舐められて…俺の舌が戸惑いながらもそれに応える。小さく触れ合う舌先…身体の奥がジーンと熱くなる。剛の腕が背中にまわり優しく包み込んでくる。俺は剛に身体を預ける。
躊躇いがちに軽く触れ合っていた舌先が、剛の舌に促されるようにぎこちなくも自然に絡み合ってゆく。
「……ん…っ……」
俺の喉元から小さな呻きが漏れる。剛の腕に力が込められ強く抱きしめられたかと思うと、グイッと身体が反転して俺の上に覆い被さってくる。そのまま深く舌を入れられて訳が分からなくなる。酸欠気味の頭がボーッとし始めた頃、ゆっくりと剛の口唇が離れる。
「はぁ……、ぁぁ……」
深い口づけに息苦しくなっていた俺の口から熱い溜め息が漏れる。頭がボーッとして身体に力が入らない。剛の口唇が頬から耳元へと滑ってゆく。
「……弘…人…。」
耳元で甘く優しく名を呼ばれ、脱力した身体が勝手にビクンと反応する。
「んぅ…っ…」
同時に変な声まで出てしまった。自分の耳を疑うような甘い声にハッと我に返って恥ずかしくなる。
「あ…?!ご、剛…?」
慌てふためきながらも平静を取り戻そうと呼びかけた俺の顔を剛が覗き込んでくる。
「弘人。」
その幸せそうな表情に最上級の微笑みが浮かぶ。
《ドッキューン!》
俺は胸を撃ち抜かれた鴨のような気分になる。目をまんまるに見開いて呆けている俺の口唇に剛が軽くキスをしてきた。一瞬だけ軽やかに触れて離れる口唇からは〈チュッ〉と可愛らしい音が鳴る。
「あっ…?」
俺の身体がピクンと反応して小さな声が出た。まるでスイッチでも押されたかのように…呆けていた頭の中が再稼働する。
《え…?今…、俺、キスされた…?》
一瞬の出来事にキョトンとしてしまう。
今までの俺にはキスの経験が無い。過去に一度だけ観たエロDVDは恥ずかしくなるぐらいに濃厚でエロかった。俺が好きなカンフー映画やお笑い番組にそういうシーンは無い。テレビで観たアクション映画の最後の方にある外国人のキスシーンもそれなりに濃厚だった。それが俺の知り得るキス情報だ。
《もしかして…?今みたいな感じで良かったのか…?》
剛の舌が触れてきた時、戸惑いながらも応えたのは「そうするもの」だと思っていたからだ。あれほど身構えて緊張したのもそのせいだ。
《ハァ~~、俺って…バカ?》
何となくやるせない気持ちになる。変に緊張しっぱなしだった身体から力が抜けてゆく。つい先程までの恥ずかしさも戸惑いもドキドキも薄れてゆく。
「重いだろ。悪いな。」
剛が俺の上から身体をズラして横たわる。今度は軽く抱きつくように身を寄せてくる。安心したような静かな息づかいと優しい温もりが伝わってくる。これで「万事解決!」だ。
《あぁ~、緊張して損した~!もう~、疲れた~!》
俺は心底安堵して脱力する。
《フゥ…、これでもう安心だな》
身体の緊張も動揺もなくなった今、改めて剛の身体を身近に感じる。腕の重み、軽く触れる髪の毛、やわらかな息づかい、身体のぬくもり…その全てがハッキリと感じ取れる。
《やっぱり、剛が傍に居ると安心する。離れるなんてあり得ねぇよな…?》
《剛…。これからも、ずっと一緒に居ような…!》
改めて、そんな事を考える。今まではあまり意識していなかった部分だけに、自分の気持ちに気付くというのは妙な恥ずかしさを伴うものだ。段々と触れ合っている部分までもが熱くなってくる。何だか胸までドキドキしてくる。それは、今までとは違うドキドキ感だ。
《何なんだ?俺、どうなってんだ?》
それが、剛に対するトキメキだと気付くのは…まだ少し先の話になるのだが…。
俺は妙なドキドキ感に耐えられなくなり、気を落ち着けようと剛に話しかける。
「な、何だか身体が熱いような…?剛は平気なのか?」
話しかけるといっても、独り言のように天井を見上げたまま呟いただけだった。
「弘人、俺…かなり我慢してんだけど…。」
その返答に、改めて剛の顔を見る。剛は複雑そうな妙な表情を浮かべて照れ笑いしている。
「…ん?何だ?」
いまいちピンと来ない俺を見て剛がニヤリと笑って言う。
「お前のキスで…、俺は既に臨戦態勢。」
「りん…せん?…って?」
「分かんねぇ~のか?」
剛がガバッと起き上がり、俺の上に覆い被さるなり首すじに口づけてくる。
「え…?お、おい、何を?!」
慌てる俺の耳元で剛が囁く。
「今、直ぐにでもお前を抱きたい。」
「……!?」
言葉を失う俺を見て、剛がニッコリと微笑む。
「弘人、ありがとな!」
ベッドから華麗に飛び降りて俺に手を差し伸べる。
「さぁ、一緒に帰ろうぜ!」
その表情はとてもキラキラして見える。
「おう!」
俺も、差し伸べられた手を力強く握り返す。
俺達は連れ立って保健室を後にした。
ー終ー
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