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相澤と速水〈12〉怒りのリセット
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速水への怒りと復讐は全く違う別物だ。根本から違うのだから噛み合うはずもない。
本来、ターゲットに向ける怒りは個人的レベルを超越している。全ての怒りの捌け口となるからだ。それだけに、ターゲットを見下す時の優越感は世の中への勝利宣言のようなものだ。その興奮は俺にしか分からないだろう。俺が異常かどうかなど関係ない。その時の俺は俺ではないのだから、何をどうしようが、どう考えようが自由だ。
……俺を虐げて来た奴等を成敗してやる!
……世の中に復讐してやる!
そうやって全てを怒りに変えて生きて来た。言い換えれば「怒りが俺の全て」だ。
一例を挙げると、ターゲットの上に跨り腰を振る。実際にはやらされているのだが、偽りの自分がやる事など関係ない。俺の中には別の興奮がある。相手に跨り上から見下す気分は最高だ。俺を相手に興奮する愚かな姿を眺めながら腹の中で手当り次第に罵りまくる。
バカな野郎共は俺に命令して支配しているつもりだろうが、復讐において支配しているのは俺だ。俺の下で気持ち良さげに息を乱し、興奮して昇り詰めて行く無様な様子を眺めていると怒りなど冷めてしまう。冷静になるほどに冷酷にもなれる。相手の気分が盛り上がるほど勝ち誇った気分にもなる。乱暴なセックスなど痛くも痒くもなくなる。
実際のところは痛みもあれば屈辱的な事もある。だが、興奮が上回ればどうにでも出来る。そして、自分の身体の快感は自分で得れば良いだけだ。乳首を刺激し自分のモノを扱く。勿論、ターゲットに見えないように隠れてやる。時には命令される事もあるが、俺は家畜でも下僕でもない。嫌がる俺の姿を見て奴等は更に興奮する。恥ずかしがる姿が可愛いだとか何だとか言い始める。その勘違いも甚だしい。そういう点でも俺は奴等を上手く騙せている。本当の思惑に気付く奴など一人も居ない。
……俺の本性は誰も知らない。
……ざまあみろ!俺の勝利だ!
そして、最後は非情に切り棄てる。ターゲットの青ざめた顔と情けない姿は必見だ。涙目になる奴も居れば、喰ってかかる奴も居る。そのどれもが「見苦しい」の一言だ。本来なら高笑いしたくなるほどの勝利だが、非情になりきった俺には何の感情もない。ターゲットに向ける怒りが消え去った後は何も残らないからだ。
つまり、復讐とは「怒りのリセット」でもある。
そして、ターゲットが居ない期間は「自慰行為」で解消している。
それは単なる生理的処理でもなければ快感を得るだけのものでもない。俺にとっては重要な意味を持っている。自分の中にある怒りや汚れを吐き出す為の行為だ。全てを吐き出した後はスッキリして気分が晴れる。それにより「自分をリセット」している。いつしか、それが当たり前のようになった。学校から帰れば「手を洗う」のと同じようなものだ。ある意味で「消毒」と言っても良いだろう。やらなければリセット出来ない。そんな習慣めいた感覚もある。
俺の人生は決して楽しいものではないが、その中でも「快感」というものは飽きる事も消える事も無い。俺にとっては唯一とも言える「確かなモノ」だった。
昔は「快感」を得る事に夢中になった。これは男の生理現象でもある。俺が男だという証だ。そして、孤独な俺にとっては唯一の気晴らしであり癒やしでもあった。程良い気持ち良さを怠惰に貪り、ジワジワと昇り詰めて行く時間をジックリと味わう。出そうになる前の痺れるような感覚に全身が震え、そのまま一気に出してしまいたくなるのだが、全てが終わってしまうのは勿体ない。なるべく自分を焦らしながら何度もその感覚を味わう。身体が苦しくなる反面、絶頂を越える瞬間への期待感が更に高まる。息が乱れて苦しくなるほどに興奮は増し、全身が熱を帯びて汗が吹き出す。思考が回らなくなり絶頂を迎えたい手が勝手に動く。そして最高潮を迎える。全身が心臓になったように大きく脈打ち、強い排出感に惜しげもなく放出する解放感は何事にも勝る。快感以外は何も要らなくなる。その後に訪れる気怠さと静寂さには安らぎさえ覚える。そのどれもが最高でどんどんのめり込んで行くばかりだった。より強い快感を得る為、少しでも長く身を浸す為、それを探る事にも没頭していた。
やがて、その行為にも変化が生じるようになった。復讐を繰り返す内に俺の異常性は増して行ったのだ。そして、鏡に映る俺の姿は全くの別人に変わり果てていた。どんどん魔性的になり、段々と淫らな姿を曝すようになった。それでも「本来の自分ではない」のだからどうにでも出来ると思えた。
ターゲットを煽るように様々なポーズをとりながら自慰行為に溺れる俺は異常だ。だが、実際にターゲットの前でやらされる事は多かった。単なる興味本位で見たがるだけの奴も居れば、偉そうに命令する奴も居た。そうやって俺を貶める事でイイ気になるバカは意外と多い。しかも、そういう奴等のセックスは一方的で横暴なものでしかない。俺に自慰行為をやらせた後、遠慮なしに突っ込んで腰を振る。バカの一つ覚えだ。当然、気持ち良さなど有りはしない。その代わり、俺には復讐という興奮がある。要は「ギブ&テイク」だ。俺は身体を提供する代わりに奴等の心に傷をつける。
復讐にも慣れてくるとセックスだけでは興奮が足りなくなった。怒りが収まらなくなると自慰行為も過激になった。鏡の前に立ちターゲットの顔を思い浮かべる。その無様な顔を見下しながら見せつけるようにゆっくりと扱いてゆく。散々にやられた後などは憎々しさも倍増する。それを思い出しては怒りと興奮を高めて行く。怒りが快感を邪魔する為、直ぐに達する事はない。延々と扱きまくる俺の姿は普段と違ったものになる。
不気味な笑みを浮かべながら激しく息を吐き、小さく唸っては髪の毛を振り乱す。何度も口唇を舐め回し、ギリギリと歯ぎしりを繰り返す。なかなかイケないだけあって、その行為は荒々しく激しくなる。鏡に重ねたターゲットの顔を踏みにじり、唾を吐きかけ、股間を押し付けて擦る。先端から滲み出た体液に汚れた顔を想像すると背筋がゾクゾクする。狂喜と化した俺の興奮度は上昇する。やがて最高潮に達すると、そのまま相手の顔めがけてぶちまけるように放出する。ドロリとした白い液体が鏡を伝って流れ落ちる。
《これで満足だろ?お前等にはこれで充分だ》
鏡に映るその姿は、口唇の端を吊り上げて笑う魔性そのものだ。
そうやって解消しきれない怒りを発散させた後は頭の中も身体の中も完全に静まり返る。そして、何事も無かったように鏡を綺麗に拭いて終わる。やっている事は過激で異常だが、復讐の際に顔を出すのは常軌を逸した魔性に他ならない。俺とは全く違う別人だ。
次第に、ターゲットとの煩わしいセックスをするよりも効果的で効率が良いと思うようになった。面倒な事が何一つ無い。セックス前の準備も後始末も必要ない。無駄に身体を傷付ける事も屈辱にまみれる事もない。
何人もの男とセックスをしてきた結果、俺の身体は受け入れる事に慣れていた。以前ほどの大きな苦痛ではなくなっていた。セックスでは痛みが強ければ強いほど、その反動が復讐の炎を燃え上がらせるのだ。だが、中途半端では怒りの興奮度が上がりきらない内に終わってしまう。乱暴で下手で好き放題、無駄に突かれまくるだけのセックスが鬱陶しくなりつつあった。だからといって、ターゲットとのセックスに快感などは必要ない。それこそが余計なものでしかない。
それならば、復讐するよりも独りだけの自慰行為の方が気楽で良い。そのまま誰とも関わらず、全ての「しがらみ」から逃れたいと思うようになっていた。
全ては速水と出会う前からジワジワと動き始めていたのだ。そして、何もかもが仕組まれたように重なったのだ。これが運命なのか偶然の一致なのかは分からない。
ただ、速水と出会った事が大きな「キッカケ」となり激しく揺り動かされたのは間違いない。同時に、その存在が歯止めとなり復讐人生をストップさせていた。自分では止める事が出来ない流れに飲み込まれて行く中で、突然に突き刺さってきた杭のようなものだろう。
例えるなら、濁流の中に無造作に打ち込まれた1本の太い杭だ。流れを止める事はないが微動だにしない。物言わず、動かず、只そこに在る。邪魔はしないが目障りでもある。無視する事も出来たのだが、俺は何故かしがみついている。しかも、それを引き抜こうと必死になっている。
冷静に解析すると、そういう事になる。
《俺が速水にしがみついてるって事か…?》
《今までの速水って…どんな奴だった…?》
《俺と速水って…どんな関係だ…?》
落ち着きを取り戻した思考が少しずつ核心へと向かって行く…。
本来、ターゲットに向ける怒りは個人的レベルを超越している。全ての怒りの捌け口となるからだ。それだけに、ターゲットを見下す時の優越感は世の中への勝利宣言のようなものだ。その興奮は俺にしか分からないだろう。俺が異常かどうかなど関係ない。その時の俺は俺ではないのだから、何をどうしようが、どう考えようが自由だ。
……俺を虐げて来た奴等を成敗してやる!
……世の中に復讐してやる!
そうやって全てを怒りに変えて生きて来た。言い換えれば「怒りが俺の全て」だ。
一例を挙げると、ターゲットの上に跨り腰を振る。実際にはやらされているのだが、偽りの自分がやる事など関係ない。俺の中には別の興奮がある。相手に跨り上から見下す気分は最高だ。俺を相手に興奮する愚かな姿を眺めながら腹の中で手当り次第に罵りまくる。
バカな野郎共は俺に命令して支配しているつもりだろうが、復讐において支配しているのは俺だ。俺の下で気持ち良さげに息を乱し、興奮して昇り詰めて行く無様な様子を眺めていると怒りなど冷めてしまう。冷静になるほどに冷酷にもなれる。相手の気分が盛り上がるほど勝ち誇った気分にもなる。乱暴なセックスなど痛くも痒くもなくなる。
実際のところは痛みもあれば屈辱的な事もある。だが、興奮が上回ればどうにでも出来る。そして、自分の身体の快感は自分で得れば良いだけだ。乳首を刺激し自分のモノを扱く。勿論、ターゲットに見えないように隠れてやる。時には命令される事もあるが、俺は家畜でも下僕でもない。嫌がる俺の姿を見て奴等は更に興奮する。恥ずかしがる姿が可愛いだとか何だとか言い始める。その勘違いも甚だしい。そういう点でも俺は奴等を上手く騙せている。本当の思惑に気付く奴など一人も居ない。
……俺の本性は誰も知らない。
……ざまあみろ!俺の勝利だ!
そして、最後は非情に切り棄てる。ターゲットの青ざめた顔と情けない姿は必見だ。涙目になる奴も居れば、喰ってかかる奴も居る。そのどれもが「見苦しい」の一言だ。本来なら高笑いしたくなるほどの勝利だが、非情になりきった俺には何の感情もない。ターゲットに向ける怒りが消え去った後は何も残らないからだ。
つまり、復讐とは「怒りのリセット」でもある。
そして、ターゲットが居ない期間は「自慰行為」で解消している。
それは単なる生理的処理でもなければ快感を得るだけのものでもない。俺にとっては重要な意味を持っている。自分の中にある怒りや汚れを吐き出す為の行為だ。全てを吐き出した後はスッキリして気分が晴れる。それにより「自分をリセット」している。いつしか、それが当たり前のようになった。学校から帰れば「手を洗う」のと同じようなものだ。ある意味で「消毒」と言っても良いだろう。やらなければリセット出来ない。そんな習慣めいた感覚もある。
俺の人生は決して楽しいものではないが、その中でも「快感」というものは飽きる事も消える事も無い。俺にとっては唯一とも言える「確かなモノ」だった。
昔は「快感」を得る事に夢中になった。これは男の生理現象でもある。俺が男だという証だ。そして、孤独な俺にとっては唯一の気晴らしであり癒やしでもあった。程良い気持ち良さを怠惰に貪り、ジワジワと昇り詰めて行く時間をジックリと味わう。出そうになる前の痺れるような感覚に全身が震え、そのまま一気に出してしまいたくなるのだが、全てが終わってしまうのは勿体ない。なるべく自分を焦らしながら何度もその感覚を味わう。身体が苦しくなる反面、絶頂を越える瞬間への期待感が更に高まる。息が乱れて苦しくなるほどに興奮は増し、全身が熱を帯びて汗が吹き出す。思考が回らなくなり絶頂を迎えたい手が勝手に動く。そして最高潮を迎える。全身が心臓になったように大きく脈打ち、強い排出感に惜しげもなく放出する解放感は何事にも勝る。快感以外は何も要らなくなる。その後に訪れる気怠さと静寂さには安らぎさえ覚える。そのどれもが最高でどんどんのめり込んで行くばかりだった。より強い快感を得る為、少しでも長く身を浸す為、それを探る事にも没頭していた。
やがて、その行為にも変化が生じるようになった。復讐を繰り返す内に俺の異常性は増して行ったのだ。そして、鏡に映る俺の姿は全くの別人に変わり果てていた。どんどん魔性的になり、段々と淫らな姿を曝すようになった。それでも「本来の自分ではない」のだからどうにでも出来ると思えた。
ターゲットを煽るように様々なポーズをとりながら自慰行為に溺れる俺は異常だ。だが、実際にターゲットの前でやらされる事は多かった。単なる興味本位で見たがるだけの奴も居れば、偉そうに命令する奴も居た。そうやって俺を貶める事でイイ気になるバカは意外と多い。しかも、そういう奴等のセックスは一方的で横暴なものでしかない。俺に自慰行為をやらせた後、遠慮なしに突っ込んで腰を振る。バカの一つ覚えだ。当然、気持ち良さなど有りはしない。その代わり、俺には復讐という興奮がある。要は「ギブ&テイク」だ。俺は身体を提供する代わりに奴等の心に傷をつける。
復讐にも慣れてくるとセックスだけでは興奮が足りなくなった。怒りが収まらなくなると自慰行為も過激になった。鏡の前に立ちターゲットの顔を思い浮かべる。その無様な顔を見下しながら見せつけるようにゆっくりと扱いてゆく。散々にやられた後などは憎々しさも倍増する。それを思い出しては怒りと興奮を高めて行く。怒りが快感を邪魔する為、直ぐに達する事はない。延々と扱きまくる俺の姿は普段と違ったものになる。
不気味な笑みを浮かべながら激しく息を吐き、小さく唸っては髪の毛を振り乱す。何度も口唇を舐め回し、ギリギリと歯ぎしりを繰り返す。なかなかイケないだけあって、その行為は荒々しく激しくなる。鏡に重ねたターゲットの顔を踏みにじり、唾を吐きかけ、股間を押し付けて擦る。先端から滲み出た体液に汚れた顔を想像すると背筋がゾクゾクする。狂喜と化した俺の興奮度は上昇する。やがて最高潮に達すると、そのまま相手の顔めがけてぶちまけるように放出する。ドロリとした白い液体が鏡を伝って流れ落ちる。
《これで満足だろ?お前等にはこれで充分だ》
鏡に映るその姿は、口唇の端を吊り上げて笑う魔性そのものだ。
そうやって解消しきれない怒りを発散させた後は頭の中も身体の中も完全に静まり返る。そして、何事も無かったように鏡を綺麗に拭いて終わる。やっている事は過激で異常だが、復讐の際に顔を出すのは常軌を逸した魔性に他ならない。俺とは全く違う別人だ。
次第に、ターゲットとの煩わしいセックスをするよりも効果的で効率が良いと思うようになった。面倒な事が何一つ無い。セックス前の準備も後始末も必要ない。無駄に身体を傷付ける事も屈辱にまみれる事もない。
何人もの男とセックスをしてきた結果、俺の身体は受け入れる事に慣れていた。以前ほどの大きな苦痛ではなくなっていた。セックスでは痛みが強ければ強いほど、その反動が復讐の炎を燃え上がらせるのだ。だが、中途半端では怒りの興奮度が上がりきらない内に終わってしまう。乱暴で下手で好き放題、無駄に突かれまくるだけのセックスが鬱陶しくなりつつあった。だからといって、ターゲットとのセックスに快感などは必要ない。それこそが余計なものでしかない。
それならば、復讐するよりも独りだけの自慰行為の方が気楽で良い。そのまま誰とも関わらず、全ての「しがらみ」から逃れたいと思うようになっていた。
全ては速水と出会う前からジワジワと動き始めていたのだ。そして、何もかもが仕組まれたように重なったのだ。これが運命なのか偶然の一致なのかは分からない。
ただ、速水と出会った事が大きな「キッカケ」となり激しく揺り動かされたのは間違いない。同時に、その存在が歯止めとなり復讐人生をストップさせていた。自分では止める事が出来ない流れに飲み込まれて行く中で、突然に突き刺さってきた杭のようなものだろう。
例えるなら、濁流の中に無造作に打ち込まれた1本の太い杭だ。流れを止める事はないが微動だにしない。物言わず、動かず、只そこに在る。邪魔はしないが目障りでもある。無視する事も出来たのだが、俺は何故かしがみついている。しかも、それを引き抜こうと必死になっている。
冷静に解析すると、そういう事になる。
《俺が速水にしがみついてるって事か…?》
《今までの速水って…どんな奴だった…?》
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