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相澤の改心〈6〉
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こうして思い返せば、昨日の出来事は「キッカケの連続」だった。いや、「キッカケの集大成」と言っても良いのかもしれない。
目まぐるしい展開に「あわやの大惨事」のような気分になりはしたものの、それはそれで良かったのだろう。普段はバリケードを張り巡らせて周りを遮断している。復讐以外で他人と接触する事はほぼ無いと言える。最初の「キッカケ」はどうであれ、俺が佐久間と接触した事が今に繋がるのだ。
果たして、これは俺の「選択」なのか「偶然」なのか…?どちらにせよ「無縁」では無かったという事か…?佐久間のような男にもっと早く出逢えていれば、俺の人生も違っていたのかも知れない…。
人生とは不可思議だ。残酷なようでいて、何処か救われた部分も有るような無いような…?「ものは考えよう」という言葉もあるが、これも考えようなのだろうか…?
今のところ、俺にはまだ良く分からない…。
子供の頃から用心深い性格ではあったが、今ではそれが凝り固まったシコリのようになっている。
孤独の苦しみや寂しさから逃れるように孤独を選んだ。周りの人間を忌み嫌い拒絶した。そして、もっと孤独になった。いつしか、ガチガチに身を固めて動きが取れなくなっていた。自分でも手に負えなかった。捻くれて歪んで偏屈になってしまった。それを解きほぐすのは並大抵の事ではないだろう。自分でもそう感じるぐらいなのだから、実際にはもっと悲惨な状態のはずだ。それを一気に揺り動かされた感じだろうか…?
《ホント…参ったな…。アイツ等…凄いな…!》
「これが男の正念場だ!」そんな風に気合いを入れた事は何度かあるが、今までとは違う「正真正銘」の「男同士の勝負」だった。まるで、俺の「ド根性」を試されたような気分だ。
「男同士…悪くない…。」
正直なところ、佐久間の「あの一撃」を思い出すだけでも身震いがする。身体に残る恐怖は完全に消え去っていない。ブルリと震えた後、妙にゾクゾクとした感覚が全身に広がる。これはやはり「武者震い」に近い。その証拠に、俺は佐久間に対する嫌悪感も憎しみも一切抱いてはいない。あの迫力に恐れを感じてはいるものの、それは「恐れ」であって「恐れ」でない「畏れ」だ。こうなるとダジャレを通り越した早口言葉か三段活用だ。
《恐れであって恐れでなく…畏れか…》
「オソレデアッテオソレデナクオソレダ…」
なんとなく早口言葉のように口にしてみる。そんな自分を面白く感じる。だが、決してふざけている訳ではない。俺は自分の性格を良く知らない。怒りが消えた今、新たに芽生える思考や感情を上手く処理出来ていない所がある。なんともチグハグな感覚に、まるで他人事のようにも思える。まだ、現実感が乏しいのかもしれない。こんな事は今までに経験した事も感じた事も無かったからだ。
今は、自分の操作方法を探っているような感じだろうか…?殆ど言葉を発しなかった俺が、これほどに独り言を口にする事にも驚きだ。まるで喋る練習でもしているかのようだ。
《佐久間は畏れ多い奴だけど…、葉山は何処か親近感あるよな?》
全く違うタイプの2人だが、どちらにも男らしい強さと潔さがあった。繰り返し思い出す度に、少しずつ胸の中に広がる感覚に何処かムズムズしてしまう。この感覚の正体は一体何だろう…?
「……フン!男同士の約束か…。」
《それも悪くない…!》
強がりな俺は吐き捨てるように口にする。あくまでも、布団の中に潜って繰り広げられる俺だけの世界だが…そこは大目に見て欲しい。
本来なら、自分を顧みる事で果てしなく落ち込んで凹む一途を辿るはずが…2人の事を考える度に少しずつ気分が浮上している。人生を大いに反省すべき時に、何故だが胸の奥が小さくワクワクしているようだ。
これも「一時的な回避行動」なのかもしれない。封印した過去の扉を開くのはまだ早い。物事は少しずつ慎重に運ばなければならない。そもそも、俺が憎しみ以外の感情で他人の事をこれほど考える事は珍しい。速水との事が始まりだろう…。つまりは、速水も「キッカケ」の一つという事か…?
そうなると、佐久間と葉山に向ける感情も似たようなものなのだろうか…?
俺は2人の事が嫌いではない。それは、2人共が真っ向から「男同士」として向かって来た事によるものだ。とても単純な事だが、俺は「男」として扱われた事が嬉しいのだ。今まで、そんな風に「男扱い」された事は殆ど無かったからだ。
その点では速水も同じだった。「ゲイ」という問題が無ければ拗れる事も無かったのだろうが、ゲイだったからこそ俺に接近出来たとも言える。そうでなければ、俺は奴を受け入れる事さえ無かっただろう。周りから遮断した俺の空間の中に最初に入って来た男だ。
そういう意味では佐久間も同じなのだろう。「憧れ」という形で俺の中に存在していた。そして、実際に俺の空間に入って来た2人目の男になる。
迷路を彷徨う俺に「出口のヒント」をくれたのは速水だ。そして「出口の鍵」を握っていたのが佐久間という事になるのだろう。だが、佐久間は出口どころか迷路の壁ごとド派手にぶち抜いて行った。そして、葉山までもが現れた。
多分、そういう事なのだろう…。
こんな風に考えていると、色々な事が見えて来るような気がする。これが自分と向き合うという事なのだろうか…?
グルグルと同じような事を繰り返し巻き返し考え続けている中で、少しずつ開けて見えて来るものがある。
《……考える事も無駄じゃない……》
「……世の中って…俺が思ってたのとはちょっと違うのかもな…?」
ぼんやりと天井を眺めながら、そんな事をポツリと呟く俺が居る。
目まぐるしい展開に「あわやの大惨事」のような気分になりはしたものの、それはそれで良かったのだろう。普段はバリケードを張り巡らせて周りを遮断している。復讐以外で他人と接触する事はほぼ無いと言える。最初の「キッカケ」はどうであれ、俺が佐久間と接触した事が今に繋がるのだ。
果たして、これは俺の「選択」なのか「偶然」なのか…?どちらにせよ「無縁」では無かったという事か…?佐久間のような男にもっと早く出逢えていれば、俺の人生も違っていたのかも知れない…。
人生とは不可思議だ。残酷なようでいて、何処か救われた部分も有るような無いような…?「ものは考えよう」という言葉もあるが、これも考えようなのだろうか…?
今のところ、俺にはまだ良く分からない…。
子供の頃から用心深い性格ではあったが、今ではそれが凝り固まったシコリのようになっている。
孤独の苦しみや寂しさから逃れるように孤独を選んだ。周りの人間を忌み嫌い拒絶した。そして、もっと孤独になった。いつしか、ガチガチに身を固めて動きが取れなくなっていた。自分でも手に負えなかった。捻くれて歪んで偏屈になってしまった。それを解きほぐすのは並大抵の事ではないだろう。自分でもそう感じるぐらいなのだから、実際にはもっと悲惨な状態のはずだ。それを一気に揺り動かされた感じだろうか…?
《ホント…参ったな…。アイツ等…凄いな…!》
「これが男の正念場だ!」そんな風に気合いを入れた事は何度かあるが、今までとは違う「正真正銘」の「男同士の勝負」だった。まるで、俺の「ド根性」を試されたような気分だ。
「男同士…悪くない…。」
正直なところ、佐久間の「あの一撃」を思い出すだけでも身震いがする。身体に残る恐怖は完全に消え去っていない。ブルリと震えた後、妙にゾクゾクとした感覚が全身に広がる。これはやはり「武者震い」に近い。その証拠に、俺は佐久間に対する嫌悪感も憎しみも一切抱いてはいない。あの迫力に恐れを感じてはいるものの、それは「恐れ」であって「恐れ」でない「畏れ」だ。こうなるとダジャレを通り越した早口言葉か三段活用だ。
《恐れであって恐れでなく…畏れか…》
「オソレデアッテオソレデナクオソレダ…」
なんとなく早口言葉のように口にしてみる。そんな自分を面白く感じる。だが、決してふざけている訳ではない。俺は自分の性格を良く知らない。怒りが消えた今、新たに芽生える思考や感情を上手く処理出来ていない所がある。なんともチグハグな感覚に、まるで他人事のようにも思える。まだ、現実感が乏しいのかもしれない。こんな事は今までに経験した事も感じた事も無かったからだ。
今は、自分の操作方法を探っているような感じだろうか…?殆ど言葉を発しなかった俺が、これほどに独り言を口にする事にも驚きだ。まるで喋る練習でもしているかのようだ。
《佐久間は畏れ多い奴だけど…、葉山は何処か親近感あるよな?》
全く違うタイプの2人だが、どちらにも男らしい強さと潔さがあった。繰り返し思い出す度に、少しずつ胸の中に広がる感覚に何処かムズムズしてしまう。この感覚の正体は一体何だろう…?
「……フン!男同士の約束か…。」
《それも悪くない…!》
強がりな俺は吐き捨てるように口にする。あくまでも、布団の中に潜って繰り広げられる俺だけの世界だが…そこは大目に見て欲しい。
本来なら、自分を顧みる事で果てしなく落ち込んで凹む一途を辿るはずが…2人の事を考える度に少しずつ気分が浮上している。人生を大いに反省すべき時に、何故だが胸の奥が小さくワクワクしているようだ。
これも「一時的な回避行動」なのかもしれない。封印した過去の扉を開くのはまだ早い。物事は少しずつ慎重に運ばなければならない。そもそも、俺が憎しみ以外の感情で他人の事をこれほど考える事は珍しい。速水との事が始まりだろう…。つまりは、速水も「キッカケ」の一つという事か…?
そうなると、佐久間と葉山に向ける感情も似たようなものなのだろうか…?
俺は2人の事が嫌いではない。それは、2人共が真っ向から「男同士」として向かって来た事によるものだ。とても単純な事だが、俺は「男」として扱われた事が嬉しいのだ。今まで、そんな風に「男扱い」された事は殆ど無かったからだ。
その点では速水も同じだった。「ゲイ」という問題が無ければ拗れる事も無かったのだろうが、ゲイだったからこそ俺に接近出来たとも言える。そうでなければ、俺は奴を受け入れる事さえ無かっただろう。周りから遮断した俺の空間の中に最初に入って来た男だ。
そういう意味では佐久間も同じなのだろう。「憧れ」という形で俺の中に存在していた。そして、実際に俺の空間に入って来た2人目の男になる。
迷路を彷徨う俺に「出口のヒント」をくれたのは速水だ。そして「出口の鍵」を握っていたのが佐久間という事になるのだろう。だが、佐久間は出口どころか迷路の壁ごとド派手にぶち抜いて行った。そして、葉山までもが現れた。
多分、そういう事なのだろう…。
こんな風に考えていると、色々な事が見えて来るような気がする。これが自分と向き合うという事なのだろうか…?
グルグルと同じような事を繰り返し巻き返し考え続けている中で、少しずつ開けて見えて来るものがある。
《……考える事も無駄じゃない……》
「……世の中って…俺が思ってたのとはちょっと違うのかもな…?」
ぼんやりと天井を眺めながら、そんな事をポツリと呟く俺が居る。
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