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相澤の企み〈1〉
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ー後日ー
俺は速水の部屋に居た。当然「佐久間 剛」の情報を得る為だ。
「それで?何か訊きたいのか?」
お盆に乗せたオレンジジュースの入ったグラスをテーブルに置いた速水が意味深に笑う。
「別に。」
俺はグラスを手に取りストローに口をつける。口数が少なく無愛想なのはいつもの事だ。速水の前では演技する必要も無いからだ。
「なぁ、キスしていい?」
「……ああ。」
先ずは速水からのキスを受ける。それから俺も舌を絡ませてゆく。佐久間を相手にする時の練習みたいなものだ。俺のキスが上手いかどうかは分からないので速水の反応を見る。
「んっ…。何だよ?今日は大胆だな。」
息苦しくなった速水が口唇を離した。それだけで軽く興奮したように頬を紅潮させている。俺のキスは上々という事だろう。
「別に…。」
《佐久間にキスするつもりでやっただけだ。お前にした訳じゃない》
「何?最後までやっていいの?」
「それは無い。」
「だよな。まぁ、抜くまでは良いんだろ?」
「……ああ。」
「それじゃあ、やりながら話してやるよ。」
速水の口唇が首に吸い付いてくる。手早くシャツのボタンを外して前をはだけ、痕をつけない程度に肌を貪り始める。
「相澤の肌は綺麗だよな。でも、痕にならないようにやるのも気を遣う。思いっきりやれないのが残念だな。」
速水とは一度だけセックスをした。それにはやむを得ない事情があった。だが、一度そういう関係になると不思議と嫌ではなくなった。それが何故かは分からないが、速水が傍に居ても苦にならなくなっていた。それ以降、スキンシップ程度の事は何度かやっている。この男は俺にとって「無害」だからだ。
ただ、俺は「ゲイ」を相手にしないと決めている。だからこそ、速水とセックスをする気は無い。一定の距離を置いて互いに利用し合っているだけの関係だ。
早々から、唾液が絡みつくような音をたてて肌に吸い付いてくる。指先が乳首を弄り始める。俺の乳首は弄られる事に慣れているのでそれなりに勃つのも早い。だが、俺自身は余り興奮しない。
速水の方も好きなように舐めて触って満足するだけだ。その行為に興奮するだけの事で、それ以上は求めて来ない。ある程度の目的が果たせれば良いのだろう。
「それで?佐久間が気になるのか?」
俺の肌を好き放題に堪能しながら訊いてくる。
「……別に。」
中途半端に返答するのはいつもの事だ。速水もそれに慣れている。
「陸上部、得意種目ハードル、成績は断トツ。」
「……知ってる。」
「俺の知ってる奴が選抜クラスに居るんだ。そいつから色々と聞いた。佐久間は頭脳レベルが違うらしいぜ。学年トップっていうだけじゃなく、クラスの中でも圧倒的に凄いってさ。」
仕入れた情報を口にしながら、軽く勃った乳首を舐めたり吸ったりし始める。同時に、反対の乳首を指先で弄ぶように刺激してくる。その感触を楽しんでいるようだ。
どうやら、速水は俺とやりたい為に佐久間の情報を入手したらしい。俺の頭はそう理解している。ギブ&テイクだ。
「西中出身、中学の時から陸上やってる。中学でも成績優秀。評判は悪くない。」
《西中出身か…。俺の家とは反対方向だな…》
速水の情報を聞きながら俺は思考を巡らせる。乳首への刺激に僅かに身を捩りながらも、頭の中に浮かぶのは「佐久間 剛」の姿だけだ。
「なぁ、相澤?考え事も良いけどさ…少しはこっちも気にしてくれない?全然感じない訳じゃないだろ?」
軽く乳首に噛みつかれ、指先でキュッとつねられる。
「痛…っ!」
突然の痛みに速水を見る。少し物言いたげな表情で俺を見ている。
「詮索する気は無いけどさ、今ぐらいは俺の相手してくれてもいいんじゃない?こうやって一緒に居るのは俺なんだけど?」
「………。」
「まぁ…いいけどさ。まさか本気で佐久間に惚れてるとか?ノンケ相手は辛いだけだろ?俺達みたいな部類は変態扱いされるだけだ。それよりは、俺と楽しんだ方が良くない?」
「………そんなんじゃない…。」
速水は俺の実態を知らない。ノンケ相手に復讐している事は話していない。俺が何も語らないので必要以上に訊いてくる事もしない。速水自身にも秘められた過去はあるのだろう。お互いに普通ではないのだから。
《俺が佐久間に惚れてるだって?!そんな訳ないだろ!男相手に恋愛なんて出来るはずないだろ?!俺はゲイじゃない!》
速水の言葉に胸の中がムカムカする。それは、自分に対する嫌気でもあったのだろう。男を憎み、男を受け入れる身体になってしまった事。今の自分は「偽り」であり、決して「本物」ではないという事。
《今の俺は本当の俺じゃない!全部、ニセモノだ!何もかも間違いだ!》
これは俺の意地でもある。
俺は速水の部屋に居た。当然「佐久間 剛」の情報を得る為だ。
「それで?何か訊きたいのか?」
お盆に乗せたオレンジジュースの入ったグラスをテーブルに置いた速水が意味深に笑う。
「別に。」
俺はグラスを手に取りストローに口をつける。口数が少なく無愛想なのはいつもの事だ。速水の前では演技する必要も無いからだ。
「なぁ、キスしていい?」
「……ああ。」
先ずは速水からのキスを受ける。それから俺も舌を絡ませてゆく。佐久間を相手にする時の練習みたいなものだ。俺のキスが上手いかどうかは分からないので速水の反応を見る。
「んっ…。何だよ?今日は大胆だな。」
息苦しくなった速水が口唇を離した。それだけで軽く興奮したように頬を紅潮させている。俺のキスは上々という事だろう。
「別に…。」
《佐久間にキスするつもりでやっただけだ。お前にした訳じゃない》
「何?最後までやっていいの?」
「それは無い。」
「だよな。まぁ、抜くまでは良いんだろ?」
「……ああ。」
「それじゃあ、やりながら話してやるよ。」
速水の口唇が首に吸い付いてくる。手早くシャツのボタンを外して前をはだけ、痕をつけない程度に肌を貪り始める。
「相澤の肌は綺麗だよな。でも、痕にならないようにやるのも気を遣う。思いっきりやれないのが残念だな。」
速水とは一度だけセックスをした。それにはやむを得ない事情があった。だが、一度そういう関係になると不思議と嫌ではなくなった。それが何故かは分からないが、速水が傍に居ても苦にならなくなっていた。それ以降、スキンシップ程度の事は何度かやっている。この男は俺にとって「無害」だからだ。
ただ、俺は「ゲイ」を相手にしないと決めている。だからこそ、速水とセックスをする気は無い。一定の距離を置いて互いに利用し合っているだけの関係だ。
早々から、唾液が絡みつくような音をたてて肌に吸い付いてくる。指先が乳首を弄り始める。俺の乳首は弄られる事に慣れているのでそれなりに勃つのも早い。だが、俺自身は余り興奮しない。
速水の方も好きなように舐めて触って満足するだけだ。その行為に興奮するだけの事で、それ以上は求めて来ない。ある程度の目的が果たせれば良いのだろう。
「それで?佐久間が気になるのか?」
俺の肌を好き放題に堪能しながら訊いてくる。
「……別に。」
中途半端に返答するのはいつもの事だ。速水もそれに慣れている。
「陸上部、得意種目ハードル、成績は断トツ。」
「……知ってる。」
「俺の知ってる奴が選抜クラスに居るんだ。そいつから色々と聞いた。佐久間は頭脳レベルが違うらしいぜ。学年トップっていうだけじゃなく、クラスの中でも圧倒的に凄いってさ。」
仕入れた情報を口にしながら、軽く勃った乳首を舐めたり吸ったりし始める。同時に、反対の乳首を指先で弄ぶように刺激してくる。その感触を楽しんでいるようだ。
どうやら、速水は俺とやりたい為に佐久間の情報を入手したらしい。俺の頭はそう理解している。ギブ&テイクだ。
「西中出身、中学の時から陸上やってる。中学でも成績優秀。評判は悪くない。」
《西中出身か…。俺の家とは反対方向だな…》
速水の情報を聞きながら俺は思考を巡らせる。乳首への刺激に僅かに身を捩りながらも、頭の中に浮かぶのは「佐久間 剛」の姿だけだ。
「なぁ、相澤?考え事も良いけどさ…少しはこっちも気にしてくれない?全然感じない訳じゃないだろ?」
軽く乳首に噛みつかれ、指先でキュッとつねられる。
「痛…っ!」
突然の痛みに速水を見る。少し物言いたげな表情で俺を見ている。
「詮索する気は無いけどさ、今ぐらいは俺の相手してくれてもいいんじゃない?こうやって一緒に居るのは俺なんだけど?」
「………。」
「まぁ…いいけどさ。まさか本気で佐久間に惚れてるとか?ノンケ相手は辛いだけだろ?俺達みたいな部類は変態扱いされるだけだ。それよりは、俺と楽しんだ方が良くない?」
「………そんなんじゃない…。」
速水は俺の実態を知らない。ノンケ相手に復讐している事は話していない。俺が何も語らないので必要以上に訊いてくる事もしない。速水自身にも秘められた過去はあるのだろう。お互いに普通ではないのだから。
《俺が佐久間に惚れてるだって?!そんな訳ないだろ!男相手に恋愛なんて出来るはずないだろ?!俺はゲイじゃない!》
速水の言葉に胸の中がムカムカする。それは、自分に対する嫌気でもあったのだろう。男を憎み、男を受け入れる身体になってしまった事。今の自分は「偽り」であり、決して「本物」ではないという事。
《今の俺は本当の俺じゃない!全部、ニセモノだ!何もかも間違いだ!》
これは俺の意地でもある。
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