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灰かぶりの子ども・サンドリヨン

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【灰かぶりの子ども・サンドリヨン】

サンドリヨンは、灰色の長い髪を おだんごにして家のお掃除をする、まつげがくるんとした美人な子どもです。

家のお掃除ばかりをしているので、着ているお洋服もほこりだらけで、所々ほつれています。

また家のどこかで呼び鈴が鳴っています。

家族のような三人の女が、3つの呼び鈴を手に、こう言います。

「サンドリヨン、お掃除は終わった?」

「サンドリヨン、わたしのお洋服は?」

「サンドリヨン、サンドリヨン」

その度にサンドリヨンは、ほこりまみれになっていくのです。

でも、辛くなんてありません。

サンドリヨンには、叶えたい夢があるのです。

そして、その夢を応援してくれる友だちだっているのです。

一人は、泥棒ネズミで、もう一人は、どこからともなくやってくるハエ取りグモです。

泥棒ネズミは、家族が出掛けると、それを見計らったかのように、ひとりぽっちのサンドリヨンに会いに来ます。

そして、サンドリヨンに外の世界のお話を大げさに聞かせてから、サンドリヨンがくれたチーズをかじって出ていき、

ハエ取りグモは、時々、自分のまわりを飛んでいる、目眩(めまい)のような黒いハエを食べてくれるのです。

次は、家族が食べ終わった夕食の後片付けです。
 
サンドリヨンは、そのような事を7才の時から、10年以上続けておりました。

サンドリヨンが自分の部屋で眠ろうとすると、黒いハエが、また、自分のまわりを飛び始めました。

「サンドリヨン」

そのやさしい声のする方を見ると、ハエ取りグモがいました。

ハエ取りグモは、その正体を現します。

長く黒い髪を床に垂らして、その8本ある内の一番長い手に、先端が三日月の形をした杖を持ち、サンドリヨンに訊きました。

「あなた、しあわせになりたいかしら」と。

サンドリヨンは、迷うこともなく頷(うなづ)きます。

そして、手招きをされて、お庭へと出ました。

「この井戸の、前辺りがいいかしら」

ハエ取りグモは、その光景を隠れて見ていた、泥棒ネズミに気付きました。

「あなたがちょうどいいわ」

三日月の杖をクルクルと振り、魔法をかけました。

すると、泥棒ネズミの腹が風船のようにふくらみ始めて、腕や脚が蔓(つる)のように伸びて、灰色の馬車に変身しました。

サンドリヨンは、素敵な馬車を見て驚きます。

ハエ取りグモは、サンドリヨンにも魔法をかけました。

サンドリヨンの、ほこりまみれでしぼんだ洋服のスカートは、蒼白く輝きながらふくらんで、鳥籠のようなドレスへと変身していきます。

サンドリヨンは、驚きながらも、クルクルと回って見せて喜びました。

「さぁ、その馬車に乗って、好きな場所へとおいきなさい」

「けれど、あの3つの呼び鈴が一つでも鳴ったら、あなたにかけた魔法は解けてしまうから、急いで帰ってくるのよ」

サンドリヨンは、ハエ取りグモと、約束を交わすと、灰色の馬車に乗る前に、やりたい事があると、3つの呼び鈴を井戸の奥底へ、隠しました。
 
これで、この魔法が解けることはないでしょう。

サンドリヨンは、自分で夢を叶えた、

しあわせな子どもでした。
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