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ジャングルキャット・マヌルネコ・ボブキャットの刺青
しおりを挟む彼等には刻まれていたという。おぞましい魔獣の刺青が…。
「ジャングルキャットの刺青」
「マヌルネコの刺青」
「ボブキャットの刺青」
―グロテスク家の子どもたち―
「あーあ、退屈だね」
「退屈ね」
「何か面白いことないかな」
「お父様とお母様に訊いてみたら」
「何を?」
「遊ぶ方法よ」
「そんなことよりも、こっちへきて、
門の前に変な本が置いてあるの」
―無垢な子どもたち―
ある屋敷に「子どもたち」がいた。
彼等は、その無垢さを理由に、小さな命を幾つも殺めてきた「小さな罪人」だった。
彼等の手には、数えきれない程の罪が刻まれていた。
それは、犠牲になる者の姿形が「小さく」その犠牲が「人間」でなければ、罪ではないと、思い込んだ結果だった。
その証拠に、彼等のおもちゃ部屋には、いつも残骸が散らかっていた。
虫の羽や、小動物の皮、
虫の触角、他にも色々と。
それらは、彼等にとっての「愉快な遊び」で、誰かの積み上げた積み木を崩すのと一緒のことだった。
彼等は、今夜も、おもちゃ部屋で遊んでいた。
このことが親にバレないように。
―おもちゃ部屋―
深夜三時。
遊びの時間が始まった。
一階の寝室では、夜の遊びに疲れ果てた大人らが、裸体を晒して眠っていた。
こうなれば、しばらくは起きてこない。
ここからは「彼等の時間」だった。
彼等は、昼間の内に捕まえた虫や小動物たちをテーブルの上へ取り出した。
そして、その一匹一匹が逃げないようにと、小さな四肢を花びらのようにちぎった。
羽のある虫は、わざと羽を一枚だけ残した。
虫や小動物たちは、身体をバラバラにされた。
彼等は、それらを組み合わせて、それぞれの遊びを楽しんでいた。
その光景は何ともおぞましかった。
まさに地獄だった。
だが、これらの行いは、彼等が、彼等の両親の行いを真似ただけのこと。
この家系は、こうして生きていた。
虫や小動物たちの、儚い命を犠牲にして。
―命―
この家系は、小動物の皮でカバンや服を作り、虫たちのパーツでアクセサリーを作り、それらを商品にして生きていた。
もちろん、材料費は、ほとんどかからない。
全ては大自然からの恵みで、「命」だった。
その商法は、グロテスク家独自の商法で、人間に害はない。
だが、その商法が許されることもなかった。
その証拠に、グロテスク家の門前には、すでにあの男が立っていた。
「黒いローブの男」だった。
黒いローブの男は、そこで「分厚い本」を開いた。
そこには、「ジャングルキャットの刺青」と黒文字で書かれていた。
―狩場―
彼等が、虫取りあみと、虫かごを手にして、森へと出掛けると、いつもの狩場に黒いローブの男が立っていた。
だが、彼等はそのことに気付かず、いつものように狩りを始めた。
やはり、狩りは楽しかった。
刺激的だった。
虫も小動物も、狩り方は同じだった。
虫取りあみで、捕らえたら、あみの口をリボンで縛って、地面へと叩きつけた。
黒いローブの男は、そんな彼等の様子をじっと見ていた。
しばらくして、地獄のような狩りが終わった。
黒いローブの男は、不適な笑みを浮かべると、彼等へと近付き、冷たい表情で言った。
【小さな命をもて遊ぶ、学び乏しき罪人たちよ、
彼等らにも家族がいる事を忘れるな、
その命を狩り取った代償は死よりも辛い、
狩り取られる恐怖を味わいたくなければ、
今すぐに自害しろ、
出来ないのであれば、地獄の門を開いて、彼等のように四肢の痛みを学べ、
子どもらしく、素直に】
彼等は、それを聞いて酷く怯えていた。
だから、急いで屋敷へと帰った。
だが、何もかも手遅れだった。
屋敷の中はひどく荒らされ、両親たちの寝室からは異臭がした。
それは、彼等への罰だった。
―彼等への罰―
彼等がゆっくりと寝室の扉を開くと、そこには見知らぬ男女が
数名で立ち、彼等の帰りをじっと待っていた。
どの男女も眼が虚ろで、その眼には恐怖も感じられた。
両親の寝室のベッドの上を見ると、両親がふたり、鉄の拷問器具で手足を花びらのようにちぎられ、眼と口を大きく開いて、放置されていた。
異臭の原因はあれだった。
もう助けられない。
あの虫や小動物たちのように、かすかに動くだけだった。
彼等が恐怖にふるえながら後ずさると、その男女も彼等へと近付いて、鉄の拷問器具をカチカチと鳴らしていた。
あれは、ペンチの強化型のようなもの。
彼等は、それをよく知っていた。
小動物程度なら、あれらを花びらのようにちぎれる。
だが、人間ならば…
彼等が逃げ出そうとすると、彼等の前にひとりの女が立ちふさがり、彼等に言った。
「私達は大自然愛護協会からの使い、
とある方に、あなたたちのことを訊いて、やっとここを見つけたの、
大自然を犯して、商売してるんですって、
親も親なら、
子も子だわ、
さぁ、こちらへいらっしゃい、
同じことをしてあげるから」
彼等は、絶叫をあげた。
両親の命を奪われ、容易く狩り取られた三人の子どもたち、
その手には、虫や小動物を喰らう狩人、
「ジャングルキャット」
「マヌルネコ」
「ボブキャットの刺青」が、荒く刻まれているという…。
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