他人の不幸を閉じ込めた本

山口かずなり

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ディンゴの刺青

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彼等には刻まれていたという。おぞましい魔獣の刺青が…。   


「ディンゴの刺青」


―五人のイカれ貴族から


人間遊具の管理者 サディスト兄弟―


黒いローブの男が眼を覚ますと、男娼の姿が消えていた。


どうやら「予定通りに」逃げてくれたらしい。


しばらくすると、島の内部から何発かの銃声が聞こえてきた。


黒いローブの男は、その銃声を合図に客船から降りると、港を見張る四人の用心棒を弓矢で瞬殺し、そのひとりから「黒い帽子」を奪った。


「分厚い本」によると、この黒い帽子は、この島の「用心棒の証」


黒いローブの男は、黒い帽子を深くかぶると、島の内部へと侵入した。


―貴族島―


黒いローブの男が侵入した島の名は、「貴族島」


標的の「五人」が、各々の「縄張り」を四ヶ所に持ち、貴族たちのもて余した金と暇を解消する為に造り上げた、貴族たちの「遊園地」


「代償を支払えば最高の悦楽を」という売り文句の通りに、島には、「金」や「人間性」を代償に楽しめる仕掛けが満載で、中には「人間遊具」というものが存在する。


五人の標的たちは、そのような「遊び場」を貴族たちに提供する遊園地の「管理者」で、


「法律では捕らえられない罪人たち」


ひとりは、健常者でありながら「車椅子」で島の内部を巡回する「魔獣園」の管理者


「冷酷少女」


もうひとりは、ふたりで「ひとり」の、「人間遊具」の管理者


「サディスト兄弟」


もうひとりは、「血液」を好む、「流血屋敷」の管理者


「流血貴婦人」


そして、彼らを束ねる、「島のボス」で、「珍品館」の管理者


「旦那さま」


彼等は「家族」だが、仲が悪い為、互いの縄張りには余程の事が無い限り、入らない。


狙うのはそこ。


黒いローブの男は、一番目と二番目の標的


「サディスト兄弟」のページを開いた。


そこには「ディンゴの刺青」と黒文字で書かれていた…。


―サディスト兄弟―


その島には、「サディスト兄弟」と呼ばれる双子の兄弟がいた。


「檻の遊園地」を縄張りにする彼等は、名前の通りにサディストで、他人に肉体的・精神的苦痛を与える事で興奮する変質者。 

そんな彼等の仕事は、奴隷となる人間の誘拐。


そして、人力を動力源とした「人間遊具」の管理。


彼等は、このような仕事の際には必ず「黒い帽子」を深くかぶり、露出度の高い黒光りする衣装に身をまとい、その冷たい唇を「威嚇の犬マスク」で覆う。


そして、終わらない苦痛を他人に与えて生きてきたのだ。


こんな風に…。


―人力回転木馬― 


兄弟は、巨大な檻の中に入ると、園内でクルクルと回り続ける「人力回転木馬」の前に立ち、その無様な様子を見て、「彼等」の周りを回り始めていた。


ここで言う彼等とは、回転木馬の土台を人力で回す奴隷と、回転木馬の主役となる、木馬のマスクをかぶせられた奴隷たちのこと。


兄弟の兄は、そんな彼等の動きを 愛用の「マン・キャッチャー」を床に叩きつけることで止めると、腕組みをし、彼等の様子を冷たい眼で見ていた。


回転が止まると、人力として労働させられていた奴隷たちが、四つん這いなり、兄弟の足元に近付いてきた。


兄弟は、その様子を見て、互いに顔を見合せると、満足げに笑みを浮かべて、木馬係の奴隷の首にマン・キャッチャーをはめて言った。


「馬鹿ウマたちも集合だ」と。


すると、木馬となっていた奴隷たちが、兄弟の足元に床を這いながら集合した。


その姿は、実に滑稽で、兄弟たちにかぶせられたと思われる「木馬のマスク」の隙間からは、涙と汗が皮膚を伝ってボタボタと垂れていた。


奴隷たちは、こうして毎日のように働かされ、その逃れられない絶望感で震えて泣いていた。


だが、人間のことを遊具としてしか見られない彼等にとって、その涙や震えは、彼等の快感でしかなかった。


兄弟たちは、人間のクズ。


その証明に、兄弟たちの拷問のような管理は、まだ続いた。


兄弟は、ポケットから白い封筒を取り出すと、封を噛みきり、その中身を読み上げた。


それは人力として労働させられている他の奴隷が、兄弟たちに無理やり書かされた「仲間の死亡報告書」だった。


―死亡報告書―


「人力急流滑り」による死亡者「5名」


「人力観覧車」による死亡者「2名」


「脱獄」による死亡者「8名」


兄弟たちから「仲間の死」を聞かされた奴隷たちは、絶叫を上げて泣いていた。


中には、気絶する者もいた。 


そんな奴隷たちを見下ろして、兄弟たちは、口を揃えて言った。


「仕事の時間だ」と。


―奴隷に股がる子供たち―


回転木馬は、貴族の子供たちを乗せて不気味な音色でクルクルと回っていた。


奴隷たちの震える背中には、貴族の子供たちが股がり、その馬の頭を何度も殴って無邪気に笑っていた。


だが、しばらくすると、どこからか、何発かの銃声が聞こえ、それに驚いた奴隷たちが、突然、動きを止めた。


これに驚いた貴族の親たちは、奴隷たちに股がっていた子供たちを慌てて抱き上げて、兄弟たちを睨み付けて島から出ていった。


これに怒った兄弟は、残った奴隷をマン・キャッチャーで何度も打ったが、背後からやってきた黒い帽子の用心棒から「侵入者」の報告を受けると、その手を止めて、その用心棒の頬を奴隷の代わりに強く打った。


―侵入者―


黒い帽子を深くかぶった「用心棒の男」は、兄弟たちの理不尽な行動に耐えると、兄弟たちを若干睨み付けながらも報告を続けた。


「仲間からの報告によると、侵入者は、男のようで、この園内を単独で逃げ回っている模様です、狙いは貴族島に囚われた奴隷たちの奪還と思われます」


報告を聞いて、兄弟の兄が言った。


「そうか、ならばお前は、俺と一緒に来い、その侵入者とやらを俺の目の前で拷問して殺してもらう」と。


兄が、用心棒の男を連れて立ち去ろうとすると、用心棒の男の装備を怪しんだ弟が、兄に言った。


「ひとりは危険だ、そいつは用心棒の帽子をかぶっているが、装備している武器が弓矢と仕込みナイフだ、他の用心棒の装備とは異なる、侵入者の仲間かもしれない」と。


それを聞いて、兄が不適に笑った。


「だから、こいつに殺してもらうんだ」と。


用心棒の男は、兄の不適な笑みを見ると、兄弟たちに言った。


「それほどまでに私の存在を怪しむのならば、私を拷問して血を吐かせるか、逃げ回っている侵入者を拷問するか、そのどちらかを選ぶがいい、


だが、時間が惜しいのであれば、その兄弟の身体を二つに分けて、二つの選択肢を同時に選ぶのだ、お前たちにならばできるはずだ」


兄は、それを聞くと、弟に「侵入者の捕獲」を命じ、自分は、黒いローブの男を連れて、拷問部屋…「犬小屋」に向かった。


この時、黒いローブの男は、口の端から血を垂らして不敵な笑みを浮かべていた。


兄弟のカラダが、二つに割れた、と。


―兄弟の犬小屋―


「犬小屋」


そこは、兄弟たちの仕事場で、遊具の痛み具合を再確認する拷問部屋だった。


兄は、マン・キャッチャーで連れてきた黒いローブの男を赤黒い壁へと投げ飛ばすと、


壁に激突しても直ぐに立ち上がろうとする黒いローブの男を殴り付け、その上へ股がり、マン・キャッチャーを振り上げてきた。


だが、黒いローブの男も負けていなかった。


その一瞬の隙を狙った。


仕込みナイフで「兄の露出した腹筋」を切りつけてから、怯んだ兄の腹筋を蹴りあげた。


黒いローブの男は、素早く弓矢を構えると、弓矢で兄の右腕に矢を撃ち込んで、右腕を使えなくし、その手からマン・キャッチャーを奪い取った。


そして、絶叫で赤くはれあがる兄の首を奪ったばかりのマン・キャッチャーで捕らえ、そのまま床へと叩きつけて、四つん這いにさせた。


「これで終わりだ」と。


―兄の後始末―


しばらくして、黒いローブの男の代わりに逃げ回っていた「男娼」が、弟に担がれて、犬小屋へと連れてこられた。


弟は、兄が既にやられている事には気付かずに、男娼が血を吐いて喋った事を兄に報告しながら、黒いローブの男の待つ奥の部屋へと向かって歩いていた。


だが、兄の返答がないことに気付くと、男娼を床に捨てて、奥の部屋の床上で拷問されている兄の姿を見つけて、絶叫をあげた。


黒いローブの男は、そんな弟に弓矢を構えて、矢の先端を向けて脅した。


「後始末は、お前が殺れ」と。


弟は、そんな事は出来ないと叫んだ。


だが、弟のカラダは、正直だった。


弟のカラダは、兄のもとへと向かって歩いていた。


そして、あの声は確かに聞こえてきた。


【人間を遊具として扱う頭のイカれた兄弟よ、奴隷たちの痛み具合よりも、お前たち自身の痛み具合を再確認するがよい、そこにいる兄を…】


弟は、絶叫をあげた。


そして、弟は、自分の頭の痛み具合を再確認した。


やはり、自分はサディストなんだ、と。


弟は、実の兄の弱り果てた姿を見て、興奮していた。


そして、膨れ上がる何かが破裂しかけると、兄の上に股がり、呼吸を荒くし、それを擦り付けながら呟いていた。


「兄をいたぶれるなんて、すごく興奮する…」と。


弟は、犬マスクを床に投げ捨てると、兄の耳に甘い口を近付けて、


その耳を「噛みきった」


愛撫のつもりだった。


―快楽と苦痛―


黒いローブの男は、床に倒れていた男娼を担ぐと、犬小屋を出ていき、男娼を地面に降ろした。


そして、園内に残っていた奴隷たちのもとへと戻って、兄弟たちが「犬小屋」で死にかけていることを伝え、殺意をまとって立ち去ろうとする奴隷たちに言った。


「ここは遊園地、存分に楽しめ」と。


奴隷たちの手によって、首輪で繋がれ、死ぬまで廻され続けた二匹の番犬、


その太ももには、欲求の猛犬「ディンゴの刺青」が、遠吠えをあげて刻まれているという…。

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