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カモノハシの刺青
しおりを挟む彼等には刻まれていたという。おぞましい魔獣の刺青が…。
「カモノハシの刺青」
―草爪の男娼―
その男娼は、「草爪(クサヅメ)の男娼」と呼ばれていた。
理由は、草食男子の草と小型の鉤爪を武器に「客」を取るからだった。
どこの店にも属さない彼は、制限という縛りからかけ離れた存在。
だから、他の男娼たちよりは自由で、その行いは、非道だった。
男は、か弱そうな外見で、獲物の男を巣の中まで誘い込むと、
その獲物の息の根を愛用の「鉤爪」で止め、
金品を奪い、
その残骸を野良たちの餌にした。
この男にとって、自分以外の人間は、ただの「餌」でしかない。
男は、血の滴る鉤爪の血を綺麗に布で拭き取ると、鉤爪をベッドの下へと隠し、次の客を狩り取る為に、いつもの狩り場へと向かった。
―カモノハシ対ハイエナ―
男の狩り場でもあるその水辺は、
闇夜で男と男が戯れ、全身を濡らして、互いの低い鳴き声を聞かせ合う場所。
この男の狙いは、その中でも、性の対象がいない「あぶれた男」だった。
だが、今夜は、そんな男がなかなか見つからなかった。
男が、狩りを諦めて帰ろうとすると、「あの男」が、あぶれた男を演じて近付いてきた。
それは、雄の色気をまとった黒いローブの男だった。
男は、その黒いローブの男の冷たい眼と、その卑猥な人差し指に、下半身を刺激された。
だが、「狩り取るのは自分の方だ」と首を左右に振り、いつものように誘った。
「ふたつの巣穴を埋め合わないか」と。
男は、黒いローブの男を 巣の中まで誘い込むと、黒いローブの男をベッドへと押し倒し、馬乗りになり、自分の衣服を床へと脱ぎ捨てた。
いつもならば、ここで餌となる男の息の根を止めるが、今夜は違った。
「やれるが、殺れない」
男は、黒いローブの男の「雄」に完敗した。
逆に押し倒され、その全てを晒した。
これでは愛用の鉤爪にも手が届かない。
この男のふたつの眼には、黒いローブの男の姿だけが映り込み、他にはもう何も見えなくなっていた。
黒いローブの男は、そんな男の恍惚の表情に、弓矢を構え、矢の先端を首もとに向けて言った。
「快楽の時間はもう終わりだ」と。
―縛られた餌―
気が付くと男は、ベッドの上で大の字で寝かされ、きつく縄で縛り付けられていた。
黒いローブの男は、ベッドの上で恐怖に怯える男に言った。
「ある家族を狩り取る為には、生きた餌が必要だ、
命令に従わなければここでお前を殺す」と。
男に選択の余地は無かった。
黒いローブの男は、男の拘束を解くと、男に「分厚い本」を手渡し、あるページだけを読み解くように伝えた。
そこには「カモノハシの刺青」と黒文字で書かれていた。
男は、分厚い本に書かれていた通りに、黒いローブの男と共に「ある客船」に乗り込んだ。
そして、黒いローブの男の隣に腰掛けて訊いた。
それは、あの分厚い本に書かれていた自分以外の登場人物についての事だった。
彼等はいったい…、
黒いローブの男は、次の「標的たち」について語り始めた。
「次の標的たちは、お前と同様で生き餌を好む、だが、お前と違って金には興味がない」
「彼等が求めるものは、逃げ惑う玩具」
「泣き叫ぶ血」
「ふたつに割れたカラダ」
「その獲物が手放した大切なモノ」だ。
黒いローブの男は、そんな彼等のページを閉じると、
次の狩りに備えて眠った。
黒いローブの男の閉じたそのページ、
そこには、
「シャムネコの刺青」
「チスイコウモリの刺青」
「ディンゴの刺青」
「コモドオオトカゲの刺青」と黒文字で書かれていた。
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