ごめんなさい。俺の運命の恋人が超絶お怒りです。

しーぼっくす。

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 第88話:受け継がれる精神

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「ロベリル様の想いをハイリ様は受け入れました。しかしお二人の仲が表立った時、教会を除き周囲の反応は決していいものではなかった。どこの血筋かもわからないハイリ様は王妃としてふさわしくないという声が上がり、ハイリ様を愛人とし、王妃には御三家の令嬢の中から選んでいただくべきだという・・・・・・」
 それを聞いた愛那の顔がムウッとして不満を訴える。
「愛人? 一番好きな人を愛人にして、好きでも何でもない人と結婚しろって?」
 ナチェルが頷く。
「当時はそれが当たり前だったのです。それに国王は王家存続のために子をなさなければならない。王妃との間に子供が出来なければ他の女性とつくればいいというわけです。特に魔力の大きいロベリル様のお子様への期待は高かった。夜な夜な女達をロベリル様の寝室へと向かわせ、子供がたくさん生まれるように仕向けていたとも云われています」
 愛那の不満顔が止まらない。
「嫌な話。じゃあそれを仕向けていたのがそのバリンドル家ってこと?」
「いえ。この話に関してはバリンドル家だけではなかったでしょう」
 愛那の不満顔に冷えた目つきがプラスされた。
「・・・・・・そう。それで? それからどうなったの?」
「それが、ロベリル様はあてがわれた女性には誰一人手をつけなかった。ハイリ様以外を伴侶とする気はない。それが駄目だというなら王などいつでも辞めてやると言い放ったそうです」
 愛那の顔が満面に輝いた。
「ロベリル様のいた世界では、心に決めた相手だけを一生愛し続けることが常識だったそうで」
「素敵!」と言って愛那は指を組んで微笑んだ。
「王を辞められては困ると、誰もロベリル様のお言葉に逆らうことは出来ず、その後お二人は無事結婚されました。・・・・・・その辺りからです。バリンドル家の黒い噂が立ち始めたのは。ハイリ様の命が狙われ、誕生した王子と縁を結ぶため、ライバルとなる者へ事故を装い怪我を負わせるなどといった妨害。そういったことが他にもたくさん。しかし証拠がつかめず、追い詰めても真犯人を名乗る者がどこからともなく現れ、結局バリンドル家にはなんの咎もないまま」
「・・・・・・それって本当にバリンドル家が?」
「はい」とナチェルは頷く。
「それは現代まで変わらず続いています。王家にはロベリル様の『心に決めた相手だけを一生愛し続ける』といった精神が受け継がれていて、王家の人間が過去バリンドル家の者を選び繋がりを持つことはありませんでした。バリンドル家は長い間、王家の血をずっと欲し続けているのです」


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