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第86話:御三家
しおりを挟む「それでは次に、マナ様にサージェルタ王国について少し詳しくお話しいたします」
愛那は「はい」と言って背筋を伸ばした。
「初代国王様が異世界召喚される前、この国は三つに分かれていたということはお伝えしましたね」
「はい。仲が悪かった三つの国が、魔物の大量発生という共通の非常事態に協力し合ったという話ですね」
「そうです。その三つの国の王族が現在公爵家として存在します。その一つが今から向かうルザハーツ家です」
「えっ!?」
思わず声に出して驚く愛那。
「ルザハーツ家、アレンジア家、バリンドル家。この御三家が元王族となります」
「へえ、じゃあライツ様の家系はお父様の血筋だけでなく、元々王族だったんですね。えっと、ルザハーツ家と、アレンジア家、バリンドル家?」
「そうです。ルザハーツ、アレンジア、バリンドル。この御三家の名は確実に覚えておいて下さい」
愛那は「わかりました」と言って何度もそれを呟き繰り返す。
「ちなみにアレンジア家には、王太子の婚約者、ルーシェ嬢がいらっしゃいます」
「・・・・・・そうなんですね」
(私なんか足下にも及ばない完璧美女のルーシェ様ですね?)
神様が決めた運命の恋人(だと愛那が思い込んでいる)からの心ない暴言は、思い出すたびに愛那の目つきを悪くするスイッチと化していた。
それに気づいたナチェルが「申し訳ありません」と頭を下げて謝罪する。
「えっ? そんな、ナチェルさん」
愛那が「やめて下さい」と続ける前に、顔を上げたナチェルが真剣な眼差しを愛那に向けて言った。
「しかし私としては、マナ様にはこれから先、アレンジア家よりもバリンドル家に注意していただきたいと思っているのです」
「・・・・・・バリンドル家?」
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