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第33話:馬車の中で
しおりを挟む「あの、じゃあ、この透明人間の魔法を解いた方がいいですよね?」
魔法の使用をしばらく止めて欲しいと言われた愛那が素直に従おうとする。が、それをライツに止められる。
「待ってくれ。ここで解いて誰かに見られたらいけない。屋敷に向かう馬車の用意をしたから、その中で解いてもらっていいかな?」
「あ、そうですよね。分かりました」
愛那の返答を受け、ライツが後方に視線を投げる。そしてその先にいるモランがこちらを見て頷く。
「・・・・・・行こうか」
ライツが立ち上がると、愛那もつられて立ち上がる。
二人は正面から向かい合っているが、愛那の姿が見えないので、やはり視線は合わない。
ライツは小さく笑顔を見せる。
「こうしてマナと手を繋いで話が出来るのは嬉しいが、やはり姿が見えないというのは物足りなく感じてしまうな。さあ行こう。早く君の顔が見たい」
「!」
手を引かれ歩き出した愛那は、ライツに言われた台詞に今更ながら焦りのようなものを感じだした。
(ちょっと待って!? そんな期待するようなことを言われたら・・・・・・)
『王太子である私自らが魔物討伐にだと!? ふざけるのも大概にしろ! 第一! 見てみろ! あんな女、顔も容姿も何もかも! 私の婚約者であるルーシェの足下にも及ばないではないか! あれが将来の王妃だと!? あり得ないだろう! 絶対に認めない! 私は絶対にルーシェと結婚するんだ! 神に逆らってもこれだけは絶対に譲らないからな!』
レディルに言われた暴言を思い出し、愛那の足が止まった。
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